DREAMS COME TRUEの19thオリジナルアルバム『THE BLACK ◯ ALBUM』のライブツアーが、3月21日・22日の神奈川・横浜アリーナ公演を皮切りにスタートした。
■アルバムに収録された全14曲を“ひとつながりの音楽”として表現
初日のレポートということで、セットリストや演出の詳細を書くのは控えるが、ライブを観たあとの率直な感想を記すと、今まで観たことのないライブだった。そのことを説明するために、まずは新しいアルバムについて触れておきたい。
“CDファースト チャレンジ”ということで、CDのみ全7形態で発売された最新アルバムには、ドリカムの音楽愛がたっぷりと詰め込まれている。アルバムに収録された全14曲が“ひとつながりの音楽”として表現され、既発曲/新曲という時間軸を超えて1枚のアルバムが物語として楽しめるようになっている。
MCで、中村正人はアルバムのコンセプトやタイトルの発想になったきっかけについてこう語っていた。
「こんな暴れん坊の曲たちをアルバム1枚に入れるっていうのはもうブラックホールでしょっていう話を吉田さんに私がしまして。音楽のブラックホールっていう形でしかこれだけの曲を収められないなって思いました」(中村正人)
そこから派生してアルバムのタイトルが『THE BLACK ○ ALBUM』となった。これを受けるアルバムに関するインタビューの吉田美和の言葉を紹介したい。
「○を真ん中に置いて、その感じがすべてを包括しているように思えて、そこはすごく腑に落ちたし、真ん中にブラックホールっていう秘められたテーマみたいなものが埋められていることによって、いろんなものが吸い込まれて、出ていった先で新しいものになったり、まったく形を変えたり、いろんなことが起こる現象が、今回の14曲にはぴったりだなと思った」(吉田美和)
この “○”が表すもの、アルバムの14曲がひとつながりになってブラックホールに吸い込まれ、射出していった先に何が待っているのか? それがこのツアーでありライブだ。サブスク全盛の時代に、それでもCDファーストでアルバムを届けたいという彼らのチャレンジは、実は音源とそれを届けるためのライブをより密接に結びつけるために考え抜かれた方法論であり、それを“アルバム”という最も親しみのある形態に落とし込んだものだ。そういう意味で、ライブ・エンターテインメントの価値が増す今の音楽シーンにおいて重要な意味を持つトライなのだ。アーティストやリスナーにとってアルバムとは何か? その問いかけ自体が彼らの『THE BLACK ○ ALBUM』であり、この作品を表現するライブツアーだと言える。
だから今回のツアーへの期待値は観る前からかなり高かった。そしてそれを軽々と超えてくるものだった。リリースツアーはアルバムの世界を立体的に表現していくものというライブの常識を遥かに超えて、1枚のアルバムではなく“アルバム”とは何か? という答え(というか楽しみ方)にまで踏み込んだものだった。
■「(この振り)覚えている人いる? いた!」
それを可能にしたのが、『THE BLACK ○ ALBUM』を表現し切ることで生まれる圧倒的なオーディエンスの参加意識だ。「ここからだ!- TBA Version -」「スピリラ – TBA Version -」といった、これまでのライブでもすでにパフォーマンスされてきた人気曲はあらたなステージ演出やアレンジなどで曲の熱量をグッと上げたものになり、今回初めてステージで披露された新曲の「東京 magic hour」などは、歌の世界がリアルに立ち上がってきてそのなかに実際にいるような感覚になった。そして何より、それらが音源とはまた違う温度でひとつながりになっていることで楽曲が自分のものになっていく確かな興奮があった。音源からライブへ、ライブからまた音源へ――この幸せな循環が『THE BLACK ○ ALBUM』を道標にすることによってはっきりと体感できた。
さらに、「一生やってないやつ」と吉田美和が表現したレア曲や20数年ぶりに披露する曲もあったり、ある曲のイントロのダンスでは、「(この振り)覚えている人いる? いた!」と言ってオーディエンスとともに盛り上がったり、曲をやるたびに最初の数音で大きな歓声が起こったりするなど、会場の熱気は高まり続けて行った。ちなみに、バンドメンバーにはゲストドラマーとしてジョン・メイヤーやジェネシスなど数々の有名アーティストとの共演で名を馳せるNir Zが久しぶりにツアーに参加しており、彼の生み出すリズムを土台としたバンド全体のグルーヴが雄弁な音の語り部となってオーディエンスに寄り添っていた。また、先日のパリ・ファッションウィーク(パリコレ)への参加でも話題となったUJOHがこのツアーのために制作した衣装もライブ全体に新鮮な印象を残していた。
■「みんながドリカムのアルバムを愛してくれている証拠」
今回のショーで貫かれているのは、アルバムという形態への愛だ。それがバンドとオーディエンスの双方で感じられたことによって、これまで観たことのないライブが出来上がっていた。ライブの終盤、中村正人はこう言った。
「(このライブの盛り上がりは)みんながドリカムのアルバムを愛してくれている証拠だと思います」
最新のDREAMS COME TRUEとバンドのヒストリーを丸ごと詰め込んだような約2時間半は、3月21日のデビュー記念日からスタートして、これから9月のファイナルまで全国で熱狂を起こしていく。
「奇跡だよ。本当に奇跡だよね。37年経ってもこうしてみんなと一緒にステージをやれているっていうことが。これからもできることを一つひとつ、今日を大切にやっていきます。まだまだいくね!」(吉田美和)
38年目のDREAMS COME TRUEが始まった。
TEXT BY 谷岡正浩
■【画像】ライブ写真
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https://dreamscometrue.com/

