ネトフリドラマ主題歌「Dogs」で飛躍を遂げる羊文学。その海外での可能性を切り拓く「オルタナティブ精神」とは。
■新曲「Dogs」は「オルタナティブ精神」を強く打ち出す一曲
羊文学が、さらなる飛躍を遂げようとしている。
3月25日にリリースされた新曲「Dogs」は、柳楽優弥主演のNetflixシリーズ『九条の大罪』の主題歌として書き下ろされた一曲。ヒリヒリとした刺々しさを持つ、攻撃的なナンバーだ。
バンドは今、人気アニメや月9ドラマの主題歌など数々のタイアップを手掛け、幅広い層に支持を広げている。しかし新曲は、そういった大衆的な「親しみやすさ」や「わかりやすさ」ではなく、原点に持つ「オルタナティブ精神」を強く打ち出す一曲だ。
羊文学 – Dogs (Official Music Video) [Netflixシリーズ『九条の大罪』主題歌]
人気やセールスのみならず、そうしたスタンスへの信頼が積み重なっているのも大きい。
2024年の横浜アリーナ、2025年の武道館2daysを経て、ワンマンライブの動員は着実に増えている。2026年9月からの全国ツアーのファイナルは代々木第一体育館2daysだ。国内最大規模の国際音楽賞『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』にて『最優秀国内オルタナティブアーティスト賞』と『最優秀国内オルタナティブ楽曲賞』を受賞するなど、音楽関係者からの評価も高い。
シーンを代表するバンドになりつつある。そして、活躍の場は海外にも広がっている。
■羊文学が今、「オルタナティブ精神」を示したことがもつ意味とは
きっと、次にこの場所に立っているのは羊文学だ――。
2026年4月に行われたコーチェラ・フェスティバルの中継を見ながら、そんなことを考えていた。
コーチェラはアメリカ最大級の野外音楽フェスティバル。今年は日本人アーティストとして藤井風、Creepy Nuts、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uが出演した。
コーチェラ初出演となった藤井風は、ステージが超満員となるほどの盛況だった。単なる話題性ではなく、卓越したミュージシャンシップとパフォーマンスの実力でオーディエンスのハートをしっかりと掴んでいた。
Creepy Nutsのステージもとても印象的で、時代の変化を感じるものだった。彼らが海外での知名度を得たのはアニメ主題歌がきっかけだ。でも、オーディエンスの熱狂を生み出していたのは、あくまで彼らのスキルと熱量だった。アニメを通じた認知は最初の扉を開くきっかけにはなるが、心を掴み、身体を揺らす原動力はそれではない。あくまで鳴らされている音楽の内実だ。
羊文学も、海外でのライブを重ね、各地で着実に支持を掴んでいる。2024年にはアジアツアー、2025年には初のUSツアーとヨーロッパツアーを成功させた。
『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」エンディングテーマの「more than words」や『【推しの子】』 第2期エンディングテーマの「Burning」など、数々のアニメタイアップはグローバルな認知を獲得するひとつのきっかけになったとは思う。しかし、その話題性だけでなく、楽曲の音楽性と熱量がしっかりと伝わったのが大きい。特に英語圏のオーディエンスには「アニメ主題歌のJ-POPバンド」としてではなく、オルタナティブ・ロックやグランジの系譜に属するその音楽的な文脈のなかで受け止められたはずだ。パンクのレジェンドであるパティ・スミスがアジアツアーの映像をSNSで称賛したというのも象徴的なエピソードだ。
羊文学 – Burning (Hitsujibungaku ASIA TOUR 2024 ver.)
羊文学の塩塚モエカは、スマッシング・パンプキンズやエリオット・スミスを自身の音楽的なルーツとしてたびたび語っている。
ブロンドシェルやスネイル・メール、フィービー・ブリジャーズなど、USにはそうした影響源を共有する20代後半から30代前半の女性アーティストたちが活躍している。フィリピン生まれのビーバドゥービーのようにアジアにルーツを持ちUKを拠点に支持を広げたアーティストもいる。
そうしたシーンのなかに羊文学の存在を位置づけることもできるし、そういう文脈でグローバルなリスナーを獲得していく道筋も見えている。
だからこそ、羊文学が今、原点に持つ「オルタナティブ精神」を示したことにも大きな意味がある。
■今の時代にオルタナティブであるとはどういうことか
今年のコーチェラにはウェット・レッグやホリー・ハンバーストーンも出演していた。
ウェット・レッグは荒々しい轟音でメインステージを掌握していた。ホリー・ハンバーストーンは透き通る歌声とダークかつ幻想的な世界観で魅了していた。
羊文学は、それらのアーティストと同時代的な美学と感性を共有しているバンドである。それぞれの来日公演で共演した縁もあるが、それだけではない。単にサウンドや存在感が似ているとか、そういうわけでもない。
今の時代にオルタナティブであるとはどういうことか。
羊文学は、そういうことを体現しているバンドだと思う。
もちろんルーツとして90年代や2000年代のグランジやオルタナティブ・ロックがあることは大きい。でも、大事なのは、単なるリバイバルやオマージュではなく、その精神性を受け継いで2020年代の表現として鳴らしていることだ。
時代を切り拓く先鋭性と、それをアンダーグラウンドなコミュニティの内側だけに留めさせないスケール感を併せ持っている。だからこそ、マーケットや大衆に媚びることなく、より広い支持を獲得していく。そういうタイプのアーティストだ。
ミュージカルのような大掛かりな演出が繰り広げられたサブリナ・カーペンターのコーチェラのステージが象徴するように、今の世界的なポップ・ミュージックのメインストリームは豪華絢爛なエンタメ性で勝負するようになってきている。
いっぽうで、そんな風潮だからこそ、ソリッドなギターサウンドに突破口を見出すウェット・レッグのようなアーティストも脚光を浴びるようになってきている。
そこに「今の時代のオルタナティブ(=もう一つの選択肢)」としての説得力がある。
■羊文学の今と未来を象徴する「Dogs」
「Dogs」も、イントロの数秒だけでそれを強く感じさせる曲だ。変拍子を効果的なフックに使いつつ、タイトなバンドサウンドだけでダイナミズムを生み出しているのもポイントだろう。迫力を前面に打ち出した、とても強力な一曲だ。
そういう意味でも、この曲は羊文学の今と未来を象徴する一曲だと思う。
ヒリヒリとしたギターサウンドが導く荒々しい曲調に乗せて《生ぬるい覚悟じゃ先はないね/やんのか、逃げるか/自分で決めな》と歌うこの曲。
塩塚モエカは「作品と自分の過去を照らし合わせ、歯を食いしばるような気持ちで作りました」とコメントしている。
『九条の大罪』の物語性や、柳楽優弥演じる主人公の弁護士・九条のキャラクターをイメージさせる言葉でありつつ、そこに自分自身の信条を重ね合わせる言葉が歌われる。そこからは、バンドの現在地に甘んじようとしない貪欲な野心と決意も感じる。
「九条の大罪」予告編|Netflix
スケールが大きくなった後に、より攻撃的で、より生々しく、より肉体的な楽曲を「勝負曲」として放つ。そういう道を選んだバンドのスタンスも「今の時代のオルタナティブ」の条件と言えるだろう。
TEXT BY 柴那典
羊文学「Dogs」
Netflixシリーズ『九条の大罪』主題歌
配信中
https://hitsujibungaku.lnk.to/dogs_tour
■公演情報
羊文学 TOUR 2026 “すーーーはーーー”
〇2026年9月4日(金)
新潟・新潟テルサ
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:FOB新潟 025-229-5000 https://www.fobkikaku.co.jp/
〇2026年9月6日(日)
宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:ノースロードミュージック 022-256-1000 https://www.north-road.co.jp/
〇2026年9月11日(金)
京都・ロームシアター京都
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:清水音泉 06-6357-3666 https://www.shimizuonsen.com/
〇2026年9月13日(日)
愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:ジェイルハウス 052-936-6041 https://www.jailhouse.jp/
〇2026年9月20日(日)
福岡・福岡サンパレス
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:キョードー西日本 0570-09-2424 https://www.kyodo-west.co.jp/
〇2026年9月21日(月・祝)
岡山・岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:YUMEBANCHI(岡山) 086-231-3531 https://www.yumebanchi.jp/
〇2026年9月26日(土)
石川 金沢本多の森 北電ホール
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:FOB金沢 076-232-2424 https://www.fobkikaku.co.jp/
〇2026年9月28日(月)
大阪・フェスティバルホール
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:清水音泉 06-6357-3666 https://www.shimizuonsen.com/
〇2026年10月1日(木)
北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:SMASH EAST 011-261-5569 https://www.smash-jpn.com/
〇2026年11月10日(火)
東京・国立代々木競技場 第一体育館
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥8,800
問い合わせ先:SMASH 03-3444-6751 https://www.smash-jpn.com/
〇2026年11月11日(水)
東京・国立代々木競技場 第一体育館
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥8,800
問い合わせ先:SMASH 03-3444-6751 https://www.smash-jpn.com/
【チケット情報】
チケット代:全席指定:¥7,500(税込)
国立代々木競技場 第一体育館公演チケット代:全席指定:¥8,800(税込)
◎羊文学プロフィール
Vo.Gt.塩塚モエカ、Ba.河西ゆりかからなる、繊細ながらも力強いサウンドが特徴のオルタナティブロックバンド。
2020年にF.C.L.S.(ソニー・ミュージックレーベルズ)よりメジャーデビュー。
2023年、メジャー2ndフルアルバム『our hope』が、第15回CDショップ大賞2023 大賞<青>を受賞。
TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」エンディングテーマ「more than words」が全世界ストリーミング2億再生を突破し、日本レコード協会プラチナ認定作品に選定されるなど大ヒットを記録。
2025年、新曲「声」がフジテレビ系月9ドラマの主題歌に抜擢。5月に日本最大規模の国際音楽賞MUSIC AWARDS JAPANにて、最優秀国内オルタナティブアーティスト賞と「more than words」が最優秀国内オルタナティブ楽曲賞を受賞した。10月8日には1年10か月ぶりとなるフルアルバム『D o n’ t L a u g h I t O f f』をリリース。
ライブ活動においては、国内外のメジャー音楽フェスにメインアクトとして出演するほか、2025年4月には初のUSツアー「Hitsujibungaku US West Coast Tour 2025」、9月には日本武道館2daysと大阪城ホールを含む過去最大規模のアジアツアー「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」を開催。日本武道館公演2daysのチケットは発売開始直後に両日ソールドアウトとなった。
10月には欧州6か国7都市を回る初のヨーロッパツアー「Hitsujibungaku Europe Tour 2025」も行うなどグローバルな舞台へと活躍の場を広げている。
今秋には東京・国立代々木競技場 第一体育館2daysを含む全11公演の全国ツアーも開催。



