■「たくさんの人に会って、たくさんの音楽に触れて、もっともっと成長していきたい」(Hana Hope)
19歳のシンガーソングライター、Hana Hopeが8月11日、東京・代官山UNITにて、3度目となるワンマンライブ『Written In The Stars』を行った。
今年3月にメジャーデビューアルバム『Between The Stars』をリリースし、幻想とリアルの狭間を行き来する音楽と感情の軌跡を描き出した彼女。秋にはアメリカの大学へ進学が決まっているなか、ワンマン公演『Written In The Stars』では、シーケンスを排し、生演奏にこだわったオーガニックかつプリミティブなステージを披露した。
今回の公演は、10代最後の夏を駆け抜ける彼女にとって、あらたな旅立ちを告げる大切なステージとなった。それこそ、11歳で曲作りを始め、13歳の頃から高橋幸宏、TOWA TEI、ROTH BART BARON、am8など素晴らしいアーティストに囲まれて育った音楽体験。しかしながら、“自分がやりたい表現とはなんなのだろう?”という、アイデンティティへと向き合う葛藤の日々。
この日のライブは、その答えがひと筋の光明として垣間見えた夜となったのではないだろうか。
■生演奏にこだわった自由度の高い有機的なアンサンブル
定刻過ぎ、バンドメンバーがステージに現れ、即興的なセッションが始まった。ギターKanki Gensuke、ドラム/パーカッションTaikimen、キーボードYu Taniguchiとハープ/シンセErmhoi、ベースMarty Holoubekによる、自由度の高さを感じる解放的なアンサンブルが会場の空気を温めていく。
そんな高揚感のなか、眩いワンピース姿のHana Hopeがステージにあらわれた。
「皆さんこんにちは! Hana Hopeです。今日は来てくれてありがとうございます。思いっきり、歌って踊って楽しんでいってください!」と挨拶。満員のフロアから大きな拍手が沸き起こった。とてもいい雰囲気だ。
オープニングは、前回ワンマンで本編ラストを飾った「フリーバード」。青い光に包まれたステージで、生のグルーヴを楽しみながら堂々と歌い上げる姿に、オーディエンスは一気に心を奪われた。続く、「Rain or Shine」では華やかなメロディに寄り添うように身体を揺らし、「SORA」では手を左右に振り、オーディエンスと一体になって自由に飛翔する感覚を共有していく。
過去いち、Hana Hopeがライブを楽しんでいると感じられた瞬間だった。
それこそ、今夏『フジロックフェスティバル』でのステージで得た経験が発揮されているのかもしれない。STUTSプロデュースによるポカリスエットCMソング「99 Steps」での体験も自信へとつながったはずだ。
そう、自由に舞い踊り歌う輝かしい姿に、オリジナリティあるスター性を感じた夜となった。
名演は止まらない。続く「旅のゆくえ」では、裏へ裏へとドラマティックなボーカリゼーションでフロアを魅了し、芳醇なる表現力が際立つ「たゆたう」では、民族的なイントロからはじまり、夢幻と現実の狭間を揺蕩うような空気感をつくり出す。
先日リリースされたばかりの新曲「サファイア」では、「ひとりひとりが光を持っていて、その光はとても美しくて。だから、その光を自由に放っていいんだよ」と語り、より言葉の力が伝わってくる歌唱を発揮。
その姿は、自身の成長を裏付ける大きな自信に満ちたオーラを感じた瞬間だった。
■名曲が織りなす、オリジナルとカバー曲が織りなす芳醇なる物語
やわらかな演奏から、前ぶりなく荒井由実「ひこうき雲」のメロディが奏でられた。世代を越えて愛される名曲を敬意を込めてHana Hopeワールドとしてパフォーマンス。続いて、アメリカの3人組インディーロックグループBoyGenius「Not Strong Enough」のカバーではアコースティックギター片手に疾走感あるせつなポップを響かせた。
注目すべきはこのMCだ。
「みんな、BoyGeniusって知ってますか? 大変だったコロナ禍の頃、わたしはこの世界は希望を失ってはいけないと思い音楽をはじめました。そんなときにBoyGeniusと出会い、フォルクポップというジャンルに出会いました」
このメッセージにおける“フォルクポップ”とは、あらたな羅針盤を手にしたHana Hopeによる新時代へ向けた決意表明だったのである。
フォルクポップを経由した、即興性をも含む生々しいバンドアレンジへと生まれ変わった今晩の名曲の数々。
そして奏でられた、Ermhoiのハープの響きが温かくも凛とした空気をまとわせ、静かにメッセージを届ける大切な曲「Unsaid」。キーボードとともに、観客一人ひとりの心に寄り添うような歌声が沁み渡る「背中」など、Hana Hopeヒストリーを彩る作品が続いていく。
その後、リラックスした表情で遠方から訪れたオーディエンスへも感謝を伝えるMCのあと、Kanki Gensukeによるアコースティックアレンジで披露された「99 Steps (Acoustic Version)」が、流麗なるポップセンスをジャンルを超えたスタイルで表現。途中、ラップパートで言葉を一瞬詰まらせて照れ笑いを浮かべる姿も彼女らしいチャーミングさでよかった。まさにコンサートはナマモノであることを感じた瞬間だった。
ライブ中盤、メンバーの名をひとりずつ呼んで再び招き入れた。印象的なリフレインに導かれて「We’ve come so far」が始まり、開放感あふれるサビで観客の手拍子と笑顔がひとつになっていく。人気曲「flowers」では和のテイストをまとったギターが甘いメロディーを支え、「Dawn Dancer」ではミラーボールの光がきらめくなかバンドアレンジによる新鮮な演奏を披露していく。
■来年の8月7日、ハナの日に恵比寿LIQUIDROOMワンマン決定
「最後の曲になっちゃいます。ほんとに楽しい時間をありがとうございました。みんなと一緒に踊って歌いたいと思います!」という言葉とともに本編を締めくくったのは、キャッチーなポップチューン「サマータイムブルース」。夏の夜にふさわしい爽快なサウンドが会場を満たし、メンバーは絵も言われぬ余韻を残しながらステージをあとにした。
しかしながら、鳴りやまない拍手に促され、すぐにアンコールへ。
満員のフロアに戻ったHana Hopeは、「次の曲は誰かを愛することを恐れなくていい、というメッセージを込めた曲です”」と話し、新曲「Afraid to Love」を披露。三拍子で刻まれるリズムにのせて、自由に舞うように歌う姿が印象的だった。
ラストのMCでは、「今日、大切なことをみんなにお伝えしたいと思っていて。実は、今年の9月、大学に進学することになってアメリカに行くことになりました。でもこれは小さい頃から夢見ていたことで。世界に音楽を届けたいという思いがあったんです。だからこそ、アメリカに行けることはわたしにとって新しいチャプターで。たくさんの人に会って、たくさんの音楽に触れて、もっともっと成長していきたいです。これからもずっとずっと音楽を作っていくので皆さん応援をお願いします!!!」と、満員のオーディエンスへ向けて真摯なメッセージを送り、大学の休み期間である12月19日に東京・恵比寿BLUE NOTE PLACEでのクリスマスライブ、2026年8月7日(ハナの日!)に東京・恵比寿LIQUIDROOMでワンマンライブを開催することを発表した。
アンコール最後に歌ったのは、アコースティックな音像が優しく包み込む「アカイロ」。ギターの温かな音色に導かれ、メンバー紹介を挟んだソロ回しでは、それぞれのプレイヤーが星の輝きのようにきらめきを解き放った。観客の手拍子と笑顔が重なり、代官山UNITでの真夏の夜の夢は、美しい余韻とともに幕を閉じた。
Hana Hope、渡米前ワンマン『Written In The Stars』。2025年という時代において、まさに星に導かれた語り継ぐべきターニングポイントとなる大切なライブとなった。引き続き、Hana Hopeの世界へ向けた大いなる躍進に期待をしたい。
TEXT BY ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
PHOTO BY 佐藤早苗
■『Between The Stars』
2025年8月11日(月・祝)東京・代官山UNIT
<セットリスト>
01. フリーバード
02. Rain or Shine
03. SORA
04. 旅のゆくえ
05. たゆたう
06. サファイア
07. ひこうき雲 (荒井由実カバー)
08. Not Strong Enough (BoyGeniusカバー)
09. Unsaid
10. 背中
11. 99 Steps (Acoustic Version)
12. We’ve come so far
13. flowers
14. Dawn Dancer
15. サマータイムブルース
[ENCORE]
16. Afraid to Love
17. アカイロ
ライブ情報
Hana Hope クリスマスライブ
12/19(金)東京・恵比寿BLUE NOTE PLACE
Hana Hope ワンマンライブ『Hearts Glow』
[2026年]
08/07(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM
リリース情報
2025.08.06 ON SALE
SINGLE「サファイア」
Hana Hope OFFICIAL SITE
https://lit.link/hanahope






