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COLUMN

2021.08.31

BLACKPINK、MAMAMOOなど。K-POPの“ガールクラッシュ”に見る、多様性

TEXT BY 筧 真帆(日韓音楽コミュニケーター)

女性が憧れるようなカッコ良い女性=ガールクラッシュ

“女性が憧れるようなカッコ良い女性”を意味する、“ガールクラッシュ”。

韓国で流行し、K-POP人気とともに日本でも浸透。今や“ガルクラ”と略されるほどだ。K-POPはまさに今、ガールクラッシュ全盛期。

まず、現在のガールクラッシュ代表格と言えるのは、BLACKPINK。

エッジのきいたファッションをはじめ、ヒップホップやEDM強めサウンドで聴かせる音楽性、個性際立つ歌い方で、チーム名の通り、強さや自信を示す“ブラック”とフェミニンな“ピンク”の融合を体現するグループだ。

また高い歌唱力で人気を誇るMAMAMOOは、最大のヒット曲「HIP」で、他人に忖度しない自分らしいスタイルを歌っている。

特に、外見で批判された経験のあるファサは、「この時代の美しさの基準に自分が合わないなら、自分が新しい基準を作ればいい」と語り、同曲でも“世界にあなたは1人だけ/なのにどうして自分の顔に唾を吐く?”とルッキズム(外見至上主義)に抗った歌詞を乗せ、ガールクラッシュの1組として台頭した。

“ガールクラッシュ”という言葉の歩み

そもそも、「ガールクラッシュ」はどんなきっかけで生まれた言葉なのだろうか。

韓国最大のポータルサイト『NAVER』で検索を遡ると、2010年代前半から主に女性の芸能人やアニメキャラクターを推す女性ファンたちの間で使われ、2015年1月にスタートした女性ラッパーたちのバトル番組『UNPRETTY RAPSTAR』でJessiやチーターなどキレモノ女性ラッパーが脚光を浴びる頃から頻繁に登場。

それ以前の2009年より活躍していた“カッコ良い系ガールズグループ”の開拓者である2NE1(BLACKPINKの先輩)は、ガールクラッシュのワードが後追いする形でその代名詞と認知され、現在の隆盛へ繋がったとみられる。

従来のガールズグループは、純情可憐やキュートなカワイイ系か、セクシー系の大きくふたつに分けられた。カワイイ系グループが後にセクシーへ移行するケースも多々あり、特に2014年頃は、SISTAR、AOA、ヒョナ、Girl’s Day、STELLARなどセクシーブームが花盛りに。

しかし、セクシーを通り越して過激さを競うようになったため、放送コードも厳しくなりセクシー系コンセプトは次第に沈下。

ただし、レアケースもある。今年の春、デビュー10年目にして解散目前だったBrave Girlsは、セクシーな踊りが特徴の「Rollin’」が、軍隊への慰問公演の動画をきっかけに大ブレイク。4年前の曲が一気にチャートの首位へ駆け上がり、腰をくねらすセクシーダンスは社会現象にもなった。

元々、軍隊の間で長年にわたる人気曲で、当初は現役軍人やOBらの間で火がついたが、次第に楽曲への評価と、努力が実を結んだサクセスストーリーとして男女問わず勇気を与え、グループ自体の支持へと繋がった。

現在、ガールクラッシュで表現されるもの

いっぽう、ガールクラッシュの発信国として、韓国で女性が生きやすいわけではない。

兵役のある韓国は、男性には“男らしさ”が求められるお国柄ゆえ、その反動として、フェミニズムに対する反発は日本以上に敏感だ。つい最近も、オリンピックのアーチェリーで金メダルを獲得したアン・サン選手が、ショートヘアというだけでフェミニズム論争に巻き込まれたことは記憶に新しいだろう。

そのため音楽の中で放つガールクラッシュも、以前は男性をもしのぐ強い女性像を指す傾向にあったが、現在は様々なコンセプトに変化してきている。

TWICEの妹分ITZYは、“誰が何て言ったって私は私”と「WANNABE」で自己肯定を歌い、昨年秋にシングル「Black Mamba」でデビューしたaespaは、世界を混乱させる“ブラックマンバ”(猛毒を持った毒蛇の名称)に立ち向かうストーリー性で展開するなど、この2~3年以内にデビューする新人ガールズのほとんどがカッコ良い系を軸とし、多彩なアイデンティティーで勝負している。

また、一貫した世界観でメッセージを届けるチームも存在。

女性騎士のような佇まいのEVERGLOWは、「FIRST」で闇から希望へ立ち向かう力強い歌詞をトラップビートに乗せて歌い、ロックをベースにダークファンタジーなコンセプトを掲げるDREAMCATCHERは、ネットによる誹謗中傷を嘆く「BOCA」が自身最大のヒットとなった。

現在のガールクラッシュは、誰かを敵とせず、この混沌とした時代でも、“自分らしく堂々と生きる姿”“ありのままの自分を愛せる姿”を示し、手を取り、背中を押してくれる対象なのだろう。

時代とバランスを取りながら進化し、カルチャーの中で存在感を示す彼女たちは、逞しい。