THE F1RST TIMES

COLUMN

2021.09.03

月姫“新生”に華を添えるReoNaは、今の世にこそ必要な存在

TEXT BY 田中隆信
LIVE PHOTO BY 平野タカシ

それぞれの“絶望”に寄り添いたいと願う、ReoNa

ReoNaの最新作となる、EP『月姫 -A piece of blue glass moon- THEME SONG E.P.』もそうだが、デビューから彼女が掲げてきた“絶望系アニソンシンガー”という言葉の意味を、リリースごとに強く感じている。

最初に“絶望系アニソンシンガー”という紹介を聞いた時は、ダークな世界観の作品で絶望へと導くのか? …などと思ったりもしたが、“背中を押さない、手も引かない。ただひたすら一人ひとりが抱える絶望に寄り添う”という意味だとわかると、その想いや考え方にものすごく共感できた。

絶望させたいわけではなくて、それぞれの“絶望”に寄り添いたいという想いに──。

当事者の心を少しでも救えるよう、あくまで寄り添うだけ

そして、昨年から続くコロナ禍という状況下において、ReoNaのその想いがより深い部分に届いたような感覚にもなった。

いろんな制限が設けられ、終わりの見えない辛い時間が進んでいる。そんな状況の中でも前に進もうと頑張っている時…「頑張れ!」と声をかけられたり、背中を押してもらうこともうれしいが、そこに寄り添う気持ちのほうが当事者としては変にプレッシャーを感じることもなく素直にありがたいと思えるだろうし、そして温かく感じるのではないだろうか。

逃げることは悪である、弱さである。そういう先入観のようなものがあるかもしれないが、立ち向かうことだけが正しいこと、正義ではないはず。

悩みや絶望などもその内容は人それぞれ。いろんな“心”に寄り添いたいと、ReoNaが発表する楽曲もつねにアップデートされているように思うのだ。

月が見えるなら 消さないで…ReoNaが歌う「生命線」

そんななか発表される、本作。「生命線」「ジュブナイル」「Lost」「Believer」が収録されているが、特に注目したいのが「生命線」だ。

「生命線」はタイトルもまさに“命”と直接の関わりを持つ言葉で、“ゾクリと脈を打つ 命の線/ナイフでなぞって”と、痛みを感じる表現もあり、この曲でもひとつの“絶望”が描かれている。

しかし、同曲で重要な存在となっているのが“月”。“月が見えるなら/消さないで”“消えないで”と歌うReoNaの歌声からは、その絶望に共感しながらもそっと抱きしめるような優しさがある。

「頑張れ」ではなく、「消えないで」と語りかける言葉なのがReoNaらしいところであり、押しつけがましさがなく、すっと受け止めることができる。太陽だと眩しすぎて、熱くて、「頑張れ」に近い感じがしてしまうが、その太陽の光を反射して輝く月というところにも、彼女の優しさを感じずにはいられない。

どこにいても、どこからでも、夜空を見上げれば見つけることができる、月。優しくて普遍的、そんな月に希望を託しているのだろうか…。

絶望の淵に立ってしまったとしても、そこに寄り添う人がいるなら

2曲目の「ジュブナイル」にも“月”は登場する。生きていくなかで傷は増えていくが、きれいな月だけが微かに微笑んでくれる…「生命線」での月と同じように、普遍的であり、優しいものとして、この曲の中でも重要な存在となっているようだ。

不安や悩み、絶望を抱えていた人は以前から多かったと思うが、“自分は大丈夫”と思い込み、自覚していなかった人も多かったように思う。

しかし、コロナ禍ということもあって、それを自覚し、痛感している人も増えているのもたしか。

だからこそ、絶望に寄り添い“代弁者”として歌で表してくれる、ReoNaが今必要なのだと感じている。


リリース情報

2021.09.01 ON SALE
EP『月姫 -A piece of blue glass moon- THEME SONG E.P.』


ReoNa OFFICIAL SITE
https://www.reona-reona.com/