THE F1RST TIMES

COLUMN

2021.10.09

兵役を経て伝えたい、台湾の“元”ポンコツ4人組noovyのシリアスでポジティブな現在地点

TEXT BY 宮崎敬太

■日本デビュー当時は表情にまだ少年のあどけなさが残っていた

台湾出身の4人組バンド・noovyがニューシングル「Before We Die (Japanese ver.) feat. Anly」を9月10日に発表した。「スピードアップ」以来、約2年半ぶりの日本語曲となる。この間、noovyを取り巻く環境は大きく変わった。オリジナルメンバーのHank(Gu)が脱退し、代わりベースを担当していたJKがギターを握り、新メンバーJacob(B)が加入した。私は日本デビューシングル「Garage」をリリースしたとき、彼らにインタビューした。当時は表情にまだ少年のあどけなさが残っていた。オーディション合格からバンド結成、台湾&日本デビューに至るエピソードはドタバタで、特に印象的だったのは「そもそもバンドを組むという概念がなかった」とShawnが話していたこと。ほとんどのメンバーが楽器を弾けなかったのだ。なのにバンド。4人はわけもわからず怒涛のような日々を過ごしていたのだろう、と感じたのをよく覚えている。

そんな彼らも平均年齢23歳の青年になった。今回の楽曲はメンバーが兵役を経験し、そこで出会った人たちの気持ちを元に書いているという。ちなみに台湾の兵役は4ヵ月。とは言え軍事訓練なので、体力面はもちろん、集団行動の徹底など、15歳でオーディションを合格し、そこから芸能活動をしてきたnoovyたちにとって、これまでとは違った意味でハードな経験になったことは容易に想像できる。

■死に対する解像度が鮮明になってしまった

そのせいか「Before We Die(死ぬ前に)」というタイトルにもインパクトを感じる。おそらく世界中でネガテイブな猛威を振るったコロナパンデミックの影響もあるかもしれない。人は死んでしまう。あまりに当たり前だが、同時に日常ではまるで現実味が感じられないこの事実。だがnoovyは兵役で、私たちはパンデミックで、それぞれ死に対する解像度が鮮明になってしまった。

「Before We Die」は中国語版と日本語版で対になった物語だ。先に配信された中国語版は、あまりに巨大な現実社会と相対したとき、浮き彫りになるちっぽけな自分、そこで生じる疲弊や焦燥感に焦点を当て、ありのままの自分でいる時間の重要性を歌っている。この歌詞はメンバーが中心になって書いたもの。そして9月に出た日本語版の歌詞はフィーチャリングされたシンガーソングライターのAnlyとともに書き上げた。

■純粋に音楽を楽しんでいるAnlyから受けた強い衝撃

noovyは日本活動していた数年前、ギター一本で堂々とパフォーマンスするAnlyを渋谷のライブハウスで目撃した。ステージで純粋に音楽を楽しんでいるAnlyの姿は、当時ライブのあり方に迷っていた4人に強い衝撃を与えたという。日本語版は中国語版よりもポジティブな印象を受ける。noovyは中国語版で提示した厳しい現実と向き合っていくためのアンサーを表現するため、Anlyをゲストボーカリストに招いた。

制作はもちろんリモート。Anlyは日本語詞のディレクションにあたり「同世代の人たちが今どんなことを思い、悩み過ごしているかを考え、その感情に寄り添い抱きしめてあげられるような歌詞にしたいなと思いました」と話している。その言葉通り、オリジナルの歌詞を尊重しながら、微妙に言葉遣いを変え、本音を言い合う存在ーー恋人、友人、家族の重要性に落とし込んだ。中国語版と日本語版で連作になっているMVを見ると、より楽曲のメッセージをストレートに感じることができるはずだ。

■フレッシュな感性を持ったアーティストへ

外に出るといつもマスクをしなきゃいけない。比喩的にも現実的にも息苦しい。仲間にも会えない。ライブも行けない。そんな孤独なとき、不安は自分を包囲してくる。しかも気づかないうちに。そんなときにいつも寄り添っている音楽。“なにげない日々を共に過ごせる”こと。noovyがこの困難な時代に響かせたいのはそんなポップミュージックだったのかもしれない。もはや誰も彼らをポンコツと呼ばない。同時代を共に生きるフレッシュな感性を持ったアーティストと言っていいだろう。


リリース情報

2021.09.10 ON SALE
DIGITAL SINGLE 「Before We Die(feat.Anly)」


noovy OFFICIAL SITE
https://www.noovy.jp/