「青のすみか」の世界的ヒット、中島健人とのユニット・GEMNでの活動など、国境やジャンルを超えて才能を発揮し続けるキタニタツヤ。これまでのキャリアを振り返りつつ、代表曲、新曲の解説を交え、“アーティスト・キタニタツヤ”の全貌に迫る。
■ジャンルを越境して活躍するシンガーソングライター
キタニタツヤ
・生年月日:1996年2月28日
・出身地:東京都
・デビュー:アルバム『I DO (NOT) LOVE YOU.』(2018年9月26日)
・メジャーデビュー:アルバム『DEMAGOG』(2020年8月26日)
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◎活躍の場を広げ続けるキタニタツヤとは?
幼少期からASIAN KUNG-FU GENERATION、VOLA & THE ORIENTAL MACHINE、8ottoなどのオルタナティブロックに傾倒。高校時代には自身がベース・ボーカルをつとめるバンドを立ち上げ、ライブ活動をスタートさせたキタニタツヤ。大学受験期間は活動を休止したが、東京大学入学後に再びバンドを組み、楽曲制作にも積極的に取り組むようになった。
キタニの楽曲が広く聴かれるようになったきっかけは、ボカロP名義の“こんにちは谷田さん”としての活動。
2014年に最初の楽曲「鯨と水星」をニコニコ動画に投稿し、2016年7月には1stフルアルバム『彼は天井から見ている』を発表。ヨルシカのn-bunaをはじめ、ボカロPとしての活動を通して知り合ったミュージシャンも多いようだ。
👁キタニTwitter開設記念日👁
5年前の今日ツイッターを始めて、その3日後に「鯨と水星」という曲をニコニコ動画に投稿しました ピカピカの大学1年生だよ懐かし
今はもうよれよれの23歳ですけど、音楽でメシ食えてるとは思わなかったな 友だちもメチャ増えた ありがとうTwitter いつまでもTwitter pic.twitter.com/yICoaBIV4M
— キタニタツヤ Tatsuya Kitani (@TatsuyaKitani) May 11, 2019
2017年3月にボーカロイド楽曲「芥の部屋は錆色に沈む」のセルフカバーを発表したことを契機に、シンガーソングライターとしての動きも活性化。
さらに大学卒業後に結成したバンド・sajou no hanaでメジャーデビューを果たし、同年9月に作詞・作曲、楽器演奏、プログラミングなどを自ら手掛けたソロ作品「I DO (NOT) LOVE YOU.」をリリースした。
▼芥の部屋は錆色に沈む/キタニタツヤ
▼I DO NOT LOVE YOU. / キタニタツヤ (Official Music Video)
そして2020年8月アルバム『DEMAGOG』でキタニタツヤとしてメジャーデビュー。
翌2021年にはアニメ『平穏世代の韋駄天達』OPテーマ「聖者の行進」、漫画『BLEACH』の原画展『BLEACH EX.』テーマソング「Rapport」などタイアップ楽曲でも話題を集めた。
▼聖者の行進 / キタニタツヤ – When The Weak Go Marching In / Tatsuya Kitani
▼Rapport / キタニタツヤ – Rapport / Tatsuya Kitani
ブレイクのきっかけとなったのは、TVアニメ『呪術廻戦 懐玉・玉折』OPテーマ「青のすみか」。
各デジタルチャートにて23冠を達成し、ストリーミング累計再生回数は5億回を突破。MVの再生数も1.2億回を超えるなど2023年を代表するヒット曲となり、大晦日には『第74回NHK紅白歌合戦』に初出場し、同曲を披露。
▼青のすみか / キタニタツヤ – Where Our Blue Is / Tatsuya Kitani
2024年5月に初の日本武道館公演『キタニタツヤ 10th Anniversary Live 彼は天井から見ている』を開催した。
◎多様なアーティストとのコラボやユニット活動
本格的なブレイクを契機にして、活動の場も飛躍的に広がった。
2025年には中島健人とのユニット・GEMNを結成。TVアニメ『【推しの子】』2期OPテーマに起用された「ファタール」をヒットさせ、さらには、“キタニタツヤ feat. BABYMETAL”名義による「かすかなはな」でも大きな注目を集めた。
▼GEMN – ファタール / THE FIRST TAKE
▼かすかなはな / キタニタツヤ feat. BABYMETAL
◎ピアニスト角野隼斗との共通点が話題に
2025年4月に行われた都市型フェス『CENTRAL MUSIC ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』にも出演。同じ日に出演したピアニストの角野隼斗との“同い年、東京大学出身”という共通点でも話題となった。
◎幅広いジャンルのアーティストに楽曲提供
また、WEST.、星街すいせい、SUPER EIGHT、LiSAなど幅広いジャンルのアーティストに楽曲を提供。NHK Eテレ『天才てれびくんgrow』のテーマソング「リンガ・フランカ」では自身初のNHKへの楽曲提供となり、2026年4月には、サッカー日本代表2026ユニフォームソングとしてAdoとアディダスがコラボした「綺羅」に楽曲提供し、豪華タッグが実現した。
▼【Ado】綺羅(KIRA)
■独自の世界観がキタニタツヤの魅力
◎独自性の高い音楽
キタニタツヤの音楽性は驚くほど広い。オルタナティブ・ロック、ファンク、ネオソウル、エレクトロなどの要素を融合させて、独創的なサウンドへと導いているのだ。
各ジャンルのセオリーを抑えつつ、コード進行やアレンジに不測のファクターを加えることで“クセになる”音像を生み出せるのもキタニの特徴と言えるだろう。美しい歪みと称すべき独特の手触りも強いインパクトを放っている。
◎文学的でシニカルな歌詞
現在の世界のシリアスな側面を背景にしつつ、“そのなかでどう生きるか?”を様々な角度から描き出すリリックも評価が高い。
言葉選びが独特で、詩的・文学的な表現と感情のリアリティのバランスも絶妙。そこには東京大学文学部(思想文化学科・美学芸術学研究室)で学んだことも活かされているようだ。
2025年9月リリースの「カルチャー」では、民主主義についてのメッセージを込めるなど、現代社会的に向けた楽曲も。そのすべてをポップに響かせる技術もまた彼の大きな武器だろう。
▼カルチャー / キタニタツヤ – CULTURE / Tatsuya Kitani
さらに特筆すべきは、起伏に富んだメロディをしっかりと歌いこなすボーカル力だ。エッジが効いた攻撃的なロックチューンから聴く者を優しく包み込むようなバラードまで、レンジの広い楽曲を的確に表現。自らが作り上げたサウンドに命を吹き込む役割を見事に果たしている。
◎ベーシストとしての確かな実力
キタニタツヤが最初に手にした楽器はベース。ルーツであるASIAN KUNG-FU GENERATION、8otto、VOLA&THE ORIENTAL MACHINEなどのベースからはじまり、自らの音楽性の広がりとともにポップス、ファンク、ボカロ系など幅広いジャンルに対応できるベーシストとしても活躍。TK from 凛として時雨、まふまふ、Adoなどの楽曲に参加している。
特にヨルシカでは、結成当初からライブやレコーディングに参加。メンバーのn-bunaとともにヨルシカ・バンドの軸を担っている。
ヨルシカの強盗と花束という曲のここがしんどいな〜という動画を観て pic.twitter.com/tYtCLY7R8B
— キタニタツヤ Tatsuya Kitani (@TatsuyaKitani) June 12, 2021
◎細部までこだわり抜いたステージング
デビュー当初から「魅力的なパフォーマーでありたい」という意思を表明していたキタニタツヤ。細部までこだわったステージングにも定評がある。
2025年に行われた初のアリーナツアー『ANGEL WHISPERING』では、バックダンサーとのパフォーマンスを披露するなど、意外性とエンタメ性に富んだライブを展開。
同年5月には初の単独海外ツアーでアジア圏4都市を巡り、都市型フェス『CENTRAL』に2年連続で出演するなどライブの領域も確実に広がりを見せている。
■【歌詞掲載】TVアニメ『呪術廻戦 懐玉・玉折』OPテーマ「青のすみか」
・作詞:キタニタツヤ
・作曲:キタニタツヤ
・リリース:2023年7月19日
・Streaming/DL https://Tatsuya-Kitani.lnk.to/XWKpO9AY
◎アーティストとしての存在感を世界中に示した楽曲
TVアニメ『呪術廻戦 懐玉・玉折』OPテーマ「青のすみか」。
空間を切り裂くような鋭さと美しい透明感が共存したサウンドメイク、性急に突き進むビートのなかで広がる開放的なメロディ。
この曲によってキタニタツヤは、アーティストとしての存在感を世界中に示した。2023年8月には『THE FIRST TAKE』で同曲をパフォーマンス。再生数は2,000万回を突破(2026年5月時点)し、「一発撮りという縛りで、術式効果(歌唱力)を底上げするんだな…」「《どんな祈りも言葉も/近づけるのに、届かなかった》って歌詞が無下限の術式と五条の後悔を掛けてるっぽくてめっちゃすき」など『呪術廻戦 懐玉・玉折』との親和性の高さを示すコメントが並んだ。
▼キタニタツヤ – 青のすみか / THE FIRST TAKE
◎五条悟と夏油傑との関係を映し出した歌詞
「青のすみか」
どこまでも続くような青の季節は
四つ並ぶ眼の前を遮るものは何もない
アスファルト、蝉時雨を反射して
きみという沈黙が聞こえなくなるこの日々が色褪せる
僕と違うきみの匂いを知ってしまっても置き忘れてきた永遠の底に
今でも青が棲んでいる
今でも青は澄んでいる
どんな祈りも言葉も
近づけるのに、届かなかった
まるで、静かな恋のような
頬を伝った夏のような色のなか
きみを呪う言葉がずっと喉の奥につかえてる「また会えるよね」って、声にならない声
昼下がり、じめつく風の季節は
想い馳せる、まだ何者でもなかった僕らの肖像
何もかも分かち合えたはずだった
あの日から少しずつ
きみと違う僕という呪いが肥っていくきみの笑顔の奥の憂いを
見落としたこと、悔やみ尽くして徒花と咲いて散っていくきみに
さよなら今でも青が棲んでいる
今でも青は澄んでいる
どんな祈りも言葉も
近づけるのに、届かなかった
まるで、静かな恋のような
頬を伝った夏のような色のなか
きみを呪う言葉がずっと喉の奥につかえてる「また会えるよね」って、声にならない声
無限に膨張する銀河の星の粒のように
指の隙間を零れた作詞:キタニタツヤ
作曲:キタニタツヤ
「青のすみか」の歌詞は、『呪術廻戦 懐玉・玉折』における五条悟と夏油傑との関係を鮮やかに映し出している。
お互いの才能を認め、切磋琢磨しながら、最強を目指していた青春時代。様々な出来事が複雑に絡み合い、周囲の人々の謀略もあいまって、ふたりはまったく違う人生を歩むことになり、最悪と言っていい結末を迎えることになる。
しかし、共に過ごした青い季節の記憶が消えることはなく、心のどこかに留まっていて、両者を支えているのではないかーーそんな切ない願いを端的に示しているのが《置き忘れてきた永遠の底に/今でも青が棲んでいる/今でも青は澄んでいる》というサビのフレーズだ。
もう戻ることがない時間、もう会うことのない大切な人の存在は、誰の心にもあるはず。そんな普遍性もまた「青のすみか」がこんなにも強く支持されている理由だろう。
■「火種」「れびてーしょん」と続けて楽曲をリリース
◎「火種」は先が見えない未来へと突き進む人間たちへの讃歌
・作詞:キタニタツヤ
・作曲:キタニタツヤ
・リリース:2026年4月5日
・Streaming/DL https://Tatsuya-Kitani.lnk.to/HIDANE
「火種」はTVアニメ『日本三國』OPテーマとして書き下ろされた楽曲だ。
アニメの舞台は、核戦争の影響で文明が明治初期レベルまで落ちた日本。三つの国に分裂した日本を再び統一するべく、あまりにも過酷な運命に身を投じる人々を描いた本作に対してキタニは、正しいと信じた道を突き通し、まったく先が見えない未来へと突き進む人間たちへの讃歌として「火種」を生み出した。
音楽的な基調となっているのは、エキゾチックな匂いを振り撒く祝祭的なビート。民族音楽的な意匠をまとった音像には西洋的なホーンセクションや和楽器の要素も取り入れ、懐かしさと新しさを同時に感じさせるサウンドを体現している。
《ゆらゆら踊る火種、燃やせ、燃やせ!/この生の千秋楽まで》というラインも心に残る。
火種とは、ものを燃やすための小さな火、もしくは、騒動や紛争のもとを指す言葉。ちょっとしたことで消えてなくなる火種はおそらく、“それがなければ何にも起こらない”ということの比喩でもあるのだろう。未来がどうなるかは誰にもわからないが、火種を起こして生きていくしかない。この曲はそうやって我々を鼓舞しているのだと思う。
◎浮遊感に溢れたトラックと柔らかく漂うようなメロディが溶け合う「れびてーしょん」
・作詞:キタニタツヤ
・作曲:キタニタツヤ
・リリース:2026年4月12日
・Streaming/DL https://Tatsuya-Kitani.lnk.to/LEVITATION
「れびてーしょん」はアニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』EDテーマ。
2022年にインディーゲームレーベルWSS playgroundより発売され累計300万本を突破したゲームを原作としている『NEEDY GIRL OVERDOSE』は、最強の配信者を目指す承認欲求強めな女の子と、彼女を支える“ピ”の30日間を描いたマルチエンディングアドベンチャー。
浮遊感に溢れたトラックと柔らかく漂うようなメロディが溶け合う「れびてーしょん」でキタニは、《なくなっちゃった僕らの居場所》について歌っている。
“好き”という気持ちだけで集まり、自由に楽しく遊んでいた場所。いつの頃から知らない人がやってきて、広告が始まり、資本主義にからめとられていく。その結果、最初からいた人たちが追いやられ、あとにはただただマネタイズという名の残骸が残される。そこにはたぶん、キタニ自身の出自であるボーカロイド界隈への想いも含まれているのだろう。
そんなシリアスなテーマを背景にした歌詞を気持ちいいダンストラックに昇華させるのもキタニのセンス。仮想空間で他者とコミュニケーションできるVRコンテンツ・VRChatで制作されたMVにもぜひ注目してほしい。
■キタニタツヤの独創的な楽曲を堪能!おすすめ5曲
「ずうっといっしょ!」
活動10周年を迎えた2024年5月14日にサプライズリリースされたこの曲のテーマは、混沌とした世界における愛。鋭く尖ったギターリフを軸にしたサウンド、スリリングに展開していくメロディラインのなかで《あなたの一生の後悔として添い遂げるよ》というフレーズが聴き手の心をぐさりと突き刺す。
数えきれない後悔、憤り、諦めを抱えながら進むのが人生。やばすぎる世界のなかで《お揃いの悪夢》を見ながら、それでも我々は生きるのだ。
「まなざしは光」
TVアニメ『薫る花は凛と咲く』OPテーマ。
美しいストリングス、爽やかさと抜けの良さを併せ持ったバンドサウンドを軸にした、切なくも愛らしいポップチューンだ。歌詞の背景にあるのは、アニメの主人公である凛太郎と薫子の関係。大切な人との出会いによって心の壁が取り払われ、まるで厚い雲から差す一筋の光のように、優しさと嬉しさが溢れ生まれる。そんな尊い瞬間を切り取ったこの曲は、リスナーの心にも鮮やかな光を与えてくれるはずだ。
「あなたのことをおしえて」
スマートフォンカードゲーム『Shadowverse: Worlds Beyond』テーマソング。
空間を切り裂くギター、異国情緒を感じさせるシンセ、圧倒的な疾走感をたたえたリズムがぶつかり合うアッパーチューン。緊張感と心地よさが絶妙に混ざり合うサウンドのなかでキタニは、《あなたのことをおしえて/好きな音楽とか嫌いな人とか》と語りかける。
社会の変化に翻弄され、悲しみや辛さを経験しながらも、好きなものを見出しながら歩んでいきたいーーそんな祈りのようなメッセージが伝わってくる。
「人間みたいね」
メジャーデビューアルバム『DEMAGOG』収録曲。
日常や社会の中にある嫌なことを切り取った『DEMAGOG』を象徴する楽曲のひとつが「人間みたいね」だ。ネオソウルの要素を感じさせるグルーヴはどこまでも気持ちよく、《あなたに見合うのはもっと奥の暗く深い地獄だよ》というリリックはどこまでも薄暗く、怖い。この生々しいコントラストこそがキタニタツヤの個性であり、どうしてもリピートしたくなる「人間みたいね」の中毒性の源なのだと思う。
「素敵なしゅうまつを!」
快楽的なファンクネスを放つベースラインに惹きつけられる「素敵なしゅうまつを!」はキタニタツヤの根源的な世界観(≒世界の捉え方、見え方)が現れた楽曲だと思う。
どうしてもネガティブな側面が目につき、《破滅の時には抱き合って、さぁ祈りを!》と呼びかけてしまうのだが、楽曲自体はめちゃくちゃ気持ちよく踊れて、口ずさめる。世界へのシリアスな視線とポップミュージックの愉悦。このバランスこそがキタニの核心なのだろう。
■今後も国内外での活躍が期待されるキタニタツヤ
「火種」「れびてーしょん」のリリースからわずか1か月。待望のTVアニメ化『これ描いて死ね』のOPテーマ「遺書」を書き下ろしたことが発表された。
さらに、台湾、韓国、日本のアーティストによる自主企画ライブ『TATSUYA KITANI Presents “Hugs Vol.6″』を2026年7月5日兵庫・GLION ARENA KOBE、7月17日東京・東京ガーデンシアターで開催。2026年秋にはニューアルバム『DEKAI』『PURE』が2枚同時にリリースされる。
国内外でのさらなる飛躍が期待されるキタニの今後の動向にも注目だ。
TEXT BY THE FIRST TIMES編集部
▼キタニタツヤの最新情報はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/314/
▼楽曲リンク:キタニタツヤ
https://tftimes.lnk.to/TatsuyaKitaniT1











