2023年12月リリースの「wherever u r feat V of BTS」が1億回以上のストリーミングを記録するなど、近年注目を集めているUMI。日米にルーツを持つシンガーソングライターの彼女のプロフィール、音楽の特徴、人気曲などを紹介する。
■日米にルーツを持つシンガーソングライター
UMI(読み:うみ)

・本名 ティエラ・ウミ・ウィルソン
・出身 アメリカ・シアトル
・生年月日:1999年2月9日
・デビュー:2017年
・デビュー作品:「Happy Again」
・OFFICIAL SITE(ソニー・ミュージック)https://www.sonymusic.co.jp/artist/umi/
・Instagram https://www.instagram.com/whoisumi/
・X(旧Twitter)https://x.com/whoisumi
・YouTube https://www.youtube.com/user/tiwiwilson
アーティスト名のUMIは、本名のミドルネームであると同時に、日本語の海に由来している。彼女はこの名前についてこう語る。
「私の音楽のエッセンスを表す言葉だと感じています。海を思うと、いろいろな思い出が浮かぶし、海は広くて、世界中の国々と接しているし、私の音楽にぴったりだと思っています」
確かに彼女の音楽は海のような懐かしさや深さ、ピュアさを備えている。母親がピアニスト、父親がドラマーという音楽一家に育った彼女は、4歳のころから曲作りをスタートした。
「なんでも歌にしていました。椅子のこと、その日に着ている服の色が青いこと。目についたモノを歌うことから始まって、自分の気持ちを歌えるようになっていきました。その頃から変わっていないのは、感じたことをそのまま歌にしていることです」
高校時代からYouTubeやSoundCloudで毎週カバー動画をアップロードするようになり、その後、オリジナル楽曲の制作を本格的に始めて、2017年に「Happy Again」でデビュー。2018年に発表した「Remember Me」がYouTubeのMV動画再生回数4000万回越えを記録し、注目を集めた。
▼UMI – Happy Again [Official Video]
▼UMI – Remember Me [Official Video]
2020年にはRCAからメジャーデビューEP『Introspection』を発表。2022年5月にはデビューアルバム『Forest In The City』を発表。“癒やし”や“安らぎ”を与える音楽として、広く評価されるようになった。
2023年5月に来日し、『GREENROOM FESTIVAL』に出演。同年8月には初の単独公演を東京のSpace Oddで開催し、『サマーソニック』にも出演している。当年12月にはBTSのVをフィーチャリングした「wherever u r feat V of BTS」をリリースして、1億回以上のストリーミングを記録。
▼UMI, V – wherever u r (ft. V of BTS) official lyric video
2024年4月には東京、京都、大阪、福岡で初の単独ツアーを開催。2025年5月にも来日し、再び『GREENROOM FESTIVAL』に出演して、藤井風の「満ちていく」のカバーも披露して話題を集めた。その時の感想を彼女はこう語る。
「UMIが海の横(横浜湾)で歌うのは最高だし、風くんのカバーをする時にも、風が強く吹いて、ぴったりだと思いました。歌っていて、気持ち良かったです」
着実にキャリアを積み重ねてきているUMI。8月22日にはニューアルバム『people stories』がリリースされる予定だ。
■UMIの魅力
◎寒い時に飲むスープのような音楽
UMIの音楽の大きな魅力となっているのは、リスナーに癒やしや安らぎを与えてくれることである。彼女の音楽は、「ヒーリング・ミュージック」と称されることも多い。彼女はそうした評価についてこう語る。
「デビューした当初は、ヒーリング・ミュージックを作るという意識はありませんでした。でも、何曲か発表するうちに、そう呼ばれることが多くなってきて、自分の音楽が聴いている人に、どんな影響を与えるかを意識するようになりました。ライブでの経験も大きかったと思います。自分の歌を聴いて、泣いたり笑ったりする人がいるんだと知ったからです。それからは聴いた人のこともイメージしながら作るようになってきました。『寒い時に飲むスープ』みたいな音楽を作っていけたらと思っています」
彼女の音楽にヒーリング効果があるのは、彼女の歌声によるところも大きいだろう。
「子どもの頃から、母親に『ヒーリングの要素が入った歌声』と言われてきました。私自身は、歌声をインストゥルメンタルのように使っています」
彼女の歌声は、川のせせらぎや風で揺れる草木の音のようにナチュラル。じわじわ染みてきて、体の芯から温めてくれるところが大きな魅力になっている。
◎深い共感をもたらす個人的かつ普遍的な歌詞
UMIの音楽が聴き手の胸にスッと入ってくるのは、嘘のない音楽であり、個人的な体験に基づいているからだろう。UMIは自身の歌詞についてこう語っている。
「自分の中から出てくる自然なものを大切にしています。歌詞を書く場合には、パーソナルなことから始まって、そこから広げていく書き方が好きですね。たとえば、『あの写真のアルバムを見ていた』という実際の自分の体験からスタートして、いろいろな人に当てはまるようにストーリーを考えていくやり方です」
個人的でありながら、普遍的な広がりを持っているのは、聴き手を狭く限定しないような配慮があるからだろう。彼女の歌うラブソングには、「Remember Me」や「Lullaby」など、せつなさを感じさせる楽曲が多い。人が人を思うことのせつなさを描く場合に、男女間の恋愛に限らず、さまざまな形の恋愛、友情、肉親への愛などにも、当てはまるように作られている。こうした聴き手に寄り添う彼女の姿勢こそが、ヒューマンな魅力につながっているのだ。
▼UMI – Lullaby ft Yeek [Lyric Video]
◎多様なジャンルの音楽と文化が融合
UMIの音楽がナチュラルに響いてくるのは、自分の感じていることを素直に表現しているからだろう。そして、彼女の生み出す歌の世界が、深みや広がりを備えているのは、多様なジャンルの音楽や文化にふれながら育ったことが大きいのではないだろうか。彼女は、SZA、Frank Ocean、D’angelo、Eryakah Badu、Jhene Aiko、Amy Winehouseなどのアーティストから影響を受ける一方で、日本人である母親の影響で、日本の音楽やアニメにも親しんできている。彼女はこう語っている。
「小さい頃からアメリカのテレビを観るよりも、日本のテレビをよく観ていました。『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』『ドラえもん』『サザエさん』などです」
アニメを含む、多様な文化が彼女の音楽性に影響を与えているのだろう。
■『THE FIRST TAKE』で披露した「Remember Me」
▼UMI – Remember Me (Official Video)
2018年に配信でリリースされた「Remember Me」は、5000万回以上のストリーミングを記録した、彼女の存在が広く認知されるきっかけとなった楽曲だ。“Remember Me”というシンプルなフレーズの中にせつない思いが凝縮されている。初めて聴いたとしても、“懐かしい”と感じさせるノスタルジックなテイストは、彼女ならではだ。
『THE FIRST TAKE』でこの曲を歌うことにした理由を、UMIはこう説明している。
「ライブでこの曲を演奏すると、感動して泣いてくれる人がたくさんいるんですね。私だけでなく、みんなにとっても大事な曲なので、この機会に歌いたいと思いました。構成がシンプルな曲なので、『THE FIRST TAKE』に合うんじゃないかと考えたことも、この曲を選んだ理由です」
▼UMI – Remember Me/ THE FIRST TAKE
『THE FIRST TAKE』での「Remember Me」は、原曲よりもさらにシンプルだ。鳴っている音は2つだけ。UMIの歌声とギタリストの奏でるアルペジオである。ギターの繊細な調べの中で、UMIがたゆたうように歌っている。シンプルだからこそ、UMIの声の魅力が際立っていく。
さりげないのにニュアンスが豊か。懐かしさやせつなさや温かさなど、さまざまな感情をもたらしてくれるのだ。彼女のエモーショナルなウィスパーボイスが、心地よい余韻を与えてくれるだろう。
■UMIをもっと知りたい!聴くべき曲5選
「Love Affair」
2019年10月30日リリース。YouTubeでの再生回数は3241万回。
UMIのせつなさの漂う繊細な歌声と温かみのあるサウンド、ゆったりとしたグルーヴが心地いいラブソングだ。ナチュラルでありながら、どこか寂しげなUMIの歌声と、全編に漂っているノスタルジックなムードが、せつなさを増幅させている。彼女はこう語る。
「この曲は小さい頃に作っていたように、あまり考えずに書いた曲です。多くの人が聴いてくれる曲になり、驚きました。考えて作らなくても、何かを感じてくれる曲になることもあるんだなという発見のあった曲です。楽曲の『Love Affair』には、静止画を使ったMVとは別に、アニメを使った映像作品『Episode 1 ‘Love Language’』があります。自分のアニメのルーツをシェアしたくて作りました」
▼UMI – Love Affair [Official Video] | Episode 1 ‘Love Language’
「UMI, V – wherever u r (ft. V of BTS) 」
2023年12月30日リリース。YouTubeでの再生回数は1276万回。
BTSのVが参加した共作曲で、それぞれの歌声とコーラスが大きな聴きどころとなっている。歌のテーマは“遠距離”。恋愛の歌としても成立しているが、UMIは、日本に住んでいる祖母のことを思いながら歌詞を書いている。Vとのコラボレーションのきっかけとなったのは、彼女の母親だった。
「VさんがUMIの『Midnight Blues』という曲をリポストしてくれたんですね。インスタをやっていた母親が気付いて、『Vさんと曲を一緒に作ってみたら』と勧めてくれました。母親の言うことは現実になることが多いので、Vさんに『一緒に曲を作りませんか』というメッセージを夜に送って、朝起きたら、『一緒に作ろう』とVさんから返事があり、実現しました」
楽曲制作は、英語、韓国語、日本語混じりのテキストのやりとりで行われており、リリックビデオはその様子を再現するような映像になっている。
▼UMI – Midnight Blues [Music Video]
「wish that i could」
2022年5月27日リリース。YouTubeでの再生回数は282万回。
人を好きになった瞬間のときめき、喜び、とまどい、秘めた思いなどを、UMIが軽やかな歌声で見事に表現している。曲が進行するほどに、せつなさがつのっていく展開も秀逸だ。MVでは、さまざまなカップルが登場する。
「この曲は秋に作りました。秋はせつない季節なので、その気持ちが曲の中に入っていると思います。誰かを愛した時には、その相手から愛されたいという気持ちを誰もが持っているということ、愛する人との別れは誰もがつらいということをテーマとして作っていきました。LGBTQ+のファンの思いも入れたかったので、MVのキャスティングでは、ユニークなカップルを選びました。自分が旅行をして素敵だなと思った国、スペインで撮影しています」
「synergy」
2022年5月26日リリース。アルバム『Forest in the City』収録曲。YouTubeでの再生回数は161万回。
曲名の“synergy”の意味は“相乗効果”。ビジネス用語で使われることが多いが、UMIは恋愛関係にある2人の関係について、まるで物理学の考察するように歌詞を書いている。ラブソングだが、内省的であるところに、彼女の独自性が表れている。この曲のLyric Videoでは、葉をスクリーンとして、彼女が体を動かしている映像が映し出されている。
「アルバム『Forest in the City』の中でもっとも時間のかかった曲。3年ぐらいかけました。セカンドバースを3回、曲のキーも5、6回変えています。最終的なセカンドバースは、ディズニーランドに行って、満喫した帰りの車の中で出てきたので、ディズニーランドに感謝ですね。この曲を作ったことで、創作の次のステップに進むことができました。MVで葉が映っているのは、葉が風で揺れているイメージがあったからです」
「HARD TRUTHS feat. 6LACK」
2025年5月9日リリース。YouTubeでの再生回数は106万回。
ラッパーの6LACK(ブラック)との共作で、自分と向き合うことの大切さがテーマとなっているR&Bテイストの漂うナンバーだ。MVでは、彼女のしなやかかつ躍動的なダンスが全面的にフィーチャーされている。
「もともとは1人で、“自分が自慢できるもの、大切にしているものは何なのか?”というテーマで書き始めたのですが、セカンドバースが納得がいかず完成に至っていませんでした。6LACKさんとお会いして、『一緒に曲を作ろう』という話になった時に、6LACKさんがこの曲を選んでくれて、6LACKさんとのやりとりの中で完成した曲です。私はダンスが大好きなので、MVで、そのことをシェアしようと思って、ダンスを披露しました」
■UMI最新情報をチェック!
UMIのインタビューをして感じたのは、音楽と向き合う姿勢がピュアでナチュラルということだった。そしてその姿勢は、そのまま彼女の音楽の特徴にもつながっている。ニューアルバム『people stories』が8月22日にリリースされることも決定した。
「新しいアルバムをみんなに聴いてもらうのが楽しみ」とUMIは語る。きっと、彼女の音楽はさらに多くの人の心を癒やしたり、安らぎを与えたりすることになるだろう。
TEXT BY 長谷川誠
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