「ここ一番の重要な場面で、本来の実力を発揮したい」
これはアーティストやアスリートに限らず、多くの人々の学業やビジネスにも共通する課題だ。集中力を高めるためにお気に入りの音楽を聴く人は多いが、この習慣をさらに一歩進め、音楽と触覚刺激によって本番前の状態を科学的に整える仕組みとして誕生したのが、パフォーマンス・コンディショニングサービス『NOUS ARE™(ノウスアレ)』。
本稿では、『NOUS ARE』のメディア向け体験会をレポートする。
■音と触覚で“本番前”を整える、新時代のコンディション作り
『NOUS ARE』は、音楽を耳で聴くだけでなく身体全体の触覚でも感じることで、音への没入感を高める仕組みだ。ソニーが長年培ってきたハプティクス(触覚刺激)技術をベースにした専用装置を通じて、シーンに応じた“高揚感”や“落ち着き”を得ることを目的としている。
ソニーフィナンシャルグループ株式会社(以下、SFGI)による非金融領域ビジネスの探索プロジェクトでもあるこの取り組み。開発を主導するSFGIの赤羽祐哉氏は、このコンディショニングを「本番前の状態設計」と位置づける。
現在はコクヨ株式会社との共創により、パフォーマンス・コンディショニング機能を備えた椅子型プロトタイプ『(仮称)コンディショニングチェア』を開発している。さらに横浜DeNAベイスターズとパートナー契約を締結し、球場のブルペンやベンチで選手のコンディションを整える検証を行っている。
■脳と身体の関係性に着目した科学的アプローチ
横浜DeNAベイスターズでハイパフォーマンスグループリーダーをつとめる川尻隆氏によると、プロ選手でも大観衆の前では不安が生じるという。これを克服するには“今この瞬間”に意識を向ける必要があり、そのためには身体感覚へのアプローチが重要だと語る。
全身で音と触覚を感じる『NOUS ARE』は、その集中状態を生み出す最適なツールとなる。
また、『NOUS ARE』の技術指導を担当したのは、東京大学大学院 情報理工学系研究科の大黒達也准教授だ。ボディマップ理論に着目し、“音楽と身体性”“脳と身体の関係性”に基づいた高度なハプティクス設計が施されている。
例えば、“頭にくる(頭部)”や“むかつく(腹部)”といった感情と身体部位の結びつきや、「高音は身体の高い位置、低音は低い位置で感じる」という感覚特性に合わせて刺激部位を設定。単なる音との連動ではなく、計算された刺激で体験者の感情や高揚感、そして“ワクワク・ドキドキ”を引き出す設計となっている。
■J-POPで気持ちが整う!実際に『NOUS ARE』を体験してみた
実際の体験は、座面から背もたれにアクチュエーター(モーター)が内蔵されたチェアに腰掛け、心拍センサー内蔵のクッションを抱えて行う。心拍データをもとに、状態の変化が数値スコア化される仕組みだ。
『NOUS ARE』には、力強い気分を演出して気持ちを高める“RISE”、繊細な体験を通じて気持ちを落ち着かせる“COOL”、そして両者を組み合わせ、適度な高揚と集中状態を作る“FLOW”という3つのモードが用意されている。
今回は7分間の“FLOW”モードを体験。アップテンポな“RISE”パートでは、YOASOBIの「アイドル」「怪物」、緑黄色社会「Mela!」、キタニタツヤ「青のすみか」、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」などの人気J-POP楽曲を選択できた。これらのチョイスは、体験者がより親しみやすい楽曲で、『NOUS ARE』を体験してほしいという意図で選ばれたもの。
そして、ゆったりした雰囲気の“COOL”パートでは、作曲家・とくさしけんご氏との共同制作楽曲が流れた。
ちなみに、楽曲データから『NOUS ARE』用のハプティクスデータを作成する手法についてSFGI赤羽氏に尋ねてみたが、残念ながら現時点では一切が秘密であるとのこと。
ハプティクス強度を最大にしても不快感は一切なく、試合前の円陣で気持ちを高めるような心地よい高揚感が全身を駆け巡る。音響も高音は耳近く、低音は腹部より下で鳴るような特別な定位が施され、あえて例えるなら映画館の4DXといった体感型映像に近い臨場感だった。
専用スマホアプリで手軽に操作でき、体験後には適度な爽快感を得ることができた。
■パフォーマーからオフィスへ広がる『NOUS ARE』のこれから
現在は一般体験の予定はないが、横浜DeNAベイスターズへの導入に加え、音楽アーティスト事務所へのトライアル提供も始まっており、パフォーマー向け展開は着実に広がっている。
さらに、コクヨとの共同開発が示すように、『NOUS ARE』が次に見据えるのはオフィスでの活用だ。重要プレゼンや商談の直前など、ビジネスの“勝負所”でパフォーマンスを発揮したいオフィスワーカーにとって魅力的なサービスとなる可能性を秘めている。
近い将来、オフィスで『NOUS ARE』を使って本番直前のコンディションを整える風景が当たり前になるのかもしれない。
TEXT BY ワタナベダイスケ



















