高校の同級生で結成された女性3人組ロックバンド、Conton Candy。2002年生まれの3人らしいフレッシュな勢いだけではなく、揺るがぬポップセンスや安定感のある演奏も魅力だ。今回はバンドの成り立ちやメンバーのプロフィールをひも解き、人気曲を考察する。
■高校の軽音楽部で結成された3ピースロックバンド
Conton Candy(読み:コントンキャンディ)
・結成:2018年
・メンバー:紬衣(Vo、Gu) / 楓華(Ba、Cho) / 彩楓(Dr、Cho)
・OFFICIAL SITE https://contoncandy.fanpla.jp/
・Instagram https://www.instagram.com/contoncandy_official/
・X(旧Twitter) https://x.com/Conton_Candy
・YouTube https://www.youtube.com/c/ContonCandy
・TikTok https://www.tiktok.com/@contoncandy_official
Conton Candyは2018年に高校の軽音楽部で結成。軽音楽部の強豪校ということもあり、成り立ちはちょっぴり珍しい。この軽音楽部では、まずは先輩が引いたクジによって引き合わされたメンバーでお試しバンドを組み、発表会をする。それを観た先輩や先生による“このパートは誰がいちばんよかったか”という投票で選ばれた人たちが、正式にバンドを組む。つまり、自分たちで声を掛け合って結成したわけではなく、高校生の時点で客観的な視点のもとに集結したメンバーによってConton Candyは生まれたのだ。
バンド名は当時から変わらず。かわいらしい響きや見た目とは裏腹に、潜んでいるのは“混沌”というワード。そのギャップを見せることを狙って名付けたのだという。
奇しくも時代はコロナ禍。様々な困難を乗り越えつつ、ライブを重ね、楽曲を生み出していった。すると同年末には『Eggs年間ランキング2021』のアーティスト部門と楽曲部門(「ロングスカートは靡いて」)でそれぞれ1位を獲得。さらに2023年4月26日にリリースした曲「ファジーネーブル」が、SNSを中心に各サブスクリプションチャートを席巻し、Billboard JAPANのチャート『JAPAN Heatseekers Songs』『TikTok Weekly Top 20』で2週連続首位を獲得。『TikTokトレンド大賞2023』にもノミネートされ、その名と音が幅広く知られることとなった。
3人共通のルーツはKEYTALK。その影響を感じるパワフルで笑顔になれるパフォーマンスで、イベントやフェスを沸かせる存在としても注目されている。
■メンバープロフィール
紬衣(読み:つむぎ)
・生年月日:2002年11月9日
・ポジション:ボーカル、ギター
・X(旧Twitter)https://x.com/tmg___1109
・Instagram https://www.instagram.com/269._.cc/
小学生の頃から、家族とロックフェスに足を運んでいた。さらにアイドル、ボカロ、アニソンなども幅広く愛聴。幼稚園の頃にはAKB48が好きで、当時はアイドルになりたかったという。今では違う形でステージに立っているので夢が叶ったそう。バンドではリードギター志望だったため、ボーカルを務めることになったときは不安だらけだった。しかし、かわいらしくも胸をえぐるようなエモーションを併せ持つ歌声は、瞬く間に多くの人を魅了していった。それもそのはず、彼女が敬愛するのは峯田和伸と細美武士。その剥き出しの姿勢は確実に受け継がれている。ほかにACIDMAN、ストレイテナー、チャットモンチーを聴いてきたことも公言している。お酒が好き。
楓華(読み:ふうか)
・生年月日:2002年12 月12日
・ポジション:ベース、コーラス
・X(旧Twitter)https://x.com/yap_ppppp
・Instagram https://www.instagram.com/fuka_tkm3
ドラムの彩楓とは双子(姉)。母親はORANGE RANGE、父親はTHE BLUE HEARTSを聴いている家庭で育ち、幼い頃から音楽に親しんできた。ベースをはじめたきっかけは、幼少期にピアノやフルートを習っていて、低い音のパートをやることが多かったからだという。中学校は運動部だったが、『ミュージックステーション』でKEYTALKを観て、彩楓とバンドを組むことを志した。スピッツ、くるり、あいみょん、奥田民生、ハナレグミといったアーティストを聴いてきたことを公言。昨年歯科衛生士の専門学校を卒業し、国家試験に合格したことも報告している。バナナが苦手。そしてお酒が好き。
彩楓(読み:さやか)
・生年月日:2002年12月12日
・ポジション:ドラム、ギター
・X(旧Twitter) https://x.com/nasumusume1212
・Instagram https://www.instagram.com/sayaaaka_1212
ベースの楓華とは双子(妹)。楓華と同じく、歯科衛生士の専門学校を卒業し、国家試験に合格した。幼い頃から母親の影響でORANGE RANGEが好きで、ミュージックビデオやライブ映像を観てから幼稚園に行っていたほど。そのなかでもKATCHAN(ex.ORANGE RANGE)、そして、のちに好きになるKEYTALKの八木優樹が楽しそうに叩いている姿を観てドラマーを志した。ルーツの通り、ニッコニコでドラムを叩く姿が印象的。他にはくるり、スピッツ、星野源を聴いていたと語る。ドラムは “大きく伝える”ことを意識していると言う。やはりお酒が好き。
■Conton Candyの注目ポイント
◎耳が惹かれるボーカル
甘くて高めの、かわいらしい歌声。そんな紬衣の歌声の第一印象を入口に、Conton Candyの世界に飛び込むリスナーも多いかもしれない。しかし、すぐに気づくだろう。彼女の歌声が、ただ“かわいい”だけではないことに。楓華と彩楓も口を揃えて絶賛しているが、紬衣は歌声で彼女自身の“らしさ”や、そのときの想いを躊躇せずに剥き出しにする。それはある種“かわいい”とは真逆のたくましさに満ちている。そこに気づいたリスナーがたくさんいるからこそ、Conton Candyはライブハウスで愛されるようになったのだと思う。
◎安定感のあるリズム
Conton Candyの楽曲から味わうひと口目は、歌声やメロディ、そして歌詞。しかし、モグモグ噛みしめていると、がっぷり組み合った3ピースバンドの演奏力に惚れ惚れしてくる。シンプルだからこそ、すべてが露わになってしまう3ピースバンド。しかしConton Candyは、すでに高いハードルを越え、魅せる、聴かせる演奏力を誇っている。その屋台骨が、楓華と彩楓による組んだリズム隊。息ピッタリの安定感と、楽曲の世界観を躍動させるグルーヴ感は、双子ならでは(!?)と思わずにはいられない。このリズム隊がいてこそ、身も心もConton Candyの楽曲に委ねられるのだ。
◎まっすぐなパフォーマンス
コロナ禍にブレイクしたバンドであり、SNSをきっかけに名と音を広めたバンドではあるけれど、Conton Candyは“ライブバンド”であることに強いこだわりを持っている。紬衣は「3人とも、ライブハウスで育ったも同然」と語る。ライブハウスの尊さを知っているからこそ、誰よりも正直なパフォーマンスを見せてくれるのだ。3人で音を鳴らしているのが、それをオーディエンスが喜んでくれるのが、嬉しくって仕方がない!と言わんばかりにアイコンタクトしながら演奏する彼女たち。昂ったあまり紬衣が叫んだり、客席にダイブするなど、ライブならではのエモーションにも、心が震える。
■『THE FIRST TAKE』での披露した「ファジーネーブル」
◎楽曲解説
「ファジーネーブル」は2023年4月26日にリリースされた、Conton Candyにとって6曲目のシングル。これがSNSを中心に各サブスクリプションチャートを席巻し、その年の『TikTokトレンド大賞2023』にノミネート。さらにはBillboard JAPANのチャート『JAPAN Heatseekers Songs』『TikTok Weekly Top 20』でも2週連続首位を獲得した。
歌とギターの弾き語りというシンプルさ、しかし、いきなりハイライトに連れていくようなメロディのサビからのはじまりで、早々に耳を掴まれる。そこからリズム隊が加わり躍動していくと、こう来るか!?というAメロの少し切ないメロディが飛び込んでくる。Bメロになると、歌声の温度がグッと高まり、沸点を越えようとしている感情が目に見えるよう。そして再びのサビへ向かうと、歌い出しのサビはまだハイライトではなかったのか!と思える、バンドサウンドと一体化したパワフルな真のハイライトがやってくる。TikTokでも魅力は伝わるけれど、フルで聴くと、揺れる感情を表現したストーリー性に気づかされる。
▼Conton Candy – ファジーネーブル [Official Video]
◎歌詞解説
ファジーネーブル
作詞:Conton Candy
作曲:Conton Candyファジーネーブルの匂いで
私どこかに行けそう
甘い苦い切ない想いを
飲み干してしまいたい真面目すぎるその姿が好き
私には似合わない
それでも横にいられたらと
そう思う、いやそうやって思ってるもう何回も呼んでいる君の名前も
もう何回も夢に見た2人の世界も
もう何回も何回も諦めようとして 戻って
君に酔ってしまう
私になってゆくファジーネーブルの匂いで
私どこかに行けそう
許すたび 心まで
オレンジ色に染まる
ファジーネーブルの匂いで
君とどこか飛んでいけそう
甘い甘い切ない想いを
飲み干してしまいたい
You might also like悲しすぎるその結末はもう
私言わなくても分かってるの
それでも横にいたいなんて
そんなこと思えないよオレンジに染まった5%の想いは
私の思い出に溶けてしまう
消えてしまう前にファジーネーブルの匂いで
私どこかに行けそう
許すたび 心まで
オレンジ色に染まる
ファジーネーブルの匂いで
君とどこか飛んでいけそう
甘い苦い切ない想いを
飲み干してしまいたい飲み干してしまいたい
◎歌詞解説
ファジーネーブルの匂いで
私どこかに行けそう
甘い苦い切ない想いを
飲み干してしまいたい
“ファジーネーブル”という、聴いただけで口の中に味わいと周囲に香りが漂いそうな、明確なお酒の名前を持ってくることで、聴覚だけではなく、味覚と嗅覚も刺激。お酒ということで、未成年者には、ちょっぴり大人の、憧れの世界を想像させる手腕も憎い。
真面目すぎるその姿が好き
私には似合わない
それでも横にいられたらと
そう思う、いやそうやって思ってる
“真面目すぎる”と想いを寄せる相手の明確なキャラクターを提示することで、より物語が浮き彫りに。さらに“そう思う、いやそうやって思ってる”と噛みしめるように繰り返すことで、“私には似合わない”と思ってしまう主人公の切なさも痛いほど伝わってくる。
もう何回も呼んでいる君の名前も
もう何回も夢に見た2人の世界も
もう何回も何回も諦めようとして 戻って
君に酔ってしまう
私になってゆく
“もう何回も”と、ここでも繰り返す手法で切なさを膨らませていく。行ったり来たりする心模様は恋愛のあるある。迷いながらも“君に酔ってしまう”と、ここで「ファジーネーブル」というタイトルの真意も改めて明かすようなフレーズを経てサビに向かう構成も見事だ。
オレンジに染まった5%の想いは
私の想い出に溶けてしまう
消えてしまう前に
味覚と嗅覚だけではなく“オレンジ”という色味も交えて臨場感を高めると共に、オレンジ=ポップ=心が弾むような主人公の心境を表している。それでいて、“溶けてしまう”“消えてしまう”と、儚さと背中合わせの心境も描いており、浮かれるだけではない=酔いきれない主人公が見えてくる。ここに、アルコール度数5%ほどの軽めのお酒・ファジーネーブルをタイトルにした、さらなる意味があるのかもしれない。
◎『THE FIRST TAKE』での「ファジーネーブル」
▼Conton Candy – ファジーネーブル / THE FIRST TAKE
ファジーネーブル色=オレンジ色のスタイリングを身にまとった紬衣がマイクの前に進み出て、ヘッドホンをかけ「ふう」と伸び。「どうですか?双子」と呼びかけると、楓華が「双子の姉いきます」、 彩楓も「双子の妹いけます」と返事をする。そして紬衣が「やったりましょう、楽しく、ライブみたいに」と意気込んでから、アカペラで歌い出す。バンドが加わると、彩楓はニッコニコでドラムを叩き、楓華は涼やかな笑顔で指弾き。紬衣は歌声で音源とはまた異なるエモーションを表現。“オレンジに染まった『THE FIRST TAKE』のステージは”と歌詞を変えるなど、ライブ感もたっぷり。最後までブレない姿勢を見せたパフォーマンスだった。
■Conton Candyをもっと知りたい!おすすめ曲3選
「ロングスカートは靡いて」
2021年10月15日にリリースされた、Conton Candyにとっての初配信シングル。彼女たちの存在を知らしめた楽曲であり、今もなお人気が高い代表曲。タイトル、そしてサビで歌われる“ロングスカートは靡いて”というピンポイントの描写が、主人公像や心模様、風景など、ありとあらゆるものを想起させる。時間の経過と共に変化する蒼い恋愛を、今の時代らしいメールのやり取りで表現。紬衣のハイトーンも切実に響く。
「急行券とリズム」
2024年10月9日にリリースされた1stアルバム『melt pop』収録。日向坂46 四期生出演 映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』主題歌で、MVにも正源司陽子 (日向坂46) が出演している。カオスと刹那、喪失と愛が入り混じった“東京”が、みずみずしい感性で落とし込まれたナンバー。“急行券とリズム”という、スッと入ってくるけれど解き明かせないタイトルの真意も、楽曲を聴き終える頃には咀嚼できるはずだ。切ないほど過ぎていく時を表現したようなビートや、美しく共鳴する楓華と彩楓のコーラスも聴きどころ。
「普通」
TVアニメ『SAKAMOTO DAYS』エンディング・テーマとしてもお茶の間に流れている、Conton Candyの最新曲。“普通”って何?“愛おしい”ってどんな感情?という、延々と渦巻く疑問の答えを、ポップに軽やかに伝えてくれる。恋愛や青春を通り過ぎた人たちも重ね合わせることができる歌詞の世界観からは、彼女たちの成長が見える。紬衣もかわいらしさだけではなくエモーションを爆発させた、彼女だけの歌声を体得。やさしくも深い、今後が楽しみになるナンバーだ。
■Conton Candy最新情報をチェック!
2025年4月4日には『Conton Candy ONEMAN LIVE 2025 “3 PEACE”』を東京・Zepp Shinjukuで開催。5月3日には『JAPAN JAM 2025』出演など、2025年も躍進が期待されるConton Candy。ぜひ、その動きから目を離さないでほしい。
TEXT BY 高橋美穂
▼Conton Candy最新情報はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/3358/