THE F1RST TIMES

COLUMN

2021.10.13

世界的バイラルヒットを飛ばすマネスキン。ロックが下火とされる中、なぜこれほど愛されるのか?

TEXT BY 新谷洋子

■ユーロヴィジョンで、イタリア代表としては31年ぶりに優勝

昨年2020年は大型イベントが軒並みキャンセルの憂き目に遭い、それゆえに1年延期で開催された今年、ただならぬ盛り上がりを見せたというケースが多々あった。ヨーロッパの場合、その筆頭に挙がるのがサッカーの欧州選手権であり、ユーロヴィジョン・ソング・コンテストだ。しかもどちらも覇者はイタリア。ご存知の通り、コロナ禍で殊に深刻な状況に陥った国とあって人々を多いに元気付けたそうだが、サッカー強豪国だけに欧州選手権を制したことは意外ではなかった。驚いたのは後者である。ワインカラーのレザーのジャンプスーツにプラットフォーム・ブーツというド派手な出で立ちでステージに立って爆音を響かせ、歴史的にロック勢は苦戦を強いられるユーロヴィジョンで、イタリア代表としては31年ぶりに優勝して故郷に錦を飾ったのが、目下世界を席巻中の4人組バンド、マネスキン(Maneskin *aは上リング付きa)だった。

■受賞スピーチで「ロックは不滅だ!」

彼らについて詳しく話す前にまずはユーロヴィジョンの説明が必要だろう。アバを輩出したことが有名だが、これは、ヨーロッパ各国が代表を送り込んで楽曲の魅力を競い、審査員による採点と一般視聴者の投票で優勝者が選ばれる大イベント。約2億人の視聴者を誇っており、その時々の政情が絡んで騒動が起きたりもする興味深い催しなのだ。第65回にあたる今年は5月に開かれ、マネスキンは、社会が押し付けるルールに抗う挑発的なエントリー曲「ジッティ・エ・ブオーニ」で一般視聴者の熱い支持を獲得。カリスマ性と華を滴らせるフロントマンのダミアーノ・デイヴィッドは、受賞スピーチで「ロックは不滅だ!」と見返すように言い放ったものだ。

そのダミアーノとヴィクトリア・デ・アンジェリス(ベース)、トーマス・ラッジ(ギター)、イーサン・トルキオ(ドラムス)の4人のメンバーは現在21~22歳。デンマーク語で月光を指す言葉を名前に選んで(デンマーク系イタリア人であるヴィクトリアの提案だ)、高校時代にバンド活動を始めた彼らは、地元ローマのストリートでライヴの腕を磨き、人気オーディション番組『Xファクター』のイタリア版で準優勝したことを機にデビューを果たしている。

■日本では3曲がSpotifyバイラル・チャートでトップ3を独占

そして18年にファースト・アルバム『イル・バッロ・デッラ・ヴィータ』でイタリアのチャートで1位に輝き、本国では今年3月に、このたび日本でもリリースされるセカンド・アルバム『テアトロ・ディーラVol.1』を発表。イタリア語で歌う「ジッティ・エ・ブオーニ」はその『テアトロ~』からのシングル曲だ。ちなみに、ユーロヴィジョン優勝者のエントリー曲は毎回ヒットを博すのだが、マネスキンの場合はそのスケールが破格だった。「ジッティ・エ・ブオーニ」に加えて、次のシングル「アイ・ワナ・ビー・ユア・スレイヴ」と、4年前の音源ながらTikTokで人気に火がついた「ベギン」(デビューEP『チョーズン』に収録されていたフォー・シーズンズのカヴァー)が、三つ巴になって大ヒット。例えば英国では「アイ・ワナ・ビー~」と「ベギン」がトップ10圏内に同時にチャートインする一方、「ベギン」はSpotifyのグローバル・トップ50の1位に輝き、日本ではこれら3曲が同バイラル・チャートでトップ3を独占。イタリアン・アーティストとして過去に例のない、グローバルな成功を収めているのだ。

■親しみやすいのにフレッシュで、どこか引っかかる

じゃあ、ロックが下火とされる中でこれほどまでに愛されたのはなぜなのか? そもそもイタリア発のロックと言えば70年代のプログレッシヴ・ロックの印象が強いが、彼らのルーツは同じ70年代でも、レッド・ツェッペリンやエアロスミスなど英米の王道系。ステージで見せる旺盛なショウマンシップはあの時代のロックスターたちを想起させるものだ。同時に90年代以降のミクスチュア・ロックの影響を窺わせるファンキーなグルーヴと、マイナーコードの哀感溢れるメロディもマネスキンのウリで、ふたつのコンビネーションはキャッチー極まりない。そのせいか、『テアトロ~』はライヴ録音で4人のケミストリーを見せ付ける、混ぜ物なしの重厚なロックンロール・アルバムでありながら、トラップやらディスコ・リバイバルやら百花繚乱のメインストリーム・ポップと並べて聴いても、インパクトには全く遜色がないのである。しかも、ラップに近いスタイルで歌うダミアーノのソウルフルでクセのある声や、イタリア語混じりの歌詞は適度なエキゾチックさを醸し、親しみやすいのにフレッシュで、どこか引っかかる。言うなれば、K-POPに通ずる魅力を備えたロック、と位置付けられなくもないんじゃないだろうか?

■ジェンダーフリュイドなスタイル

また親しみやすいのにフレッシュなのはヴィジュアルにも当てはまることで、こんなにも絵になるロックバンドが現れたのは久々だ。エトロの衣装提供を受けたり、グッチの100周年記念コレクションのキャンペーン・モデルに起用されるなどモード界からも熱い視線を浴びるマネスキンのファッション・センスは、グラムロックやパンクといった定番スタイルを引用していながらも、完全なるジェンダーフリュイド。既存の男らしさ・女らしさの定義に縛られない、時代に即したZ世代らしいジェンダー観は彼らの発言などにも反映されており、「ジッティ・エ・ブオーニ」のメッセージに通ずるものだ。また先日発表されたばかりの新曲「マンマミーア」では、00年代前半のガレージ・ロック・リバイバルの影響を感じさせ、ミニマルでファンキーで、今のバンドの勢いを映したアグレッシヴな楽曲に仕上がっている。ようは、マネスキンが体現するそんな自由と解放感、そしてロックに内在するエネルギーが、2021年というこの奇妙な年、長い間行動を制限されていた世界中の人々の共感を誘ったという単純な話なのかもしれない。


リリース情報

2021.10.13 ON SALE
アルバム『テアトロ・ディーラ Vol.I』

「ストリーミング/ダウンロードはこちら」
https://SonyMusicJapan.lnk.to/ManeskinTeatrodIraVol1FI

2021.10.8 ON SALE
シングル「マンマミーア」

「ストリーミング/ダウンロードはこちら」
https://lnk.to/ManeskinMAMMAMIAFI


マネスキン OFFICIAL SITE
https://www.sonymusic.co.jp/artist/maneskin/