THE F1RST TIMES

COLUMN

2022.01.04

Creepy Nutsが影響を受けた楽曲 -『FUKA/BORI』SIDE B 全編書き起こし

FUKA/BORI
【DIG / 01】Creepy Nuts
SIDE B – Creepy Nutsを深掘り

曲やアーティスト自身について深く掘って語る、最深音楽トークコンテンツ『FUKA/BORI』(フカボリ)。

SIDE AではCreepy Nutsの代表曲のひとつである「かつて天才だった俺たちへ」をR-指定、DJ 松永、それぞれの制作軸で語り、本人たちも改めて気づくことのある実りの多い回となった。

続く、今回のSIDE Bでは“Creepy Nutsが影響を受けた楽曲”というテーマで深く掘っていくことに。R-指定、DJ 松永、彼らの音楽ルーツを紐解いていく。

【SIDE A 全編書き起こし】
「かつて天才だった俺たちへ」を深掘り

■0:51 DJ 松永 音楽の原点

DJ 松永:本当に一番最初の原体験は洋楽入りなんですよ。小学校3年生のときに『ブルース・ブラザース』という映画を観て、とにかくかっけーなみたいな。初めて買ってもらったCDが『ブルース・ブラザース』のサントラなんですよ。なんかね、家族全員かっこつけなんですよ。全員こう松永家の特殊性なんですけど、全員むちゃくちゃかっこつけで自分が何を聴いてるか、何を着ているか、どう見られてるかを気にする血筋で育ったんで、そういう親だからやっぱり『ブルース・ブラザース』を借りて観せてくれて、聴いてめっちゃかっこいいってなって。中学校2年生かな? まあずっとその洋楽聴いてたんですけど、ファッションとかに目覚め出すやつとかいるじゃないですか。一緒にファッション誌見てた友達が、日本語ラップ、ヒップホップっていうのがあるらしいぞとMDを貸してくれたり。

谷中:ファッションとヒップホップがつながってるということですね?

DJ 松永:そう、一緒だったんですよ。そのファッション誌にはやっぱりMUROさんだったりとかSHAKKAZOMBIEだったりとか載ってるんですよね。カルチャーとセットで最初こう…頭の中に入ってきた部分もあって。それで実際に聴いてみたらこれはかっこいい! ってなって。 やっぱりヒップホップの持つ不良性みたいなものが普通に平々凡々な学校に通ってる田舎の少年からしたらすごい非日常なんですよ。そして、この音楽は学校に通ってて今こうクラスを見渡しても誰も知らないわけですよ。そのときに一番深く刺さったのがRHYMESTERだったんですよ。そこでもうRHYMESTERのラジオずっと聴いてて、2006年のときにDEV LARGEさんがファーストのソロアルバムD.L a.k.a. DEV LARGE『ADMONITIONS』というアルバムをリリースしたタイミングでRHYMESTERの番組に出て。まあむちゃくちゃかっこよくてそれこそ本当に今作ってる自分のトラックの根元はそこなんですよ。むちゃくちゃDEV LARGEさんってサンプリングの大ネタ使いなんですよね。あの人は超ディガーで、そのサンプリングソースを嗅ぎ分けてくるセンスがピカ1なわけですよ。その作る怪しくて煙たいけど、むちゃむちゃキャッチーな上ネタにのっかるぶっといドラムみたいなのが、何も理屈分かってないけど 当時の俺には一番ぶっ刺さって。その中に入っている「CRATES JUGGLER」っていう曲があるんです。

■3:30 DJ 松永「CRATES JUGGLER」

DJ 松永:“CRATES”ってレコード箱のことで…。

谷中:レコード箱のことなんですね。

DJ 松永:それを掘っていく自分のことを歌った曲なんですよ。頭が「真っ黒 真っ黒 真っ黒 (←※本当は真っ黒が5回)何処もかしこも 外も指も 毎度毎度なこれは出来事 いつも手を汚す」

谷中:こうやってるから。

DJ 松永:そう、こうやって。

谷中:自分も結構スカパラのツアー行くと、地方でレコード屋さんずっと回ったクチなんで手汚れるんですよね。意外に。

DJ 松永:中古レコードはほこりが付いてるし、手が物理的に汚くなるし。

谷中:汚くなるような棚ほど、誰も見てないから掘り出し物あるだろうみたいな。

DJ 松永:そうそう。しかも、そういうことがやっぱりこの曲にすべて入ってて 「埃で煙る 宝石眠る 中古レコ屋で終える一仕事 間髪入れずに次なるスポット」って言っていろんなところへ行く。この人はこれは最後のヴァースですけど「年がら年中 DIGGIN’ THE CRATES
しかもえびせんバリに掘るCRAZYペース」俺これすごい好きなんです。えびせんバリに止まらないぐらい掘っちゃう。次に「風の噂 街の噂 引き寄せ 嗅ぎ分け 見つけるのさ
横のつながり 縦のつながり 情報を手がかりに綱渡り」これはDEV LARGEさんがDJとして地方に呼ばれていって、地方の地元の人たちにいいレコード置いてあるところ知らないかってそこの生の現地の情報を聞き分けてまだ誰も東京のDJが行ったことのないお宝の眠るリサイクルショップとか行くんですよ。骨董品屋とかそういうところに行くんです。そういうところはやっぱり…。

谷中:残ってる。

DJ 松永:そう。もうレコードめちゃくちゃ買ってた人が例えば遺品だったりするのそれ。それをドンッとリサイクルショップに遺族が売ってその中から…。

谷中:同じ目線でレコードを探している人が、いかないところに行かないとね。

DJ 松永:もう目ギンギンで 「俺だけ知ってるぞ」みたいな感じで探しに行くんですよ。
「何処へ行こうと TOKYO TO地方都市から都市 営業TO営業 そこまでしてもでも手に入れる BESTな音を求め探求」こういうサンプリングやトラックを作るトラックメーカーのなんかこうテーマソングだなとか思って。俺、当時新潟県の長岡市っていう田舎町にいて、レコード屋って無いんですよ。地元でそのときめちゃくちゃ行ってたのが ハードオフなんですよね。リサイクルショップのレコードコーナーに行くんですよ。あと、その自分がDJ始めたときにできたワンループレコードというところがあったんですけど、そこよくお世話になるんですけど、そのときにチャリでハードオフに行くときにこれを聴いてたんです俺は。MP3プレーヤーで超安いペラペラの音で「CRATES JUGGLER」聴きながら、ママチャリでハードオフ行くんです。今から俺は超かっこいいことをやりに行く。買物じゃないんだ俺は。買物じゃないんだ俺は。おまえら今買物してるだろう、俺は一仕事なんだ。

R-指定:チャリの姿見て、みんなその油断してるやろって(笑)。

DJ 松永:違う違う。いや、俺は本当にもう 「オレは旅人 更に上質な皿 目皿にして 探し彷徨う」「いつも頑固なオレは腹ペコ 満たすまで 決して見て見せぬ顔に笑顔」っていうもう超ストイック。かっこいい。

R-指定:それ聴きながらもうしかめっ面で。

DJ 松永:しかめっ面で。負けねえからなって。当時高校生の俺が2店舗しか知らないのに ママチャリで行くっていう。

谷中:そのレコード探しのアドベンチャーを自転車こぎながら聴いてるわけですよね。

DJ 松永:大冒険ですよ。サンプリングってヒップホップの精神だし、 やっぱりいまだに自分のテーマソングだし、これもかっけーサンプリングで作ってあるんですよ。ど頭のドラムのサンプリングが超最高なんですけど、マルコム・マクラーレンの「World’s Famous」あのスネア超印象的じゃないですか。むちゃくちゃチャチャチャみたいなやつ。それをまんま使ってるんですけど、俺あの当時は理屈分かんなかったけど、この元ネタを知らなかったけど、このドラムがヤバ過ぎる。そういった意味でも やっぱりその自分のことをこの曲の歌詞で「元祖掘りの大様 BUDDHAの旦那」って自分のことボースティングしてるんですけど、旦那ヤバって。旦那の歌詞でもヤバいけど旦那の掘ったレコードやっぱりヤバいですね。そのトラック聴いても思うっていう。やっぱりこの自分のサンプリングのトラックメイクの原点の曲です。これはテーマソングです。

谷中:そのボースティングっていうのは威張るっていうことでなくて、ブルースのミュージシャンとかも自分のこと威張るみたいなところから始まってるわけですけど、レコードを掘ることを威張ってるわけですもんね。一曲丸ごとね。

DJ 松永:そうそう。レコードを買う、普通の人からしたらレコード買う、ですよ。買うことを何誇ってんのみたいなあれですけど、マジ俺のレコード買う作業ヤベーから(笑)。

谷中:俺も通ってたクチなんですごいよく分かります。ある曲がヒップホップの国歌になってるというのをおっしゃってるのがなんかインタビューであって、このレコード俺持ってるかもと思って今日持ってきたんですけど。自分が掘ってる時代に買った…。

DJ 松永:「アパッチ」ですか?

谷中:これ、あれですよ。再発じゃない…。

DJ 松永:オリジナルですか。

谷中:オリジナル。これを今日は松永君にプレゼントしようかと。

DJ 松永:えっ! マジで!? いいんすか! 俺はこういうの当時10代だから買え…うわ、マジすか。ありがとうございます。えーうれしい!

谷中:ずっとうちにあって聴いてなかったんで 。

DJ 松永:しかも谷中さんにもらったら超ヤバいんだけど。

谷中:今年夏一緒に頑張ってもらったから。

DJ 松永:ありがとうございます。

谷中:大きな大会で 。

R-指定:戦友ですからね。

DJ松永:わあ…めちゃくちゃうれしい。

■9:15 R-指定 音楽原体験

R-指定:僕もやっぱり両親の影響でサザンオールスターズとか中島みゆきさんとか小田和正さんとかが車の中で流れてるときに、ちっちゃいころに無意識にそれを聴いてたのが音楽の最初の原体験というか。中学校初めそのぐらいの時期に有線で流れてきたSOUL’d OUTというグループの「1,000,000 MONSTERS ATTACK」という曲を聴いたんですけど。牛丼屋で普通にみんなで飯食ってるときに流れてきて、イントロからラップ自体も何言ってるか全く分からへん。分からへんのにめっちゃかっこいいみたいな。

谷中:そういう最初に聴いたラップの方たちのものを自分なりに真似していったりもしたんですか?

R-指定:自分でやれるとは最初思ってなくて聴くだけで、かつそれが松永さんも言ったようにすごい自分を高めてくれるとか自分かっこいいと思えるし。

谷中:お~。

R-指定:武装してくれるんですね、メンタルを。ヒップホップとか、あとやっぱり衝撃的やったのがこの人ら自分の話してるやんみたいな。

谷中:確かに。

R-指定:今まで聴いてきた歌謡曲ってそんなことなかったんです。「俺はZeebra」って言って自分の話しだすから。

谷中:名前名乗りますもんね。

R-指定:「ライムスター イズ イン ザ ハウス 俺たちここにあり」で 宇多丸…自分の名前言ってからしゃべるってことが「えっ、自分のこと言ってるやん、この人ら」っていうのと 、あとやっぱその韻を踏むライムしていくという、その構造なんか普通にメロディーとかで歌うんじゃなくてなるほどね、ここが韻踏んで似たような響きの言葉がずっと続いてる…おもしろみたいな。これはなんかとんでもなく面白いものに出会ってしまったっていうのと、しかも面白いのにこんなに鼓舞してくれるし。帰り道一人きりのときは自分から炎やったり、白いオーラがバーって立ち上っているような気分で聴けるっていうところですかね。面白いしかっこいいっていうかね、それを解き明かしていくのがすごい楽しかったんですよ。歌詞カードとか見ながら。

谷中:ああ、そっかそっか。

R-指定:これとこれが韻踏んでるっていうことなのね、みたいな。

DJ 松永:本当にこの人、そこがすごくて。2年前ぐらいとかに好きなアーティストのアルバムが出たって言って買ってワクワクし過ぎてCDを再生するまで待てなくて歌詞カード先に読み込み始めてもう読み物として読んじゃって。「はあ…松永さんこれいいアルバムやったわ」って。聴けやって! そんぐらいもう歌詞がもう大好き過ぎるんだと思うんです。言葉。ラッパーの書く歌詞…それTHA BLUE HERBだったじゃん。

R-指定:やっぱTHA BLUE HERBぐらいになってくると、音楽として聴いて最高なんですけど 、それだけやと自分の脳じゃ取りこぼしてしまう…聴感も超かっこいいんで。だから読んでもおきたいという…だから、結構なんか三段階ぐらいにして、ジッとした状態で読んで、ジッとして聴いて、次は動きながら聴いてみる。聴きながら生活してみる、みたいな。

谷中:それなんか今、Creepy Nutsさんの(作る音楽の)楽しみ方を教えてもらったような気がしました。

DJ 松永:それはうれしい!

R-指定:うれしいですね。でもやっぱ影響受けたのがそういう人たち…RHYMESTERももちろんなんか読んでて普通に楽しい歌詞がっていう、結局自分でも聴いたりしてる中学校のときは自分と関係ない世界の人たちの話だとやっぱりどっか思ってて。Zeebraさんとか般若さんとか生きてきた世界がちょっとちゃうんかなみたいな感じで思ってて。これはまあ聴いて超楽しいし自分を鼓舞できるけど、俺がやろうなんておこがましいんじゃないか、普通にただ単に普通に生きてきたから別に俺の人生なんか、ラップにしたところで、おもろくもなんともないやろうし。なんかそんなことをする資格がないんじゃないかと勝手に自分で決め付けてまして。でもやっぱもうちょっとそういう部分に注目した状態でRHYMESTERを聴くと、あれ?もしかしてやけどこの人らそんなむちゃくちゃ破天荒なことしてきた人たちじゃないのかな? みたいな。決定打になったのが「ザ・グレート・アマチュアリズム」という。

■13:41 「ザ・グレート・アマチュアリズム」

R-指定:「ノイズだらけのアナログレコード 回れば本気モード シャベクリ倒す こちとらシロウト 気にしねぇ トチろうと」っていうフックなんですけど。

谷中:それすごいっすよね。

R-指定:こんなすごい人たちが自分たちのことを「ドシロウト」って言って「気にしねぇ トチろうと」って、間違えても気にしない。「スタイルはスレスレ非合法ぐらいの逆転の思考法」って。だから発想の転換…そここそがこのヒップホップの武器であって、すごい根幹の部分というか…生い立ちやったり、バックボーンっていうところじゃなくて、どの位置にいても、どこで生まれても、その発想の転換やったり発想力やったり、頭の柔軟さを持ってることがすごいヒップホップの醍醐味やったりうま味に直結する部分なんやっていうのを思って 、Mummy-Dさんの「ネコ踏んじゃったすら弾けないが 韻踏んじゃったらオマエもライマー」。だから「あっ、やっちゃっていいんだ」みたいな。そこにのちのち宇多丸さんとかがラジオで「ヒップホップは聴いてる側に回答を求める、 聴いてる側にアクションを促す要素が大きいカルチャーや」っていうことを言ってて。

谷中:ほほう。

R-指定:だから常に問い掛けてると「俺はこう思う。で、おまえはどうすんの?」っていうのを問い掛けてくれる側面があるって言われてて、まさしく「ザ・グレート・アマチュアリズム」に俺はそうされたというか。やっぱ待ち切れず歌い出しちゃったんですおれは。だから勝手にでいいんやなと。「好きやったんやろ?」「聴いてかっこいいと思ったんやろ?」 「好きやと思ったんやろ?」「やりたいと思ったんやろ?」 「じゃあ あとはおまえ次第」みたいな気分がして。あっ、おれもやっていいんやって思えたのが「ザ・グレート・アマチュアリズム」です。

谷中:すごいきっかけですね。それね。

R-指定:そうなんですよね。

谷中:それでもうあれですか? 詞というか書き始めてたんですか?

R-指定:この曲聴いて自分でもちょっと書いてみたんですよね。

谷中:この曲きっかけで書き始めたぐらいの感じですか?

R-指定:そうですね。もう身も蓋もないようなもの…普段のこととか「学校行って全然おもんなかった」みたいなそういうことを。でも、そんな中何かで身の周りのもんで韻踏めたりせえへんかなと。最初はそんな感じですね 。ちょっと自分で書いてみたっていうのは。

■15:51 MCとDJ…それぞれのバトル

谷中:戦うの怖くないですか?

R-指定:怖かったです。ただ、これも一個でかくて 。自分で書いてみたりカラオケで歌ってみたり真似してみたりとかして、その流れで「うまいな 、おまえ」って言われたんですよね。

谷中:ああ、すごいそれ。

R-指定:俺、人に褒められたためしがほんまにその時点までなくて。「あれ?おまえうまくない?」って言われたときに、あれ?おれうまいやつあるんや。 おれがうまいものがこの世に存在するんやってうれしくなって、もしかしたらこれまでのスポーツやったり、勉強とかやったり、人と対等に戦うことがなかったのが、ラップやったら人と競り合うこと、もしくは運がよければ勝つことができるかもしれへんというちょっと希望というか人生においてのそれが見つかって、最初は。でも、曲作りたいとかライブしたいとかのほうがデカかったんですけど、それ以上にもっと簡単に自分のラップを聴かせられる場所があるということでMCバトルがあって。高校生ぐらいのときに初めてMCバトルに出ましたね。

谷中:高校のときなんですね。

R-指定:出ました。それが一番最初でした。

谷中:すごいなぁ。

R-指定:でもね、めちゃくちゃ最初は負けてきたし、なんやったらその「俺はうまいはずや、強いはずや」って状態で負けたりするのがやっぱり悔しかったりはしたんですけど。そこで名を挙げたのでやっぱり一番最初良くも悪くもそのMCバトルと共に過ごす時期っていうのが最初のキャリアはすごい長かったかなというのは思いますけどね。

谷中:あれは本当に尊敬します。ちょっと松永さんにお話したいんですけど、そうやってMCバトルとかでR-指定さんがチャンピオンとかになるわけじゃないですか。自分もやっぱり同じ土俵に立たなきゃいけないみたいな使命感があるというのを資料で読ませてもらったんですけど、DMCのWorld DJ Championになったのはいつなんだろうと思って調べさせてもらったら2019年なんですね。2年前に、しかもしっかりこのCreepy Nutsが有名になってきてるところでそこの大会に挑んでいくっていうところがむちゃむちゃ男らしいなと思って。

R-指定:これ結構ね、むちゃくちゃなことをしてるんですよ。なんかやっぱ俺がMCバトルに出た時期ってお互い仕事もねえし、それ中心で考えれたし、それで名を挙げるっていう感じだったんですけど。2019年の時点のチャレンジなんていうのはCreepy Nutsも超忙しいしライブとか楽曲制作とかある中であれをやるという選択肢を取ったっていうこと自体がちょっとやっぱ常人ではできないところに踏み込んでいったっていうか…。

谷中:本当ですね。それでしっかり勝てたね。

DJ 松永:いや、本当によかったなと思いますね。最初におれもRみたいにDJ始めたらなんかちょっともしかして「これ人よりうまくできるのかも」みたいなものが初めて見つかった瞬間だったんですよね、Rのラップみたいに。なんか初めて自分の選択で始めたなって思ったんですよ。DJのことを。当時僕サッカーやってたんですけど小学校4年生から高校1年生まで7年間やってましたけど、なぜ俺がサッカー始めたのかというと小学校4年生になって全員部活が始める学年になったから始めただけであって、別にサッカー選手になってこうなりたいからサッカーを選び取ったわけではなく、自分の周りにサッカー好きな人が多くてなんとなくみんな入るからとか。ただやめてないだけなんですよ。ずっと中学校まで。でも高校1年生に上がったときに、自分の意思でバイトして買ってターンテーブルを触ってやってるときにむちゃくちゃ楽しいし、なんでこんなに今までと違って楽しいし、夢中になれるかっていったら、多分これ完全に自分の意思で選び取ったからだなみたいなのがあって。しかも本当に好きなことって試行錯誤したいっていう意欲がむちゃくちゃ湧いてくるんですよね。うまくなるためにちょっとここの手の角度やったらここの力抜いてみようか、ここはもうちょっとこういう角度の方がいいのかっていう想像力がわいてくるんですよね。

谷中:楽しんで努力してるときって想像力も増してるんですね。きっとね。

DJ 松永:あいつDJ始めたてなのにうまいって周りから言ってもらったんですよ。地元で若いけどうまいやつみたいな感じで言われるようになったから、自分のアイデンティティがDJうまいことになっちゃったんですよ、そこで。それで初めてDMCに出て19か20歳ぐらいのときに地方大会優勝して日本の決勝まで上がっちゃったんですよ。そこそこいいところまで行っちゃったんですよね。でも本当に生活と時間と精神力…もうすべてを注ぎ込まないと数分間というものが作れないぐらいストイックなものなんで、なんかそれ以外できなくなっちゃってたんですよね。でも俺曲作って普通にライブやりたかったんですよ。ミュージシャン活動をやりたかったんですよね。それと自分がDJうまいというその根幹のアイデンティティを保つためにDMCに出続けるという行為が両立できなかったんですよね。だからDMCのほう1回あきらめて、普通に曲作って DJとして日本の音楽業界に入ってそこで成り上がろうみたいなことを思って数年間活動をし続けるんですけど、でも自分が出てない間に周りはみんなどんどん俺よりうまくなって俺の知らない間にみんながどんどん進んでいってみたいなのがもうかなりしんどくて。だからもう自分のTwitterのDMC関連の人をフォロー全部外したりだとか結構物理的にそうしたんですよね。そうしないとDMCに足引きずられたまま音楽活動っていうのも生半可じゃできないじゃないですか。それで食えるようになることもすごく奇跡的なことだからもうなんとなく…どうしても外そうとしたんですけど。やっぱりこう…出るも地獄引くも地獄だから、もうこの時間何? 辛すぎるってなってたんですよね。でも、その間にR-指定と出会って、一緒に音楽活動を始めていくんですけど、活動が軌道に乗れば乗るほど俺が置き去りにしたものがめっちゃ際立ってきちゃってて。組んじゃったのがもう日本3連覇した男だったんで、やっぱりいろんなラジオとかに出させてもらってプロフィールを見上げられると「日本3連覇のR-指定さんと松永さんです」ってなるわけですよ。そこでやっぱりその度に突き付けられるわけですよね。そんなに自分に期待してなかったらそれを別に受け入れると思うんですよ。でも俺誰よりもDJうめえし、俺の根本にあるのがうまさだしって思っちゃってたから、いやこれはどっかで落とし前つけないと普通に人生送れないかもなって。2016年にもう一回出て、そのとき日本国内2位で負けちゃうんですよ。そのときももう4~5年ぐらいかけて作った数分間だった自分のすべてだったんですけど。でも、そこで圧倒的に負けを感じて。でも、余計さらにこう自分が勝てるかもっていうところまで日本2位だから逆に希望を持っちゃった節もあったんですよ。だから余計やめられなくなっちゃったんですよね。これだから前向きな挑戦じゃなくて、自分の呪いとか十字架を下ろすための闘いであって。すごい希望に満ちた道のりじゃなくてDMCに出る前、もしくは自分がDJうまいって気付く前の自分に戻りたい…っていう感覚の方に近かったんですよ。そこに気付いてしまったからには1位取らないと健康じゃなかったんで。2016年、2017年と出て2017年は3位に落としちゃうんですけど、そのときの向き合い方は何がよくなかったかというとCreepy Nutsでリスクあるから俺出るっていうことを言わなかったんですよね。出ることを言わなかったら負けたときに出たって知らないから負けたことも知られないじゃないですか。だからリスクヘッジして自分の中で挑んだんですよ。Creepy Nutsとしての被害を最小限にするために。でも負けたらちゃんと落ち込んだんですよね。どうしても自分の目の前にガンッと突き付けられるから周りの人に言ってようが言ってまいが全く関係なくてむしろ俺腹くくってないなと思って。2019年最後に出るんですけど、そのときやっぱりもう物理的にしんどくて、ルーティン作る作業と音楽活動がもう平日無理となってCreepy Nutsの活動に支障をきたして…今せっかく音楽で飯食えてるのに食えなくなっちゃうかも、全部がガタガタに崩れるかもと思って、今年が最後にしようと思って。どこかでけりつけないと駄目だ、負けたら負けたで一生呪いを背負い続けてもいいやっていうぐらいそのときに腹くくったんですよね。そのときに初めてラジオとか始まってたから「俺、出ます」って言ってみんな全員に言って出て、「最後の大会にします」って出て。

谷中:すごいな。それでやっぱり世界チャンピオンになることでお互いに対等な気持ちでより強くなってより強いCreepy Nutsとして活動できるわけじゃないですか。でもそれはすごいまたむちゃくちゃ未来のある話だなっていうか。

■25:13 誰のために戦うのか

谷中:自分と戦いをずっと続けてきて勝ち上がっていくわけじゃないですか。今度は他の人のために戦おうっていうことは、すごく感じられてるんですよね、今ね。リリックだったりとか音楽から人のために戦うというか。

DJ 松永:俺それ感じたのは、本当に今年なんですよね。自分が何も大したことのない…ただの松永で、別にとりわけ学校でなんかこう成し遂げたわけでもないし、俺が一番見てきて俺が一番知ってるからなんか今の状況は本当に信じられないんですよね。DJで結果出したり、曲作れたり、ツアーでっかいところでやらしてもらったり、武道館でやらしてもらって。テレビに出るようなことになるなんて、一ミリも考えたことなかったし、このありがたい状況を全部信じられないなと思って。次何が欲しいんだろうって考えたときに、本当に何もなかったんですよ。自分に無限の上昇志向みたいなものっていうのがあっ、 無いんだって今年の春に思って、そのときなんか変に超絶望してすっごい落ちちゃったんですよ。一日一日は確かにね、楽しさは感じるんですよ。楽しいし、充実してるし、ヒリヒリした経験も毎日させてもらってるって頭ん中では分かってるんですけど、なんか何も欲しくないし、ここからどこに進んでいいか本当に分かんなくなったんですよ。生きてるけど死んでるみたいな感じになっちゃったんですよね。俺は前までDJできてたら幸せとか思ってたんですよ。それで最後まで走り抜けれる、そのピュアさみたいなものが自分の中にあるってそこまでは信じてたんですよ、今年の春までは。

谷中:DJってやっぱり大好きなわけですもんね。

DJ 松永:大好きで、それをやっていれば精神的に健康でいられると思ってたんですけど。俺ちゃんと勝ち取りたいものがあったんだとも思ったんですよ。ちゃんと強欲だったけど 自分の強欲はここ止まりだったなみたいな感じ。そのときに目的を失って本当にしんどかったんですけど、ずっとよく考えてたら一人で闘ってた印象があったんですよ。高校途中で辞めて、DJ始めて、自分自身がのし上がるためにいろんな選択肢取ってきて、誰とも結託せずにやっていって。ちゃんと純粋に信頼できる味方みたいなものは利害関係無しに付き合えるぐらいの仲間みたいなものって、作ったことなかったんだなって思って。全部仕事相手として接してきて自分は一人で、その成り上がるための人間関係でしかなかったのかなみたいな、そのときに思って。でも気付いたらその一人だった俺が、活動が軌道に乗ってって、一人じゃなくなってチームができてたんですよ。そういう社会性とか人間関係とか免除されると思ってたヒップホップ、自分なりに成り上がったらいつの間にか周りに人がいて。いやもうキテるけど返さなきゃなと思って。

谷中:どうですか。R-指定さんもなんかその松永さんの状態を感じながらやってたわけじゃないですか。

R-指定:はい。そういうのを人一倍すごい敏感に感じ取って客観的に見たりとか自分の気持ちに対してケリをつけるっていうのをすごい向き合う人なんで松永さんは。俺は結構やっぱりいまだにそこまで自分のことを分かってなかったりとか、自分のまとまってなさとかそういうところを多分わりとそのまんまの形で言葉にできるからまだ俺は多分、その自分を癒したりしながら多分いけるんですけど。毎回毎回しっかりちゃんと意識するというか、うやむやにしないという自分へのストイックさというのが松永さんの場合は自分をすごい苦しめたりとかあると思います。

谷中:それはありますね。そういうことですよね。周りの人間…一緒にやってくれてる人たちへの感謝みたいなとかも。

DJ 松永:その時に全員やってること一緒だなと思ったんですよ。自分はまあ曲作ってライブに立たせてもらってテレビに出させてもらってみたいな仕事と、 事務所のマネージャーだったりとかやってることってなんかシチュエーションが違うだけで本当一緒だと思って。
本当にいろんなところに駆けずり回って頭下げて人間関係築いて一つの仕事を持ってくる作業。この間が俺らの言う「作曲」とか「作詞」で 俺らにプレゼンしたりとかがもう「ライブ」なんだろうと思って。なんかそれに責任果たさないとなと思って。自分がオフのときみんなオンなんで。メイクしてもらってるときとか服着させてもらってるときってオフじゃないですか俺は。でもそのときスタイリストさんもメイクさんもマネージャーの本番なわけですよ。なんかそういうことに対しても想像力を持ちたいしって思いましたね。なんか普通にいい人になりたいと思ったんですよ。

谷中:本当に死にものぐるいでやってきてる中で周りが見えてない部分も自分ではあったっていう反省もあるわけですね。

DJ 松永:なんか傷つけてきたなっていうか。

谷中:今お話聞いててね、むちゃくちゃ正直であるということはもうそれがリアルなんだなって俺すごく思って。バカ正直なのってリアルじゃないですか。それってむちゃくちゃヒップホップなんじゃないかなっ、勝手に。僕はヒップホップやってないですけど、なんかかなりそう思えましたね、今日お話聞いてて。


『FUKA/BORI』
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『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
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Creepy Nuts OFFICIAL SITE
https://creepynuts.com/

谷中 敦 OFFICIAL Twitter
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