2000年前後に数々のヒット曲を世に放ったバンド・the brilliant green。近年改めてその魅力が注目されつつあるブリグリの音楽性や必聴楽曲、さらにY2Kブームの中でリバイバルヒットを飛ばしているボーカル川瀬智子のソロプロジェクト・Tommy february6とTommy heavenly6について詳しく紹介する。
■今、再注目されているthe brilliant greenとは?
the brilliant green(読み:ザ・ブリリアント・グリーン)

・結成:1995年
・メジャーデビュー:1997年9月21日「Bye Bye Mr. Mug」
・メンバー:川瀬智子(Vo)、奥田俊作(Ba)
OFFICIAL SITE https://www.sonymusic.co.jp/artist/thebrilliantgreen/
YouTube @thebrilliantgreentv1336
◎the brilliant green(ブリグリ)とは?
1995年に京都で結成された日本のロックバンド。1997年にデビューすると、叙情的な歌詞や儚くも透明感あるボーカル、クセになるメロディ、仄暗く重厚でオルタナティブなサウンドなど、唯一無二の世界観を持つ音楽で圧倒的な支持を集める。これまでに17枚のシングルと5枚のアルバムを発表し、総売上枚数は540万枚超。ボーカルの川瀬智子はソロプロジェクトとしてTommy february6(トミーフェブラリー)、Tommy heavenly6(トミーヘブンリー)も展開し、ファッションアイコンとしてもグローバルに高い支持を誇る。
◎J-POPシーンを牽引したヒット曲の数々
1998年にリリースしロングヒットを記録した「There will be love there -愛のある場所-」をはじめ、続く「そのスピードで」「冷たい花」まで、シングル3作連続でオリコン1位を記録。ヒット曲の数々は当時のJ-POPシーンを牽引し、2000年以降のバンドに大きな影響を与えている。
▼[HD] the brilliant green – そのスピードで
▼[HD] the brilliant green – 冷たい花
■時代を超えて愛されるthe brilliant greenの魅力
◎斬新なサウンドが時代を牽引
the brilliant greenの楽曲における最大の特徴は、重厚で仄暗さを帯びたギターサウンドと、キャッチーで耳に残るポップなメロディのコントラスト。ロックとポップスの境界を軽やかに飛び越えるその姿勢は、1990年代後半の音楽シーンにおいて、従来のJ-POPの枠に収まりきらない魅力を放っていた。そして当時世界を熱狂させていたブリットポップの系譜を感じさせる洋楽的なエッジの効いたサウンドと、情緒を感じさせるJ-POPらしい旋律を融合させることで、日本のポップミュージックの多様化にも貢献したといえよう。またアナログテープでのレコーディングにこだわった丁寧なプロダクションも、彼らにしかない色を生み出す要因となっていた。
◎日本語と英語を織り交ぜた歌詞&独特なボーカルスタイル
the brilliant greenの楽曲の歌詞は、日本語と英語を巧みに組み合わせて構成されている。初期は英詞のみだったが、3rdシングル「There will be love there -愛のある場所-」
◎独特なファッション性とビジュアルイメージ
何にもとらわれない自由なキャラクターでも愛される川瀬だが、バンドのアートディレクションやファッション、ミュージックビデオには、彼女の自由なセンスが存分に発揮されている。メンバー全員が洋楽に強い影響を受けているため、クリエイティブに海外カルチャーの感覚が漂っており、日本発のバンドでありながらもグローバルな空気を纏う点が若い世代の感性にフィット。モードやストリートも軽やかに取り入れるthe brilliant greenのスタイルは、バンドの音楽性と同様に、洋楽的かつ新たな日本的な感覚をも体現していた。
■ブリグリの代表曲「There will be love there -愛のある場所-」
・作詞:川瀬智子
・作曲:奥田俊作
・編曲:笹路正徳、the brilliant green
・発売日:2000年10月1日
◎ブリグリ最大のヒット曲
the brilliant greenの代表曲「There will be love there -愛のある場所-」は、1998年にリリースされたバンドにとって3枚目のシングルのタイトル曲であり、バンドの名を一気に全国へと広めた作品だ。渡部篤郎、石田ひかりが主演を務めたTBS系ドラマ『ラブ・アゲイン』の主題歌に起用され、放送を通じて幅広い層に浸透。オリコンシングルチャートで初登場14位をマークして以降、じわじわとロングヒットを記録し、6月29日付けのオリコン週間ランキングで1位を獲得。バンド初の1位を獲得し、累計87.6万枚という自己最高セールスを記録した。
◎初めての日本語歌詞楽曲
「There will be love there -愛のある場所-」は、バンドにとって初めての日本語詞楽曲。デビュー曲「Bye Bye Mr.Mug」と2ndシングル「goodbye and good luck」は全編英語詞だったが、本作では川瀬が日本語で歌詞を書き下ろした。当時川瀬は日本語詞に変えることに「すごく抵抗があった」そうだが、日本語詞に挑戦したことで聴き手が自身の体験や感情を重ね合わせやすくなり、大ヒットにつながったと言えるだろう。
◎耳に残るメロディと歌詞の絶妙なバランス
耳に残るキャッチーなサビのメロディラインと、切実に1歩を踏み出すようなまっすぐな歌詞が秀逸。ギターを基調としたシンプルながら厚みのあるバンドサウンドに、川瀬の透明感あるボーカルが重なり、ポップさとエモーショナルさを兼ね備えた楽曲に仕上がっている。
■【歌詞考察】「There will be love there -愛のある場所-」
「There will be love there-愛のある場所-」
大きな曲がり角を曲がったなら走り出そう
とまどうことはもうやめて
その先に何があるのかは分からないけど そう
強くあるために“楽しみに待つ”とゆうこと
待つ時の楽しさも今では空っぽで 不安で一杯になる
悩みはいつも絶えなくて不満を言えばきりがない
全てに立ち向かう強さを下さい I believeLove that’s waiting for me
Love that’s waiting for you
そこから流れて行けるような世界を見つけたい
There will be love there
There will be love there
いつかは誰かのために生きていたいここにあるヒミツに罪悪感を背負って生きていた
視界の外を見渡せば
まるで手すりさえもない真っ暗な闇の中にある階段を
あてもなく降りていた“未来へつながる運命”を信じる
幸福な偶然にめぐり逢うと自分に言い聞かせて
嘘つきの糸を切ってそして
真実と向き合う勇気があるって信じたい yeah, I believeLove that’s waiting for me
Love that’s waiting for you
永久不変の優しさに包まれていたい
There will be love there
There will be love there
愛する一人のために生きてゆきたいあらゆる時代この世の中から
青空の彼方 星空の彼方
迷いも閃きも未知のもの めぐりめぐる奇蹟So, love that’s waiting for me
Love that’s waiting for you
そこから流れて行けるような世界を見つけたい
There will be love there
There will be love there
輝く唯一の光を探して走り出そう
そしてその場所で愛する一人のために生きてゆきたい
信じている there will be love there
“There will be love there”は、直訳すると“そこには愛があるだろう”という意味だ。歌詞では“〜たい”という、自身の希望や願望を伝える際に使われる助動詞が頻繁に使われており、現状を打破して“変わりたい”と願う主人公の心情が描かれた歌詞であることがうかがえる。
歌詞では一貫して、先の見えない不安や葛藤を抱えつつも、明るい未来や“愛のある場所”への希望を信じて前に進もうとする主人公の意志が描かれる。主人公は冒頭から、《大きな曲がり角を曲がったなら走り出そう》と自分を鼓舞。そこから歌詞を読み進めていくと、《視界の外を見渡せば まるで手すりさえもない真っ暗な闇の中にある階段をあてもなく降りていた》と綴られており、主人公は自分の内側に抱える罪悪感や孤独から逃れようともがき、希望の光を求めているようだ。
常に自分からアクションを起こし、能動的な主人公の意志も印象的だ。《嘘つきの糸を切ってそして 真実と向き合う勇気があるって信じたい》というフレーズからは、過去を断ち切り、自分自身に向き合おうとする決意が感じられる。最後は川瀬の力強い歌声で《輝く唯一の光を探して走り出そう そしてその場所で愛する一人のために生きてゆきたい 信じている there will be love there》と、ほのかな切なさを帯びながらも、希望に包まれたムードで締め括られる。
歌詞を熟読しながら改めてこの曲を耳にしてみて、キャッチーなメロディと普遍的な“愛”を求める切実な言葉が互いに共鳴し合い、エモーショナルなギターの音と川瀬のボーカルに背中を押されるような感覚を覚えた。多くの人が抱える葛藤や孤独と、そこから希望を求める感情が美しく言語化され、リスナーが心を重ねやすかったことも、本作がロングヒットにつながった要因だろう。
■改めて聴きたい!the brilliant green名曲5選
「冷たい花」
1998年にリリースされた4thシングルの表題曲で、マイナー調の重厚なギターサウンドに、川瀬の気だるくも凛々しい声が重なるロックチューン。湿度を感じさせる雰囲気はOasisを彷彿とさせる。歌詞は少女漫画『こどものおもちゃ』の後半の展開にインスパイアされたと川瀬が明かしている。
「そのスピードで」
1999年リリースの5thシングルで、キャッチーなメロディと浮遊感あるアレンジが印象的。チェコのストラホフ修道院図書館で撮影されたMVはどこかファンタジックで、歌詞にも“魔法”や“天使”といったワードがちりばめられた。反町隆史・江角マキコの主演ドラマ『Over Time-オーバー・タイム』主題歌。
「Ash Like Snow」
2008年にリリースされた17thシングルで、アニメ『機動戦士ガンダム00』のオープニングテーマ。MVとジャケットには劇中のロボ“ハロ”が登場している。重厚なリフと鋭いビートが全編を貫き、バンド史上最もハードで攻撃的なサウンドが展開される。the brilliant greenの新境地を示した1曲。
「Hello Another Way -それぞれの場所-」
2000年にリリースされた10thシングル。メロディアスなギターと幻想的なストリングスの音色が印象的で、お互いに“旅立ち”を前にした相手への感謝と愛情が《愛してるわ big kiss for friends! いつも味方よ》と前向きに歌われる。JAL『2000 ACTIVE 北海道』キャンペーンソング。
「angel song -イヴの鐘-」
2000年にリリースされた11thシングルで、竹野内豊・中谷美紀主演のTBS系ドラマ『真夏のメリークリスマス』の主題歌。歌詞もMVもクリスマスをコンセプトとしており、天使の羽を背負って、甘く儚い声で歌う川瀬の姿は実に神秘的だ。3拍子でギターが穏やかに刻まれる“静”のAメロと、ブリグリらしい重厚な音色が響く“動”のサビのコントラストが美しい。
■世界で人気が再燃!ボーカル川瀬智子ソロプロジェクト
Tommy february6(トミー・フェブラリー)/Tommy heavenly6(トミー・ヘヴンリー)
・結成:1995年
・Tommy february6デビュー:2001年7月25日「EVERYDAY AT THE BUS STOP」
・Tommy heavenly6デビュー:2003年7月16日「Wait till I can dream」
Tommy february6(トミーフェブラリー) https://www.sonymusic.co.jp/artist/Tommyfebruary6/
Tommy heavenly6(トミーヘブンリー) https://www.sonymusic.co.jp/artist/Tommyheavenly6/
YouTube @tommytvnet7515
Instagram @tommyfebruary6clips
TikTok @tommyfebruary_jpofficial
川瀬智子のソロプロジェクトである、Tommy february6(トミー・フェブラリー)とTommy heavenly6(トミー・ヘヴンリー)。ここでは“ジキル博士とハイド氏”のような関係である2つのプロジェクトについて解説する。
◎ポップでダンサブルなTommy february6
川瀬智子によるソロプロジェクトのひとつ。2001年に「EVERYDAY AT THE BUS STOP」でデビュー。メガネとガーリーファッションがトレードマーク。楽曲はシンセポップやニューウェーブを基調とし、キャッチーなメロディとキラキラしたアレンジが特徴的。歌詞では恋愛や日常の淡い感情をコミカルかつポップに表現している。
▼[HD] Tommy february6 – EVERYDAY AT THE BUS S
◎“Tommyのダークサイド”Tommy heavenly6
2003年に「Wait till I can dream」でデビュー。Tommy february6のダークサイドを表現したソロプロジェクトで、february6に対して憧れのような嫉妬のような感情を持っているという設定だ。february6とは対照的に、ゴシックなファッションとヘヴィロックテイストなサウンドが特徴で、歌詞では嫉妬や孤独、内面の葛藤などをストレートに描く。
▼[HD] Tommy heavenly6 – Wait till I can dream
◎SNSで人気が再燃
2021年にTommy february6の楽曲12曲のMVがYouTubeで公開されて以降、じわじわと若い世代にも彼女の存在が浸透していき、ドージャ・キャットはTwitterで「Wait till I can dream」をシェア。またTWICEのナヨンは、2024年にリリースしたソロアルバム『NA』の活動において、Tommy february6にインスパイアされたと思われる衣装を披露した。
そして、矢沢あい原作のファッション業界を舞台としたアニメ『Paradise Kiss』のオープニングテーマとして使用された「♥Lonely in Gorgeous♥」が、Y2Kブームに乗りTikTokで大ヒット。海外の若者たちがこの楽曲に乗せて、ファッションやメイクを楽しむ動画を多数アップしている。
@tommyfebruary_jpofficial #tommyfebruary6 #tomokokawase #y2k #y2kfashion #y2kmusic #lonelyingorgeous #paradisekiss
◎大ヒットアルバムが待望のアナログ盤リリース
こうした再注目の動きを受けて、2002年リリースのTommy february6の1stアルバム『Tommy february6』と、2004年発売のTommy heavenly6の1stアルバム『Tommy heavenly6』が、2025年7月16日にアナログ盤でリリースされた。
■the brilliant greenの最新情報もチェック
the brilliant green の1stアルバム『the brilliant green』が、結成30周年を記念して初めてアナログ化され、9月17日にリリースされる。Z世代からの支持も高まりつつあるthe brilliant greenの音楽の素晴らしさに、今改めて触れてみてほしい。
https://www.sonymusic.co.jp/artist/thebrilliantgreen/info/573738
TEXT BY 岸野恵加
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