THE F1RST TIMES

COLUMN

2022.02.15

SUPER BEAVERが「ありがとう」を深堀り-『FUKA/BORI』SIDE A 全編書き起こし

FUKA/BORI
【DIG / 03】SUPER BEAVER
SIDE A「ありがとう」

東京スカパラダイスオーケストラの谷中 敦がホストを務める、曲やアーティスト自身について深く掘って語る最深音楽トークコンテンツ『FUKA/BORI』(フカボリ)。

第3回にSUPER BEAVER から渋谷龍太(Vo)・柳沢亮太(Gu)が初登場。自身の楽曲について語るSIDE Aでは、感謝の言葉をストレートに歌った楽曲「ありがとう」について深掘り。

フロントマン渋谷と、楽曲制作者 柳沢、両者が語る「ありがとう」を通してSUPER BEAVER 楽曲の”最深”に迫る。

■0:00 ようこそ、最深の音楽へ

谷中:どうぞ!

※『FUKA/BORI』ホストをつとめる、東京スカパラダイスオーケストラ・谷中 敦が登場し、本日のゲストSUPER BEAVERの渋谷龍太・柳沢亮太を招き入れる。

谷中:よろしくお願いします。

渋谷・柳沢:よろしくお願いします。

谷中:お久しぶり〜!

渋谷:ご無沙汰してます。

谷中:派手な2人が(笑)かっこいいね。ゆっくりお話しを聞かせていただこうと思います。

渋谷:是非です!よろしくお願いします。

■0:54 SUPER BEAVERのターニングポイントになった曲

谷中:今回選んでいただいたのは「ありがとう」っていうことで。

渋谷:そうですね、はい。

谷中:歌詞を書かれた柳沢さんなんですけどその「ありがとう」に込めた思いみたいなものはやっぱり当時から変わらず自分の中でも響いてる…?

柳沢:そうですね。この楽曲を今回選ばせていただいた理由も、SUPER BEAVERっていうバンドをどういうバンドなのかっていうことを分かっていただく、またいろんな面を分かっていただけた曲でもあったのかなっていうのを思って今回この曲を選ばせていただいてるんですけど。

当時はすごくシンプルにちょうど1度目のメジャーデビューを終え、2年余り自主レーベルというかメンバー4人だけでいろんなことをやりながらライブをグルグルグルグルまわってるっていうなかで、なんかそういった時にどんな曲があったらいいかなっていうふうに考えている時に“ありがとう”っていうワードを今一度シンプルに歌えたら「すごく今のSUPER BEAVERを表すことができるんじゃないか」っていうような会話がそこにあったのをすごく記憶していて、最初はすごく些細なきっかけで …あっ、確かに普段 何気なく使っている言葉だけれども自分たちが今思っている思いを乗っけたらどうなるかなっていうのを考えて作ったのが「ありがとう」だったんですね。歌詞の中にも”ありがとう”がすごく出てくるんですけど。

谷中:そうですね。

柳沢:その当時でも何に対しての”ありがとう”があるかっていうことを自分たちの中で考えた時に、すごくいろんな思いが増えてきたっていうのがこの曲が出来上がってきた最初のきっかけではありましたね。

渋谷:SUPER BEAVER今17年目なんですけど、17年目に至るまでたくさんの方に支えられてきてここまで来られたバンドだと思っていて、それが自分たちの誇りでもありますし、自分たちがここまで来られたことの経緯みたいなものを思い返すとやっぱりすごくたくさんの人の顔が浮かぶっていうのは今までの自分たちの活動の好きなところなんですけど。それを一個ずつ思い出したりとか携わってくださった方のこととか考えるとこの曲の”ありがとう”のバリエーションじゃ足りないぐらい“ありがとう”って言いたい対象がやっぱりすごくたくさん…。

谷中:相手によって違いますもんね。“ありがとう”の響き方もね。

渋谷:やっぱり何度も何度もステージ立たせていただいて、その都度同じ景色っていうのも もちろんないわけですし、自分たちがその時思ってる気持ちもやっぱり千差万別あって結構 自分でも意図せず「あっ こんなありがとう出たか」みたいなのもあったりしますね。

■4:38 「ありがとう」の愚直

谷中:シンプルな題名のシンプルなメッセージですけども。

柳沢:僕このデモを作った時に「ありがとう」って結局ひらがなのタイトルなんですけど、それを付けきる自信がなくてローマ字で「arigatou」って書いてデモをメンバーに送ったのをすごく覚えてるんですね。だから最初出来上がった瞬間は、まだこれをSUPER BEAVERとして堂々と一曲として歌いきれるのかどうかっていうぐらい、まだ照れだったりとかそういったものがあったように思います。

谷中:その照れの部分が…

柳沢:ローマ字の「arigatou」になってたんですね。ちょっとこうはぐらかしてるというか。

渋谷:ローマ字逃げカタカナ逃げってね、割とあるもんね。ちょっと本質ずらすみたいな。
なんかこう自分たちの中で本質突き詰めるんだったらデモの段階とかでもやっぱこういう書き方しないでちゃんと愚直にそのとおりの”ありがとう”が持ってる形っていうかちゃんと打ち出したほうが伝わるんじゃないの? っていう話を確かしましたね。その時ね。

谷中:“愚直”っていい言葉ですね。

渋谷:ともすれば悪口に聞こえなくもない言葉だと思うんですが、やっぱ自分たちができるスタンスっていうことを考えると、それ以外のことが僕たちは多分できないバンドなんですよね。器用に立ち回ったりとか奇をてらっていろんなことをやってみたりとか、様々な角度からポーズとってみたりっていうのも…できる方はきっとできるんだと思うんですが。

谷中:トライしてみたこともあるんですか? いろいろな面で。

渋谷:あるよね?

柳沢:うん。

渋谷:やったけどハマってないっていうか…要するに形として表には出てないですね。「こんなふうにやってみたい」って思った時期もあったし「今流行っているこういう音楽ってきっとこうだよな」みたいなことを取り入れてみようとしたこともあったんですけど、結局気持ちのいい形になってないっていうのが、自分たちのすべてだなと思っていて。なので、今表に出てるものっていうのは全部自分たちのスタンスそのまんま。それこそ本当に愚直にただ打ち出したっていうのが今の形ですね。

谷中:自分たちにしっかり似合ったものを説得力のあるリアリティーで伝えるってことに
こだわった結果っていうことですね。

渋谷:本質的なこととその根源と、あとは理由であったりとかそういうことまでやっぱ自分たちに染み込んでないと、どこかしらで嘘があったりとか。「?」が付いた状態で発する言葉ってやっぱそれこそリアリティーに欠けるものだと思っているので。

谷中:お客さんそういうものに敏感ですもんね。

渋谷:絶対分かるんですよね。絶対この言葉に嘘ついてるって。なんとなく潜在的な違和感というか。おや?  みたいな。何で響かないんだろうっていうそういう根源にはきっとそういうことが随所に散りばめられてるんだと思うので、まあ省きたいですよね。そういうことは。

柳沢:この「ありがとう」っていう楽曲を今回選ばせていただいた理由も結構そこが大きくて。少しずついろんなイベントに出演させていただけるようになったりとかした時に“ありがとう”っていう言葉を…もう躊躇なくバッて声にして音にしてステージから表現した時に「好きとか嫌いとかを飛び越えた届き方がしたな、今」っていう実感をこの楽曲ですごく感じさせてもらったんです。

確かにそれまではアグレッシブなライブをする人たちが多い時には自分たちも割とアグレッシブな楽曲をセットリストに多く織り交ぜてみようかなとかちょっとそういった考え方をしてしまっていた時もあったんですけど、今SUPER BEAVERが堂々と胸を張ってぐっと地に足を着けて歌える曲をしっかり歌っていこうっていうのを今一度自分たち自身に思わせてくれた楽曲がこの「ありがとう」っていう曲だったなっていうのを覚えていて、そこからすごくSUPER BEAVERのライブであったりとか、ライブで渋谷が伝えてくれる言葉だったりとかっていうのもより強固になっていったような気がすごくしていますね。

■8:42 渋谷龍太の言葉 SUPER BEAVERの言葉

谷中:渋谷くんが言ってる言葉で「”ありがとう”は今言おう後じゃなくて」っていうのが
すごく素晴らしいなって思って。

渋谷:自分たちで活動してきた歴が長いからこそ、自分たちだけで成り立つことの少なさっていうのをちゃんと自覚してるバンドだと思うので、オンステージしてフロアにいる方の顔を見て、それでこの日を作ろうとした人の意志を考えると、その時にしか出てこない言葉であったりとか“ありがとう”っていうのは おのずと出てくるので「それ感じたらそこで言わなきゃいつ言えるんだろう」っていう…。「今しか言えない」って思うと、本当に「いや今言うべきでしょ」っていう。「今言ったほうがいいよね」っていうところにおのずと結び付いたっていうか…オンステージに限らずですけど。

谷中:オンステージに限らずですね。

渋谷:この人生の中で日々の中でそういう瞬間っていうのはすごくたくさんあるなっていうのを歌うたびに自分でも自覚し続けている…メンバーでもずっと自覚し続けているっていう感じですかね。

谷中:発せられた渋谷さんの言葉にハッとしてインスピレーションを感じたりとかするってことが自分の作曲だったり作詞に生かされるってこともあるわけですよね?

柳沢:そうですね。ちょうどMCから言葉をそのまま歌詞にピックアップして入れはじめたのがちょうどその「ありがとう」とかのあたりで。同じアルバムに「あなた」っていう楽曲も入ってるんですけど、その「あなた」っていうのもそれくらいの時期に渋谷が明確に「あなたたちじゃなくあなたに歌ってる」っていうのを。

谷中:これは本当に素晴らしい!

柳沢:それまで僕はあまり深くこだわらず二人称で “君”って使っていたり曲によっては”あなた”って歌ったりしてたんですけど、一旦そこはもうすごく意識的にすべてを”あなた”に置きかえてみようって思って曲を書きはじめたのがちょうどこれくらいの時期だったんですよね。

渋谷から出てきた言葉だったんで、後から僕が”あなた”に変えたっていうのは一つSUPER BEAVERの変わった一瞬だったというか、僕が作る楽曲ではありますけど、SUPER BEAVERの言葉であり、および渋谷龍太の言葉としてこれまで以上に濃度の濃い言葉がステージから、音源から発せられるようになっていったなって思っていて。それくらいから結構オンステージ上の言葉を歌詞に入れていったりしますね。

全部が全部ずっと…僕も(ギターを)弾いてたりもするので、全部が全部聞こえてるわけじゃない時もあるんですよ。なんですけど、そんななかでも飛び込んでくるワードっていうのがやっぱりあって。それっていうのは 自分自身が今一瞬ハッとしたってことは、ここから歌を作っていったら本当に文字どおりSUPER BEAVERの音楽というか、SUPER BEAVERの言葉というかになるなっていうのがそれくらいの時期から強く思うようになりましたね。

谷中:“あなたたち”だと「あっ、この中の誰かなんだ」みたいなぼんやり思うわけじゃないですか。でも“あなたへ”って言われた途端「あっ、俺なの?」みたいな。

渋谷:これ自分で言った時僕自身もハッとしてるんですけど「これを絶対言ってやる」と思ってステージの上に臨むことってほとんどないので…でもやっぱ歌ってた時に「もっと届けたい。ただ、もっと届けるにはどうしたらいいんだろう?」って思った時に小学校の時の全校集会みたいなのが出てきたんですよね。校長先生の話が入ってこない理由。

谷中:はいはいはいはい。

渋谷:「何で興味なかったんだろう?」とか。「何で何にも覚えてないんだろう?」とか思った時に、やっぱあの人たちは俺たちのことを集団として見てたなと思って。一対集団で見てるから薄いんだと思って。百ある言葉がその集団にいる人数分で等分化されてるから、どんどん薄くなっていくんだと思って。

「もっと届けたい、もっと届けたい」って思った時にそれがブワーッと思い浮かんで「そうだよな “あなたたち”で捉えちゃいけないんだよな」と。「”あなた”に歌ってる」って明確に思ってる、明確にそれを言う、伝える。そうしたらもっと音楽聴いてくれるかもしれないなとか、気持ち受け取ってくれるかもしれないって思ったんですよね。

せっかく4人で鳴らしてて、4人だけじゃないことに気付けたバンドなので、ちゃんとそこまで含めて「俺が届けなきゃ」なっていうのはその時思いました。

■13:35 「ありがとう」の届き方

谷中:それまでのお客さんと、その後のお客さんの「ありがとう」を基点にした変化みたいなものはなんとなく感じたりとかはありますか?

柳沢:聴いてくださる方の何が変わったとかっていうのは正直多分ないと思うんですよね。その曲ごとによって感じてくださり方とか違うと思いますし。自分たちもライブのそのものが変わったわけではないので。

ただ、やっぱりこれまで以上に強く感じられたのは全力を尽くすというか、一生懸命やるというか…。そういった姿勢をフロアでもそういうふうに見てくださってるんだなっていうことっていうのはやっぱり今一度自分たちが気付かせていただくきっかけにもなりましたし、音楽って一人一人がやっぱり“あなたたち”じゃないからこそ思うんですけど、“あなた”一人一人の聴き方っていうものがやっぱりあるからどんなに気持ちが高揚しててもジッと食い入るように見つめてる方もいらっしゃると思いますし、拳があがるようなテンポだったかな? って思うけど一人だけワーッて高揚して拳をあげてる方がいらっしゃったりとか。

この「ありがとう」っていう曲をライブでやりはじめた時にそういったものに個人的にはすごく気付かされたなっていうのを思っていて、聴いてくださる方も「それでいい」って今一度思ってくださったんじゃないかなっていうのはライブにおいては特にですけど、すごく思いましたかね。

もともとぶーやん(渋谷)が自分がすごくライブに行く人なので、そういうのは常々メンバーとはすごく話していて。そういう人間が歌ってそれを届けてくれるから、なおさらそういった光景というかそういった空気っていうものが自分たちも「あっ これこそカッコいいな」とか思えたりとかそういうのがすごくあったんですけど。

渋谷:“受け手”って大事ですよね。“受け手”でいるって大事だなと思うんですね。僕はずっと”音楽ファン”なんですよね。俺は”プレイヤー”だって思ったことないっていうか…プレイヤーなんですけど。俺は”プレイヤー”だからって思ったことはなくてずっと”音楽ファン”なんですよ。それを考えると何が響いて何が響かないのかっていうのは何か分かるんですよね。

この「ありがとう」っていう楽曲をやって、この曲が何かを変えてくれたっていうのももちろんあると思うんですけども、この曲をやる自分たちが変わったから受け取ってくださる方が変わったと思ってるんですよね。

真摯に真面目に伝えようとしている姿勢って僕は裏切ることもあると思うんですけど、届くと思うんですよ。なんとなくやってなんとなく伝えようかなって思ってるだけのスタンスの人間の話って多分誰も聞かないと思うんですけど、本当に分かってほしいんだとか、本当に伝えたいなとか、本当に思ってるよってことを真剣に言ってるやつの話ってみんな聞くんですよね。

俺が好きな音楽ってそうだったなと思ってて。真面目に…激しくても激しくなかろうとも真面目にその音楽が大好きだったり、本気で投げてやろうと思ってる人の音楽しかやっぱ刺さってないなと思って。

だとしたら、やっぱスタンスってすごい大事だなと思って。真摯に向き合うことと、本気で思って本気で自分たちが楽しんでやってることって超大事だなと思って。で、だからこの曲のあたりから自分たちがそうなってきたんだと思います。だから、見てくださる方が真剣に聴いてくれるし真剣に楽しんでくれるようになったんだなっていうのを思ったのでいい分岐点というか…まあ分岐っていうかね、これをきっかけにスパッと変わったわけじゃなくて緩やかになんですけど。今までの僕らだってずっとそう思ってやってきたし。ただこれを機にグーッと変わってきたなっていう感覚はちょっとありますね。


『FUKA/BORI』

第3回 SUPER BEAVER

SIDE A:「ありがとう」を深掘り

2/22 公開予定
SIDE B:SUPER BEAVERが影響を受けた楽曲を深掘り

『FUKA/BORI』
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV


『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCmm95wqa5BDKdpiXHUL1W6Q

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