THE F1RST TIMES

COLUMN

2021.11.25

リーガルリリーが世界に放つ存在感。初アニメ曲「アルケミラ」の壮大な音風景と歌声が織りだす“安らぎの唄”

TEXT BY 渡辺彰浩

■アニソンとリーガルリリーの組み合わせに、新たな可能性

リーガルリリーがテレビアニメのエンディングテーマを手がける──そのニュースに「お!」と思わず手が止まった。リーガルリリーにとっては、初めてのアニメソングとなるからだ。

先日、Spotifyが日本でのサービス開始から5年間を振り返る各種ランキングを発表した。「過去5年間に海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲」のトップ10は、1位のTK from 凛として時雨「unravel」を筆頭に、LiSA「紅蓮華」、KANA-BOON「シルエット」、いきものがかり「ブルーバード」など、アニソンがランキングを席巻する形となっている。ASIAN KUNG-FU GENERATION「リライト」やL’Arc〜en〜Ciel「READY STEADY GO」など、2000年代前半からアニソンが世界に発信する一つのツールであることはすでに立証されていたが、Spotify、Netflixといったストリーミングサービスの浸透によって、アニソンが持つパワーは昔よりも遥かに大きく、そして届くスピードも格段に早くなっている。

そんなアニソンとリーガルリリーの組み合わせに、新たな可能性を感じたのは彼女たちが2019年にアメリカの『SXSW』に出演し、その年末から2020年頭にかけてChinese Footballと中国ツアーを回っていたことから。すでに耳の肥えた海外の音楽ファンには認知されているリーガルリリーが、このアニソンという波に乗って思いもしなかったリスナーにリーチする。もちろん、それはこの日本でも同じことが言えるだろう。

「アルケミラ」は、たかはしほのか(Vo、Gu)がテレビアニメ『86―エイティシックス―』に書き下ろした楽曲。アニメエンディングの90秒という定型尺においても、壮大なサウンドスケープにたかはしの浮遊するような歌声が乗る、リーガルリリーの要素がギュッと詰め込まれた今の彼女たちにとっての集大成的一曲と言えるだろう。

タイトルにある「アルケミラ」とは、カスミソウに似たハーブの一種。花言葉には「輝き」「献身的な愛」などがあり、聖母マリアに捧げる神聖な植物とされている。“アルケミラ、アルケミラ、と唱える/絶え絶えなぼくのむねを整える/そして眠りにつくんだ/おやすみ世界 おやすみ世界/また明日。”──サビで歌われるそのフレーズから浮かぶのは、おまじないのようにして自分自身に言い聞かせる登場人物たちの姿。それは、死と隣り合わせで戦場の最前線に立ち続ける少年・シンや指揮統制官である共和国軍人の少女・レーナだけでなく、戦いが日常としてある不安定な世界に生まれ落ちた人々にとっての子守唄、もしくは鎮魂歌のようにも聴こえてくる。

“静かな爆撃が耳元をつんざいた”といった歌詞は『86―エイティシックス―』の世界観とマッチした部分であるが、リーガルリリーは「ハナヒカリ」をはじめとした多くの楽曲に、戦争に関連したフレーズが使われており、たかはしが紡ぎ出すリリックとアニメの描写が溶け合った部分でもある。

出だしこそドリームポップのような優しく、儚げな曲調だが、サビに突入するとたちまち3人の轟音が鳴り響く。そこにたかはしのハイトーンボイスが合わさることで、幻想的な世界が生み出される──改めて、リーガルリリーによる唯一無二の音像を再確認するとともに、「アルケミラ」がアニソンとして世界に放たれることによって、このサウンドがポップスという“真ん中”へと向かっていくことに期待したい。MVに様々な言語によるコメントが付いているのは、「アルケミラ」が世界各国に届いていることを示した印である。

■リフが鳴り出した瞬間にリーガルリリーの音色だと一発で分かる

そして、「アルケミラ」をきっかけにリーガルリリーを知った新たなリスナーが手にするのが、11月24日にリリースとなるシングルとしての「アルケミラ」であろう。ここで特筆したいのはシングルとしての完成度、聴き応えだ。2曲目に収録されているのは高揚感、疾走感に溢れる「チェインスモーク」。「アルケミラ」と比べるとアップテンポであるが、生々しい衝動性は歌詞にも激しいサウンド(間奏から大サビにかけてがまたすごい)にも全面に表れている。3曲目は、くるりの名曲「ばらの花」のカバー。これまでリーガルリリーは、はっぴいえんど「風をあつめて」やSEKAI NO OWARI「天使と悪魔」など積極的にカバーを行ってきた。3人がリスペクトし「三日月」もライブで披露したことのあった、くるり。そこに「アルケミラ」がバラ科であることが加われば、シングルとしての作品性、強度は一気に増す。「風をあつめて」のような真っ直ぐなアレンジながら、イントロのジャジャジャジャというギター、お馴染みのリフが鳴り出した瞬間にリーガルリリーの音色だと一発で分かるのは、やはりこのバンドの大きな強みであろう。

「アルケミラ」はあくまで『86―エイティシックス―』に書き下ろした楽曲であるが、その世界観を我々が生きる現実に当てはめてみると、決して異世界の出来事ではなくなってくる。「アルケミラ」は、シンやレーナにとっての子守唄であると同時に我々リスナーにとっての安らぎの唄でもあるのだ。


リリース情報

2021.11.24 ON SALE
SINGLE「アルケミラ」

初回生産限定盤(CD+DVD)

期間生産限定盤(CD+DVD)


ライブ情報

リーガルリリー『cell,core』
12/10(金) TACHIKAWA STAGE GARDEN
出演:リーガルリリー、People In The Box、崎山蒼志


リーガルリリー OFFICIAL SITE
https://www.office-augusta.com/regallily/