THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2021.09.29

いきものがかり、ふたりの物語がここから始まる。様々な決断と清々しい覚悟をプロローグに刻む

吉岡聖恵と水野良樹の2人体制となったいきものがかりが『THE FIRST TAKE』に初登場。ライブでお馴染みの「気まぐれロマンティック」(9月17日公開)と、5月に配信リリースした新曲「今日から、ここから」(9月29日公開)をパフォーマンスした。

ここ数年の彼らは、“放牧”(活動休止)、“集牧”(活動再開)、“新事務所の立ち上げ”、“コロナ禍での活動自粛”、“山下穂尊の卒業”など、大きな変化を経験してきた。

そして、“新生いきものがかり”として挑んだ『THE FIRST TAKE』にどのような想いで立ったのか…グループとして、個人として、何を考え、どんな覚悟や決意を持って、ふたりがこれからを進もうとしているのかを聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 松浦靖恵
PHOTO BY 冨田望
HAIR MAKE UP BY 米倉小有吏(MOKAGE)
STYLING BY Remi Takenouchi(W)

■ポジティブに開花する、ふたりのパフォーマンスの可能性

──新生いきものがかりとしてふたりで挑んだ『THE FIRST TAKE』のパフォーマンスには、どのような想いを持っていましたか?

水野良樹(以下、水野):僕らが10代の頃に『ミュージックステーション』に憧れていたように、若い世代のミュージシャンたちは、“あの『THE FIRST TAKE』に出てみたい”、“いつかあの場所で歌ってみたい”と思うんだろうなと思いました。実際に自分もあの場所に立ってみると、ドキドキしましたね、嘘がつけない場所なので。

吉岡聖恵(以下、吉岡):たくさんのアーティストさんが『THE FIRST TAKE』に参加されている映像を拝見していたので、私もいつか出てみたいなと思っていました。本番は緊張感がありましたけど、一回きりのパフォーマンスを楽しむことができました。

吉岡聖恵

──「気まぐれロマンティック」と「今日から、ここから」の2曲を選んだ理由を教えてください。

水野:2人体制になったいきものがかりが、ポジティブに映ってほしいと思っていました。だから、明るくパフォーマンスをしている感じが出る「気まぐれロマンティック」を選びました。

──水野さんはアコースティックギターではなく鍵盤を弾いていますね。

水野:僕がアコギで吉岡が歌うという弾き語りのスタイルでもできるんですけど、「気まぐれロマンティック」はこれまでライブでずっとやってきた曲だったから、新しく見えるようなアレンジ、弦カルテットと鍵盤で軽いリズム感を表現できそうなイメージがすぐに思いついたので、この曲にしよう、と。

吉岡:そうだったね。出演が決まってすぐの段階で、リーダー(水野)からアレンジのデモが届いたのでビックリしました。

水野:自分の中にある新しい「気まぐれロマンティック」のイメージを、吉岡と共有したいと思って聴いてもらいましたね。

吉岡:これまでに聴いたことのないアレンジや大人っぽい感じにワクワクしました。ライブではリーダーが鍵盤を弾く曲もありましたけど、ふたりのパフォーマンスでというのもやったことがなかったので、自分たちもでしたけど、編成としても楽器構成としても観てくださる方は新鮮に感じてくれるんじゃないかなと思っていました。

水野:「気まぐれロマンティック」は、ライブでいつもお世話になっている朝倉(真司)さんに参加していただきました。今後もライブでは以前の曲たちを演奏しようと思っているし、「今日から、ここから」は亀田誠治さんと初めて共同制作した新しい試みをさせてもらった楽曲でもあるので、どんなパフォーマンスをするんだろうと興味を持って観てくださる方もいるんだろうなと想像しています。

水野良樹

■山下、僕らふたりの決断。その清々しさの先の“今”

──3人で行う最後の有観客ツアーとなった『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!』。横浜アリーナ公演を収録した映像作品が、グループ結成日の11月3日にリリースされます。改めて、あの日のステージを振り返って、感想を教えてください。

水野:山下(穂尊)がグループから離れるときに、自分たちが憧れていた地元・神奈川の横浜アリーナでライブができたこと、しかもコロナ禍において有観客で開催できたことを、改めてありがたいことだなって思います。ファンの皆さん、サポートメンバー、ライブスタッフも非常に温かく送り出してくれて、すごい花道を用意してくれて。こんなに素敵なことはないな、本当に幸せなグループだなって思いました。実は…先日、映像作品の副音声を録ったばかりで、山下がいつもの立ち位置に普通にいたんですけど(笑)。

吉岡:いつものテンションで、相変わらずでしたね(笑)。あのライブから何ヵ月も経ちましたけど、今振り返ってみても、あれほど清々しくパフォーマンスをして、“思い残すことはない”というような笑顔でステージを去ったほっち(山下)がいたから、私も“よし!”って、その先に進むことができたんだと思います。

水野:『ミュージックステーション』に新生いきものがかりとして初登場したときに、立ち位置の変化というか、鍵盤の向こうに聖恵が見える景色がすごく新鮮で…。

吉岡:たしかに、私も新鮮だった!

──今回の写真撮影中も「新鮮~!」って何度も言っていましたね(笑)。

水野:カメラの前で聖恵と背中合わせになるなんて、これまでなかったんですよ(笑)。

吉岡:3人なので横並びが多かったからね(笑)。

水野:いきものがかりには“3人の歴史”があって、3人の物語は完結したけれど、ここからいきものがかりはふたりで進んでいくと決めた。山下や、僕らふたりの“続けていく”という決断の、その清々しさの先に今回の『THE FIRST TAKE』があるので、このふたりがいきものがかりをポジティブな空気でやっている感じが伝わるとうれしいですね。

■グループとして、個人として考え続けて見えたもの

──ここ数年、いきものがかりには様々な変化がありました。そのなかでアーティスト/グループとして、また個人として、どんなことを考えながら進んできたのかを、改めてお聞きしたいのですが。まず、2017年の“放牧”と2018年の“集牧”を経験したことで、その後のいきものがかりやご自身にはどんな変化がありましたか?

吉岡:おっしゃるとおり、デビュー10周年が終わってからの5年間は、それぞれに変化がいろいろありましたね。

水野:自分たちが30代後半に入ってきたときに、“これからは今までのような感じではいけないだろうな”と思って、自分たちの人生や幸せというものを、グループを続けながらどう形にしていけるのか、それぞれのペースで考え始めていたので、“放牧”はデビューからずっと走り続けてきた自分たちがリセットするために必要な決断だったと思っています。それを経て、“集牧”する頃には、もう少し踏み込んだところで“これからどう歩んでいこうか”ということを、3人で話していましたね。

──メジャーデビュー後、3人は1年の始まりにメンバーだけで話し合いをする機会を必ず作っていましたよね。

吉岡:そうですね。いつもはだいたい年1ペースでしたけど、“放牧”して表に出ていない間は何度も3人で話していました。そこで、それぞれが思っていることを腹を割って話せたので、私個人としては気持ち的にずいぶんラクになったというか。いきものがかりを終わらせたかったわけではないから、その先のことも気になりつつ、これからどうやったら3人が3人とも自分の人生を幸せに生きられるかってことを話し続けて…。それがあって、今のほうがいろんなことをフランクに話せるようになった気がします。

水野:2010年から2012年くらいが、グループのキャリアとしてはいちばんスポットライトを浴びさせてもらっていた時期でしたけど、それはずっと続くものではないからこそ、自分がやってみたいこと、いきものがかりでやっていきたいことを話していくことが必要だった。お互い個人としてのビジョンがテーブルに上がってきたなかで、意外と、今までの自分たちに自分たち自身が縛られていたことに気づけたのは、すごく大きかったです。

吉岡:自分は何がやりたいんだろうっていうことを積極的に考えるようになりました。いきものがかりを続けながら、吉岡聖恵として何をやりたいのか。考えを巡らせていくなかで、ソロアルバムもそうですけど、自分がやってみたいと思っていたことを実現していった。もともと変化することに対してはあまり得意なほうではなかったけど、“人生一度だし。やりたいことをやってみよう!”と思うようになりました。

水野:それは山下も同じなんですよね。山下穂尊がひとりの人間として自分がやりたい方向へ走っていった。それぞれがいろんな気持ちを抱えた数年間のなかで、僕個人としては楽曲提供やアクティブに外の世界に触れること、自分が動くことで、グループにも自分自身にも刺激を与えることができたんじゃないかと思っています。

■ふたりで形作られる音楽の今後

──これまでは基本的に水野・山下のふたりが楽曲を作ってきました。それがいきものがかりというグループが持つ楽曲の幅広さにも繋がっていたかと思います。今後は水野さんが担う役割が増えるのではないかと思いますが、楽曲制作に関しては、どのように考えていますか?

水野:今までは絶妙なバランスで山下と僕の楽曲があったけれど、いい意味で、今後はそういうバランスを考えないでグループや曲と向き合えるというか。自分と吉岡との関係も、“歌い手”と“曲を作る人”という、まっすぐな関係になるので、そこで新しく見えてくるものがあるんじゃないかなと、今は思っています。

吉岡:やってみないとわからないけれど、リーダーと直通な関係になることで、自分の表現の引き出しが増えたらいいな、その曲をより彩り豊かに歌えるようになれたらいいなと思っています。“いきものがかりは3人だ”ってことを、実は、私たちがいちばん思っていたと思うんです。でも、それが変わった。だから、結構な覚悟を持ってこれから先を進んでいくからには、とにかく楽しむことも大事だなって思うんですよね。歌いたい人(吉岡聖恵)と曲を作りたい人(水野良樹)の集合体を楽しんでもらえるものを作りたいです。

水野:僕はいきものがかりで自分がやりたいと思っていることを、楽曲にぶつけていくと思います。

吉岡:たぶん、ビックリするような曲がくるんじゃないかと思っているんですけど、ね…。

水野:ハードル上げるねぇ(笑)。

──実年齢的にも大人になり、プライベートでも大きな変化がありました。これからいきものがかりが届ける歌、届けたい曲はどのような楽曲になっていくのでしょうか?

水野:これまで作った曲たちは、聴いてくれるそれぞれの人の歌として聴いていただけたらという想いで届けてきましたけど、それが自分たちの想像を遥かに超えていくことも多かったんです。

──というと?

水野:中でも「YELL」や「ありがとう」は、“自分たちの曲だ”というのが、もうおこがましいくらいに多くの方たちに聴いていただいて、自分たちの手を離れて大きく育っていった曲だと思うんです。そういう経験をしたことで、何かのためや聴いてくれる人のためにというよりも、“結果的に”いろんな人に繋がっていけばいいなっていう、そこだけを考えるというか…なんてことないことも歌っていくと思うんですけど、その“なんてことないこと”が人生の大事な部分だったりもするので、それぞれに違う物語を持って生活している人たちに何かひとつでも繋がっていくような、シンプルでいい曲を作っていきたいです。

吉岡:私はシンプルな歌をうたうタイプなのかなって改めて思っていて。歌えば歌うほど楽しい部分も難しい部分も見えてくるし、歳を重ねると声帯の状態も変わってくるので、その変化のなかでいかに喉をいい状態でフル活動させて、自分にはどんなことができるのかを、いろんな曲でトライしていきたい。もっと歌がうまくなりたいし、でもうまいだけでもダメだっていうところと、ずっと向き合っていくんだろうなと思っています。

■試される覚悟を決めたこれから

──グループの状況変化と同時に、ネット配信など音楽シーンの在り方も変化してきました。またコロナ禍での活動など、現段階では未だに見えにくい今後でもありますが、だからこそこれからも活動を続けていくうえで決意したことはありますか?

水野:有観客ライブができない状況下で自分たちも配信ライブをやりましたけど、こういう状況下だからこそ、新しいことをやっていこうという前向きな気持ちにもなれた。音楽シーンや世の中の変化を受け入れながらも、自分たちができることをやっていくしかないと思います。なるべくシンプルなフォーマットで届くものを自分たちは届けていきたいです。

吉岡:シンプルだからこそ、自分たちの核にあるものが試されるんじゃないかと思いますね。

──ふたりでこれからいきものがかりをどういう想いで育てていきたいですか?

水野:3人で素舞台に立って「SAKURA」をやると、“この3人だからちゃんと届けられるんだ”っていう誇りみたいなものがあったんです。でも、これからはふたりでいきものがかりをやっていくしかない。身内を褒めるのもなんですが、僕は吉岡聖恵の歌はこれからもすごく高いレベルに居続けられると思っていて…でも自分は、ソングライターとしては同じ目線にいるつもりだけど、一対一で対峙する演奏家としては吉岡聖恵のレベルに全然届いていない。だから、メンバーとしてもっと近づいていかなければいけないんだということを、今はすごく感じていて。

吉岡:私は究極を言うと、どんな歌でもしっかり届けられる歌い手でいたいから、いきものがかりのリーダーが作ってくるどんな曲も最大限に活かせる歌い手でいたい。ずっと歌い続けていくためにも、自分のできること、できる表現を増やしていきたいです。

水野:『THE FIRST TAKE』のあの映像は、僕が鍵盤を弾いて吉岡が歌っている、とてもシンプルなものを映し出している。始まったばかりの“新生いきものがかり”は試されていると思うんです。だからこそ、“ふたりの中にある核”を確固たるものとして育てていくことが、いちばん重要なんだと思う。そうすれば、配信であれ、生のライブであれ、素舞台にふたりだけで立っても大丈夫だっていう、自信に繋がっていくと思っています。

吉岡:これからどんなことが起こっても、どんな変化があっても、私はずっと歌っていきたいし、いきものがかりを続けたい。ずっと音楽をしていたいので、リーダーが言うように、自分たちの中に強い核を持って、いきものがかりを育て続けていきたいです。


プロフィール

いきものがかり
1999年に結成。地元の厚木や海老名を中心に活動を開始し、2006年にシングル「SAKURA」でメジャーデビュー。その後、多くのヒット曲を生み、幅広い年齢層からの人気を得て国民的アーティストに。2017年に“放牧宣言”。1年の活動休止を経て“集牧”。今夏、山下穂尊がグループを卒業し、吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(Gu)の2人体制であらたな活動のフェーズに入る。


リリース情報

2021.11.03 ON SALE
DVD/Blu-ray『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!』



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