THE F1RST TIMES

COLUMN

2022.04.08

鈴木雅之を再発見する。彼のキャリアとチャレンジに見る強靱な存在感と “楽しむ”を共有する柔軟性

TEXT BY 永堀アツオ

■ つねに話題を巻き起こす、レジェンドという枠には収まらない凄さ

今年2月にソロデビュー35周年を記念したカバーベストアルバム『DISCOVER JAPAN DX』をリリースした鈴木雅之。タイトルからもわかるとおり、“日本のうたの再発見”がコンセプトとなっているが、令和を生きる若者たちにとっては、“鈴木雅之”というボーカリスト自体が最大の発見になったのではないかと思う。

『DISCOVER JAPAN』シリーズがスタートしたのは、今から10年前。ソロデビュー25周年を迎えた鈴木雅之が、2011年3月11日に起きた東日本大震災を契機に“音楽には今、何ができるか?”という自問自答を繰り返し、“日本のうた”を再発見するというテーマに辿り着いた。そして、サウンドプロデューサーに服部隆之を迎え、過去3作品を制作。

『DISCOVER JAPAN DX』ジャケット写真(通常盤)

シリーズの集大成となる『DISCOVER JAPAN DX』もコロナ禍を経験した2022年の“今、うたうべき歌”を鈴木雅之自身がセレクトし、新曲として、TVアニメ『BEASTARS』第2期オープニングテーマとして制作されたYOASOBI「怪物」(2021年)、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の主題歌としてヒットした手嶌葵「明日への手紙」(2014年)、UruやJUJUをはじめ、数多くのアーティストにカバーされているスターダスト☆レビューの名曲「木蓮の涙」(1993年)の3曲が新たに収録された。

そのなかでも特筆すべきは、やはり、ストリーミング世代の代表とも言えるYOASOBI「怪物」のカバーだろう。服部隆之によるオーケストラアレンジの素晴らしさはもちろん、あえてテンポを落とし、ファンク的解釈を加えたボーカリゼーションの見事さと言ったらない。また、自己と他者、理性と相反する欲望の狭間で揺れ動く思春期の若者の心を描いていた歌詞も、鈴木雅之は間違いだらけで答えのない世界の中で、“君とただ笑っていたい”と願う普遍的なラヴソングへと昇華している。

2月にYouTubeでMVを公開すると、1日平均で約20万回再生が継続し、4月頭時点では累計343万回再生を突破。音楽はYouTubeで聴き、新曲はTiKTokで知るという若年層に大きな支持を受けているのは間違いない。実際、視聴者の約6割が18〜34歳の若年層となっているということは、Z世代に“ラヴソングの王様”こと鈴木雅之が見つかった=ディスカバーされたという証左でもある。コメント欄には“レジェンドなのに、流行りの曲をカバーする柔軟さ”などのメッセージが寄せられているが、グループデビューから41年、ソロデビューから35年と、どんなにキャリアを重ねても、軽やかさを失わずに世代を問わず愛され続ける鈴木雅之の凄さを端的に言い表した言葉だろう。

鈴木雅之は1980年に11人組のバンド“シャネルズ”としてデビューした。本格的なドゥーワップサウンドの1stシングル「ランナウェイ」ですぐさま人気を得て、「トゥナイト」や「街角トワイライト」などの大ヒット曲を連発。1983年にはグループ名を“ラッツ&スター”に改名し、同年発表のデビュー曲「め組のひと」が大ヒット。この曲は2010年に倖田來未が原曲のラテンファンクを高速のEDMアレンジでカバーし、後に彼女のライブの定番曲となり、2018年にはTikTokで振付動画が流行するなど、昭和、平成、令和とこれまでに何度もリバイバルヒットを繰り広げている。

そして、1987年のソロデビュー後には大沢誉志幸、山下達郎、小田和正、大瀧詠一をプロデューサーに迎えたアルバムを制作。このメンツを見ればわかるとおり、近年のシティポップブームとも親和性が高い。山下達郎プロデュースで、竹内まりやが作詞にも参加した2ndアルバム『Radio Days』はブラックコンテンポラリーやノーザンソウルを日本人の解釈で構築した和製アーバンR&Bの傑作と評されており、大瀧詠一がプロデュースしたラッツ&スター「Tシャツに口紅」や「夢で逢えたら」は海外のシティポップ愛好家からも高い注目を集めている。

さらに、1994年にリリースされたソロ17枚目の両A面シングル「違う、そうじゃない」と菊池桃子とのデュエットソング「渋谷で5時」は平成にはピッチで“歌詞画”になり、令和の現代はネットミームとなるなど、フレーズ単体でもつねにインパクトを残し、いい意味で、日常を彩る楽しいネタのひとつとなっているのも鈴木雅之の懐の深さだろう。

「め組の人」がTikTokでバズった1年後。ソロデビュー32年目、還暦越えの63歳の年である2019年2月には、“アニソン界の大型新人”と自ら名乗り、キャリア初となるアニメ『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』のオープニングテーマ「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」を発表し、最大級のアニソンフェス『Animelo Summer Live 2019-STORY-』にも出演して大きな話題を集めた。

鈴木愛理、鈴木雅之

2020年4月には同アニメの第2期オープニングテーマ「DADDY!DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理」をリリース。YouTubeでのMVの再生回数は4,180万回(2022年4月現在)を超え、海外からのコメント(“彼はエルビス・プレスリーの息子なのでは?”“これが本物のソウルだ”など)も他言語で多数寄せられ、2年以上経った現在でもロングヒットを継続中だ。

また、世界各地からのリクエストにより『THE FIRST TAKE』にも出演し、2,430万回再生(2022年4月現在)を突破。YouTubeのMV再生数やストリーミング再生数だけでなく、「歌ってみた」や「踊ってみた」などの動画も世界中から大量に投稿されており、“聴く”、“見る”だけでなく、たくさんの人に“使われる”=親しみをもって遊ばれるという現代的なヒットソングとなっている。

そして、2022年4月からスタートするTVアニメ『かぐや様は告らせたい -ウルトラロマンティック-』でも3期連続でオープニングテーマを担当することが決定し、新パートナーとして、SILENT SIRENのギター&ボーカルの“すぅ”を迎えることが発表され、国内外のアニメファンから喜びの声が上がっている。

すぅ(SILENT SIREN)

TVアニメ『かぐや様は告らせたい -ウルトラロマンティック-』第3期オープニングテーマとなる「GIRI GIRI」は、3作連続で作詞作曲を水野良樹(いきものがかり/HIROBA)、編曲を本間昭光が担当。華やかなサウンドと溌剌としたビートに大人の色香と渋みが溢れる歌声を響かせる鈴木雅之とファニーボイスのすぅが、告白直前の“GIRIGIRI”の攻防戦を繰り広げるファンキーなディスコチューンとなっている。

鈴木雅之は3月18日に開催された同アニメのワールドプレミアイベントで「『かぐや様は告らせたい』という世界規模で愛されている日本を代表する作品に、3度関わらせていただくことは、“ギネス級な快挙”だと光栄以外の言葉が見当たりません」と感謝の気持ちを述べ、「アニメで描かれる世界が、この曲でより“ウルトラロマンティック”になれば嬉しい限りです」とメッセージを伝えている。この軽妙で洒脱なコメントからも鈴木雅之自身も存分に楽しんでいることがわかる。今度はこの曲がどんなセンセーションを巻き起こすのかが今から楽しみでならない。

“ラヴソングの王様”にして“アニソン界の永遠の大型新人”を自認する鈴木雅之は、レジェンドという枠には収まらずに、軽やかなステップで若者と同じステージに立ち、つねに“現代のラヴソング”を追求し続けている。そんなマーチンからますます目が離せないでいる。






鈴木雅之 OFFICIAL SITE
https://www.martin.jp/