THE F1RST TIMES

COLUMN

2022.04.12

yamaが「春を告げる」を深掘り-『FUKA/BORI』SIDE A 全編書き起こし

FUKA/BORI
【DIG / 05】yama
SIDE A「春を告げる」

東京スカパラダイスオーケストラ・谷中 敦がホストを務める、曲やアーティスト自身について深く掘って語る最深音楽トークコンテンツ『FUKA/BORI』(フカボリ)。

第5回にyamaが初登場。自身の楽曲について語るSIDE Aでは、命を削って作り上げた楽曲「春を告げる」について深掘り。谷中 敦に見せた葛藤と涙の理由とは?

■0:00 ようこそ、最深の音楽へ

谷中:『FUKA/BORI』へようこそ! どうぞ!

※ホストをつとめる、東京スカパラダイスオーケストラ・谷中 敦が登場し、本日のゲストyamaを招き入れる。

谷中:楽しみにしてました。

yama:自分も楽しみにしておりました。よろしくお願いします。

谷中:よろしくお願いします。たくさん聞きたいことあります。

yama:はい、楽しみです。よろしくお願いします。

谷中:どうぞ!
 

■1:01 yamaのターニングポイントとなった曲「春を告げる」

yama:いやもう本当に人生の分岐点という曲ですかね。当時の自分をすごく思い出せる曲なんですよね。本当にずっと何者かになろうとして模索して天井をずっとボーっと見てたりとか。パソコンの画面と向き合ってレコーディングしてたりとか。でも日中は普通に働いててその落差とか…いろんな当時の記憶がよみがえってくる曲で。それがすごく大切に思えるんですよね。いつまでたっても初心を忘れないでいられるなって。

でも同時にこの楽曲は自分を代表する曲になってしまったので、この楽曲以外に自分を代表する楽曲を作らねばという使命感というかちょっとの呪いというか…そういうものもありつつ。でもこの曲でなかったらもっと気に病んでいたと思います。というのもすごく命を削りに削ってレコーディングした曲だったので、この楽曲でヒットしてまたそれは課題として、越えなければならないっていう課題としてずっとあり続けるっていうのはこの楽曲でよかったなと思いますね。なんかいろいろな意味を持つ、なくてはならない曲ですね。きっと一生歌い続けるんだろうなと思って。

谷中:この曲を出す前は誰かの曲のカバーをして、それをYouTubeで発表したりとかっていうことをなさってたわけですかね?

yama:はい、そうですね。そのオリジナル曲というか「春を告げる」を作って発表しようっていうふうになった経緯といいますか。カバーをしていた、アップロードしていた時代にですね、突然今の担当でもあるんですけど、ソニーの藤原さんという方から声をかけられまして。最初はすごく詐欺かなと思ってて(笑)。それぐらい知名度がなかったんですよ、本当に。だからこんな自分に声をかけるなんてたぶん搾取されるか、だまされてるんじゃないかなと思いながら会いに行きまして。ホントに歌声を気に入ってくださって一緒にやりませんかと言っていただけて。

そこからですね、目標を設定してカバーは続けていくんですけど、最初の目標は確かYouTubeの登録者数10万人を目指そうという形で一生懸命自分なりに工夫しながらやってたんですけどなかなか難しくて。今インターネットすごい普及しててたくさん才能ある人いますから。なので、その中でじゃあどうやったら今よりももっと多くの方に知っていただけるんだろうっていうのをいろいろ話し合った結果、ではちょっといったんオリジナル曲書いてもらって出しましょうっていうふうになって。そうですね「春を告げる」を作ろうとなりましたね。

■5:55 信頼関係が生み出すもの

谷中:(曲を作った)くじらさんとの面識はどうだったんですか?

yama:先にくじらさんのほうから声をかけていただいて…。

谷中:あっそうなんですか。

yama:そうです。彼が作った「ねむるまち」という楽曲があって、その楽曲をフィーチャリングボーカルとして参加していただけないかというふうに連絡いただきまして。そこからつながりがあって関係を続けさせていただいてた中でオリジナル曲を書いていただけませんかっていうふうにお願いしましたね。

谷中:最初にもうくじらさんのフィーチャリングボーカルとしての活動はもうされてたんですね。

yama:そうですそうです。でも実際に当時会ったことはなくて本当に文章上のみの…。

谷中:全然会ってなかったんですか?

yama:会ってないですね。もうホントにだからお互いの能力だけを見てコンタクト取り合ってっていう現代的なやりとりをしてました。

谷中:そういう関係は長く続くと思いますよ。

yama:ホントですか?

谷中:お互いにだってそこに尊敬があるんですもんね。

yama:そうですね。自分が上京して実際にくじらさんとお会いして、でもその中でも変わらないお互い尊敬し合う気持ちがあるなっていうふうに接してて思います。

谷中:くじらさんが初めてオリジナルの楽曲を書いてくださるっていうことで、それに当たって何かyamaさん側からオーダーとかはされたんですか?

yama:それもですね、すごい特殊なんですけど…。何となく自分の中で「ねむるまち」をお願いできませんかって言われて歌ったときに、たぶんこの方は自分のボーカルとしてのここがいいとかその良さを彼は理解してくれてるなっていうふうに感じて、だからオリジナルをお願いする段階で「任せてみたい全てを」って思っていたのであえてBPMとかも言いませんでしたし。

谷中:BPMも言わなかった!

yama:全て。

谷中:曲の速さも。

yama:そうです。悲しい感じでとかそういうニュアンスの言うこともなかったですし。全て任せましたね。

谷中:その楽曲を初めて聴いたときの印象覚えてます?

yama:覚えてますね。当時まだ自分は働いていたので全然その音楽で食えるなんて思ってもいない…微塵も思ってなかったので正直。音楽は好きなんだけれどもただ天井を見てるだけの時間とか何のために生きてるんだろうとかすごい悩んでいた時期でもあったので、デモを聴いたときにあまりにも自分の環境と酷似しているというか楽曲自体がすごくリンクするものがあって聴いたときに胸がドッドッドッて動悸がするぐらい「あっこれはすごい曲が来たぞ」っていうふうに感じたのを覚えてますね。

谷中:もう動悸がするぐらい。

yama:興奮しましたね。すごい素晴らしい曲が来たなと思ってました。

■9:17 yamaのボーカル論

yama:仮歌はもうボーカロイドが入ってる状態で。でも何となく自分としては割と人が歌われてる仮歌よりかはボーカロイドの方が自分で歌ったときの歌声が想像しやすくて。どうしても引っ張られちゃう癖があって。人の声だと。

谷中:そうですよね。

yama:でもボカロだったんですけど、もちろん人間っぽい感情とかは入ってない状態でのデモだったんですけど、なんか自分には歌ったときの想像というか完成図が瞬時に見えて、でもそこにたどり着くにはとてもじゃないテクニックが必要な曲だなと思って。

谷中:もうでもそれまでいろんな曲をカバーされたりとかもして技術を習得した上で
その上でさらに難しいなっていう。

yama:そうですね。いやいや、これは歌えるかなっていうふうに。ちょっと自信がなかったですね。これを歌いこなすには生半可な気持ちでは挑めないなっていうふうに思ってましたね。

谷中:この曲は特にそう…やっぱり難易度の高い曲だってことですけど、普段だったら誰かの曲を聴いてコピーして録音するっていうところまでの間っていうのは時間はそんなかからないほうですか?

yama:かなりかけますね。レコーディングが一番好きな工程なのですごく時間をかけてしまう…。

谷中:楽しいですもんね。

yama:楽しいですね。すごい楽しいです。当時カバーをしていた時代はミックスを自分でやっていて、その際にピッチ補正をするのが何となく自分の中でタブーとしてて。単純にうまくできないからやってないだけなんですけど。できるまでそこを歌い続けるっていうことをするのでかなり時間かかりますね。朝11時とかから録り始めて休憩挟みながらですけどそれこそ11時…あるいは日付超えてたりとか。

谷中:もう12時間超え。

yama:でもそれぐらいすごく集中してレコーディングをやっていて、ピッチ補正をしない理由とかも自分の口から出たその表現が実際生で歌ったときに再現できないっていうのがすごく嫌で後で機械で直してしまうとそれは自分の歌ではないなっていうふうに思っていたので、練習とレコーディングを兼ねてどちらもやっているので時間がたぶんかかってしまうというか。「春を告げる」は特に繰り返していたので途中で歌ってやめるとかいうのも含めてなんか2000テイクぐらいはしてると思う。

谷中:2000テイクってすごくないですか!? 何か軽くおっしゃられましたけど(笑)。だんだんあれですか? その頃に比べたら今は2000テイクとかっていうことはなくなってきてます?

yama:なくなってきてますね。

谷中:なるほど。

yama:なくなってきてます。単純にホントに当時の自分には難しかったんだと思います。2000回練習しないといけないぐらい難しかったんでしょうね。オリジナル1曲目っていうのもありましたし。この曲で自分を変えたいとも思っていたので、もしかしたらほんとにもしかしたら…何かが変わるんじゃないかと少しの期待を込めていたので。

■13:10 自己否定と努力

谷中:完全にボーカルはセルフプロデュースということですね。

yama:そうですね。基本的には。

谷中:すごいですね。

yama:そうさせていただいてます。今もそのスタイルであんまりディレクションしていただくっていうことはほぼないですね。

谷中:ってことはですよ。歌について人から学んだりとかっていうことではなくて独学ということでいいんですか?

yama:そうです。ボーカルテクニックに関しては全てそうだと思います。基本的にその技術的なことに関してはそうですね。 誰かに教えていただいたりとか参考にした方もいませんね。むしろなんか…自分の中でそんなに才能がないと思っていて平凡だな、没個性だなっていうふうに感じながらこれまで歌を歌ってきたので、じゃあその没個性なりにどうしたらyamaとして認識してもらえるというか。ここは誰にも変えられないこの人にしかないものだなっていうふうに思っていただけるかを模索しながら歌を歌い続けているので。だからそこに向かって目指してやってるとどうしても思い詰めちゃうことが多くて。かなり…そうですね。精神的落差とかも激しい中でやってますね。でもなんかそれが自分の歌声に生きているような気がしていて。

谷中:生きてますね。そうですね。

yama:誰かに似たくないとか、平凡な自分なんだけどどうしたらその中で皆さんに追い付けるだろうかとかそういう劣等感っていうんですかね。常にどこか焦りを感じながら過ごしてますね。この「春を告げる」がヒットしたときもすごくうれしいんですけど同時に自分はこのたくさんの方に認めていただけるほどの実力がまだないのにどうしようっていうふうにすごい焦ってる自分も。

谷中:実力以上に評価してもらってるような気持ちになっちゃってたってことですね。

yama:レコーディングって何度も何度も挑戦できるじゃないですか。それがちょっと後ろめたさもありながら活動はしてたんですよね。

谷中:いやそれはもうホントに厳密に考えればそうなんでしょうけど、普通そこまで掘り下げないですよね。きっとね。

yama:どうしても生まれた段階で能力値の差は必ずあると思ってて、世の中に努力をすれば報われるという方もいらっしゃいますし、天才なんかいないんだっていうふうに言う人もいるけど、自分はそうではないと思って。少ない努力で素晴らしい才能を発揮する方っていると思ってて。そういった方に追い付くには能力値の差がどうしてもあるからその人以上の努力をしないとそもそも並べすらしないし同じ土俵にすら上がれないなっていうふうに考えているので、なんかその焦りが常にあるんでしょうね。

■16:51 幼少期にかけられた言葉

yama:なんか幼少期に掛けられた言葉でずっと胸にある言葉があって。親しい人に掛けられた言葉ですが。「世の中にはたくさん歌のうまい人がいて、だからあなたは特別でないしあなた以上に魅力のある人はたくさんいる」というふうなことを言われたことがあって。それはでも実際そうだと思ってて。それまで自分は正直過信していたんですよ。自分のことを。ちょっと特別かもしれないって。そこでハッとしてなんか少し現実を見るようにそのときから変わっていって。でも歌を歌うことをやめられなくてどこかすがりたい気持ちもあって歌ってきたので。なんかその言葉はずっと常に今もずっとあるからこそ怠らないのかなと思っていますね。

谷中:その方はどうしてそういうことをおっしゃられたのか考えたことありますか?

yama:おそらく優しさだと思います。それは。傷付けたいとかは一切ないと思います。正直この音楽だけで食べていくことって簡単ではないじゃないですか。

谷中:そうですね。

yama:かなり厳しいし大変な思いをね、しますから。そういった意味で優しさできっと言ったんだろうなと思ってて、自分が当時の自分に言葉を掛けるとしたらおそらく同じ言葉を掛けるだろうなって思ってるので。その言葉がなかったら多分ここまで歌も上達していないしここにすら立ててないだろうなって思ってるので。あれは優しさだったなと思ってます。

谷中:すごく重要な言葉だったんですね。でもね。今もずっと忘れないというかね。

yama:だから…そうですね。どっかそのときからそういう言葉を掛けられたけれどもどこか諦め切れない自分がいて。その中で一生懸命模索しながらじゃあどうしたら自分らしさを
、唯一無二の歌声を、と思って活動していてその中ですごい暗闇だったんですけど、誰も見付けてくれないなやっぱり。やっぱりそうだよなっていうふうになんとなく分かっていて。そこでカバー曲である煮ル果実さんっていうボカロPの方が「ヲズワルド」という曲を出されてて。その曲をカバーして自分はもう歌うことをきっぱりやめようと思ってカバーを出した曲があって。その出した1週間後ぐらいにソニーの藤原さんからDMが来たので、あっ自分は…もしかしたらやめなくていいのかもしれないっていうふうに思ったときでしたね。すごい覚えてます。

谷中:そのタイミングですね。

yama:そうですね。すごい覚えてますなんか。

谷中:そのチャレンジしといてよかったですね。

yama:そうですね。見付けていただいたなというふうに思いました。でもなんか…こんな平凡な自分ですが…一人の方でもそういうふうに思っていただいて心を動かすことができたんだなっていうふうに思えて、そのときはじめて続けていてよかったとすごい思って。しばらくたって一緒にやっていくうちに「春を告げる」がヒットしたので今ここに立っていて。本当にね当たり前ではないなって自分は常に思いながら、今幸せですしもちろん苦しいことたくさんありますけど音楽をさせていただけていることが本当に幸せですね。と思って「春を告げる」を選ばせていただきました。

『FUKA/BORI』
第5回 yama

SIDE A:「春を告げる」を深掘り

4/19(火)22:00 公開予定
SIDE B:yamaが影響を受けた楽曲を深掘り

『FUKA/BORI』
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV

『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
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