THE F1RST TIMES

COLUMN

2021.10.01

Omoinotakeの“青い願い”。アニメ『ブルーピリオド』OP曲「EVERBLUE」に重ね見る、彼らの轍

TEXT BY 天野史彬

■“自分として生きる”ことを望む人へ向けられた「EVERBLUE」

“どんな僕でいたい? どんなふうに生きたい?”──そんな問いかけを流麗なメロディに乗せて歌うOmoinotakeの新曲「EVERBLUE」は、同曲がオープニングテーマとなるTVアニメ『ブルーピリオド』(山口つばさ原作)の世界観と重なりながら、同時に、“答え”を見つけたかと思えばすぐにまた次の“問い”が現れて束の間の安堵を覆い隠してしまう、そんな出口のない毎日を必死に生きる人々に、そっと寄り添うような普遍的な魅力を持った一曲である。傷口は隠さず、苦しみは誤魔化さず、ひとえに“自分として生きる”ことを望む人へ向けられているような切実で丁寧な筆致が、とてもOmoinotakeらしい。

2012年に島根県出身の中学の同級生同士、藤井怜央/レオ (Vo&Key)、福島智朗/エモアキ (Ba)、冨田洋之進/ドラゲ(Dr)の3人で結成されたOmoinotake。「EVERBLUE」は彼らにとってのメジャーデビュー曲となる。

振り返れば、2020年には「モラトリアム」が映画『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』の主題歌に起用され、また「産声」がドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(TX)のオープニングテーマに起用されるなど、Omoinotakeの名前を聞くことや曲を耳にする機会は近年、俄然多くなっていた。

■“今”だからこその自由と隠しきれない野性味

そんな彼らの目覚ましい活躍の由縁を考えてみれば、まずはギターレスという編成を見事に利点に変え、ピアノトリオとしての旨味を存分に生かした楽曲の、完成度と自由度の高さが挙げられるだろう。隙間を活かしたミニマムなプロダクションが生み出すメロウネス。時にストリングやホーンもフィーチャーし、楽器の有機的な響きを豊かに聴かせるサウンドメイク。Omoinotakeの楽曲には、生も同期も、新しさも懐かしさも、あらゆるものを混ぜ合わせることによって生まれる“今”だからこその自由がある。

また、彼らの根であり芯であるといえる“歌”の存在感も大きいだろう。Omoinotakeは作詞をベースの福島が担当し、ピアノボーカルの藤井が歌うというスタイルをとっているが、威風堂々とメロディを歌い上げたかと思えば、複雑なリズムもまるで一筆書きのように歌いこなす藤井の柔軟で流れるようなボーカリゼーションは、バンドに他に替えの効かない独自の身体性をもたらしている。一見、洗練されたポップスに聴こえるし、それは実際そうなのだが、しかし、Omoinotakeの音楽には隠しきれない野性味のようなものがある。それは、彼らがその音楽作りにおいて、自分たちの出自やルーツ、あるいは音楽家としての身体の動きを裏切っていないからだろう。この“自由”と“野生”に、今多くの人が惹かれているのではないか。

Omoinotakeがこうした独自の音楽性を獲得するに至ったのは、彼らが上京してから続けてきた、渋谷スクランブル交差点でのストリートライブの影響も大きいだろう。実際、彼らは今年7月には「無観客のオンライン・ストリート・ライヴ・ツアー」として『#NoBuskNoLife』というタイトルの配信ライブツアーも敢行している。そのくらい彼らにとって“ストリート”という出自は切っても切り離せないものなのだ。ステージも照明もない場所で、自分たちの身ひとつで音楽を奏で続けてきたこと。目の前を歩き去っていく人々の日常の中に自分たちの音楽が響いてほしいという切実な欲求と、それが実現することの難しさをダイレクトに感じ続けてきたこと──そうした経験が、今のOmoinotakeの音楽が持つ強い訴求力に繋がっているのではないだろうか。「一緒に歌おう」と、「一緒に踊ろう」と、言うのは容易いが、街中に音は溢れているし、人にはそれぞれの人生と時間がある。その現実の前で自分たちの信じた音楽を奏で続けてきたこと。それによって得た実感が、今のOmoinotakeの音楽の根底にあるのではないかと思う。

■人の“生き様”とでも言うべきものが、叫びのようにこだましている

音楽を通して人を見続け、音楽を通して人と繋がろうとし続け、そして、音楽を通して自分自身であろうとし続けてきたバンドだからだろう、時に端正に、時に先鋭的に、魅惑的なポップソングを生み出し続けてきたOmoninotakeの音楽の奥には、常に人の“生き様”とでも言うべきものが、抑えきれない叫びのようにこだましている。それは新曲の「EVERBLUE」も然り、である。

“擦る瞼 満員の電車の中
まるで誰かの 人生のエキストラみたい
ただ欲しかったのは 今を生きる理由
イメージしてた未来に どれだけ近づけただろう“
(「EVERBLUE」)

蔦谷好位置がプロデュースとアレンジで参加した「EVERBLUE」は、細やかに躍動し前進するグルーヴ感が心地よく美しい一曲だ。Omoinotakeのストロングポイントがこれでもかと聴こえてくる、まさにメジャーデビュー曲にふさわしいポップソング。そしてここには、永遠に“青く”生き続けようとする意志が綴られている。そこには、“夢を叶えること”の困難さではなく、今この瞬間を“夢の中で生き抜くこと”の困難さがある。しかし、どれだけ困難であろうが、望むのはそれなのだ。未来への投資や自己犠牲として“今”を生きるのではなく、今を輝き、今を夢見て、今のために今を生きる──そんな生き方を、この「EVERBLUE」は私たちの前に提示する。この歌を切実に歌えるのは、『ブルーピリオド』という作品の影響も大きいだろうが、やはり、ここにOmoinotakeというバンドの人生も重なっているからなのではないかと思えてくる。

この先の彼らがどれほどの深い青さの中で生きていくのか。その姿を楽しみに見ていたいと思う。


リリース情報

2021.10.01 ON SALE
DIGITAL SINGLE「EVERBLUE」

2021.11.17 ON SALE
EP「EVERBLUE」

初回生産限定盤 スペシャルスリーブケース



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