人気アニメ『NARUTO-ナルト-』の初代エンディングテーマとして根強い人気を集める「Wind」。発表から23年がたった2025年に『THE FIRST TAKE』にて歌唱され大きな話題となった。この記事では時代を越えたこの名曲をあらためて深掘りするとともに、楽曲を歌うAkeboshiとはどんなアーティストなのかに迫る。
■『NARUTO-ナルト-』の初代エンディングテーマ「Wind」
▼Akeboshi「Wind」OFFICIAL MUSIC VIDEO
・発表:2002年
・発売日:2005年6月22日
・作詞:Akeboshi
・作曲:Akeboshi
・収録作品:アルバム『Akeboshi』
◎『NARUTO-ナルト-』の初代エンディングテーマ
国内海外を問わず、今や日本のアニメ作品の代名詞になった『NARUTO-ナルト-』の初代エンディングテーマ。平成世代の名曲として聴き継がれるAkeboshi「Wind」は、数奇な運命を持つ名曲と言っていいだろう。オリジナルのリリースは2002年8月、Akeboshiのインディーズ・デビューミニアルバム『STONED TOWN』に収録。ほとんどのリスナーにとっては初めて聴く名前だったはずで、それは初代のオープニング曲がHOUND DOG、二代目がASIAN KUNG-FU GENERATIONだったことと比べてもわかる。
が、この“無名の名曲”はあっという間に『NARUTO-ナルト-』ファンの耳をとらえた。当時最も影響力のあったオリコンシングルチャートで最高位31位を記録、25週ランクイン、CDから配信への過渡期にも関わらずCDセールスは10万枚以上を記録。“初代エンディングテーマ”という栄誉を保って現在に至る。
海外のファンの反応の大きさも、SNSを探せばすぐにみつかる。動画サイトやファンフォーラムではカバーバージョンが溢れ、日本と同じように聴き継がれ、歌い継がれていることがよくわかる。
◎耳に残るメロディライン
作品の記憶と結びついた鮮烈なイメージと、良き時代のノスタルジーとが結びついた結果だろう。特徴ある五拍子のリズム、クラシカルなピアノ、ティン・ホイッスル、ストリングスの響き、アイリッシュや北欧を感じるムード、そして英語詞による深みをたたえた特徴あるボーカル。地域性を感じさせない、音楽の持つ普遍性を証明した好例と言って間違いない。
◎MVがYouTubeにアップされ話題に
当時制作されたミュージックビデオも評価が高く、直近の2025年10月31日にソニーミュージック『MUSIC Library』チャンネルで初公開され、当時のファンだけでなく新たなリスナー層の視聴者が増えているようだ。「Wind」にとって何度目かのピークがまさに今訪れようとしている、ということだろう。
◎『THE FIRST TAKE』にて披露
そこに飛び込んできたビッグニュース。12月17日にYouTubeの人気音楽チャンネル『THE FIRST TAKE』で「Wind」が初公開され、早くも大きな話題を巻き起こしている。「頑張っている人、戦っている人に届けばいいなと思って演奏します」ーーそんな言葉と共に歌われる「Wind」は、切々とした歌唱、ピアノ、ドラム、ティンホイッスル、バイオリンのハーモニーが胸に沁み入る。Akeboshiの初リリースから23年、新たな決定版バージョンの誕生だ。
▼Akeboshi – Wind / THE FIRST TAKE
■「Wind」の意味とは?歌詞解説
▼Akeboshi – “Wind” (Studio Session)
「Wind」
Cultivate your hunger before you idealize
Motivate your anger to make them all realize
Climbing the mountain, never coming down?
Break into the contents, never falling downMy knee is still shaking like I was twelve
Sneaking out the classroom by the back door
A man railed at me twice, though, but I didn’t care
Waiting is wasting for people like meDon’t try to live so wise
Don’t cry ‘cause it’s alright
Don’t dry with fakes or fears
‘Cause you will hate yourself in the end
Don’t try to live so wise
Don’t cry ‘cause it’s alright
Don’t dry with fakes or fears
‘Cause you will hate yourself in the endYou say “Dreams are dreams”
I ain’t gonna play the fool anymore
You say “‘Cause I’ve still got my soul.”Take your time, baby, your blood needs slowing down
Breach yourself to reach yourself before you gloom
Reflection of fear make shadows of nothing
Shadows of nothingYou still are blind if you see the winding road
‘Cause there’s always a straight way to the point you seeDon’t try to live so wise
Don’t cry ‘cause it’s alright
Don’t dry with fakes or fears
‘Cause you will hate yourself in the end
Don’t try to live so wise
Don’t cry ‘cause it’s alright
Don’t dry with fakes or fears
‘Cause you will hate yourself in the end
Don’t try to live so wise
Don’t cry ‘cause it’s alright
Don’t dry with fakes or fears
‘Cause you will hate yourself in the end‘Cause you will hate yourself in the end
‘Cause you will hate yourself in the end
‘Cause you will hate yourself in the end
‘Cause you will hate yourself in the end
今さらだがひとこと、“Wind”はウィンドではなくワインド、つまり“曲がりくねる”。ビートルズの「The Long And Winding Road」と同じWindだ。英語詞なのでまず言葉の響きやメロディへの乗り方が重要なのは間違いないが、和訳して意味を把握すると新たな発見がいくつもあるので、ネット上の歌詞サイトを覗いてみるのも面白い。
きれいに韻を踏んだ、オープニングの2行《Cultivate your hunger before you idealize/Motivate your anger to make them all realize》を見てみよう。《理想化する前にやるだけやろうよ 気持ちを表現しないと誰も解ってくれないよ》という和訳。ポップスの歌詞にはあまり出てこない哲学的な言葉使いが興味深い。
そしてサビの繰り返しはこうだ。《Don’t try to live so wise,Don’t cry coz you’re so right./Don’t dry with fakes or fears,Coz you will hate yourself in the end》。《恥かいたっていいんだ 泣くなよ 間違っていないんだから 恐怖やウソっぽい言葉なんかに涙を拭うなよ 自分を嫌いになって終わっちゃうよ》。
こんなに強いメッセージが、アニメ作品のエンディングテーマとして今も広く聴かれていることは、素晴らしいと言うほかはない。『NARUTO-ナルト-』の持つメッセージ性にもぴたりと寄り添った歌詞だが、おそらく最初は『NARUTO-ナルト-』を意識して書いた曲ではなかったはずだ。ナルト役を演じた声優・竹内順子がのちに「私に寄り添ってくれた曲」と絶賛したことも、歌詞の持つ普遍的なメッセージ性の強さゆえだろう。
■楽曲提供やCMソングまでこなす多才なシンガーソングライター
Akeboshi(読み:アケボシ)

・メジャーデビュー:2005年6月22日
・メジャーデビュー作品:アルバム『Akeboshi』
・本名:明星嘉男
・誕生日:1978年7月1日
・OFFICIAL SITE http://www.akeboshi.com/
・Instagram @akeboshi_
・X @Akeboshi_
・Facebook https://www.facebook.com/AkeboshiOfficial
・YouTube @AkeboshiChannel
◎Akeboshiとは?
そもそもAkeboshiとはどんなアーティストか。クラシックピアノやギター素養を持ち、海外生活を経て13歳でバンド活動を始めたという早熟の天才肌。
高校卒業と同時に、ポール・マッカートニーが設立したリヴァプール芸術大学に進学し、在学中の2002年にはインディーズ作『STONED TOWN』をリリース。「Wind」のヒットを経て、2003年に帰国後、本格的な音楽活動を開始し、2005年にアルバム『Akeboshi』でメジャーデビューを果たした。
◎独自のスタンスを確立
このようにプロフィールをたどるだけでドメスティックなJ-POPとは異なる世界線を持つアーティストであることがわかる。その後の歩みも実にマイペースでアーティスティックなもので、デビュー前の2000年に提供した松たか子「優しい風」を皮切りに楽曲提供、2008年の映画『ぐるりのこと。』をはじめ映画音楽も数多く手がけ、日本の音楽シーンに独自のスタンスを確立して現在に至る。「Wind」でAkeboshiを知ったリスナーを、より深い音楽の世界へと導く役割を担っているという見方もできるだろう。
■Akeboshiの魅力
◎唯一無二の音楽性
音楽性はひと言では語れないほどに重層的でエクレクティックなものだが、洋楽育ちでイギリス留学経験があるせいか、アイリッシュやフォーク、トラッドな要素に、クラシック、ジャズ、オルタナティブR&B、エレクトロニカなどのエッセンスを加えた、どこか異国的でロマンチックな印象が強い。一度聴くと耳に残るのが特徴だ。
◎透明感のある歌声
ボーカルは飾らない素朴さというべきか、自己主張よりも音楽の中での調和を意図した優しく柔らかいもの。中低域に特徴ある歌声で、高揚感よりもチルアウトを誘う成分がたっぷりと含まれる。長く聴いても飽きることがないのが魅力といえるだろう。
◎制作スタイル
制作のスタイルもユニークで、自ら作詞作曲、ミックス、マスタリングまで完結させるセルレコーディングスタイルを軸に、アイルランドとイギリスでストリートミュージシャンを集めて録音したセカンドアルバム『Meet Along the Way』(2007年)など、時期によって様々な手法を取ってきた。そういう意味でも、次に何をやるのか?が常に楽しみなアーティストだ。
■Akeboshiの世界観に浸る!聴くべき3選
最後に“これからAkeboshiを聴く人のための3曲”を挙げておこう。
「Writing over the sign」
ゆったり流れるリズム、ピアノを中心としたジャジーなアンサンブルが心地よく響く、トラッドの香り高い佳曲。シンプルで親しみやすいメロディの繰り返し、のびのび歌うボーカルが癖になる。
「Seeds」
アコースティックギターがメインのフォークソングで、端正なスリーフィンガーの爪弾きとオーガニックなサウンド、爽やかな風を感じる歌声がいつまでも耳に残る楽曲。
「点と線」
映画『鈴木家の嘘』主題歌で、流麗なピアノのメロディとリズム、寄り添う弦楽器、そして日本語詞による滑らかな響きと聴き手を励ますようなメッセージ性が静かに胸に沁みる1曲だ。
どれもYouTubeで観られるのでチェックしてほしい。もちろんほかにも聴くべき曲はたくさんある。初リリースから23年、Akeboshiの世界は年々豊かさを増しながら新しいリスナーに発見されるのを待っている。
■Akeboshiの最新情報をチェック!
今回の『THE FIRST TAKE』を機に、新たなリスナーがAkeboshiの活動を活発化させる可能性もあるかもしれない。引き続き注目を続けよう。
TEXT BY 宮本英夫
▼Akeboshi最新情報はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/14338/
