2026年5月16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスのBrookside at the Rose Bowlにて、野外音楽フェス『CLOUD NINE presents “Zipangu” JAPANESE MUSIC EVENT 2026』が開催された。
■会場には約2万人のオーディエンスが集結
ヘッドライナーはAdo。加えて、千葉雄喜、新しい学校のリーダーズ、MAN WITH A MISSION、ちゃんみな、10-FEET、HANAというラインナップだ。日本のアーティストのみが出演する海外音楽フェスとしては過去最大規模となる会場には、初開催ながら約2万人のオーディエンスが集まった。その多くが、目当てのアーティストだけでなく、その日のフェス全体を目一杯楽しんでいた。単なるショーケースイベントではなく、野外フェスとしての熱狂と祝祭がそこに生まれていた。
開演1時間前の午後3時。すでに周辺には長蛇の列が並んでいた。日本から来た人は見る限りごく一部で、来場者の大半は現地のオーディエンスだった。人種も多様で世代も幅広い。ほとんどが各好きなアーティストのTシャツを着たり思い思いのファッションに身を包んだりしている。野外フェスの解放感あるムードが漂っている。
■HANA
トップバッターとして登場したのはHANA。昨年のメジャーデビューから約1年、大きな躍進を遂げた彼女たちにとって初のアメリカでのライブだ。
まず「ALL IN」から「NON STOP」と挨拶代わりの力強いナンバーを披露し、JISOOが流暢な英語でオーディエンスに呼びかける。「HANAが日本語でどんな意味かわかる人?」と問いかけると「Flower!」と声が上がる。予想していた以上のウェルカムなムードだ。
「どこから来たの?」という問いには「ニューヨーク」や「カナダ」といった声も上がる。LAだけでなく北米各地からフェスに訪れた人も多いようだ。初めてHANAを観たであろうオーディエンスが、その卓越した歌とダンスの実力でどんどん惹き込まれていくのが見て取れた。
特に「Burning Flower」や「Cold Night」で見せるCHIKAのハイトーンのシャウトには、オーディエンスから驚きの混ざった喝采が湧き上がっていた。「Blue Jeans」では「シング・トゥギャザー!」と呼びかけサビのフレーズでシンガロングを巻き起こす。ラストはNAOKOが英語で「私たちは、今ここで咲きたい」と宣言して「ROSE」。初めてのLAでのライブとは微塵も感じさせない、堂々たるエネルギッシュなステージだった。
■10-FEET
続いては10-FEETが登場。「ワッツ・アップ、LA!?」とTAKUMAが呼びかけ、「VIBES BY VIBES」や「1sec.」などライブの鉄板曲を連ねて一気にフィールドの熱を上げていく。彼らにとっては2008年に行った西海岸ツアー以来、実に約18年ぶりのアメリカ公演となる。おそらくこの日の観客のほとんどが、初めて彼らのライブを生で体験したはずだ。
TAKUMAは「ジャパニーズ・ローカルスタイル・パンクロック」と自らのスタイルを告げ、MCでメタリカやガンズ・アンド・ローゼスなど敬愛するアーティストを連ね、即興でボン・ジョヴィの「Livin’ on a Prayer」をセッションするなど、人懐っこいユーモアでオーディエンスを味方につけていく。
なかでもひときわ大きな歓声が上がったのは、映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌の「第ゼロ感」。「RIVER」ではコール&レスポンスで会場に一体感をもたらし、ラストは「CHERRY BLOSSOM」。スリーピースのシンプルなスタイルで結成から30年近くのキャリアを重ねてきたバンドのパワーを見せつけ、「サンキュー!」と叫んで3人は笑顔でステージをおりた。
■ちゃんみな
続くちゃんみなにとって、この日は念願のアメリカ初パフォーマンス公演。大きな歓声が彼女を迎え入れる。ちゃんみな自身も「夢が叶った」と英語で告げていたが、どうやら、アメリカでのライブを待っていたファンも相当多かったようだ。
ライブは「NG」からスタート。バンドと4人のダンサーを従え、迫力たっぷりの歌声でオーディエンスを惹き込んでいく。「ダイキライ」ではサングラスを外して不敵な目でフィールドを見回し歌う。切れ味鋭いラップを放つ「Picky」、TVアニメ『【推しの子】』第3期のオープニング主題歌「TEST ME」は、イントロが流れると、客席からは歓声が起き、よりダイナミックなパフォーマンスにフィールドの熱気はどんどん増していく。
一つひとつの曲が終わるたびに歓声のボリュームが上がっていく。雲間から差した陽光に「ハロー、サンシャイン」と呼びかけたりするなど、自然体のユーモアを見せるMCでもオーディエンスのハートをがっちり掴んでいた。
そして圧巻はラストの「WORK HARD」。アップテンポなビートと畳み掛けるシャウトに前方ではモッシュが巻き起こる。おそらくこの日のライブでちゃんみなの虜になった現地のオーディエンスは相当いただろう。さらなるアメリカでの飛躍を確信した。
■MAN WITH A MISSION
MAN WITH A MISSIONは1曲目に披露した「Raise your flag」から大きな盛り上がりを見せた。さすがワールドツアーを重ねてきた歴戦の猛者だ。LAを含む北米でもツアーを行ってきたこともあり、観客のなかにはマンウィズのバンドTシャツを着た人も見えた。そんなホーム感あるオーディエンスに向けて、疾走感あふれるロックナンバーを強靭なバンドアンサンブルで次々とプレイし、フィールドをヒートアップさせていく。
Jean-Ken Johnnyは流暢な英語でシンガロングやコール&レスポンスを呼びかけ、オーディエンスを巻き込んで一体感を生み出していく。中盤ではAC/DCの「Thunderstruck」のカバーから、先ほどライブを終えたばかりの10-FEETのTAKUMAを呼び込み、「database feat.TAKUMA(10-FEET)」を披露。TAKUMAがステージ狭しと走り回り、興奮を煽る。
印象的だったのは、前方に集ったオーディエンスのリアクションだ。拳を振り上げ、ハンドクラップし、「オイ! オイ!」と叫ぶ。「FLY AGAIN」ではサビで左右に手を揺らす。日本のロックフェスでよく見られるような熱い一体感が生まれていた。クライマックスは、和楽器のイントロから大歓声が上がったテレビアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編オープニング主題歌「絆ノ奇跡」。日本のロックフェスの熱狂をそのままLAのフィールドに持ち込むようなステージだった。
■新しい学校のリーダーズ
新しい学校のリーダーズの生み出した熱狂も相当なものだった。4人がステージに並んだだけで歓声が上がり、1曲目の「Go Wild」から「Toryanse」と、序盤からオーディエンスは興奮に包まれる。
SUZUKAは「LAに戻ってこられてとてもうれしい」と英語で告げる。この「Zipangu」と同じBrookside at the Rose Bowlで開催されたフェス「Head in the Clouds」にもたびたび出演してきただけあって、抜群に“ホーム感”のあるステージだ。
中盤の「Arigato」ではファンキーなサウンドに乗せて4人がホウキのついたマイクを振り回し、「Pineapple Kryptonite」ではエレクトロなビートに中毒性あるフレーズを繰り返す。ユニークなコンセプトやキャッチーなビジュアルに目がいく新しい学校のリーダーズだが、国境を超えた人気の根幹にあるのは、全身が躍動するダンスとパワフルな歌声。その身体性の高さなのだと実感させられる。
「Fly High」では「エヴリバディ、ジャンプ!」という煽りに応えてオーディエンスが飛び跳ね、「Tokyo Calling」ではSUZUKAが観客のなかに果敢に飛び込み、クライマックスの盛り上がりを作り出す。ラスト「One Heart」では「最高!」のコール&レスポンスで場を一つにし、4人は熱気冷めやらぬオーディエンスに再会を誓ってステージを降りた。
■千葉雄喜
続いて登場したのは千葉雄喜。この日の出演陣のなかで、ソロラッパーとして異彩を放つ存在だ。ふらりとステージに現れ、「チェーンが歌う」「新品無地T」とストレートな日本語のリリックのナンバーを続けざまに披露する。エネルギッシュなナンバーで興奮を煽り、一体感を生み出していくMAN WITH A MISSIONや新しい学校のリーダーズとは対照的なスタイルだ。
最初は戸惑うような素振りのオーディエンスも見られたが、曲を重ねるごとに、その声と佇まいでどんどんとオーディエンスを魅了していった。特に空気が変わったのは中盤からの流れだ。「もらいもの」ではオーディエンスにスマホライトを掲げさせ、「心臓」ではアンビエントなトラックの上で迫真の歌声を響かせる。
続く「流れる」も静かな迫力を見せ、さらに「生きるだけだな」はマイク1本のアカペラとボイスシンセのエフェクトのみで披露。息を呑むような緊迫感が生まれる。
そして曲を終えるごとに拍手と歓声が増していく。声ひとつでフィールドの空気を変えてしまう。唯一無二のカリスマ性を証明する時間だった。そしてラストは「チーム友達」。「プリーズ・シング・ウィズ・ミー!」と声をかけ、「チーム?」という問いに「友達!」と応えるコール&レスポンスが大合唱となって広がる。
ステージを降りオーディエンスとハイタッチするなど親密なムードのなか、ライブは終了。MCでは5ヵ月前にLAへ移住したことも明かしていた。あらたな拠点でのさらなる可能性を感じさせるステージだった。
■Ado
そしてヘッドライナーに登場したのはAdoだ。この日の出演陣はどのアーティストも確かな盛り上がりを生んでいたが、Adoへの熱狂もすさまじかった。フィールドには後方までぎっしりと人が埋まり、登場前から「Ado! Ado!」とコールが生まれる。バンドメンバーのセッションとソロ演奏を経て、ボックスのなかにAdoのシルエットが浮かび上がると、割れんばかりの歓声が湧き上がる。
ライブは「踊」からスタート。Adoが髪を振り乱し歌い、「ウェルカム・トゥ・ジパング!」と叫ぶ。さらには「唱」から「逆光」と強烈なナンバーを連発。序盤からフィールドを興奮に包み、大音量のシンガロングが広がる。激しいがなり声のシャウトを響かせた「うっせぇわ」ではオーディエンスの「オイ!オイ!」というコールが響き渡る。
体を大きくつかいながらのけぞって歌った「ギラギラ」や、4月にリリースされたばかりのロックナンバー「綺羅」など、中盤もトップギアで畳み掛けるような歌を放ったAdo。後半の「Tot Musica」では鬼気迫るような叫び声を放ち、歌い終えて倒れ込む。「アイ・アイ・ア」では操り人形のような奇怪なダンスを踊り、何かが憑依したかのような声色で歌う。
歌い手としてのAdoの異能をひたすら見せつけ、圧倒するようなパフォーマンスだ。オーディエンスも全力でそれに応え、「ロックスター」ではこの日一番大きなシンガロングが響き渡った。
終盤には、松原みき「真夜中のドア ~stay with me~」のカバーも披露。イントロが鳴った瞬間、フィールドには歓喜や驚きの反応が広がる。海外でも高い人気を誇るシティポップの名曲だ。Adoの歌声によって、曲に込められた切ないエモーションが何倍にも増幅して伝わってくるのを感じる。歌い終えたAdoは丁寧な英語のMCで、「Zipangu」のヘッドライナーとしてステージに立った思いを告げる。
「これだけ多くの日本のアーティストたちが、力強いパフォーマンスで皆さんの心を動かしているのを見るのは、本当に胸がいっぱいになります。こんな未来は全く想像していませんでした」と語り、拍手と喝采がその声に応える。
そして今日出演したアーティストの名前を一組ずつ挙げ、「私が今日ここに立てているのは私ひとりの力ではありません。日本の音楽の力です」と力強く喜びを語った。そして最後に披露したのは「新時代」。『ONE PIECE FILM RED』の主題歌としてAdoがグローバルな支持を掴むきっかけになった曲であり、まさにこの「Zipangu」というフェスを象徴するような一曲だ。クライマックスの熱気に包まれ、曲が終わったあとも、しばらく興奮の余韻が残っていた。
終演後のビジョンには「SEE YOU NEXT YEAR」と綴られていた。来年も、そしてその先も「Zipangu」は続いていくだろう。AdoもMCで「『Zipangu』はここだけにとどまらず、世界中を旅するフェスティバルとして、これからも成長していくと信じています」と語っていた。日本の音楽がグローバルに広がっていく。その可能性を、現場のたしかな熱気として感じられた一日だった。
TEXT BY 柴那典
PHOTO BY Viola Kam(V’z Twinkle) ※HANA、ちゃんみな、新しい学校のリーダーズ、Ado
PHOTO BY Ryo Kawakami ※10-FEET、MAN WITH A MISSION、千葉雄喜
■関連リンク
『Zipangu』 OFFICIAL SITE
https://zipangu-event.cloud













