「アポロ」「サウダージ」をはじめ、多くのヒット曲を生み出してきたポルノグラフィティ。代表曲のひとつ「アゲハ蝶」も2001年にリリースされた初期の楽曲だが時代を超えて広い世代に愛されている。10月期の日本テレビ系ドラマ『良いこと悪いこと』の主題歌に起用され、注目度も再び高まる「アゲハ蝶」の、世代を超えて歌われる理由に迫る。
■「アゲハ蝶」が土曜ドラマ『良いこと悪いこと』の主題歌に起用
◎ドラマ内に散りばめられた平成の“エモさ”をサウンドで彩る
10月11日に始まった日本テレビ系ドラマ『良いこと悪いこと』。容疑者は同級生。真犯人をめぐる予測不可能なノンストップ考察ミステリーで、2001年6月にリリースされた6枚目のシングル「アゲハ蝶」が主題歌に起用された。
ドラマの登場人物は、2003年に小学校の6年生だった同級生たち。タイムカプセルから出てきた卒業アルバムで6人の顔が塗りつぶされていて、そこから同級生の不審死が始まる。
当時の“平成”という時代とリンクしている曲として選ばれたのだろう。新藤が「なぜこの曲が選ばれたのか、僕もドラマを見て確かめたいなと思っています」とコメントしている通り、当時流行っていた曲という以上に、歌詞に込められた何かしらのメッセージがドラマの“謎”とリンクしているように思える。ストーリーが進むにつれて、「アゲハ蝶」の歌詞の新たな解釈が加わるかもしれない。
■20年以上愛され続ける「アゲハ蝶」
・作詞:ハルイチ
・作曲:ak.homma
・発売日:2001年6月27日
▼ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』MUSIC VIDEO
◎ストリーミング累計1億回再生を突破
6枚目のシングルとしてリリースされた「アゲハ蝶」。
カップリング曲の「狼」が表題曲の予定だったが、急遽制作された「アゲハ蝶」が最終的に表題曲となった。時代や国境も超えてしまっているような独特の世界観がクセになる楽曲で、オリコン週間ランキングの1位を獲得し、長期間トップ100にランクイン。
時代が変わっても聴き継がれ、2023年6月、公式Xでストリーミングの累計が1億回再生を記録したことをジャケット写真を載せて報告。そこから2年経っているが、さらにその記録を更新中。
◎カラオケの定番曲に
「アポロ」、「サウダージ」、「ミュージック・アワー」然り、ポルノグラフィティの楽曲をカラオケで歌うという人はかなり多いのではないだろうか。しかも、世代や性別を超えて愛され歌い継がれているイメージがある。
「アゲハ蝶」もその中の1曲。若干キーが高いところでメロディーが浮遊するような楽曲なので歌う難易度は高いかもしれないが、その浮遊感、うねるようなメロディが歌っていると心地よさを感じられ、歌う側も聴く側も気持ちいい楽曲だと言える。今もなおカラオケ定番曲で人気が高いが、ドラマ主題歌になったことで歌いたいと思う人が再び増えそうな予感。
◎アーティストにも愛され歌い継がれる
ポルノグラフィティのファンを公言するアーティストも多く、「アゲハ蝶」をカバーしてSNSに動画をアップしている人も多々いる。
King Gnuの井口理が岡野のコスプレをして「アゲハ蝶」をカバーしている動画は、ポルノファンも見たという人が多いだろう。井口の表現力の素晴らしさはさておき、コスプレに対して岡野が「俺のコスプレだよね? ハリウッドザコシショウじゃないよね」と動画を見てツッコんでいるシーンが印象的。
▼-岡野昭仁@オールナイトニッポン0(ZERO) 1- / -Akihito Okano @ All Night Nippon0 (ZERO) 1-
▼-岡野昭仁@オールナイトニッポン0(ZERO) 2- / -Akihito Okano @ All Night Nippon0 (ZERO) 2-
他にも、オフィスオーガスタ所属の浜端ヨウヘイが『名曲宝箱』と題してカバーしている動画シリーズの中で「アゲハ蝶」を鍵盤とアコギを弾きながら真剣に歌っている。
▼アゲハ蝶 − ポルノグラフィティ <Cover #034>【浜端ヨウヘイの名曲宝箱】
ドラマ『わたしの宝物』主題歌「明日」や山崎豊子生誕100年記念ドラマ『花のれん』主題歌「TSUBOMI」を歌うシンガーソングライター野田愛実も透き通る歌声でアコギの弾き語りで「アゲハ蝶」をカバー。
▼アゲハ蝶 / ポルノグラフィティ Cover by 野田愛実 (NodaEmi)
さらに、バンドNovelbrightのボーカル竹中雄大が虹色侍とコラボでカバーして見事な掛け合い&ハーモニーを聴かせてくれている。
▼【一発録り】Novelbrightと『アゲハ蝶/ポルノグラフィティ』歌ってみた。
■改めて知りたい!「アゲハ蝶」の魅力
◎ラテン調リズムと独特のサウンド
「アゲハ蝶」のサウンドの大きな特徴として挙げられるのがラテン調のリズム。テンポ感の良さが聴くものの気持ちを高揚させ、聴き終わった後も頭の中に余韻が残った状態になる。
「サウダージ」や「ジョバイロ」も“ラテン系”のリズムやサウンドを取り入れた楽曲で、幅広い楽曲を生み出しているポルノグラフィティだが、その中でも軸の一つになっているということからも、“らしさ”を感じさせてくれる楽曲群だ。
▼ポルノグラフィティ『サウダージ』MUSIC VIDEO
▼ジョバイロ
◎文学的な深みのある歌詞
心地いいラテン調のリズムとサウンドに乗せられた“歌詞”も「アゲハ蝶」の大きな魅力。
比喩的な表現も多く、サラッと聴いただけでは気づかないメッセージ性も秘められている。じっくりと考察したくなる歌詞でもあり、スーッと聴いてイメージを浮かべるのもアリかと思う。聴く人によって、そこに描かれている物語は違って感じられるし、「これはこういうストーリーだ」という正解もないのかもしれない。それくらい深みのある歌詞なので思わず繰り返し聴きたく(読みたく)なってしまう。
◎『THE FIRST TAKE』でも披露
2023年9月20日、『THE FIRST TAKE』に登場したポルノグラフィティは「アゲハ蝶」をパフォーマンスした。
ドラムのカウントと共に昭仁の歌が始まり、歌声をウーリッツァー(鍵盤)のサウンドが優しく包み込んでいく。晴一のエレキギターの他に、ベースとドラム。2台のヴァイオリンと1台のチェロがサウンドに深みを与え、パンデイロ(タンバリン)の音とフルートの音色が異国情緒をより強く感じさせてくれている。
一発録りの緊張感の中でも、楽曲の特徴でもある疾走感を損なうことなく、弦楽器やフルートといった柔らかな音質の楽器を使いながらも、テンポ感の良さをしっかりと感じることができる。
昭仁の輪郭のはっきりとしたボーカルの魅力はそのままに、原曲のアレンジの良さも生かしつつ、使う楽器を変えることで“新しさ”も打ち出している。
▼ポルノグラフィティ – アゲハ蝶 / THE FIRST TAKE
■【歌詞考察】「アゲハ蝶」を繰り返し聴きたくなるのはなぜか?
ヒラリヒラリと舞い遊ぶように
姿見せたアゲハ蝶
夏の夜の真ん中 月の下
喜びとしてのイエロー 憂いを帯びたブルーに
世の果てに似ている漆黒の羽旅人に尋ねてみた どこまで行くのかと
いつになれば終えるのかと
旅人は答えた 終わりなどはないさ
終わらせることはできるけどそう⋯じゃあ お気をつけてと見送ったのはずっと前で
ここに未だ還らない
彼が僕自身だと気づいたのは
今更になってだったあなたに逢えた それだけでよかった
世界に光が満ちた
夢で逢えるだけでよかったのに
愛されたいと願ってしまった
世界が表情を変えた
夜の果てでは空と海が交じる詩人がたったひとひらの言の葉に込めた
意味をついに知ることはない
そう それは友に できるならあなたに届けばいいと思うもしこれが戯曲なら なんてひどいストーリーだろう
進むことも戻ることもできずに
ただひとり舞台に立っているだけなのだからあなたが望むのなら この身など
いつでも差し出していい
降り注ぐ火の粉の盾になろう
ただそこに一握り残った僕の想いを
すくい上げて心の隅においてあなたに逢えた それだけでよかった
世界に光が満ちた
夢で逢えるだけでよかったのに
愛されたいと願ってしまった
世界が表情を変えた
世の果てでは空と海が交じる荒野に咲いたアゲハ蝶
揺らぐその景色の向こう
近づくことはできないオアシス
冷たい水をください
できたら愛してください
僕の肩で羽を休めておくれ作詞:ハルイチ
作曲:ak.homma
冒頭に登場する《アゲハ蝶》。ヒラリヒラリと《舞い遊ぶ》ように、突然目の前に現れた。その時が《月が綺麗な夏の夜》だということは容易にイメージできる。ただ気になるのは、その蝶の色だ。夜だからか、月の光の影響からか、黄色にも青にも見えて、その羽は夜空のように《漆黒》。浮遊感のあるメロディーのように、冒頭の部分だけでも気持ちが喜びと憂いの間を揺れ動いていることがわかる。
この物語のメインの登場人物は“僕”と“あなた”。《僕》にとって《あなた》は大切な存在。逢えただけで幸せだったのに、一歩踏み込んで《愛されたい》と願うようになったことで平穏さがかき消されてしまった。
では、《旅人》とは? 《詩人》とは?
旅人に尋ねてアドバイスをもらおうとしている。答えは返ってきてはいるが、この旅人は“僕”自身なのではないだろうか。自分の中に答えがあることを薄々知りながら、他人に尋ねるふりをして自問自答しているようにも思える。
詩人ももしかすると“僕”自身なのかもしれない。だからこそ、詩人が言の葉に込めた意味が《できるならあなたに》届けばいいと願っているのだろう。突然現れた《アゲハ蝶》は思いを寄せている女性を表しており、手の届かない憧れや幸せについて、《僕》の気持ちを主観的に、そして第三者の視点からも見ているような感じで表現しているのでは。
先ほども書いたように、正解がないからこそ、ついつい深読みしたくなってしまう歌詞だ。
そういう歌詞の世界をあのサウンドとリズムに乗せることで、比喩的な表現さえもリアリティに満ちて感じられ、気持ちの抑揚が加えられることで聴く人の心に響いているのだろう。
■世代を超えて支持され続けるポルノグラフィティとは?
ポルノグラフィティ
・結成:1994年
・メジャーデビュー:1999年9月8日「アポロ」
・メンバー:岡野昭仁(Vo)、新藤晴一(Gu)
OFFICIAL SITE https://www.pornograffitti.jp/
YouTube @PORNOGRAFFITTI_Official
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TikTok @pg_koushiki
◎ポルノグラフィティとは?バンド名に込められた想い
広島県因島出身の岡野昭仁と新藤晴一によるロックバンド、ポルノグラフィティ。
因島高校時代に行っていたバンド活動がもととなり、広島を出たあと、1994年に大阪で結成。初ライブは大阪のライブハウスバナナホールだった。
多くのバンドが演奏していた大阪城公園ストリートライブ(通称:城天)で頻繁にライブを行っていたが、周囲のバンドが奇抜な名前のものが多かったことから、「自分たちも目立たないといけない」と思い、“ポルノグラフィティ”というインパクトの強いバンド名となった。アメリカのロックバンドExtreme(エクストリーム)のアルバム『Pornograffitti』が由来になっており、名付け親は新藤晴一だった。「曲でもライブでも、スリリングで際どい感じのものにしたい」という想いも込められていたという。
◎表現力豊かな歌声と洗練されたサウンド
1999年9月8日にリリースしたデビューシングル「アポロ」から、すでにポルノグラフィティの特徴がしっかり感じ取ることができる。
岡野昭仁のボーカルは声量があり、ピッチも正確。音域が広く、歌声の輪郭がはっきりしているのでリスナーに届きやすい。歌詞の内容も聞き取りやすく、それゆえにメロとフレーズが頭の中にしっかりと残る感覚がある。
「ミュージック・アワー」にしても、高低差の激しい難易度の高い楽曲だが、岡野にかかればキャッチーな曲として届けることが可能。
▼ポルノグラフィティ『アポロ』MUSIC VIDEO
▼ポルノグラフィティ『ミュージック・アワー』MUSIC VIDEO
そしてサウンドの要は新藤晴一のギター。ロックなリフはもちろん、アルペジオのような単音弾きでは繊細さも感じられ、楽曲に色と感情を与えてくれる。エレクトロサウンドを取り入れたアレンジなど、常に新しいことも取り入れているポルノのサウンドは洗練されており、そこは新藤晴一のバランス感覚とセンスの表れだと言える。
◎会場全体が一体となる熱気溢れるライブ
ポルノグラフィティのライブには、ホールやアリーナを回るライブツアー『ライブサーキット』と単発のスペシャルライブ『ロマンスポルノ』という2つの大きな軸がある。
どちらのライブにも言えるのが、初めて観る人も置いてけぼりにしないということ。ライブになると、よりイキイキとする岡野と新藤。歌も演奏も自由度が増し、伸び伸びとしているのを感じる。
「ミュージック・アワー」では、サビの部分の“変な踊り”をみんなで一緒に踊るのも恒例になっていて、一体感を得ることができる。MCでは「わしらが、ポルノグラフィティじゃ!」という挨拶をはじめ、広島弁が炸裂。ファンへの感謝もしっかりと伝えつつ、そのフレンドリーな感じで二人をより身近に感じられるのもライブの魅力と言える。
▼ポルノグラフィティ『ミュージックアワー』(つま恋ロマンスポルノ’11~ポルノ丸) / PORNOGRAFFITTI『Music Hour (Live Ver.)』
■名曲揃い!ポルノグラフィティ人気曲5選
「サウダージ」
「アゲハ蝶」と同じようにラテン調のリズムとサウンドが心地いい楽曲。
タイトルはポルトガル語で“郷愁”や“切なさ”を意味していて、《私は私とはぐれる訳にはいかないから》で始まるフレーズが切なすぎる。時間が経過していくにつれて《愛》が消えていくのを感じ、また出逢えることを信じて《別離》を決めた…。複雑な《恋心》が描かれているが、共感度も高い楽曲だったりする。
「アポロ」
歌詞に登場する“アポロ11号”は1969年7月21日に初めて人類が月面着陸に成功した宇宙船。その30年後の1999年にリリースされたこの曲では、アポロ11号の月面着陸以降、科学技術はさらに進化しているが、その進化と比較して、理想的な“愛”をまだ見つけられず探し続けている“切なさ”を表現した楽曲になっている。
とはいえ、疾走感のあるサウンド、力強い歌声は2000年、21世紀を目前にして、しっかりと勢い付けてくれていた。
「ミュージック・アワー」
ライブでも盛り上がり必至の定番曲。“ポルノグラフィティのラジオ番組”という架空の設定で、DJのトークから入るところにも遊び心が感じられる。
ギターのリフはロック色が濃く出ているが、開放的なサビのフレーズが夏全開のイメージでキャッチーさに溢れている。この曲も2000年に発表された曲とは思えないくらいエバーグリーンで時代を超越している。ライブに参加した人なら、サビで自然とあの変わった振り付けをしてしまうのでは。
「オー!リバル」
映画『名探偵コナン 業火の向日葵』の主題歌に起用された「オー!リバル」。
スペイン語やフランス語で“ライバル”を意味するタイトルで、サウンドもガットギターの音色がスパニッシュ風だったり、アコーディオンの音色がフレンチ風だったりする。憂いを感じさせるところはポルノグラフィティらしさが全開で、それでいて過去のイメージを塗り替えてしまおうという気概も感じられる。たくさんの岡野とたくさんの新藤が登場するMVは個人的にもかなり気に入っている。
「THE DAY」
2016年に発表したアニメ『僕のヒーローアカデミア』の第1期オープニング曲にも起用された曲で、疾走感がありものすごく力強い楽曲になっている。
《決して明けない夜》も《降り続けてやまない雨》もろくでもない世界にはあると言い切り、それでも前に突き進んでいく。そんな勇気を与えてくれる楽曲でもある。キャッチーな楽曲やラテン調の楽曲など、ポルノグラフィティらしさを感じる名曲も多いが、ストレートに“かっこいい”と感じさせてくれるこの曲もまた、ポルノグラフィティらしさを象徴する1曲だと言える。
■革新し続けるポルノグラフィティの最新情報もチェック!
11月19日に『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』OPテーマ「THE REVO」のパッケージがリリースされる。12月28日、29日、31日には神奈川・ぴあアリーナMMで『みなとみらいロマンスポルノ’25 〜THE OVEЯ〜』も開催。さらに2026年に13枚目のアルバムのリリースと全国ツアーの開催決定も発表されている。
『THE FIRST TIMES』では彼らの最新情報を随時発信していくのでぜひチェックしてほしい。
TEXT BY 田中隆信
▼ポルノグラフィティの最新記事はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/258/










