■現代のアーティストやイラストレーターによって日本の名曲を新たな解釈で再構築
「Newtro」(ニュートロ)。想像通りNEW+RETROの造語だが、想像を超えた化学反応を起こし、新たな感動を生み出しているのが、2023年に生まれたコンテンツ『Newtro』だ。
現代のアーティストやイラストレーターによって「過去(Retro)」=日本の名曲を新たな解釈で再構築し「現在や未来(New)」に新しい作品として生み出す、過去と現在・未来を接続するリバイバル音楽プロジェクトだ。多様なジャンルやアーティスト同士のマッシュアップによる化学反応から生まれる新しいクリエイティブが、エンタメシーンに新しい風を吹き込んでいる。
始まりは2023年。「Romanticが止まらない×Lafuzin / Newtro」が投下され大きな話題に。1985年の大ヒットナンバー、C-C-B「Romanticが止まらない」をLafuzinが歌い、イラストレーター・みずの紘氏によって描かれたレトロポップなイラストによる映像とともに、一躍注目を集めるコンテンツになった。
▼『Romanticが止まらない』 × Lafuzin / Newtro
以降、アニメ『ドラゴンボール』EDテーマ「ロマンティックあげるよ× DÉ DÉ MOUSE feat. ひらめ」、『真夜中のドア〜Stay With Me』 × A.G.O feat. Sagiri Sól、「赤いスイートピー× Kyiku feat. みそらみみ」、「SPARKLE×Deep Sea Diving Club」など、現在までに44作品が発信され(9月23日現在)、どの作品も原曲に対するリスペクトと大胆な解釈のバランスのよさ、そしてボーカリストの多彩な表現力がリスナーから支持され、YouTubeで高い再生数を達成している。
▼『ロマンティックあげるよ』 × DÉ DÉ MOUSE feat.ひらめ / Newtro
▼『真夜中のドア〜Stay With Me』 × A.G.O feat. Sagiri Sól / Newtro
▼『赤いスイートピー』 × Kyiku feat. みそらみみ / Newtro
▼『SPARKLE』 × Deep Sea Diving Club / Newtro | スパークル・シティポップ・名曲
■世界的なシティポップ・日本レトロブームで、海外リスナーからの関心も
シティポップや歌謡曲、アニソンといったジャンル横断型で、思い出や文化的記憶に訴えかけることで、リバイバルの魅力を多世代に同時アプローチできることで、多くのファンから支持を集めている。また世界的なシティポップ・日本レトロブームとも親和性が強く、海外リスナーからの関心も高まっていて、世界中の音楽ファンが新作を楽しみにしている。
このプロジェクトは楽曲だけで完結せず、原曲とリバイバル版を聴き比べできる体験や、アーティストインタビューや、イラストや映像、SNS連動コンテンツなど視覚的なクリエイティブでも訴求し、TikTokやYouTubeを通じて“新しい遊び方”を演出。楽曲以外の体験価値や話題性も追求している。そうすることで新たな解釈で完成した名曲たちがストーリーを纏い、深い理解と共にキャッチされやすいコンテンツだ。
■チェッカーズの代表曲。極上のバラード「夜明けのブレス」をKeishi Tanakaがカバー
そんな『Newtro』の最新作が「夜明けのブレス × Keishi Tanaka × Pistachio Studio」だ。ご存じチェッカーズの極上のバラードで、バブル経済の熱気が残る1990年にリリースされ、今も聴き継がれている名曲だ。チェッカーズがアイドルバンド的な見え方から、本格的なバンドへと脱皮しつつあった時期にリリースされ、藤井フミヤの繊細かつ深みのあるボーカルが際立ち、語りかけるような歌詞の世界観と強い一体感を生み出している。進化していくバンドのエモーショナルな面に強い光が当たったチェッカーズを代表する一曲になった。
▼夜明けのブレス × Keishi Tanaka × Pistachio Studio
Keishi Tanakaは多様なサウンドアプローチで知られるシンガー・ソングライター。Riddim Saunterを解散後、ソロ活動13年目を迎えジャンルに囚われることなく、その時鳴らしたい音楽を自由に響かせている。ソウルやポップス、スカ、ロック、ジャズ、エレクトロニカなど、多様なジャンルを吸収したオーガニックなアレンジで、唯一無二の世界観を作りあげている。
そんな彼がシンプルなバンドサウンドの「夜明けのブレス」を、レゲエサウンドに大胆かつオーガニックなアレンジに仕立てた。そしてそのサウンドに乗せ、まるでベルベットのような質感の優しさと温かみ溢れる声で歌うと、スタンダ―ドナンバーが表情を変えて伝わってくる。倍音を多く含んだ声質の声は、どこかノスタルジックで、聴き手に寄り添う耳なじみの良さを感じさせてくれ、包み込んでくれるような感覚を覚える。まさにひと昔前の名曲が、新たな命を吹き込まれ未来へと走り出した。
▼チェッカーズ「夜明けのブレス」MV
この曲と今回の歌についてKeishi Tanakaは「小学生くらいのときに兄貴からもらったテープに入っていた曲で、カバーする前は結構シンプルで歌いやすいという印象でしたが、実際に歌ってみると結構難しくて。絶妙なメロディで、それをどうしようかなと思って試行錯誤しました。原曲と少し違う歌いまわしをしてみたり、その辺がカバーの面白さでもあるし、リスペクトを持ちながらやらせていただきました。レゲエのアレンジにしたので、原曲とは違った聴こえ方になると思うので、そういう部分も含めて楽しんでもらえたら」と語っている。
イラストレーター ゆいあい氏の描き下ろしビジュアルによるMUSIC VIDEOは、一途な気持ちを描いた歌詞の世界観を尊重しながら、現代とこの曲が発売された1990年を行き来する、キラキラした空気と切なさが薫ってくる美しい絵が印象的だ。登場するバイクのナンバーがチェッカーズの出身地「久留米1990」になっているなど、見所も満載だ。
■スタンバイしている今後の作品も楽しみな『Newtro』
「夜明けのブレス × Keishi Tanaka × Pistachio Studio」の後も昭和、平成の名曲に、現代のアーティストの歌とアレンジ、独特のタッチの映像とで“現在地”に流れる空気と感覚を纏わせた作品がスタンバイしている。丁寧に洗練された懐かしさと新鮮さを届ける『Newtro』の世界は、まだまだ深化しそうだ。
TEXT BY 田中久勝
Keishi Tanaka OFFICIAL SITE
https://keishitanaka.com/
ゆいあい OFFICIAL SITE
https://yuiaip.myportfolio.com/
Newtro -ニュートロ-
https://www.youtube.com/@newtro_japan

