■音楽のステージでの共演は今回が初めて
Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場、KT Zepp Yokohama、臨港パークの4会場を舞台に、4月4日~6日の3日間にわたって開催された『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』。“街全体を巨大なフェス空間にする”というキャッチフレーズを掲げた新都市型フェスの初日、Kアリーナ横浜での“CENTRAL STAGE”は乃木坂46と緑黄色社会の2組による対バン形式のライブとなっており、事前に“乃木坂46×緑黄色社会”のコラボレーションを行うこともアナウンスされていた。
乃木坂46の久保史緒里と緑黄色社会のボーカル&ギターの長屋晴子は、久保がパーソナリティを務めるラジオ番組「乃木坂46のオールナイトニッポン」と「緑黄色社会・長屋晴子のオールナイトニッポンX(クロス)」を通して交流を深めていき、2023年12月放送のラジオでは、久保が長屋の自宅に招かれ、手料理を振る舞ってもらったことを報告。昨年5月に開催されたイベント「緑黄色社会・長屋晴子の長(OSA)LIVE 2024」には“リアル友達”として久保が出演してトークを繰り広げたが、音楽のステージでの共演は今回が初めてということもあり、開幕前から大きな注目を集めていた。
■「Shout Baby」で“変わりたい”という心の叫びにも似た絶唱で観客の胸を突き刺す。この“変わっていくこと”が緑黄色社会のステージのキーワード
トップバッターを務めたのは全国ホールツアー『Channel U tour 2025』を開催中で、バンド初のアジアツアーを発表したばかりの緑黄色社会。熱量の高いパフォーマンスで観客の心と体を弾ませるだけでなく、人間生きていればどうしたって芽生えてしまう不安や戸惑いといった感情にも寄り添い、自らの言葉と音楽でそういった気持ちも晴れやかにするような、エネルギーに満ちた内容となっていた。
1曲目はライブの定番曲「始まりの歌」。“さあ始めようか~始まりの歌を”というあらたなフェス、あらたな季節のスタートに相応しいフレーズを響かせると、のちのMCで乃木坂46の五百城茉央が「どんよりとご飯を食べてるときに流れてきて救われたんです」と語った「PLAYER 1」で拳を上げながら“本当の人生GAMEはこっからだ”~“無敵だZONE”というポジティヴなフレーズを共有。さらに、「Shout Baby」で“変わりたい”という心の叫びにも似た絶唱で観客の胸を突き刺す。この“変わっていくこと”が本ステージのキーワードとなっていた。
■長屋が乃木坂46久保史緒里、井上和、小川彩、中西アルノを呼び込んで「Mela!」を熱唱
長屋の「みんなの楽しみ方で、心が動くほうに、体が踊るほうに、自由に楽しんでいってください」という言葉とともに打ち鳴らされたのは、“生まれてきてくれてありがとう”と“生”を祝福するファンキーなナンバー「Party!!」。さらに、「恥ずかしいか青春は」「サマータイムシンデレラ」で様々な感情がぶつかり合って、若さゆえの情熱がせっつくように盛り上げる“青春と恋”の季節を鮮やかに描き出したのち、スペシャルゲストとして、乃木坂46の久保史緒里、井上和、小川彩、中西アルノの4人を呼び込み、代表曲「Mela!」で待望のコラボが実現。場内から大歓声と拍手が湧き上がり、クラップやワイパーで一体感が生まれる中で、長屋と久保は肩を寄せ合って声を重ね、アウトロでは乃木坂メンバーのコーラスに長屋がフェイクを加える。バンドのアンサンブルにフォーカスが当たるシーンもあり、この日しか見られないスペシャルなコラボを展開して会場の熱気を高めたあと、乃木坂46のメンバーを拍手で見送りながら、バンドはそのままシームレスで痛快なファンクポップ「キャラクター」につなぐと、MCでは長屋が事前に「乃木坂46のファンもたくさんいらっしゃると思うし、化学反応みたいなものを楽しめる場所にできたら」とコメントしていた通り、観客のペンライトやコールを浴び、異文化交流を楽しんでいた。
続く、映画『六人の嘘つきな大学生』の主題歌「馬鹿の一つ覚え」やアニメ『薬屋のひとりごと』のオープニングテーマ「花になって」ではダークでミステリアスなムードで会場を満たし、バンドとしての多彩な魅力を存分に発揮。そして、最後の曲を前に長屋は「すごく綺麗な景色をありがとう。今日だけの特別な空間ができたんじゃないかと思います。今日、みんなに会えて幸せでした」と感謝の気持ちを伝えたのち、「4月になっていろんな生活が始まってると思うんです。慣れない境遇で寂しくなったり、悔しくなったり、いろんな思いをするかと思うんですけど、人間を生きていると絶対に形を変えていく。その変化こそが美しく、愛おしく、尊いものなんだよ」とゆっくりと語りかけ、2024年度『NHK全国学校音楽コンクール』中学校の部の課題曲として書き下ろされたバラード「僕らはいきものだから」を熱唱。伸びやかかつ深みのある歌声で“変わっていくことは、生きていくことだ”というメッセージを観客の胸に真っ直ぐに届けた。
■シングルヒット曲を中心に、グループの過去、現在、未来を紡いだ、乃木坂46
いっぽうの乃木坂46はメンバー18人でステージに上がった。今年3月に行われた『MTV VMAJ』の授賞式で遠藤さくらは「皆さんのお目にかかれる場所にグループとしてたくさん出ていきたいなという気持ちもあります」と語っていたが、その意気込みをそのまま体現したようなライブとなっていた。セットリストを見てもらえばわかるとおり、ファンでなくても耳にしたことのあるシングルヒット曲を中心に、新曲「ネーブルオレンジ」「歩道橋」を加えることで、乃木坂46の過去、現在、未来を紡ぐ内容。さらに、これは偶然なのかもしれないが、“都市型フェス”で聴くからこそリアルに伝わってくる楽曲も多かった。
「この時間を私たちと一緒に楽しんでいきましょう」という井上の呼びかけに大音量のクラップが鳴り響いた「おひとりさま天国」から遠藤さくらと賀喜遥香が笑顔で目を合わせ、手を重ねて歌った「Monopoly」、そして、賀喜の「全員回せ!」と言う煽りで観客がタオルを回して一体となった「好きというのはロックだぜ!」へ。ライブで盛り上がる鉄板曲を連発して観客のボルテージを一気に上げたあと、遠藤の「さっきまでとは違って、カッコいい一面が見せられるんじゃないかと思います」という言葉からムードは一変。自分の存在を否定してしまいそうになるほどの不安に陥りながら、“希望はどこにある?”と彷徨う「夜明けまで強がらなくてもいい」。センターを務めた池田瑛紗がのちのMCで「オリジナルメンバーがいない曲です。13年目に突入するグループの長い歴史も知ってほしい」と語った「制服のマネキン」。クールでシリアスなダンスナンバーから一転して、情熱的にパフォーマンスする「インフルエンサー」。そして、ステージ上の巨大LEDにモノトーンのメンバーが映し出された「Actually…」、久しぶりの披露となった「ごめんねFingers crossed」。切なくも凛とした表情でしなやかに舞った遠藤をはじめ、各メンバーの表情には、歴史を受け継ぎながらも、さらに大きなグループにしていきたいという強い意志や覚悟が滲んでおり、ストーリー性を感じるダンスで観客を楽曲の世界観にグッと引き込んでいった。
■「君の名は希望」で緑黄色社会の長屋晴子が登場。久保とは肩を寄せ合って声を重ね、見事なハーモニーを響かせた
そして、梅澤美波が「私たち乃木坂46が大切に歌い続けてきた曲になります。心を込めて、皆さんの心に届くように歌いたいと思います」と語った「きっかけ」では井上和、中西アルノ、林瑠奈、久保史緒里を中心にそれぞれの歌声の個性をしっかりと提示。続く、「君の名は希望」では、がメンバーと同系色の真っ赤な衣装でステージに登場し、久保とは肩を寄せ合って声を重ね、見事なハーモニーを響かせた。がパフォーマンス後に「私、センターにいていいんですか?超楽しかった」と喜びながら笑顔を見せると、久保は「晴子さんとはラジオがきっかけで仲良くさせていただいて、まさかグループで共演できたことが夢のようです」と感慨深げに語り、ふたりで「このご縁を繋いで、またどこかでコラボしましょう」とグータッチで約束した。
■乃木坂46の最新シングル「ネーブルオレンジ」フルバージョンをライブ初披露
観客全員を巻き込んだクラップと大合唱が生まれた「Sing Out!」からライブはクライマックスへ。遠藤のソロダンスがフィーチャーされた「歩道橋」では歩道橋と信号、現実と理想、期待と不安の狭間で揺れ動きながら、空を見上げて、“このまま渡ろう”と決意。レーザーショウとなった「シンクロニシティ」では、涙を流しながら夜の街を彷徨う姿を描きながら、“愛を分け合ってハモれ”というフレーズを観客と共有。“新たな街”で始まる生活の苦難や葛藤を想起させる2曲で観客の背中を押すと、井上とダブルセンターを務める中西が「恋の甘酸っぱさをかわいく、春らしく歌った曲になってます」と語り、最新シングル「ネーブルオレンジ」フルバージョンをライブ初披露。最後に、キャプテンの梅澤が「初めて開催されたイベント。皆さんのおかげで最高に熱い、宝物のような一日になりました」と感謝を伝え、「『CENTRAL』は日曜日まで続くので、みなさん、ぜひチェックして楽しんでください!」と呼びかけ、初日公演はエンディングを迎えた。あらたな季節である4月の最初の週末に開催された都市型フェスの開幕を飾った対バンは、華やかで楽しさに満ちたものだったが、2組とも歌の言葉やメッセージもしっかりと届けてくれた。あらたな街で、あらたな生活を迎える観客にとっては明日を生きる勇気を与えてくれる、それくらい意義のあるライブだったと思う。
TEXT BY 永堀アツオ
■セットリスト:CENTRAL STAGE DAY 1
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』
2025年4月4日(金)神奈川・Kアリーナ横浜
CENTRAL STAGE DAY 1
◎緑黄色社会
1.始まりの歌
2.PLYAER 1
3.Shout Baby
4.Party!!
5.恥ずかしいか青春は
6.サマータイムシンデレラ
7.Mela!(with 久保史緒里、井上和、小川彩、中西アルノ)
8.キャラクター
9.馬鹿の一つ覚え
10.花になって
11.僕らはいきものだから
◎乃木坂46
1.おひとりさま天国
2.Monopoly
3.好きというのはロックだぜ!
4.夜明けまで強がらなくてもいい
5.制服のマネキン
6.インフルエンサー
7.Actually…
8.ごめんねFingers crossed
9.きっかけ
10.君の名は希望(with 長屋晴子)
11.Sing Out!
12.歩道橋
13.シンクロニシティ
14.ネーブルオレンジ
■イベント情報
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』
04/04(金)神奈川・Kアリーナ横浜、臨港パーク
04/05(土)神奈川・Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場、KT Zepp Yokohama、臨港パーク
04/06(日)神奈川・Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場、KT Zepp Yokohama、臨港パーク
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025 in Taipei』
04/19(土)Zepp New Taipei
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025 in Kuala Lumpur』
04/26(土)Zepp Kuala Lumpur
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』公式サイト
https://central-fest.com/
















