2026年4月30日~5月4日のゴールデンウィーク期間中に横浜を舞台に開催される、回遊型アートイベント『Project Circles -ミクたちとの共振-』(一部展示は5月10日まで継続)。
本イベントは、初音ミクを起点としたボカロフェスの枠を超え、音楽、イラスト、映像、身体表現、テクノロジーといった多層的な創作が交差する都市型カルチャー体験として設計されている。
■「文化として紹介する場」をつくる──イベント誕生の背景
その背景には、クリプトン・フューチャー・メディアとソニー・ミュージックエンターテインメントの協働による、新しい文化提示の意思がある。
そこで、クリプトン・フューチャー・メディアの初音ミク開発プロデューサー・佐々木渉氏、音楽事業マネージャー・小泉聖道氏、ソニーミュージック・平井裕介氏(以降、敬称略)への取材を軸に、会場となるKT Zepp Yokohama、Art Center NEW、YOKOHAMA COAST、garage+、コニカミノルタプラネタリアYOKOHAMA、ヤマハミュージック、横浜みなとみらい(Music Canvasエリア)、横浜シンフォステージでのテーマ設定。出演者や見どころを織り込みながら、音楽作家、映像作家、演奏家、動画作家、DJ/リミキサー、イラストレーター、パフォーマーたち総勢100名以上がジャンルを超えて共振する、ボカロ文化(UGCカルチャー)の複合アートイベントの楽しみ方を解説したい。
まずは、本イベント『Project Circles -ミクたちとの共振-』の出発点について、佐々木はこう語る。
佐々木:これまで初音ミクのライブでは、様々なクリエイターさんの楽曲をオムニバス形式で届けてきましたが、最近はクリエイター自身の活動も多様化しています。だからこそ、それぞれの活動にフォーカスしたり、クリエイターのライブに(初音)ミクがゲストとして参加するような展開が求められている。そんな流れのなかで、改めてひとつの“文化”として紹介する場所が必要だと思ったんです。
ここで語られているのは、“アイコンとしての初音ミク”を介した表現のみならず、“クリエイター個人”の活動を地続きに捉える視点だ。さらに平井は、実体験からその必要性を補強する。
平井:ボカロP・きくおのワールドツアー『Kikuoland Go-Round』を1年間で19ヵ国42公演やったんですけど、現地で「こんなに待っていた人がいたんだ」っていうすごい熱量を目の当たりにしました。ボカロPって、海外においても完全にアーティストなのだと実感しましたね。
この認識の変化が、『Project Circles』の企画を一気に現実化させた。つまり本イベントは、“ボカロ文化の成熟”に対するひとつの回答なのである。
■音楽ライブ=ボカロ文化の音楽性を再発見する場
イベントの中核を担うのが、複数日・複数ステージで展開されるライブプログラム「Project Circles Live」だ。出演者には、まらしぃ、かいりきベア、きくお、椎乃味醂といったボカロシーンで活躍するクリエイターが名を連ねている。
佐々木:ボカロ文化から生まれた曲を軸にしながら、日によってはアコースティックな演奏も入ってくる構成です。個性のコントラストが楽しめると思います。
この「コントラスト」という言葉が象徴的だ。クラブミュージック、ポップス、実験音楽、そして生演奏──それぞれが交差することで、“ボカロ=ひとつのジャンル”という認識を解体していく。さらに、初音ミクシンフォニー、秋田勇魚 & 閑喜弦介、井本響太によって演奏されるサウンドは、ネット発の音楽がクラシカルに再構築される象徴的な試みでもある。
佐々木は「シンフォニーもギターも、生で聴くとすごく美しい音なので、イヤホンで聴くのとは全然違うライブ体験になると思います」と力説。
ここで提示されるのは、音楽の身体性だ。ネット文化として発展してきたボカロが、リアルな空間でどのように再解釈されるのか。その答えが、このライブにある。
https://pjcircles.com/kt-zepp-yokohama.html
■アート展示=ボカロビジュアル文化の源流を辿る
もうひとつの重要な拠点が、Art Center NEWで展開されるボカロビジュアル文化の源流を辿る「Project Circles Gallery」だ。
ここでは、初音ミクのキャラクターデザインを手がけたKEIをはじめ、たま、iXima、アルセチカ、ぬくぬくにぎりめしといったイラストレーターの作品が展示される。
佐々木:初音ミクのイラストは、今ではたくさんの二次創作が生まれて拡がっていますが、そのモチーフの原点となったKEIさんのイラストをまとめて観られる機会は、実はこれまでなかったんですよね。文化的な意味においても大切な展示になると思います。
つまりここは、バズではなく源流に触れる場所だ。SNS時代において、イラストは消費されやすい。しかし本展示では、ボカロ文化を支えてきた視覚表現の系譜を、時間軸として体験できる。
https://pjcircles.com/art-center-new.html
■360°没入型映像/VRが提示する未来のライブ
本イベントのなかでも最も実験的なのが、ドーム型空間で展開される映像・VRプログラム「Project Circles meets PULSE DOME(360°Movie Show)」だ。平井はこの企画をプロトタイプと位置づける。
平井:ドーム映像は制作コストも高く、まだ一般化していないんですけど、アメリカでは世界最大の球型イベント会場スフィア(Sphere)が話題だったり、プラネタリウムも多かったり。そこに持っていけるようなフォーマットを、日本でも作ってみたいと思いました。
@spherevegas Sphere & @Backstreet Boys are written in the stars 💫 #sphere #vegas #backstreetboys #outerspace
参加クリエイターも個性的だ。きくおは音源主体で信頼する映像作家と組み、はるまきごはんは自らビジュアルを設計、KanariaはLAMとともに楽曲の強度を拡張する映像演出を提示する。
平井:同じVRでも、没入の方向性が全然違うんですよね。人に任せるタイプもいれば、自分で全部作るタイプもいる。その違いがクリエイターの多様性として面白いです。
さらに、観客の動きに反応するインタラクティブ演出も導入される。これは“観るライブ”から“参加するライブ”への進化を意味する。
https://pjcircles.com/planetaria-yokohama.html
■ストリートパフォーマンスがボカロ文化の入口に
新高島駅最寄りの「横浜シンフォステージ」にて入場無料で展開される「Project Circles Free Stage at 横浜シンフォステージ」は、本イベントの入口とも言える空間に。ここでは、ジャグリング、大道芸、パーカッション、DJ、ライブペイントなど、多様なパフォーマンスが行われる。
佐々木:ふらっと来た人が「なんかやってるな」って近づいて、様々なパフォーマンスを通して気軽にボカロ文化を体感できる。そんな、肩肘張らずに楽しめる場所にしたかったんです。
さらに平井は、横浜という土地との関係性を強調する。
平井:日本を代表する大道芸フェス『野毛大道芸』の実行委員の方々と連携していて、地元のストリートパフォーマーも参加しています。無料エリアを展開することで街と一緒に作るイベントにしたかったんです。
ここで重要なのは、ボカロ文化が街に開かれることだ。ネット発の文化が、偶然出会うリアルな体験として再提示される。
https://pjcircles.com/symphostage.html
■初音ミク×ヤマハ「ハジメテノオト」、音の原点を再構築
ヤマハミュージックの施設・ヤマハミュージック 横浜みなとみらい「Music Canvas(1階)」で行われる『初音ミク × ヤマハ 「ハジメテノオト」 Music Canvas Show Case』も見逃せない。
佐々木:巨大モニターと自動演奏楽器、立体音響を組み合わせて、初音ミクの“最初の音”を再現する無料で見られるインスタレーションです。5分程度ですが、かなり特殊な音楽体験になるのではと期待しています。
ここで提示されるのは、音の起源への回帰だ。テクノロジーによって生まれたボカロが、再びテクノロジーによって再解釈される。その循環構造こそがイベントタイトルにもあるCirclesである。
https://pjcircles.com/music-canvas.html
■100人以上のクリエイターが示す拡張するボカロ文化
本イベントには100名以上のクリエイターが参加する。吉田夜世、サツキ、歩く人、鬱Pら、お馴染みのネットで活躍するクリエイターが集結するDJプレイを中心としたクラブイベント「Project Circles meets YOKOHAMA COAST garage +」も注目ポイントだ。しかし佐々木はすべてのイベントにおいて「ボカロPだけを集めたわけではない」と強調する。
佐々木:映像、CG、演奏、ストリートパフォーマンスまで含めて、音楽を通していろんな人が関われる可能性を見せたかったんです。
この言葉が示すのは、ボカロ文化の拡張性だ。小泉もまた、その背景をこう語る。
小泉:もともとボカロ文化って、創作の連鎖なんです。音楽、イラスト、動画が繋がって拡がっていく、その仕組みをリアルでも体現したいというのが今回のイベントです。
■どう楽しむべきか?──回遊することで完成する体験
このイベントの楽しみ方は、ひとつではない。むしろ、回遊することで楽しい選択肢に迷うことこそが正解だ。ある会場で出会った音が、別の会場の映像と結びつく。街を歩くなかで、創作が自分のなかで連鎖していく。それこそが、Circlesの体験だからだ。
そう、回遊型アートイベント『Project Circles -ミクたちとの共振-』は、単なるイベントではない。文化の未来図である。それは、クリエイター、企業、リスナーが共に作る文化のプロトタイプであり、日本発のネットカルチャーを世界へ接続するための実験場であり、そして何より、創作の連鎖を体感させる装置である。
佐々木、小泉、平井の言葉から浮かび上がるのは、ひとつの明確なビジョンだ。
~文化は、つながることで進化する。~
横浜という世界へと通じる都市を舞台に、その共振は確かに鳴り始めている。
TEXT BY ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
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https://www.thefirsttimes.jp/keywords/15076/
Project Circles公式サイトhttps://t.co/v4ntQx3Yud
▼各種チケット詳細https://t.co/EKVzlmT5vc
【会場】コニカミノルタプラネタリアYOKOHAMA、KT Zepp Yokohama、YOKOHAMA COAST garage+、Art Center NEW、横浜シンフォステージ、ヤマハミュージック 横浜みなとみらい(Music Canvas エリア)
— Project Circles -ミクたちとの共振- (@pj_circles) March 18, 2026
■『Project Circles -ミクたちとの共振-』公演概要
『Project Circles -ミクたちとの共振-』
読み:プロジェクト サークルズ -ミクタチトノキョウシン–
2026年4月30日(木)~5月4日(月・祝)
KT Zepp Yokohama、YOKOHAMA COAST garage+、Art Center NEW、コニカミノルタプラネタリアYOKOHAMA、ヤマハミュージック 横浜みなとみらい(Music Canvas エリア)、横浜シンフォステージ
チケット購入はこちら
https://pjcircles.com/ticket.html
主催:Project Circles実行委員会(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)
特別協力:株式会社インクストゥエンター
※4月30日は前夜祭&PRESS DAY。プラネタリアの映像企画および一部展示は5月10日まで継続予定。
OFFICIAL SITE https://pjcircles.com/
X @pj_circles
Instagram @pj_circles_official
