THE F1RST TIMES

COLUMN

2022.02.02

HYDEが20年前に描いた世界。“宿命的なタイミング”を経て届けられたソロ始動の原点

TEXT BY 大前多恵

■ソロ1stアルバム『ROENTGEN』から20年

真っ白な棺の形をした、ひっそりと厳粛で、全方位どこから眺めても美しいアイテム。HYDEが自身の誕生日である1月29日(土)にリリースした『HYDE COMPLETE BOX 2001-2003』とは、2002年に発表したソロ1stアルバム『ROENTGEN』関連作品を束ねたリマスターコンプリートボックスである。

コアファンに対しては説明するまでもないことだが、ソロ1stシングル「EVERGREEN」(2001年10月)、2nd「ANGEL’S TALE」(2001年12月)、3rd「SHALLOW SLEEP」(2002年2月)の3作は本人のこだわりによる棺型パッケージでリリースされており、ミュージッククリップやライヴにおけるHYDEの表現世界において棺は繰り返し登場する重要なモチーフであり続けてきた。

“棺”の蓋を開けると、やはり棺桶型に折り畳まれた密書のような包み(凝った仕掛け満載の歌詞カード集)が現れ、その下に4枚のディスクが格納されている。Disc-1はアルバム『ROENTGEN』、Disc-2はその英詞版『ROENTGEN.english』(日本以外のアジア諸国で発売された『ROENTGEN english version』の国内版として、2年後の2004年にリリースされた作品)。オーケストラ奏者を始めイギリスのトップアーティストたちとレコーディングを重ね生み出された静謐な名盤は、時を経ても全く色褪せることがない。それどころか、いずれもロンドン メトロポリススタジオでリマスリングを施し音質を更に向上させている。

『ROENTGEN』のボーナストラックには、前述の「EVERGREEN」「ANGEL’S TALE」「SHALLOW SLEEP」のjapanese ensemble(未発表音源)を収録。今回のリリースにあたり発掘されたというこれら3ヴァージョンは、『ROENTGEN.english』に収められていたアレンジの日本語詞版であり、いずれも魅力的。ピアノが際立つジャズヴァージョンの「ANGEL’S TALE」はとりわけ印象深い変身を遂げている。

■未公開のロンドン・レコーディング風景

Disc-3は初のBlu-ray化となる『ROENTGEN STORIES』で、いわば物語仕立てのミュージッククリップ集なのだが、HYDEの根幹にある死生観、そして自由と再生に対するイメージを受け手に無限に想像させる短編オムニバス映画といった趣き。ミュージッククリップの単なる羅列では決してない、アーティスティックな映像作品である。また、今回初のBlu-ray化となる「THE CAPE OF STORMS」のミュージッククリップがボーナストラックとして収められているのもうれしい。

加えて、ロンドンで行われた当時のヴォーカル・レコーディングの模様を捉えた未公開映像集『2001 LONDON RECORDING MOVIE』をDisc-4としてパッケージ。どこか少年っぽい面影を残し、はにかんだような笑みを浮かべながらロンドンのエンジニアたちとやり取りする約20年前のHYDE。しかし、ひとたびブースに入って歌い始めると瞬時に眼の光が強くなり、何かが降臨したかのように様子が豹変する。ナチュラルな表情とプロフェッショナルな姿、その両面を記録した貴重な映像集である。

■コロナ禍で出会い直した、静なるロックアルバム

ちょうど20年前のリリース当時、『ROENTGEN』のような限りなく内省的で静謐な音楽世界をソロ1作目としてHYDEが世に放ったことは、驚きであり衝撃だった。L’Arc~en~Cielという誰もが知るモンスターバンドのフロントマンhydeという枠組みを一度取り外して、どこまでも自由に、自分ひとりだけの世界を掘り進めた先にはこのような景色が広がっていたのか、と。また、当時のヒットチャートの流行傾向を全く顧みないアルバムでもあり、そのようなことは意識せずただつくりたいからつくる、出したいから出すのだ、という強い意志が伝わってくるという意味で、真にロックなスピリットを宿す作品でもあった。

ソロ2ndアルバム以降は静から動へとモードが変化し、ある時点からはHYDE名義での活動も永らく行われていなかったため、『ROENTGEN』はHYDEのソロ史における異質かつ伝説的な作品として神秘性を保ったまま月日は流れていった。リリースから約20年を経て、『ROENTGEN』の世界観をオーケストラアレンジで再現するツアーを行ったのは2021年。それは、コロナ禍の影響でライヴにおけるファンの歓声やシンガロングが禁じられ、フロアを熱狂させる従来型の公演を行うことができない状況に直面し、代案として閃いたアイディアだった。リリース当時はツアーを開催せずじまいだったため、再現と言うより実質的にはほとんどのオーディエンスにとっては初見。ヴォーカリストとして、アーティストとして、そして人として年輪を刻んだ2020年代のHYDEが表現する『ROENTGEN』の世界は表現豊かで深遠で、雅楽も加わった京都・平安神宮の特設ステージで行った公演(2021年7月31日・8月1日/『20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU』)は圧倒されるほどに荘厳、神懸かり的ですらあった。

ソロ始動の原点である『ROENTGEN』と、HYDE自身意図せぬ形で、しかし宿命と呼ばざるを得ないタイミングで深い関わりを持つことになった2021年。20年という長い時を共に歩き続けて来たファンにとっても、『ROENTGEN』という特別な作品の意味を問い直し、楽曲への理解と解釈を深め、HYDEという表現者と自身の人生との関わりを見つめ直すような1年だったのではないだろうか? 2022年という新たな年を迎え、未発表の音源・映像を含む記念すべきパッケージとして世に送り出される『ROENTGEN』関連作品群。HYDEが20年前に描いた世界と向かい合う、これ以上ない好機が今という時である。


リリース情報

2022.01.29 ON SALE
ALBUM『HYDE COMPLETE BOX 2001-2003』


HYDE  OFFICIAL LINK
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