京都出身のスリーピースバンド、シャイトープの注目度がSNSやライブハウスで急上昇中だ。ここでは代表曲「ランデヴー」の歌詞考察からプロフィールまで、“シャイトープとは?”どんなバンドなのか、その魅力を徹底的に解説する。
■注目のスリーピースバンド
◎シャイトープ

・結成:2022年6月
・メジャーデビュー:2024年7月17日
・デビュー作品:シングル「ヒカリアウ」
・メンバー:ふくながまさき(Ba)/ 佐々木想(Vo,Gu)/タカトマン(Dr)
・OFFICIAL SITE :https://shytaupe.com/
・YouTube @shytaupe_official
・Instagram https://www.instagram.com/shytaupe/
・X(旧Twitter) @shytaupe
メンバーは京都産業大学のクラブ『フォークトレイン』のOBである3人。2022年6月に結成され、同月に配信シングル『マーガリン / 部屋』をリリースした。バンド名の由来は“シャイな3人がいつも地下のスタジオで練習していたこと”だという(トープはフランス語でモグラという意味)。しかし、モグラたちはあっという間に地上で見つかった。結成から僅か4ヶ月後である2022年10月『MINAMI WHEEL 2022』への出演をきっかけに名と音が広がり始める。決定打となったのは2023年4月に配信した「ランデヴー」。TikTokをきっかけに評判を呼び、8月にはSpotifyバイラルトップ50の1位を獲得。さらにbillboad JAPAN “JAPAN Heatseekers Songs” でも2週連続で首位を飾った。
ライブもホームの京都MOJOを中心に積極的に活動。2023年8月には初の自主企画東名阪ツアー『Come Together』を開催し、チケットは全公演即完売となった。2024年1月に1st アルバム『オードブル』を配信リリース、2月にCDリリース。 その勢いのままに7月にリリースされたシングル「ヒカリアウ」でメジャーデビューを果たした。2025年も5月にTVアニメ『WIND BREAKER Season 2』エンディングテーマ「It’s myself」をリリースするなど、止まらぬ飛躍を続けている。
▼シャイトープ – ヒカリアウ (Official Music Video)
▼シャイトープ – It’s myself (Official Music Video – TVアニメ「WIND BREAKER Season 2」ED)
■メンバープロフィール
佐々木想

・ポジション:ボーカル、ギター
・生年月日:10月15日
・出身地:広島県
・X(旧Twitter)https://x.com/so_taupe
・Instagram https://www.instagram.com/so_taupe/
シャイトープの作詞作曲を担っているだけではなく、結成のきっかけも作った佐々木。もともとは地元の広島に帰って就職をすることがきまっていたが、いざ大学の卒業が迫ってきたときに、このまま音楽をやめたら後悔すると思い、タカトマンとふくながに声を掛けたのだという。ルーツはTHE BLUE HEARTSやMr.Children。中学生や高校生の頃からバンドをやっていて、ソロでの音楽経験もある。
ふくながまさき

・ポジション:ベース
・生年月日:1月26日
・出身地:岡山県
・X(旧Twitter) https://x.com/mytaupe_
・Instagram https://www.instagram.com/mytaupe_/
佐々木とタカトマンより2つ年上。なのでシャイトープ結成の際、佐々木に声をかけられたタイミングでは、すでに卒業して働いていた。しばらくは二足の草鞋を履いていたが、バンドを本気でやるために仕事を辞めたのだという。佐々木はふくなががステージに立ったときの雰囲気に惹かれて誘ったそうだ。好きだったバンドはindigo la endやKEYTALK。遡って、親のクルマで聴いていたのは、ボーカル・稲葉浩志が同郷という縁もあるB’z。
タカトマン

・ポジション:ドラム、コーラス
・生年月日:9月22日
・出身地:奈良県
・X(旧Twitter)https://x.com/shytaupe_drum
・Instagram https://www.instagram.com/taka_taupe/
10歳年上の姉がバンドをやっていた影響でバンドに憧れ、さらに佐々木の歌を聴いてあまりのうまさに「一緒にバンドをやろう」と声をかけるも何度も断られてしまう。大学時代はアロハシャツ&茶髪の陽キャで、佐々木に真逆のタイプだと思われていた。しかし、結局は逆に佐々木に声をかけられてシャイトープは結成された――という経緯がある。少年時代はポルノグラフィティや東京事変を聴いていたというルーツも。
■代表曲「ランデヴー」とは?楽曲情報
▼ランデヴー
・歌唱アーティスト:シャイトープ
・リリース日:2023年4月25日
・作詞:佐々木想
・作曲:佐々木想
・収録作品:『誘拐/ランデヴー』
シャイトープを世の中に知らしめた代表曲である、2023年4月に配信された「ランデヴー」。同年8月にはSpotifyバイラルトップ50の1位を獲得。さらにbillboad JAPAN “JAPAN Heatseekers Songs” でも2週連続で首位を飾った。この楽曲を広めたのは、やはりTikTokやInstagramといったSNS。楽曲のミュージックビデオも809万回再生(2025年5月17日現在)という数字を記録しているが、 “歌ってみた動画”や“弾き語り動画”として数多くカバーされているところも見逃せない。佐々木自身が様々なアーティストのカバー動画を公開してきたこともあり、歌いたくなる/弾きたくなる楽曲、もっと言えば“聴き手のもの”にできる楽曲を生み出す手腕に長けていたのだ。また2025年5月9日には『THE FIRST TAKE』にて歌唱され、再び注目を集めている。
▼シャイトープ – ランデヴー / THE FIRST TAKE
■「ランデヴー」の意味は?歌詞考察
ランデヴー
作詞:佐々木想
作曲:佐々木想神様なんていないと思った
玉虫色の最悪な午後は
まだ君のことを呼んでるよ
腹が立つほどに毒が抜けないな愛されて愛の色を知るのなら
君は僕を彩っていたんだ
食欲のない芋虫の右手
クリームパンも味がしないな他の誰でもない
君にしか埋められない
だから厄介
ねぇ、巻き戻していいかい透明な雨の中
あの街でランデヴー
運命も無視して歩いてく
君の足跡が
何処にも見当たらないところで目が覚める
即席の感情で書いてる
この詩がいつか時を超えて
限られた未来で生きる
君に流れたらいいな馴れ初めをふと思い出した
咲いた花も
散る時が来るみたいだ
まあ退屈よりはマシだろうか開けっ放しのドア
脱ぎっぱなしの服も
全部ここにあった
ねぇ 馬鹿みたいと笑ってくれ透明な雨の中
あの街でランデヴー
運命も無視して歩いてく
君の足跡が
何処にも見当たらないところで目が覚める
即席の感情で書いてる
この詩はいつか時を超えて
限られた未来で生きる
君に流れるか愛し合っていたんだね
間違いじゃなく本当なんだね
疑いそうになるほどに
君は今も綺麗だ唇の色を真似たような
朝の光は潤む瞳の
内側で流れる
これまでの二人の
愛すべき日常に
口付けをして消えていった
神様なんていないと思った
玉虫色の最悪な午後は
まだ君のこと呼んでるよ
腹が立つほどに毒が抜けないな
“神様”“毒”といった強いワードを早々に持ってくることで、今抱えている想いがどれほど大きいか知らしめる歌い出し。ぼんやりとした心境を“玉虫色”と表現し、彩りのある情景を描くと共に、豊かなボキャブラリーを発揮している。
愛されて愛の色を知るのなら
君は僕を彩っていたんだ
食欲のない芋虫の右手
クリームパンも味がしないな
“玉虫色”に引き続き、“愛の色”“彩っていたんだ”と「ランデヴー」のなかで“色”がカギとなることを指し示す。鮮やかな色のある世界=躍動する日々であり、過去形の歌詞からは、今はそうではないことがわかる。食べることがある種の目的である芋虫なのに“食欲のない芋虫”になってしまった――つまり、すっかり覇気をなくしてしまった“右手”には“クリームパン”。甘くふわふわでリーズナブルで、若者が気軽に幸せな気持ちになれる食べ物なのに、その“味もしない”。相当、気持ちが沈んでしまっていることがわかる。
また、この楽曲の歌詞は特にこれらの、1番のサビに向かうまでが秀逸。最初からリスナーの耳を掴んでいく構成も、サブスク時代に抜きんでた存在となった一因だろう。
透明な雨の中
あの街でランデヴー
運命も無視して歩いてく
数々の色味ある言葉のなかで、サビは色味のない“透明”という対比で、今の心境を表している。また、印象的な日本語が多い歌詞ながら、サビとタイトルは“ランデヴー”というのも、数グラム楽曲を軽くしてくれていると思う。
即席の感情で書いてる
この詩がいつか時を超えて
限られた未来で生きる
君に流れたらいいな
“即席の感情”という照れ隠しのように素っ気ないアピールをしているけれど、本音はどちらかというと衝動的な、素直すぎる感情ということなのだろう。“書いてる”“この詩”という言葉からは、この歌詞が佐々木のノンフィクションであるように思わせるリアリティがある。
馴れ初めをふと思い出した
咲いた花も
散る時が来るみたいだ
まあ退屈よりかマシだろうか
“花”という、やはり色味の比喩が効いている。“退屈よりはマシ”という、これも負け惜しみのような照れ隠しのような表現に見えて、酸いも甘いも嚙み分けて生きることの醍醐味を伝えているようにも思える。
唇の色を真似たような
朝の光は潤む瞳の
内側で流れる
これまで2人の
愛すべき日常に
口付けをして消えていった
1番のサビに向かうまでが秀逸と書いたので矛盾するようだが、締め括りまで聴かないとわからないストーリーもあり、その表現も美しい。夜の闇に包まれてエンディングを迎えるのではなく、希望を感じる“朝の光”が、しかも“口付け”をしてエンディングを迎えたところからは、今の感情がどす黒く塗られているわけではないことが伝わってくる。相手への未練なのか、自身と相手への贐(はなむけ)なのか。“日常”は無情にも繰り返すという描写から滲む、何かあっても生きていくという静かな決意。この楽曲がラブソングの範疇を越えて愛されている理由が、ここにある。
■おすすめ曲5選
「部屋」
2022年6月にリリースされた初期曲。佐々木が失恋したあとに作られたという。本当に泣き疲れたあとに歌ったかのような繊細な歌声からはじまるバラード。“まだ眠れない夜というか 眠りたくない夜ってあるでしょう”という「あるある」と言いたくなる絶妙な心情や、“子供みたいにからかう 大人の君に 恋をしていた”という魅力的な女性が浮かび上がる描写。その想いにひとつひとつの楽器がやさしく寄り添う。
「pink」
2023年2月リリース。のちに佐々木は、この楽曲に対して意図していなかったような反応が多かったということを、幾つかのインタビューで語っている。つまり、この楽曲で、十人十色に解釈されるポップミュージックの洗礼を浴びたのだと思う。それだけの包容力があるラブバラード。ハミングが降り注ぐイントロから、フォークソングのようにギュッと言葉が詰まった歌、そしてハイトーンが美しいサビで物語は絶頂へと向かう。
「tengoku」
2023年8月リリース。この頃にはすでに“シャイトープの得意技”として認知されていたミドルテンポのバラードというスタイルながら、歌詞の世界観は少しこれまでと違う。今を肯定する気持ちや未来への希望といった明るさに満ちているのだ。“スーパーマーケットで見つけた カラフルな果実の様な 毎日をありがとう”などの名フレーズが、温かな音色と力強いコーラスによって彩られる。終盤に向けて温度が高まっていく展開も秀逸。
「スイートピー」
2025年3月リリース。コーラスではじまるイントロから温かい雰囲気で、弾むようなテンポも含めて、悲しい歌には聴こえない。しかし歌詞では“さよなら”と歌われている。“君は君だけの 僕は僕だけの日々 これからそうやっていこう“と、道が分かれることを言い聞かせつつも、”君が好きだ 君が好きだ“と連呼する、複雑な心境が描かれているのだ。歌詞の背中を曲調が押す、音楽だからこそ、バンドだからこそできる表現が炸裂した楽曲。
「It’s myself」
2025年4月リリース。まず歌ではなくギターで惹き付けるイントロ、さらに“good bye これまでの僕よ”と新たなはじまりを告げるような歌い出しで、バンドの新機軸を知らしめる。ラブソングが多い彼らの楽曲のなかで、生き様を歌ったような歌詞も新鮮。各パートのフレーズが際立つアンサンブルの迫力や、大きな会場でのシンガロングが想像できるような“oh oh oh”も含めて、これからのシャイトープへの期待が高まる。
■シャイトープの今後の活動に注目
5月30日(金)には、大阪・BIG CATにて『シャイトープ CD Single「It’s myself」リリース記念ライブ』、8月には『東阪福自主企画ツアー “Come Together 3”』も開催が決まっており、さらに数々の夏フェス出演も控える彼ら。快進撃を続ける3人の、これからの動向にも注目してほしい。
TEXT BY 高橋美穂
▼シャイトープ最新情報
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