THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2021.08.21

森七菜が今歌いたいこと。YOASOBIとしても活動するAyaseプロデュース作「深海」に初めて込めた思い

女優、森七菜は、歌う。2020年1月に映画『ラストレター』の主題歌「カエルノウタ」で歌手デビューした彼女は、同年7月には自身が出演したCMで起用されたホフディラン「スマイル」をカバーし、YouTube再生回数3,000万回越えのヒットを記録。さらに映画『青くて痛くて脆い』ではベースを弾きながら熱唱し、主演ドラマ「この恋あたためますか」ではアイドルとして歌って踊る場面もあった。朝ドラ『エール』も彼女が演じたのは小説家だが、作曲家の物語だ。

女優して本格的に活動を始めてからの約4年間でこれほど音楽にまつわる役柄と出会ってきた彼女にとって、歌うことはどんな意味があるのか。YOASOBIとしても活動するAyaseプロデュースの新曲「深海」をリリースする彼女に、女優としての音楽遍歴を振り返ってもらうとともに、「初めて自分の気持ちを歌った」という新曲に込めた思いを聞いた。

記事の最後には、プロデューサーのAyaseから届いたオリジナルコメントも掲載。

INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 映美
STYLING BY 申谷弘美
HAIR & MAKE UP BY 池田ユリ(eclat)

■自分の歌にもしかしたら伝えられることがあるかもしれないなって

──今回は改めて、森七菜と音楽の関係を振り返っていただきたいなと思います。まず、2019年のアニメーション映画『天気の子』で声の演技が絶賛され、2020年1月に二役を演じた映画『ラストレター』の主題歌「カエルノウタ」を担当しました。

もともとは声に関する仕事は私にいちばん遠い職業なのかなと思っていたんですよ。自分の声があまり好きじゃないからこそ、表情や仕草に頼っていた気がするんですね。だからこそ、声だけに集中するっていうことに対してはすごく引っ込み思案だったんですけど、声でも個性が出せるっていうことを新海(誠)さんや小林(武史)さんに教えてもらって。ただ、「カエルノウタ」を歌ったときのことを今振り返ってみると、よく声が出たなって思いますね。

──あはははは。真っ直ぐに伸び伸びと歌ってる印象でした。

いや、褒めて伸びるタイプなので、「いいよね」って言ってもらったので臆病にならずに歌えたんですよね。でも、当時、18歳だったかな。小林武史さんと岩井俊二さんの前で、声帯を震わせて声を出せただけですごいなって思います(笑)。そのときはまだ大分に住んでましたし、友達の中でも、歌がうまいほうではなかったんですね。お母さんとか、身近な人は「いいね」って言ってくれてましたけど、カラオケに行くと、下手でもうまいわけでもないような、微妙な顔をされていて(笑)。

──(笑)自分で聴いても声が違うなと感じますか。

今も若いんですけど、もっと若いですね。すごく子供の声だなと思って。あんな大きな映画の主題歌を任せてもらえていたことを改めてうれしく思いますね。

──当時からすでに、これからは音楽もやっていくぞという気持ちでいましたか。

歌うことが楽しくなってはいましたね。ボイトレに通ったり、歌の練習をしたことで、それまではできなかったこともできるようになってきて。歌うことはだんだん好きになってきたんですけど、これで最後だろうなと思ってました。

──どうしてですか?

需要と供給が成り立たないから(笑)。カラオケで歌ってたような歌だから、どうなんだろう? って。そんな私がよく歌えたなって思うんですけど、今、聴き返してみると、あのときはあのときにしかない自分の声があって。その瞬間をおふたりに切り取ってもらえたっていうのは、すごく貴重な経験だったなって思います。…今、思い出しましたけど、当時、高校が終わったあとに、学校帰りにいつも行ってる商業施設で「カエルノウタ」を歌ったんですよ。それもすごくうれしくて。めちゃくちゃたくさんの人が集まってくれたんですね。確か、「100%超えましたよ」って言われて。そこらへんから、まだ少しですけど、自分の歌にもしかしたら伝えられることがあるかもしれないなって感じ始めたかもしれないですね。

──同年8月に公開された映画『青くて痛くて脆い』ではベースを弾きながら、野坂昭如「サメに喰われた娘」を歌ってました。

実際の順番的には「カエルノウタ」を歌うことが決まる前だったんですよね。あのときは、自分でもカラオケ屋さんに練習しに行ったりして。ただ、自分というより、フリースクールに通っている(西山)瑞希という役として歌ったので、音楽活動とは違う気分でいました。単純に楽器を弾きながら歌うのは難しいなと思いましたし、フリースクールでのライブのシーンではエキストラのお客さんもいたから緊張もして。でも、あとで言われて気づいたんですけど、私、2〜3時間歌ってたらしいんですね。共演した杉咲花さんが「声も枯らさずに、へこたれずにすごかったね」って褒めてくれたんですけど、そんなに時間が経ってたんだって思うくらい集中力が高まってて。お芝居をしながら、歌って、楽器も弾くというのは、それくらいの集中しないできない難題でしたね。

──もっと歌いたいと思いました?

いや、あの曲は“もう一生分歌ったな”って思ってました(笑)。でも、歌やお芝居はやっぱり好きだなって思いましたね。

■「深海」には初めて自分の思いが入っている

──歌うことと演じることは分けて考えてますか。

違うような気もしてますけど、同じような気もしていて。台本を読んで、歌詞を読んで、言葉の意味や感情を伝えるという部分では同じかなと思いますね。違うのは、「深海」には初めて自分の思いが入っているので、自分とリンクするところがあるっていう。役を通して伝えることとは違って、自分自身を伝えることはちょっと恥ずかしかったりもするので、そこは大きく違いますね。

──新曲の話に行く前にもう少し振り返っていいですか。朝ドラ『エール』も作曲家の話でした。

私は小説家を目指す役柄で作詞はしたんですけど、歌うシーンはなくて。でも、目の前で二階堂(ふみ)さんの歌を聴いたときに驚きがあって。最初の頃、私たちの幼少期は子役の方々がやってくれていて。観てる人たちはひとりの人生の積み重ねとして観ているから、幼少期も自分が過ごしてきたつもりでいなきゃと思っていたんですね。でも、できるのかなっていう不安もあったんですけど、二階堂さんの歌が10数年の月日を一気に感じさせてくれて。伝える人にもよると思うんですけど、歌の力はすごいなと感じたし、とても貴重な体験でしたね。

──七菜さんは音楽にまつわる役柄が多いですよね。

自分では予想してなかったことですし、実感が完全にあるわけでなくて。私といえば、お芝居と音楽ですって思ってるわけではないし、私は音楽にたまに触れさせてもらうくらいの気持ちだったんですね。だから、これだけたくさんの音楽に関わることに驚きと、これからも音楽へのリスペクトの気持ちは忘れずにやっていこうかなと思いますね。

──昨年の10〜12月期のドラマ『この恋あたためますか』も夢に敗れた元アイドルというスタートでした。

歌って踊ってましたね(笑)。挫折する人だったんですけど、アイドルの役を一回やってみたいと思っていて。本気で真剣に考えたわけではないですけど、ゲームのように、人生を一度、好きなようにしていいよって言われたら、アイドルになりたいって少し思っていたことがあって。自分はきっと、アイドルだったら今よりももっとうまくいかない人生だったと思うので、ゲームとかじゃないと挑戦できない職業なんですけど。

──役柄ではできますもんね。

そうですね。お芝居する人のお仕事ってお得だなって何回も思ってきたんですけど、そんな繋がりもあって、ご縁に感じた役でもありましたね。

──どうしてアイドルという職業に惹かれましたか。

すごくキラキラしてるじゃないですか。アイドルの方はかわいい衣装を着て、歌って踊ってる。女の子をいちばん謳歌してるんじゃないかなっていうくらいの職業だから、女の子のアイドルに生まれたいと思ったこともありましたね。なんというか、女の子のアイドルさんを見ていると、ワクワクするし、心が躍るんですよ。宝石を見てるような気分になる。だから、目標とかではなく、遠い憧れですね。私、小学生のときにAKB48さんが大好きで。“AKB新聞”を切り抜いてノートに貼ったりしてて。あっちゃん(前田敦子)や大島優子さんを見て、日焼け止めを塗るように気をつけるようになったりもして。いろんな影響を与えてくれた方ですね。あと、高校生のときに文化祭でも踊りました。欅坂46さんの「サイレントマジョリティー」をクラスみんなで踊って。担任の先生がテチ(平手友梨奈)のポジションで踊ったんですけど。

──あれ、社会や大人に対する反抗も込められてますよね。

あはははは。それを先生が踊るっていう。平手さんは同い年なんですよね。欅坂46さんはキラキラもあるけど、それまでは黙ってなきゃいけなかったようなメッセージをアイドルさんが歌ってるギャップに面白さも感じたし。アイドルの人にはいろんな可能性があって、見てるだけ楽しそうだなっていう思いがありますね。

──以前、高校生時代はRADWIMPSやKANA-BOONも聴いてたと言ってましたね。

ロックバンドを聴きながら走ったり、お散歩したりしてました。それに、バンドは組んでみたいっていう思いはいまだにあります。私は後ろでドラムをやりたいんですけど、走っちゃう癖があって。私がズレたらみんなずれちゃうけど(笑)、全体が早くなって、気持ちが入っちゃいましたってことでいいかな(笑)。

■気持ちや息遣いを読み合いながら音楽をすることってすごく楽しい

──ドラムなんですね。映画ではベースを弾いてたし。リズム隊がいいのかな。

実はドラムとベースは、ほんの少しですけど、小学生の頃からやってて。音楽部のようなところに入っていたんですよ。いろいろな楽器をやっていたんですけど、みんなで音を合わせることの楽しさはそこで知っていて。だから、音楽番組で、ホフディランさんに「スマイル」を一緒に演奏してもらったときはすごくうれしかったですね。生でお互いの雰囲気を感じながら、気持ちや息遣いを読み合いながら音楽をすることってすごく楽しいなと思って。それを気の知れた仲間とできたらすごく楽しいんだろうなって思いますね。

──今、お話に出た「スマイル」のカバーを歌った経験は?

もともとはCMで歌ってたんですけど、いい歌だなと思ってて。ちょうどコロナとか、世の中が元気のない状態になったときに「歌ってみませんか?」って言っていただいたんですね。コロナ禍で、スマートフォンやパソコンを通して、おうちの中にいろんな言葉が溢れてる時期で。それがみんなの楽しみというか、書き手の人も読み手の人も時間があるから、複雑な言葉が流行っているなと思ったんですね。そんな中で、このストレートな歌詞をズドンって届けたらどんな感じになるのかなって思って。配信が楽しみな1曲であったんですよ。

──2020年7月に配信リリースされてヒットしました。

めちゃくちゃうれしかったです。覚えやすい歌詞だから、すごく小さい子どもも聴いてくれたし、大人の方にとっても、歌詞が、仕事での書類や企画書の言葉とのギャップもあったのかなって想像してて。“いつでもスマイルしようね”っていう、ひらがなとカタカナしかない言葉がたくさんの人の心を動かしたんだなって思うと、すごくうれしかったですね。

──昨年は『シブヤノオト』や『ミュージックステーション』などのテレビの音楽番組にも出演しました。

すごく緊張しましたね。まわりの歌手の方が自分のことをどう思ってるんだろうって。畑が違う人が来て、どう感じてるのかなって、いろんな余計なことも考えちゃって。でも、皆さんとても優しく接してくれたし、音楽が鳴ると、やっぱり楽しくて。「カエルノウタ」はすごく緊張してて、直前まで泣いてるって感じだったんですけど、「スマイル」はスマイルの曲だから、そういうわけにもいかないなって思っていたら、あのメロディと歌詞が自分自身を勇気づけてくれて。緊張しててもしょうがないなっていう思いがだんだん出てきたので。次第に緊張もほぐれていきましたし、ホフディランのおふたりも「楽しかったよ」って言ってくれて。カバー曲だったので、私が歌って、また今の世代にこの曲を少しでも広められたことがうれしいなと思いましたし、また一緒にどこかでライブで、生でやらせてもらえないかなという思いもあります。

■実現するって聞いたときは、本当に夢かな? と思いました

──ざっと“2020年の森七菜と音楽”を振り返っていただきましたが、音楽活動への向き合い方はどう考えてましたか。

もしできたらいいけど、できないだろうなと思っていましたね。だから、「スマイル」のときも、Ayaseさんとご一緒できるって聞いたときも、本当にびっくりしました。

──「スマイル」から1年ぶりのリリースとなる新曲でAyaseさんと一緒にやることになったのはどうしてですか。

私はもともとYOASOBIさんが大好きなんですね。本当にずっと元気や心の栄養をもらっているなって感じていたアーティストさんだったので、スタッフさんには夢の話のつもりで「もしご一緒できるなら」っていう話をしてて。それが実現するって聞いたときは、本当に夢かな? と思いました。

──YOASOBIの好きなところというのは?

いつも小説がもとになっているので、難しい言葉も多いんですけど、ikuraさんの歌声で、優しさが心にスッと染み込んでくるのがすごく不思議なんですよね。そのギャップかな。Ayaseさんが作るメロディも好きで、テンポが早いし言葉数も多いのに、ひとつも攻撃してこない感じがすごく好きで。ikuraさんの声はいつも、大きな絵画みたいだなって思ってるんですよ。全体的に見ても綺麗だなと思うし、近づいて細かいところを見ても新たな発見がある。だから、何回聴いても飽きないし、ずっと寄り添っていける。ほんとにずーっと聴いてますね。

──特に好きな曲は?

アニメの主題歌「優しい彗星」が好きですね。どこが好きかと言われると…自分の語彙力で表すのはもったいなくて、語りきれないですね。もう聴きすぎて、自分のお家みたいになってます。心を落ち着けたいときとか、なんだかアウェイだなって思うときとかに聴いてますね。

■今、誰かと共感したいことを歌いました

──そんな大好きなAyaseさんと会って、どんな話をしたんですか。

今、私が何を感じてるのかっていうことを聞いてくれました。いろんな話をしたんですけど、とにかく、寂しいんだ! っていうことですね(笑)。寂しいだけじゃなくて、未来への希望もありますし、神頼みみたいな、お願いだから早くこの状況が収束してほしいっていうっていう気持ちもあるし、相手に対する心配やお節介のような思いも含めてお話ししたので。結構、赤裸々だった気がします。ただ、自分の気持ちを歌っているんですけど、聴いてくれる誰かが思っていることも感じ取って歌いたいなと思って。今、誰かと共感したいことを歌いました。

──最初に「自分の気持ちを歌うのは恥ずかしい」と言ってましたね。

インタビューで話すと、やっぱり恥ずかしいですね。歌は…私の気持ちをAyaseさんが歌に転換してくれたので、それを歌うのは心地のいい時間だったりするし、とにかく誰かに届け! って思っているんですけど、今は恥ずかしいですね。なかなか普段、言わないことを歌ってるので。

──“森七菜が初めての自分の気持ちを歌った”曲でもあるので、やはりどんな気持ちなのかが気になってしまいます。ちなみに高校卒業後に上京されましたが、東京での生活は慣れましたか。

もう2年くらい帰れてないんですよね。高校生の頃は東京と大分の往復で、たまに大分に帰るのがめんどくさいって思ったこともあったんですよ。東京でのお仕事が終わって、大分に帰って、朝には学校に行くっていう日々だったから大変だったけど、今は本当に帰りたくてしょうがなくて。やっぱり、いろんなことを教えてくれたり、育ててくれたのは大分だったなって思って。早く帰れるような環境が戻ってこないかなって思ってますね。

──どんなことを教わった場所ですか。

とにかく伸び伸び育ちました。虫や動物にまったく恐れないようになりましたし。触れ合うことや感じることへの躊躇がないまま育てくれた場所だから、すごく感謝してますね。

──何か変化はありましたか?

友達がいなくなりました。あはははは。大分にはいるんですけど、普段、会えるような友達が今は近くにいなくて。本当に寂しいですね。私ってどんな人だっけ? ってたまに考えたりもするんですよ。もとの自分に戻れるのかなって。東京でも友達が出来て、その友達を楽しませるようなことを話したりとか。笑い合える日が来るんだろうかって考えちゃいますね。

■細かなところもAyaseさんが取り入れてくれて

──この曲にも離れた故郷や友人への想いは込められていますよね。

めちゃくちゃ素敵にいうと、会えない誰かに対する想いですね。実際の距離とは関係なく、人との距離が仕方なく遠ざかっているから。すごく寂しいですし、それこそ、遠く離れた故郷とかも考えたりするし。きっと今、全員がそうだと思うんですよ。だから、この曲に共感してもらえることで、誰かが心を落とし込める場所になったらいいなって思ってて。

──私も同じ気持ちだって感じるだけで楽になったりしますからね。

うんうん。自分の思いをたくさん書いてもらってはいるんですけど、自分のために作った曲ではないんですね。みんなが「こうだよね」って話し合いながら歌うような曲かなと思っていて。「私も同じ気持ちだよ」って言いながら歌ってる感じですかね。あと、そんな中にもいつも自分が思ってることとか、細かなところもAyaseさんが取り入れてくれて。

──それはどこですか?

…秘密でもいいですか。あはははは。

──(笑)わかりました。楽曲の中ではご自身を、深海を“彷徨うだけの魚”に例えられてますね。

本当にそうだなって思いました。私の話を聞いて、受け止めてくださったAyaseさんが歌詞として広げてくださって。自分が思っていたのはこれなんだって感じました。そこには共感もあったし、再発見の気持ちもあったんですね。実際の距離が近ければ近いほどもどかしいと思うんですけど、会えなかったぶん、実際に触れて、目を見て、コミュニケーションを取ることの大事さも強く感じて。最近のネット記事で見たんですけど、テレビ電話だと、作り物のマフィンケーキと焼きたてのマフィンケーキくらいの違いがあるらしいんですよ。テレビ電話の発達はありがたいけど、やっぱり直接何かをしてあげられることはなくて。そこにみんな、毎日、もどかしさを感じていると思うんですよね。そんな自分は、ただの彷徨う魚なんだなって思いながら歌いました。

──ほんとは寂しいのに、寂しいって言えない人に届くといいなと思います。

はい。なんか、もう、たくさんの人が目に浮かびますね。家族は一緒に上京してきたけど、中学高校のときは大分に帰りながら、お仕事してたから、なかなか家族に会えなくて。3年くらい一緒に年越しできない時期もあったので、そういうときの気持ちを思い出したし、友達や親戚も思い浮かぶし。小学校のときしかクラスは一緒になってないけど、あの子は元気かな? とか。今、誰がどうなっているか、本当になんでもあり得てしまうときだからこそ、誰に当てはめても歌える曲だなって思います。

──タイトルはどう感じました? 新海誠監督とは関係ないんですよね。

あはははは。関係ないです。一応、深い海です。きっとみんな、心の中にそれぞれの深海を持っていて。この曲を通して、ほんとに深い海をたゆたうように心地よく、ありのままにしてもらえたらなっていう気分というか。それは水槽みたいにガラスを挟んでてもいいから、隣同士になれたらいいなって思う気持ちもありますし。いろんな気持ちを自分の深いところに落とし込んでもらえたらいいなっていう希望もありました。あと、この曲を使ってもらいたいとも思ってて。この曲を誰かに渡すことで、離れてても何かできないかなとか、あなたが理不尽な悲しみに汚されてないかなって思ってるんだよとか。そんなコミュニケーションのひとつにもなったらいいなと思ってます。

■いつもは言えないことも、なんのひねくれもなく言ってみようって

──レコーディングはどうでしたか?

Ayaseさんには「とにかく一生懸命に歌ってもらえれば」って言われたので、すごく難しい曲でしたけど、一生懸命に頑張りました。最初は、気持ちを乗せるのが大変かなと思ったんですけど、私は勝手に、たくさんの人の思いが乗ってる曲だと感じてて。そこに重きをおくと自然と気持ちが入ってしまいますね。いつもは言えないことも、この曲を通して、なんのひねくれもなく言ってみようって思えた。たまに話し言葉もありますけど、誰かに話してる、自分の目の前に吹き出しがあるような気持ちで歌いました。あと、ikuraさんも来てくれて。

──YOASOBIが揃ったんですね。

めっちゃびっくりして。“本物だ!”と思って。難しい曲なので考え込んでいたんですけど、ikuraさんに見られてると思うと緊張し始めてしまうので、“勘弁してください!”って思いました(笑)。何か気になるところがあったら全部言ってくださいってお願いしたんですけど、優しいから、「ななちゃん、素敵でした」っていう置き手紙を残してご用事で帰られて。リラックスして歌えましたし、ファンとしていちばん得しちゃってる感じもしましたね。

──歌声もかなり変化してますよね。メロディもテンポも展開していく難曲ですが、言葉の1つひとつを聴き手の心にしっかりと丁寧に置くように、優しく繊細に歌っていて。

ありがとうございます。なかなか自分では変化が怖かったりもするし、自分では認められないことばかりですけど、そう言ってもらえるとうれしいです。本当に頑張ります!

■誰かを思う気持ちは1日にしてならないということを表現

──MVはどんなテーマで制作しましたか。

本当に日常のことばかりを映し出されているんですけど、そんななかで、いつもこんなことを考えているよっていう映像になってますね。自分に起こった不幸なことも、あの人はあんなふうになっていないかなって重ねてしまう。今、こうして誰かに会えない、寂しい日が長く続いているので、その気持ちが薄くずーっとあると思うんですよ。それが、みんなにとってストレスだと思うんですけど。そういう日々を生きている人を撮ってもらいました。いろんな衣装を着たり、ころころ場面が変わったりするので、誰かを思う気持ちは1日にしてならないんだってことを表現してますね。

──スイカ割ってたり、金魚鉢を横に寝転んでたり…。

あれは、ただ森七菜がスイカを割っただけで、スイカを割ってることには特にメッセージ性はないです(笑)。

──(笑)屋上のシーンが印象的でした。

きっともっと綺麗な夕日もあったと思うんですけど、この曲はあの空がちょうど良かったんですよね。奇跡を垣間見たなって、この歌みたいだなって思いながら撮ってました。

──涙を流してますよ。

なんでしょう。すごく恥ずかしいですね。特別なことを考えたわけじゃないんですけど、あの瞬間はいろんなことを望んでしまったんですかね。会いたいな、とか。奇跡を見ちゃったからこそ、欲張りになっちゃった瞬間かもしれないです。早くみんなに観てほしいなという思いがあります。

■これからも音楽にいっぱい力をもらうだろうなと思います

──何度も繰り返して申し訳ないですが、もう音楽活動を本格的にやっていくんだって言っていいでしょうか。

うん、これからも歌わせてもらえたらなと思いますし、これからも音楽にいっぱい力をもらうだろうなと思います。音楽へのリスペクトと大好きだっていう気持ちを忘れずに一緒にいようかなって思います。あとは、世界が元気を取り戻したらならば、また地元大分の商業施設でライブとかやりたいなって思います。

──そして、8月31日には二十歳の誕生日を迎えますね。ご自身にとってはどんな10代でしたか。

目まぐるしかったですね。普通の10代では経験できないようなことをたくさん教えてもらった数年間でした。この経験を得た自分がどう大人になっていくのかっていう、自分への期待も少しあります。もし、無駄にしてしまうようだったら、自分はそこまでの人間だなと思う。そういう意味ではプレッシャーもありますけど、二十歳を迎えても、頑張ろうかなって思ってます。

■自分自身が信頼される人になっていきたい

──10代で朝ドラにでて、主演ドラマもあり、Mステにも出演して。憧れの女優さんとしてあげていた満島ひかり、二階堂ふみ、杉咲花との共演も叶いました。20代は何を目標にしていきますか。

次は誰がどうとかではなく、自分自身が信頼される人になっていきたいです。私の人格とかはどうでも良くて。観ている人に、そこに着目しようと思ってもできないくらいにしたい。「この人が出てるから面白いよね」「七菜ちゃんがこの役をやるなら安心だ」って、作品を観る前から言ってもらえるような人になりたいなと思います。

──プライベートでは?

うーん…外に出歩ける世界になったら、ひとり旅がしてみたいです。思い切って、海外に行きたいですね。例えば、まだ見たことのない砂漠とか。灼熱で、地面が滲んで見えるような砂漠に行って、暑がりながら辛いものを食べたいです。ヒーヒー言いながら食べて、一人でお腹壊して。それも乗り越えて、逞しく生きていきたいですね。

衣装協力:トップス¥57,200、スカート¥68,200 (ともにHarikae)03-4296-7925 イヤーカフ¥39,600(:CAFCA/Harumi Showroom) 03-6433-5395 そのほかはスタイリスト私物/価格は税込


プロデューサー Ayaseコメント

──楽曲提供のオファーを受けたときの心境を教えてください。

率直にとても嬉しかったです。
YOASOBIのファンであることを事前に聞いていたこともありますが、何より熱い想いを持ってオファーしてくださったことがとても嬉しかったです。

──実際に会ったときの印象は?

以前から持っていた明るくパワフルな印象はもちろんのこと、優しく穏やかで、物事を色々な角度からしっかりと考えていらっしゃるとても聡明な方だな、と思いました。

──森七菜さんのシンガーとしての魅力とは?

飾らない素直で優しい歌声がとても魅力的だと思いました。それは、実際にお話しして僕も感じた森七菜さん自身の性格や人柄があってのことなんだろうな、と思いました。


プロフィール

森七菜

2001年8月31日生まれ大分県出身(大阪府生まれ)。
2016年に大分県でスカウトされる。
2019年7月に公開された映画『天気の子』のヒロイン天野陽菜役に抜擢され注目を浴びる。
他にも数多くの映画、ドラマに出演し話題を呼び、2021年、「第44回日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞。
2020年1月公開の岩井俊二監督作品映画『ラストレター』をきっかけにデビュー曲となる『ラストレター』主題歌『カエルノウタ』を2020年1月15日にリリース。
同年7月には、自身が出演しているオロナミンC CMソングのホフディラン「スマイル」をカバー。
YouTube再生回数3,000万回を超えるヒットを記録する。


リリース情報

2021.08.20 ON SALE
SINGLE「深海」



森七菜 音楽オフィシャルサイト
http://www.morinanamusic.com

森七菜 音楽スタッフ(公式)Twitter
https://twitter.com/morinanamusic

森七菜 staff Instagram
https://www.instagram.com/nana_mori_official/

森七菜 Official YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCgc-jIx2bZGcEg3Mt8sCn4A