現代の音楽シーンを代表するプロデューサー/ソングライターのYaffle(ヤッフル)。今や世界的な評価を得ているYaffleのキャリアや代表曲を紹介。さらに西島秀俊主演で実写化されたドラマ『人間標本』(Prime Video/著:湊かなえ)の主題歌として作りあげた「愛情」の歌詞考察などをとおし、彼のクリエイティビティを詳細に紐解いていく。
■藤井風や米津玄師などのプロデュースやアレンジを手がけるYaffleとは?
Yaffle(読み:ヤッフル)
・生年月日:1991年3月3日
・出身地:東京都
OFFICIAL SITE https://www.sonymusic.co.jp/artist/Yaffle/
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Instagram @yaffl3
◎幅広い音楽経験をルーツに持つ、Yaffle
幼少期からピアノを弾きはじめ、高校時代は吹奏楽部と軽音楽部に所属。国立音楽大学に進学後は前衛音楽、ジャズ、オーケストレーションなどを学び、2010年末から作曲家・編曲家としての活動をスタートさせた。
2014年には小袋成彬らとともにクリエイティブカンパニー・Tokyo Recordings(現:TOKA)を設立。オルタナR&B、ネオソウル系の作品で優れたクリエイティビティを発揮し、音楽シーンに鮮烈な存在感を示した。現在は、あらたな目標へと向かうべく、2025年1月31日でTOKAを離れ、同年にサウンドクリエイティブチーム/音楽制作会社のprodz(プロッズ)を立ち上げた。
◎多くのアーティストのプロデュースやアレンジを手がける
Yaffle名義での活動が始まったのは2018年。プロデューサーとして関わったアーティストは藤井風、米津玄師、大森元貴、iri、SIRUP、adieu、SEKAI NO OWARI、BE:FIRSTなど多岐にわたる。
ヒット曲の多さ、クオリティの高さはもちろん、同時代の海外の動向とリンクした──取り入れるというより、ナチュラルに同期している──サウンドメイクや音像によってJ-POPにあらたな価値観を持ち込んだ。
◎ヨーロッパのアーティストとコラボした1stアルバム『Lost,Never Gone』
2020年9月に1stアルバム『Lost,Never Gone』を発表。オランダのシンガーソングライター、ベニー・シングスをはじめ、イギリスやスウェーデンなどのアーティストとのコラボレーション楽曲を収めた作品だ。
“Lost Never Gone” OUT NOW
🎧https://t.co/odECeJO8I5初アルバム出ました。 pic.twitter.com/17VeDpFbwf
— Yaffle (@YAFFL3) September 17, 2020
このアルバムのためにYaffleは実際にヨーロッパを旅行。アルバムタイトルの“Lost,Never Gone”(訳:喪失を悲しむ必要はない)をコンセプトに掲げ、各地のクリエイターと直接やりとりを交わしながら制作を進めたという。ここで行われたコライトという手法は、一貫して彼の大きなテーマになっているようだ。
▼Yaffle – Lost, Never Gone feat. Linnéa Lundgren (Official Lyric Video)
◎ポケモン25周年記念アルバムに唯一の日本人として参加
さらに、2021年にはPokémon 25周年を記念し、世界各国のトップアーティストたちが集結したアルバム『Pokemon 25:ザ・アルバム』に日本代表として参加。Yaffleは「Reconnect」(Daichi Yamamoto、AAAMYYYが参加し英語で歌唱)、「Grown」(空音、yamaが日本語で歌唱)を制作した。
▼【公式】Pokémon 25: Yaffle – Reconnect(feat. Daichi Yamamoto & AAAMYYY)
▼【公式】Pokémon 25: Yaffle – Grown(feat. 空音 & yama)
2023年には2作目のアルバム『After the chaos』をアイスランドで制作し、世界最古のクラシックレーベルである「ドイツ・グラモフォン」からリリース。そのサウンドアプローチは海外でも高い支持を得た。
Yaffle – 'After the chaos' out now
This is a hymn to humanity.
I offer my deepest thanks to all those who worked with me to create this album.
アルバム出ました、人間性に対する愛の曲たちです。
一緒に作り上げてくれた全ての人達に深い感謝を捧げます。https://t.co/pRB7pPfLSF pic.twitter.com/0oiY6lCAXR— Yaffle (@YAFFL3) February 16, 2023
◎Yaffleが音楽を担当した映画『爆弾』は、『第49回日本アカデミー賞』で優秀音楽賞を受賞
Yaffleの活動におけるもうひとつの柱となっているのが、映像作品の劇伴(劇中伴奏音楽)である。
『ナラタージュ』(行定勲監督/2017年)、『キャラクター』(永井聡監督/2021年)、『変な家』(石川淳一監督/2024 年)、『ブルーピリオド』(萩原健太郎監督/2024年)、『爆弾』(永井聡監督/2025年)、『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』(萩原健太郎監督/2025年)などのサウンドトラックを手がけてきた。
『映画 えんとつ町のプペル』(廣田裕介監督/2020年)で『第49回アニー賞』で最優秀音楽賞にノミネート、さらに『爆弾』では、『第49回日本アカデミー賞』優秀音楽賞を受賞するなど確固たる評価を得ている。
日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞しました🏆️
わー嬉しい!
素晴らしい作品に参加できて光栄でした https://t.co/NobrxUC02a— Yaffle (@YAFFL3) January 19, 2026
■アーティストの信頼を得る、Yaffleのすごさとは?
◎豊かな音楽知識に裏打ちされた幅広い音楽性
大学で現代音楽や本格的オーケストレーションを学ぶいっぽう、オルタナティブロック、(ロバート・グラスパー以降の)現代的ジャズ、さらにオルタナR&B、ネオソウルといった2000年代以降のポップミュージックの潮流などをリアルタイムで経験してきたYaffle。
彼のクリエイティブにはそれらの音楽の要素が有機的に作用し、独特のケミストリーへと結びついている。シンプルに言えば、“同時代性と普遍性”。斬新でありつつ、時代の淘汰されないタイムレスな魅力を備えているのだ。
◎J-POPのイメージとは一線を画す独創的なサウンドメイク
Yaffleのサウンドメイクは、J-POPの一般的なイメージ(音数が多い、展開がトリッキーなど)とは一線を画している。もちろん楽曲によってもアプローチは異なるが、音数を抑え、必要最小限のトラックと歌によって、その作品の良さを最大化し、最適解へと結びつけている。
そのセンスと技術が彼の持ち味であり、アニソンやボカロに象徴されるJ-POPとは違った文脈で世界的な評価を得ている理由だろう。
◎アーティストの持ち味を最大限に活かすプロデュース&コライト
ヨーロッパを旅しながら制作された1stアルバム『Lost,Never Gone』に顕著だが、国境とジャンルを超えたコライトもYaffleの特徴。
異なるバックグラウンドを持ったアーティスト、クリエイター、シンガーとの率直なコミュニケーションのうえに成り立つ“共作”のメソッドは作品を重ねるごとに更新されている。質と量を兼ね備えた彼のプロデュースワークは、多彩なコライトの経験によって培われているのだと思う。
■Yaffleのおすすめ5曲
「Marry You feat. Leina」
20歳のシンガーソングライター・Leinaをフィーチャーした“ノレるウェディングソング”。
心地よく飛び跳ねるたたえたビート、どこかいなたい雰囲気のギター、煌びやかなシンセを融合させたトラックのなかで踊るのは、《Marry You》のリフレイン。ハッピーな高揚感と切なさ、心の揺れがナチュラルに共存する音像が、“結婚したい”と感じたときの心の動きとしっかりリンクしている。きれいにまとめるのではなく、歪みを感じさせるサウンドメイクも印象的。
「Alone ft. CeaseTone」
Prime Video『人間標本』挿入歌。憂いを帯びた鍵盤の音色、奥深い響きをたたえた弦の旋律、そして、“この孤独を癒す用法を見つけてみせる”という思いを刻んだ歌。アイスランド・レイキャビクのスタジオで制作され、アルバム『After the chaos』に収録されたこの曲は、クラシックやエレクトロなどを融合した“ポストクラシカル”の手法を取り入れたバラード。
アイスランドのアーティスト・CeaseToneの素朴で豊かな歌唱を引き立てる手腕にも注目してほしい。
「君とうたう歌feat.櫻井ユキノ」
Netflixシリーズ『グラスハート』挿入歌。歌唱は劇中バンド・TENBLANKの藤谷直季(演:佐藤健)と、ユキノ(演:髙石あかり)の歌唱パートを担当したao。
ピアノとふたりの歌声が絡み合う冒頭パート、ネオソウル系のグルーブをたたえたトラックなどがバランスよく共存し、じっくりと歌を堪能しつつ、身体を動かしたくなる感覚に包まれる。ドラマのストーリーを汲み取りつつ、シンガーの声質を活かし、ポップスとしての精度を高める。Yaffleのプロデュースワークが光る一曲だ。
「JANE DOE」米津玄師、宇多田ヒカル
まるでジャズのスタンダードのような手触り、壮大なオーケストレーション、そして、現代的なエッジを効かせたトラックメイク。米津玄師が作詞作曲を手がけ、宇多田が歌唱に参加。
映画『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』のエンディングテーマとして制作され、日本のポップス史の残るコラボレーションが実現したこの曲のプロデュースは、Yaffle以外に考えられない。圧倒的な存在感をたたえたふたりの声を自然に結合させ、芳醇かつ深淵な響きへと昇華させるクリエイションにも瞠目させられる。
「絵画」大森元貴
広く大衆に届く曲ではなく、どこまでもパーソナルな想いを描き出す──。約4年ぶりのリリースとなった大森元貴のソロ楽曲「絵画」。
この曲の編曲、プログラミングを託されたYaffleは、大森自身にぬぐえない孤独、“愛されたい”という根源的な欲望を丁寧に掬い取りながら、楽曲全体の世界観を的確に演出している。強度の高いビート、繊細なシンセの音色、深淵な精神性を映し出すサウンドスケープのバランスが素晴らしい。
■西島秀俊主演のPrime Videoドラマ『人間標本』主題歌に、最新作「愛情」が起用
・作詞:Yaffle
・作曲:Yaffle
・リリース:2025年12月19日
・Streaming/DL https://mono2.lnk.to/ILeftMyLoveBesideYou
Yaffleが作詞作曲の両方を手がけた「愛情」は、Prime Videoドラマ『人間標本』主題歌として制作された。Yaffleはこのドラマの劇伴も手がけており、「愛情」ももちろん、ドラマの世界観やストーリー、登場人物たちの複雑な関係性を反映していると言っていいだろう。
■【歌詞全文掲載】Yaffleが表現した多層的な“愛”とは
「愛情」
あなたはどんな頬でどんな指だったのか
何に笑い何に泣き何に動かされ感じるのか手を繋ぐ道路他愛ない会話
モノの帆布に色彩が落ちる
そのうち花くらい贈られる人にならなきゃねこの愛があなたの隣で
やさしくともに育っていくことを
なにを見て何が好きなのか
すぐ隣でそれを楽しみにしているよこの愛はあなたの隣にいるよ
何に焦がれ夢を語り打ちのめされ
諦めず年をとって
皺を重ね
その先に安らいで輝く空色汚した首元
あなたはこの場を明るく照らして
そのまま光で私達を包んで欲しいこの愛があなたの周りで
香り立つ花束とともに
燃やされていて欲しいその笑顔にいつかまた
会えることを楽しみにしているよこの愛があなたの隣にいるよ
この愛が
この愛があなたの隣にいるよ
作詞:Yaffle
作曲:Yaffle
湊かなえの小説を実写化したドラマ『人間標本』。主演の西島秀俊演じる蝶研究の権威・榊史朗が、最愛だったはずの息子(演:市川染五郎)を含む6人の少年を殺害し、森のなかで標本にしたという衝撃的な事件を描くサスペンス──というのがこのドラマのあらすじだ。
主題歌として制作された「愛情」の歌詞は──タイトル通り──『人間標本』の中心ある愛情そのもの、もっと具体的に言えば“親子愛”、親から子に向けられた感情に焦点を当てているのだと思う。
軸になっているのは《この愛はあなたの隣にいるよ》というサビのフレーズだろう。
当たり前の話だが、親と子は未来永劫ずっと一緒にいられるわけではない。いつかは別れのときが来るという圧倒的な真実がありながら、それでも親は子を想い、愛し続ける。そして、最後にこう告げるのだ。離れ離れになった後も《この愛はあなたの隣にいるよ》と。
このフレーズを聴いたリスナーにはいろいろな感情がよぎるはずだ。素晴らしい愛だと感激する人もいるだろうし、“呪いみたいだな”と感じる人もいるだろう。そこにはおそらく、それぞれの親との関係性、子どもへの想いが反映されているのだと思う。
ドラマ『人間標本』の物語とリンクしながら、その本質的な部分を抽出し、聴き手それぞれの個人的な想いと重なっていく。「愛情」の歌詞がリスナーを惹きつけ、何度も聴き返したくなり理由はそんなところにあるのだろう。
■Yaffleの今後の活躍に注目!
天才的な感性を持つYaffleが切り拓く、新たな音楽の地平。その奥深い世界観は、間違いなく多くのリスナーを虜にするでしょう。彼が音で描き出す鮮やかなストーリーの目撃者に、ぜひなってほしい。
TEXT BY THE FIRST TIMES編集部
▼Yaffleの最新情報はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/2305/
▼楽曲リンク:Yaffle
https://tftimes.lnk.to/YaffleT1




