THE F1RST TIMES

COLUMN

2021.09.17

『THE FIRST TAKE』登録者数500万人突破。アーティストが焦がれるコンテンツに成長するまでの軌跡

TEXT BY 永堀アツオ

■『ミュージックステーション』と並ぶ音楽コンテンツに

アーティストの一発撮りのパフォーマンスを切り取るYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』のチャンネル登録者数が、開設から約1年10ヵ月という短期間で500万人を突破した。

音楽チャンネルでは歴代最速の記録だそうだが、それもそのはず。日本のYouTubeチャンネルには、地上波の音楽番組やCSの音楽専門チャンネル並みにブランド化された人気の音楽プラットホームはなかったのだ。

『THE FIRST TAKE』(以下、TFT)が開設されたのは2019年11月。記念すべき第1回目の出演アーティストはadieu(上白石萌歌)で、映画『ナラタージュ』の主題歌となった「ナラタージュ」の初となるライブパフォーマンスを披露した。

アーティストは、カメラではなく、白いスタジオに置かれた一本のマイクに向かって歌う。例え、歌詞や音程を間違ったとしても撮り直しのない一発撮り。ライブやコンサートとも、レコーディングとも違う、独特の緊張感。サムネやロゴのデザイン、カラーリングも含めて、コンセプトが初回から統一されているところもこのチャンネルが大きな成功を収めた理由のひとつだろう。

翌月となる2019年12月には5組目のアーティストとしてLiSAがTVアニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマで、のちに『NHK紅白歌合戦』でも歌うことになる大ヒット曲「紅蓮華」を初のピアノアレンジで披露。公開と同時にTwitter上でトレンドに入り(現在は1.1億回)、チャンネルの認知度を一気に高めた。

そして、現時点でTFTを最も象徴するアーティストが2020年3月に登場した。第32回に出演した、4人組ロックバンド、DISH//のギター&ボーカルを務める北村匠海だ。TFTでは、毎回、登場アーティストがどの曲を歌うのかも話題となっているが、彼が選んだのは、2017年8月にリリースされた10thシングルで同名のドラマ主題歌としてOKAMOTO’Sが作詞作曲を手がけた「僕たちがやりました」のカップリングに収録されていた「猫」であった。あいみょんが作詞作曲したバラードをメンバーが事前レコーディングしたアコースティックバージョンで披露すると、公開と同時に「泣ける!」と話題となり、4ヵ月で3,000万回を突破。

4月末には同チャンネルとしては初の試みとなる「猫〜THE FIRST TAKE ver.〜」が配信リリースされ、6月には音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日)にも出演。それにより、TFTの映像、オリジナルとアコースティックバージョンのストリーミング再生はさらに伸び、情報番組でも社会現象として取り上げられ、ついには同曲を原案にしたオリジナルドラマまでが制作された。現在は、TFTの再生回数が全187本中トップの1.5億回、「猫」と「猫〜THE FIRST TAKE ver.〜」のストリーミング再生回数は3億回を達成。2020年を代表する一曲となった。

また、コロナ禍においては、歌い手の自宅やプライベートスタジオから一発撮りを届ける『THE HOME TAKE』というコンテンツに形を変えたが、YOASOBI「夜に駆ける」が1.1億回の再生数を突破。milet「inseide you」や優里「かくれんぼ」、SUPER BEAVER「ひとりで生きていたならば」、Rin音「snow jam」などの作品も続々と公開された。

その後も一発撮りオーディション企画『THE FIRST TAKE STAGE』やライブハウスから一発撮りを届ける『THE FIRST TAKE FES』の開催など、様々なプログラムを立ち上げると同時に、yamaやずっと真夜中でいいのに。、amazarashiなどといったメディアにはあまり登場しないアーティストをはじめ、YOASOBI、優里、Rin音、MAISONdesといったSNS上で注目を集める新世代シンガーの出演など、SNSバイラルアーティストをいち早くピックアップしながらも、郷ひろみや鈴木雅之、藤井フミヤなどのレジェンドアーティストも出演。さらに、LiSA×Uru、KANA-BOON×ネクライトーキーなどここでしか見られない意外なコラボレーションも実現させている。

かつて、私立恵比寿中学は、金曜日の夜の8時に放送されていた生放送の音楽番組『ミュージックステーション』に出演することを夢見て、2015年1月に2ndアルバム『金八』をリリースし、同年2月に初出演が叶い、「金八DANCE MUSIC」を披露した。メンバーは喜びの声を上げ、ファンは爪痕を残した彼女たちを誇りに思っただろう。そのエビ中が、休養していたメンバーの安本彩花の復帰の場として、TFTを選び、2021年7月16日に公開された「なないろ」では、「ただいま」「おかえり」という再会の場面がドキュメントとして切り取られていた。

さらに先日、第148回に出演したポルノグラフィティの岡野昭仁は「すごく出てみたかったんです」というコメントを残し、坂道グループとして初登場となった乃木坂46の4期生、遠藤さくらの挑戦には、感動のコメントとともに、ファンからの応援の声が数多く届いていた。

アーティストが出演を願い、ファンも自分の推しをみんなに知って欲しいという想いから出演を希望するという意味で、TFTの現在は、金曜日の夜8時から9時へと放送時間を移動した『ミュージックステーション』と並ぶ音楽コンテンツになったということだろう。

毎週金曜日、夜10時のプレミアム公開を心待ちにしている人は多いはず。次はどんなアーティストが登場し、どの曲を歌うのだろうか──。



YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q

『THE FIRST TAKE』OFFICIAL SITE
https://www.thefirsttake.jp/