井口理(King Gnu)が主演を務める、吉田修一(『国宝』『横道世之介』)の短編集『逃亡小説集』(角川文庫)内に収められている『逃げろお嬢さん』が映画化、10月2日より全国公開中。(配給:NAKACHIKA)10月2日の公開初日、ユナイテッド・シネマ豊洲にて開催された公開記念舞台挨拶に、主演の井口理(King Gnu)、共演者の深川麻衣と伊藤ちひろ監督が登壇。イベントレポートが到着した。
■大切な人を信じることで守ろうとした、あるファンの小さな奇跡の一日
親の仕事を継ぎ、つつましやかに温泉宿を営む康太。いつもの日常のなか、ある小道で前を走る車の様子がおかしい。心配した康太が車を止めると、運転していたのは、高校時代から康太が推している元アイドル“鮎川舞子”だった! しかしテレビのニュース速報では、舞子の夫が薬物で逮捕され、舞子自身も疑惑のなか、行方不明になっているとの報道を見たばかり…。混乱する康太だったが、これまで康太の人生を照らし続けてくれた推しである舞子に、今自分ができることを全うしようと心に決める。
主人公の康太を演じるのは、映画『ひとりぼっちじゃない』に続き、映画主演2作目となる井口理(King Gnu)。日本の音楽シーンを牽引するバンドKing Gnuのボーカル兼キーボードとして活躍、個人としては、2025年は映画『国宝』の主題歌「Luminance」に歌唱参加、第49回日本アカデミー賞の主題歌賞を受賞。音楽、俳優としても活躍の場を広げる井口が、大勘違いのなか、推しのために一生懸命奮闘する康太を演じる。康太が長年推している元アイドル・鮎川舞子には、2026年に俳優10周年を迎え、4クール連続ドラマ出演の深川麻衣。ある事情があり、逃亡を続ける舞子が康太に出会い揺れ動く心情を、繊細に表現した。
監督は、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(2008年)などの脚本家として活躍する一方、近年では、『ひとりぼっちじゃない』(2023年で映画監督デビューをし(脚本・原作も担当)、同年には監督・脚本・原案を務めた『サイド バイ サイド 隣にいる人』が公開された、伊藤ちひろ監督。
一億総推し時代と言われている今、信じ抜くことで自分の人生を支えてくれた推しを守ろうとしたある男の小さな奇跡の一日の物語。
■映画の内容にちなみ「今、自分が逃亡するならどこに逃げたいか」についてトーク
上映後の舞台挨拶にて公開初日を迎えた心境を尋ねられた井口は、まず「今日、マスコミの皆さんの取材が入っていることを実は30分前ぐらいに知って、めっちゃ緊張しています」と打ち明けた。
伊藤監督とタッグを組んだ1作目『ひとりぼっちじゃない』の初日との違いに話が及ぶと、井口は本作の観客の反応を「温かいなという印象でした」と表現。この発言に、観客からは拍手が起こった。それにより「若干、緊張が和らいでいる」といい、続けて「よかったのかな?」と本作の出来栄えを問いかけると、大きな拍手が返ってきていた。
一方、伊藤監督は、作品を重ねても初日を迎える気持ちは「変わらない」とコメント。公開に向けて力を尽くしてきたスタッフやキャストを代表してこの場に立っていることに感慨をにじませ、「うれしいです」と喜びを伝えた。
元アイドル・舞子を演じた深川は、伊藤監督と井口が参加する本作について「絶対これは面白い作品になると思って」と出演を望んだ気持ちに触れた。続いて明かしたのは、アイドル時代の舞子を描くダンスシーンの練習についてだ。振り付けはアイナ・ジ・エンドが担当し、直接教わる時間もあったそうで、「アイナちゃんも『井口くんをこの振りで落とそうね!』と言って、すごくかわいい振りを考えてくださった」と振り返った。
音楽活動に加えて俳優としても経験を重ねる井口だが、芝居への向き合い方の変化を問われると「全然そういうのないです(笑)。恥ずかしいので…」と照れ、汗だくになるひと幕もあった。俳優同士のコミュニケーションにも触れながら、「今、すごく楽しく取り組ませてもらっている感じです」と、現在の心境を口にした。
俳優の仕事が音楽活動に与えた影響については、2025年に2時間のストレートプレイに出演した経験を挙げ、「ライブのあり方みたいなものは変わった気がします。誰が何やっているんだとか、そういうところへのアンテナは、もしかしたら少し成長があるのかな」と話した。
今回井口と深川初共演となった。互いの印象について、井口は康太を演じるにあたり、舞子を好きでいる気持ちを持とうと、深川の映像を見ていたことを明かした。実際に会ってもメディアを通じた印象との違いはなく、「いい意味で、すごく自然な方だな」と感じたそうだ。
深川は、実際に会う前にはKing Gnuのアーティストとしてのイメージから「ずっとサングラスをかけていたりするのかな」と想像していたが、撮影現場で目にしたのは、監督と丁寧に話し合いながら役をすり合わせる姿だった。「本当に全てのシーンで丁寧に役に向き合ってる姿を見ていた」と振り返り、「まっすぐな方だな」という印象は、撮影を終えてからも変わらないと伝えていた。
撮影中はあまり話す機会がなかったというふたりだが、その後の取材を通じて知った一面もある。井口は「ワンちゃんが好きなんだなっていうのを、この間初めて知りました」と、深川へのあらたな発見を挙げた。
物語にちなみ、人生を支え続けてくれたものを尋ねられると、井口は長い時間を共にしてきたバンド仲間を挙げた。「長いことバンドメンバーと時間をともにしてきましたから、やっぱりそこはバンドメンバーですかね。今、自分の核になる部分に確実にいるので」と、その存在の大きさに触れ、家族も自身の支えだと続けた。
深川が選んだのは、昔から大好きなさくらももこのエッセイ。朝の読書の時間にもよく読んでいたといい、「肩肘張らずに読める」と親しみを込めた。物事を切り取る視点やユーモアにも引かれており、「日常の何でも面白くしちゃうとか、面白く生きるって、すごく素敵だな」と、その魅力を紹介。大人になってからも読み返したくなる作品だと話した。
映画の内容にちなみ、「今、逃亡するとしたらどこに逃げたいか」との質問には、井口が舞台挨拶の緊張のあまり「僕はもう楽屋に逃げたいです」と回答。「壇上から降りて向かいたいんですけど…(笑)」と続けた。
深川の答えは「辛い鍋」。激辛はそれほど得意ではないものの、寒くなってきたので行きたくなったと明かし、「寒さから逃げて、あったかい鍋を食べに行きたいです」と言葉をつないだ。
最後は登壇者から観客へメッセージが送られた。深川は、時間を使って劇場まで足を運んでくれた多くの観客に感謝。映画は口コミで広がる部分も大きいとし、面白い、いい作品だと感じたら、「大切な方に『こんな映画あったよ』って教えていただけたら、とてもうれしく思います」と願いを込めた。
井口も「家族や友達、会社の人に勧めてくれたらとてもうれしいです」と呼び掛け、「きょうは本当にありがとうございました」と締めくくった。
■作品情報
『逃げろお嬢さん』
全国公開中
出演:井口 理(King Gnu) 、深川麻衣
浅香航大、河井青葉、田中偉登
原作:吉田修一「逃げろお嬢さん」(『逃亡小説集』所収・角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督・脚本:伊藤ちひろ
配給:NAKACHIKA
(C)2026 吉田修一/KADOKAWA/In Her Room
■関連リンク
『逃げろお嬢さん』作品サイト
https://nigeroojosan.com



