THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2021.12.07

DEAN FUJIOKAの人生経験と今の世情から導き出した“爆発的に変化する”『Transmute』

INTERVIEW & TEXT BY ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
PHOTO BY 橋本憲和

巧みなグルーヴを組み入れたサウンドへのこだわりから、コアな音楽ファンからの支持も高まるDEAN FUJIOKAの最新アルバム『Transmute』。

日本語、英語、中国語というトリリンガルなリリック、ロックや歌謡曲をルーツとしながらもトラップ、シンセポップ、ラップミュージック、ベースミュージックなどダンスミュージックへの傾倒も深い音楽性の妙。グローバルかつ俯瞰的な視点から生み出されるコスモポリタンな表現は唯一無二のオリジナリティーを誇る。

10月29日には先行で、曲数や曲順が異なる『Transmute(Trinity)』をデジタルリリースしているが、共通するテーマは“Transmute=変異”だ。

それは、コロナ禍という予測不可能な時代を生きていくために必要な力であり、サウンドや歌詞における進化、心情の移り変わりなどがあらわとなっている…そう、この短期間の間でも作品は変異し続けているのかもしれない。

結果、全18曲収録、ある種ベスト盤のような趣もある。それはDEAN FUJIOKAがミュージシャンとしてドラマに提供した「Runaway」をはじめ、代表曲のニューバージョンである「Neo Dimension」や「History Maker 2021」、2019年放送のドラマ『シャーロック』(フジテレビ系)主題歌/オープニングテーマに起用された「Shelly」、「Searching For The Ghost」などの人気曲も多数収録しているからだ。

しかしながら、驚くべきはアルバム冒頭の「Hiragana」での歌唱法の変化や人肌を感じる優しき歌声だろう。ルーツを大事にしながらも、新しい世界を生きねばならない使命感の強さ。先行して進行中のツアー『DEAN FUJIOKA “Musical Transmute” Tour 2021』のシアトリカルな世界観とも連動したアルバム『Transmute』を、“2021年の今”作らねばならなかった意義とは──。

■細胞レベルで爆発的に変化しなければならない、コロナ禍での“表現”

──全18曲収録という大作となりました。

DEAN FUJIOKA(以下、DEAN) 実はちょっと減らしたんですけどね(苦笑)。

──そうなんですね。タイトルからしても、テーマ性を強く感じる『Transmute』のコンセプトからまず教えてください。

DEAN いくつか角度があるんですけど、直接的にこの言葉にたどり着いたのは、コロナ禍に直面したことが大きかったですね。普通に、変異株が出てくるパンデミックの状況をまたいで、この3年間でアルバムが出来たので。誰しもが大きな影響を受けているとは思いますが、僕自身もこの時代に、このタイミングで、このアルバムを作ったことを記しておきたかったんです。

『Transmute』通常盤ジャケット

──意味あることだと思います。

DEAN もうひとつは、自分がこれまでのキャリアで、節操なくいろんなことをやってきて、形状を変えていく…ひとつの球体でありながらも光が当たる面が違うと落ちる影が違う、みたいな。そういう意味的に言うならば、変形する“トランスフォーム”という言葉がわかりやすいかなと。例えば、職業が変わったり、言語が変わったり、仕事のオペレーションの仕方も各現場で違ったり。そんな変化の日々で仕事をするなか、もっと爆発的な変化がこのコロナ禍で。細胞レベルで爆発的に変化する“ミューテーション”というか。

──“ミューテーション=突然変異”ですね。

DEAN これだけ大きな社会的な変化に強く影響されましたね。生きていくために、適応力をフルに活かさないといけないという。それはライブパフォーマンス、音楽とは違う映像の仕事や自分の企画プロデュースする作品だったり、俳優としての立場で参加する作品も、諸処にいろんな変化があったんですよ。今までの流れからするとピンチですが、制限がかかることで生まれた発想やひらめきもあり、自分の動き方次第ではチャンスにもなり得るのだと感じました。

■なぜ“Transmute”という言葉にこだわったのか?

──普段とは違う部分の脳が動き出すような。

DEAN “FamBam Monsters”というキャラクターグッズを創造し、そこから絵本を描いてみようと考えたりしたのも、絵本を作ることがゴールではなくて。それをひとつのシンボルにして、ファンドレイザー(※社会の役に立ちたいという活動)としての活動へトライするきっかけだったんです。なぜかというと、コロナ禍によって最低限の衣食住の維持が難しくなる人が続出してますよね。いろんな気づきのきっかけが、こういった混沌とした時代では浮き彫りになるんですよ。それはアップフロントで、現場で起きているからで。

──普段の日常では、なかなか見えないものが見えてくると。

DEAN 今回、音楽を作るうえで、アルバムのタイトルである“トランスミュート”という語源からは離れて、より造語的な感覚で自分の解釈を足したんですよ。なぜ、ミューテーションやトランスフォームじゃなくて“トランスミュート”にこだわったかというと、ミュートという音楽用語がありますよね。音を消音する、沈黙、サイレンス…楽譜でいうと休符が生まれる。それを乗り越えていくという、ピンチをチャンスに変えていきましょうっていう。アルバムを出すにあたって、世の中の流れ、天と地と人がこの言葉で全部繋がっているなと。それでタイトルを『Transmute』にしました。

──なるほどです。変異株の猛威が今年はキーワードになりながらも、“変異”という言葉を考えると、人間にとっても適応するために大事なことなんですよね。

DEAN 間違いないですね。

■“Transmute”し続けてきた、DEAN FUJIOKAの歩み

──DEANさんはこれまで、北米、香港、台北、ジャカルタ、そして日本と、様々な国や地域でゼロからいろいろな体験をして、あらゆる地でトランスミュートされてきたのかなと。

DEAN おっしゃる通りで、これまで国が変わるたびに新人としてやってきました。あれはひとつのトランスミューテーションだったと思います。言語が変わり、国が変わり、職業が変わるとルールも変わっていく。一個人の人生において、改めて変異だったんだなと思います。簡単に言うと“適応力”とか、もっとジェネラルな言葉で届けることもできると思うんですけど、もっと爆発的な激しさってものがあるんですよ。それは物事を一回全部破壊するみたいな。

──うんうん。

DEAN 国を越えるってそれに近いものがあったんですね。そのたびに大事にしていたのは、「なぜ、このアクションをするのか?」という意識をブレずに持ち続けること、大きな文脈でのひとつの曲線の一部分を持ち続けることでした。この経験のおかげで、限られた時間で自分が何を選択していくのかはより明確になった気がしますね。

■「おかえり」「ただいま」みたいな感覚があった「Hiragana」

──厳しい経験を乗り越え、自分の居場所を確立してきたDEANさんだと思いますが、そんな過去の経験と今感じられることを表現した最新アルバム『Transmute』の1曲目、新曲「Hiragana」の優しき歌声に救われるなと思ったんですよ。そして、なぜ1曲目にされたのかなと。

DEAN 「Hiragana」というタイトル、歌詞、メロディになったのを今改めて振り返ると…ひとつの象徴としての日本語、文化、日本という存在を“ひらがな”に感じたんです。というのも、漢字を書けない人が簡易的に記すため、主に女性が使っていた表記システムがひらがなで、そういう成り立ちも含めて僕はこの言葉に“母性”や“母国語”を感じるんです。それに、このパンデミックで日本を最初に出た20何年来ぶりに日本に長くいるんですよ。そうすると「やっと帰国したんだな」って。「おかえり」「ただいま」みたいな感覚があったのが、1曲目に「Hiragana」を持ってきた理由です。

──なるほど。

DEAN 作品としては、とにかくナチュラルなもの。目をつぶった時に音を介して、発信源がそこにあるような感覚の曲にしたかったんですよ。まるで、そこにピアノや声が鳴っているような。これだけ人と人が会えなくなることによって、ふれあいの大切さに気づかされましたよね。

──シンプルですよね。

DEAN 童謡っていうんですかね。故郷の歌というか、郷土の歌を作るということで。今まで自分は「Fukushima」など何曲かそんな曲を書いてきているんです。「Priceless」もあって。その最新版ですね。今度は日本という島というか土地について歌っています。

■様々な受け取り方ができる、ポジティブへと導く「Spin The Planet」

──しかも、「Hiragana」では海外在住のstarRoさんと曲をコライトしています。

DEAN そうなんですよ。starRoさんも海外で同じような経験をされていて。最初はタイトルが「Hiragana」ではなかったので、「タイトルを“Hiragana”にします」って伝えた時にstarRoさんのテンションが上がっていたことが印象的です。

──うんうん、僕もテンション上がります。新曲である2曲目「Spin The Planet」は、ライブで先行して発表されていますが、希望の光が見えるようなサウンド感、ポップ強度の高さにやられました。

DEAN ちょうど1年前ぐらいに、自分が企画プロデュースした『Pure Japanese』(2022年1月28日公開)という映画の撮影の時に、日光の霧深い山を見ながら畳の上で作った曲です。SDGsを考えた、地球に優しいメッセージ。歌詞で歌っているのは、“私”と“あなた”みたいな関係性はあるんですけど、それが環境だったり、地球とダブルミーニングになるような部分を意識しています。まあ、みんなでポジティブな方向に持っていこうよっていう。エンバイロメンタル・フレンドリーな曲にも聴こえるし、人と人との繋がりにも、男女の友情の話にも聴こえるかな。

■火の鳥の物語を体現する「Neo Dimension」、コロナがなかったら生まれなかった「Plan B」

──ちなみに、アルバムの世界観、質感、温度感を構築していくうえで「Plan B」、そしてニューバージョンとなった「Neo Dimension」や「History Maker 2021」という楽曲の存在は大きいように思ったのですが。

DEAN そうですね。やはり「Neo Dimension」はすごい大きいかな。もととなる「My Dimension」が、自分のキャリアにとって大きな存在だったので。なので、軽い気持ちではできなくて、不死鳥のように灰になって、そこから新しい鳥が生まれるという、火の鳥の物語を体現するような楽曲になるよう思いを込めました。そこは大きな指針のひとつになっていますね。「Plan B」も、コロナがなかったら生まれなかった曲なので『Transmute』というアルバムにとっては、ひとつのヘソになっているというか。それが、ライブの『DEAN FUJIOKA “Musical Transmute”』の構成にも繋がっています。「Neo Dimension」で始まるというところもあって。やっぱり、ライブとして演目を作ったってことは、アルバムを仕上げていく終盤戦において大きな影響がありましたね。

──そんなこともあり、アルバムも18曲目まで広がったと。

DEAN 表現の限界値、可能性を突き詰められたのはすごい収穫でした。ライブでは改めて舞台芸術というものと向き合えましたね。大きな流れでのストーリー性、神話伝承の感覚で、どんなメディアのコンテンツだったとしてもそのサイズに合わせたナラティブな感覚というかストーリーテーリングな感覚。そこは自分がトランスミュートしながら、つねに真剣勝負してきました。

■日本海とはまた違う、渤海の景色に合う哀愁を歌った「Sukima」

──新曲の7曲目「Sukima」で感じる、冒頭からのピアノと雑踏、弦が混ざり合うかのような柔らかなサウンドが心地よく。そして、人肌を感じる優しい歌声が心に響きました。

DEAN コロナ禍になって、いちばん最初にリモートで制作してみようとトライした曲なんですよ。なかなかうまくいかなくて(苦笑)。当時まだリアルタイムでやってて、今だと遅延なくやる方法もあるんですけど、最初はベータ版でした(苦笑)。「Hiragana」然り、「Sukima」も人と人との温もりを感じられる曲を作りたいなと思いました。自分が結構バラード好きで。カラオケに行くとラブバラードを歌うんですよ。自分の曲でもそういうのが欲しいなと。ジャンルは変わるんですけど、「Shelly」の延長線上のような。

さらにスローBPMで。イメージでいうと渤海(ぼっかい)です。韓国の歌謡曲のイメージですね。自分が最初USにいた頃は、コリアン・コミュニティーにいたので韓国のヒップホップやバラードなどをたくさん聴いていたんですよ。20年経ったら大きく変わりましたけどね。

──そういうイメージなんですね。

DEAN 渤海の景色に合う、中国の東北や朝鮮半島とか。日本海とはまた違う、哀愁を自分なりに表現しました。

■子供の頃に影響を受けたものと向き合える下地ができた

──新曲「Sayonara」では、AORな世界観が新鮮で。素直なポップミュージックに仕上がりましたね。

DEAN 「Sayonara」は日本の歌謡曲からの影響が強いですね。松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」がすごい好きで、アンサーソングな気分なんですよ。「SWEET MEMORIES」に感じた心情の景色を自分なりに違う曲として作ってみた感覚で。昔、サントリーのペンギンのCMあったじゃないですか? 切なく感じたんですよ。あの感性、情緒を自分のメロディや言葉にしてみました。

──今回、日本をルーツにした影響を感じる新曲が多いですよね。「Scenario」もそうかなと。

DEAN 先程の話に通じますが、こんなに日本にずっといる機会ってなかったんですよ。コロナ禍になって1年半以上? 2020年3月にミラノに行ったのが最後だったので。これだけ長い時間日本にいると帰国したって感じになりますね。素直に、80年代や90年代、自分が子供の頃に影響を受けたものと向き合える下地ができたんです。それはポジティブに考えて、アルバムへの大きな影響を与えていると思います。


リリース情報

2021.12.08 ON SALE
ALBUM『Transmute』


ライブ情報

DEAN FUJIOKA“Musical Transmute”
12/18(土)東京・LINE CUBE SHIBUYA
12/19(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA
12/25(土)大阪・オリックス劇場
12/26(日)大阪・オリックス劇場

詳細はこちら
https://www.deanfujioka.net/musicaltransmute/


プロフィール

DEAN FUJIOKA


ディーン・フジオカ/福島県生まれ。2004年に香港でモデルの活動をスタート。2005年、映画『八月の物語』の主演に抜擢され、俳優デビュー。2006年に台北へ拠点を移しドラマ・映画・TVCFに出演。2009年には音楽制作の拠点をジャカルタに置き、2011年から日本での活動も開始。2015年以降は東京を拠点に、アジアの縦軸で活動中。2021年9月より全国ツアー『DEAN FUJIOKA“Musical Transmute”』を開催中。2022年1月28日には主演/企画&プロデュース『Pure Japanese』が公開される。

DEAN FUJIOKA OFFICIAL SITE
https://www.deanfujioka.net/

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