春になると、つい口ずさみたくなる桜ソング。多くの桜ソングのなかでも、心に残っているのは“昭和の桜ソング”という人もいるのではないだろうか。レコードやラジオ、テレビの歌番組から流れてきたメロディは、卒業、別れ、出会いといった人生の節目とともに記憶に刻まれているもの。
今回は、昭和の時代に生まれ、今なお愛され続ける桜ソングを厳選して紹介する。
■昭和の桜ソング一覧
「チェリーブラッサム」松田聖子
「さくらの花の咲くころに」渡辺美里
「初恋」村下孝蔵
「吐息でネット」南野陽子
「桜咲く国」OSK日本歌劇団
「春雷」ふきのとう
「桜前線」小柳ルミ子
「春咲小紅」矢野顕子
昭和の桜ソングを集めたプレイリストで懐かしい人も、初めて聴く人も、この時代ならではの春を感じてみて!
【楽曲リンク:昭和の桜ソング】
■昭和の桜ソング!曲の味わいどころを解説
「チェリーブラッサム」松田聖子
1981年リリース。作詞:三浦徳子・作曲:財津和夫。洗練されたサウンドアレンジが、80年代初頭の日本のムードを甦らせる。タイトルは「チェリーブラッサム」だが、歌詞に桜は出てこない。《胸に抱いた花》とともに《あなた》と未来を作る喜びを描写することで、始まりの季節である春と桜をリスナーにイメージさせる。
「さくらの花の咲くころに」渡辺美里
1988年にリリースされたアルバム『ribbon』に収録。作曲はTM NETWOTKの木根尚登。シングル曲ではないが、ファンの間で人気が非常に高い。離ればなれになった卒業式からそれほど経っていない頃の心情を歌っている。《覚えていてね 想い出してね さくらの花の咲くころに》など、春の風景の描写が青春の甘酸っぱさを醸し出す。
「初恋」村下孝蔵
1983年リリースの大ヒット曲。多くの人の淡い思い出と重なるがゆえに令和の今も愛されているのだろう。耳を傾けると甦る学生時代の初々しい記憶は、桜の季節の風景とも自ずとリンクする。《好きだよと言えずに 初恋は》は、昔から変わらない初恋の真理。気持ちを伝えることすらできなかった思い出を大切にしたくなる曲だ。
「吐息でネット」南野陽子
1988年リリース。カネボウ化粧品CMイメージソング。歌い出しの《卒業式に はなやぐ並木道》が校門近くの桜並木をイメージさせるが、この曲が描いているのは、メイクを楽しむようになる年齢の恋。好きだからこそ抱く独占欲をキュートに表現する歌声には、当時、トップアイドルだった南野陽子の可憐さが凝縮されている。
「桜咲く国」OSK日本歌劇団
大阪のOSK日本歌劇団、東京の松竹歌劇団(SKD)が上演していたレビューのテーマソング。戦前から歌い継がれ、両歌劇団の象徴とも言うべき曲となった。和的情緒を帯びたメロディを華やかなホーンセクションを交えたモダンなサウンドで表現。昭和の人々に夢を届けたレビューのキラキラした息吹に触れることができる。
「春雷」ふきのとう
フォークデュオ・ふきのとうが1979年にリリース。春の突然の荒天によって儚く散ろうとしている桜の花がモチーフ。厳しい状況に抗いながら懸命に生きようとしている命に狂おしくエールを送る。《春の雷に 散るな今すぐに 桜花吹雪 命つづくまで》は、試練の真っ只中にいる人の心を鼓舞する力も帯びている。
「桜前線」小柳ルミ子
1976年リリース。春先に北から南へと日本国内をひとりで旅する主人公の心情が歌われている。旅先で出会った人々との温かな触れ合い、眺めた風景の美しさなどを通じて少しずつ変化していく胸の内を描写。旅に出た理由には触れられていないが、歌詞の端々で滲むものを通じて想像がふくらむのも、この曲の大きな魅力。
「春咲小紅」矢野顕子
1981年リリース。カネボウ化粧品CMソング。同社の春のキャンペーンのイメージを踏まえて、コピーライターの糸井重里が作詞。当時の矢野がツアーメンバーだったYMOの面々が編曲で参加。テクノポップサウンドで彩られた歌謡メロが斬新。春の爽やかな風のような温かなトーンが、桜の花びらが舞う様をイメージさせる。
■昭和ならではのメロディと歌詞を噛み締めて!
昭和の桜ソングにはその時代ならではの言葉と情景があり、静かに胸に残るメロディと歌詞は、何年経っても色褪せないもの。懐かしさに浸りたい人も、昭和の名曲を初めて聴く人も、春のひとときにぜひ耳を傾けてみてほしい。昭和の桜ソングが、今の春にもそっと寄り添ってくれるはず。
TEXT BY 田中大


