THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2022.05.30

野宮真貴×松尾レミ(GLIM SPANKY)、確固たる自身のスタイルを持つふたりの対談

野宮真貴、40周年記念アルバム『New Beautiful』発売を記念して、収録曲「CANDY MOON」を提供したGLIM SPANKY・松尾レミとの対談を実施。

軌跡を振り返るのではなく、あくまで最新型の野宮真貴を表現したい──と、切なる思いから立てた、今作のふたつのテーマとは? さらに野宮真貴の考える“40年の先”とは?

INTERVIEW & TEXT BY 土屋恵介
PHOTO BY 伊藤 圭

■「ホンモノだ!」「かわいい!」「きれい!」「お人形さんみたい!」

──まずは、おふたりが初めて会われた際の第一印象を聞かせてください。

野宮真貴:たしか7年ぐらい前に、(松尾)レミさんから雑誌の対談を申し込まれて初めてお会いしました。

野宮真貴

松尾レミ:GLIM SPANKYがデビューしてすぐですね。保育園の時から野宮さんに憧れているので対談をお願いしました。

私はピチカート・ファイヴの音楽や渋谷系のカルチャーと共に育ってきているので、お会いした時は「ホンモノだ!」「かわいい!」「きれい!」「お人形さんみたい!」ってただのファン目線で…(笑)。

念願であり、感動の対談となりました。私にとって野宮さんはすごくキュートなドールのような存在で、何度お会いしても、自分の野宮さんに向けてのキラキラした感情は変わっていません。

野宮:(笑)。レミさんの第一印象は、若いけれども自分のビジョンがあり、しっかりした方だなと思いました。デビューして少し経ったくらいでの対談でしたけど、海外も見据えているとか、そういう話もうかがったんです。

あと、ヘアメイクやファッションにも気を使っていて、自分のスタイルを持ったおしゃれな女の子だなと。

■私がロック少女だった時の憧れそのもの

──野宮さんはGLIM SPANKYに対してはどんな印象がありますか?

野宮:デビューはニューウェイヴ系で、ピチカート・ファイヴでは渋谷系と呼ばれたりしたんですけど、私は元々ロック少女で。

ただ、声がロック向きじゃなくてギターをやってたんですけど、ニューウェイヴの時代が来て、やっと自分が歌える音楽と出会えて、そこから歌手を続けています。なので、GLIM SPANKYのライブに行くと、ギターを弾いて歌うレミさんがカッコ良くて憧れますね。

ステージに立つレミさんの姿は、私がロック少女だった時の憧れそのものなんです。

松尾:うれしいです! そして、恐縮です(笑)。

──松尾さんは、90年代の渋谷系の音楽をどのように知ったのですか?

松尾:親が音楽好きで、家ではずっと渋谷系の音楽が流れていたので、幼い時から生活の中に当たり前にあるものだったんです。そして、物心ついた頃には曲も歌えたという感じです(笑)。

その後、ロックが好きになり、中学・高校でロックにまつわるファッションやレコードの世界を知った時に、より渋谷系のすごさに気づきました。小西(康陽)さんが作るピチカート・ファイヴのサウンドに深く興味を持ったり、渋谷系の元ネタ集の本を読んだり、音楽とカルチャーの繋がりを知っていくのが面白かったですね。

松尾レミ(GLIM SPANKY)

時代時代で世に出てるカッコ良いものもあれば、世に出ていないカッコ良いものもたくさんある…そうしたことを教えてくれる、あらたな存在が“渋谷系”だったんだなと。

渋谷系って表面的にはすごくキャッチーで、おしゃれで、キュートだけど、その下にはとんでもなく深いバックボーンがある。知れば知るほど、どんどん好きが溢れていくものなんですよ。

■時を経たからこそできる“最新型”の野宮真貴

──そんな松尾レミさんがGLIM SPNAKYで参加した、アルバム『New Beautiful』。野宮さんにうかがいますが、本作はどこから着手したのですか。

野宮:今作は私のデビュー40周年記念アルバムということで、まずはふたつのテーマを用意しました。

ひとつは、40年間の音楽人生の中で深く関わっていただいたアーティスト…言ってみれば“野宮真貴を作った方々”に、今の私に歌ってほしいと思う新曲を作ってもらうこと。

ムーンライダーズの鈴木慶一さん、私のやっていたニューウェイヴバンドのポータブル・ロック、ピチカート・ファイヴのオリジナルメンバーの高浪(慶太郎)くん、ここ10年くらい親しくしているカジヒデキさん、私と同い年でデビューも同期のクレイジーケンバンドの横山 剣さん、そして若い世代のGLIM SPANKYの松尾レミさん。皆さん愛を持って曲を書いていただきました。

ふたつ目のテーマが、新しい世代の海外のアーティストに、ピチカート・ファイヴの名曲をリアレンジしてもらうこと。

韓国のNight Tempo(ナイト・テンポ)さんに「東京は夜の七時」、タイのPhum Viphurit(プム・ヴィプリット)さんに「陽の当たる大通り」、インドネシアのRainych(レイニッチ)さんと日本のevening cinemaさんには「スウィート・ソウル・レヴュー」をお願いしました。

そうすることで、SNSで広がったり、また日本も含めた世界中の若い世代に再発見してもらえたらうれしいなと考えたんです。1994年に全米デビューも果たし、ワールド・ツアーを行ったピチカート・ファイヴの音楽は、当時も今も“世界基準”だと自負していますから。

今作は40周年を記念するアルバムではありますが、私の音楽人生を振り返るのではなく、40年という時を経たからこそできる“最新型”の野宮真貴を表現したアルバムにしたかったので、このふたつのテーマはとても重要でした。

■ずっと大切に温めてきた“CANDY MOON”

──なるほど。軌跡を感じさせながらも、ちゃんと現代にマッチしたものになっており、かつ野宮真貴さんのあらたな一面と出会える作品になっていると思います。松尾さんは「CANDY MOON」(作詞・作曲・プロデュース:松尾レミ/編曲:GLIM SPANKY)を手がけていますが、どのようなイメージで作られたのですか?

松尾:いつもはギターで曲を作りますが、せっかくの野宮さんの楽曲なので、普段とは違った作り方をしてみたくて鍵盤でやろうと。で、弾いた瞬間に(バート・)バカラック的なオマージュを思いつき、60年代のサンシャインポップのような明るい空気もありつつ、歌詞はちょっとレディな主人公をイメージしました。

野宮さんといえば、“パリの街角”ってイメージが私にはあって(笑)。私の歌詞は自分が見てきた海外の風景を書くことが多いんですけど、パリは私も好きな街でコロナ禍前はよく行っていたのもあり、今まで書けなかった世界の風景を野宮さんという主人公に投影させようと思ったんです。

キュートであり、大人な女性でもあり、ちょっとおてんばなところもある…オードリー・ヘプバーンみたいな女性のストーリーにしようと考え、野宮さんだから表現できるもの全部盛り! って感じになりました(笑)。

実は“CANDY MOON”という言葉は、もし自分がGLIM SPANKYの松尾レミじゃなく、匿名で音楽を作るとしたら使いたいなって温めてきたものだったのですが、野宮さんの楽曲に似合うなと思い、タイトルとしてつけました。

──大切な言葉を使うところからも“野宮さんLOVE”が伝わりますね。野宮さんは同曲を受け取った際、どんな印象を受けましたか?

野宮:私も『ティファニーで朝食を』でオードリーが演じた、ホリー・ゴライトリーが浮かびました。ホリー・ゴライトリーは自由を愛する女の子なんですけど、私も自分が音楽をやるうえで、いつも自由で楽しくいたいという思いがすごくあるんです。その感覚で40年続けてきた感じですよ(笑)。

あと、女の子の強さも感じましたね。好きな彼氏に愛されたいと思っているけど、たとえ独りぼっちだとしても、いつでも自由に生きていける、楽しんでいけるという内容になって。「かわいらしくてエレガントで。でもしなやかな強い意志を持った女性」みたいな。そういう女性に私はずっとなりたいと思っていたので、ところもすごくうれしかったです。しかも、ずっと大切に温めてきた“CANDY MOON”っていう言葉を使っていただけて、レミさんに感謝ですね。

■私はとにかく幸せな時間でした(笑)

──レコーディングでの様子も教えていただけますか。

松尾:アレンジやギターは相方・亀本(寛貴)に、エンジニアはいつもGLIM SPANKYでやってくださってる方にお願いしました。歌録りも一緒に行い、コーラスも入れさせていただき、すごく楽しいレコーディングができました。ただ、野宮さんの歌のセレクトがすごく難しかったんです。なぜかというと、野宮さんの歌がお上手すぎて全部良いんですよ。

──全部のパターンがOKテイクだったと。

松尾:そうなんです! どれを選べばいいかわからないっていうのを初めて経験しました(笑)。最終的には、ストーリーや感情に沿ったテイクを選びましたね。前半はキュートな女の子、ギターソロ後のセクションは歌の技術的にきれいなテイクを選んだり…って感じでした。

野宮:とても楽しいレコーディングでした。レミさんはお上手だと言ってくれましたけど、レミさんの優しさのおかげでもあるんです。

ちょっと喉の調子が悪い時もあったり、私があまり得意じゃないブルースコードがあり、どうしようかなって思っていた時に「野宮さん、ハーブティーお好きですか?」ってレミさんがお茶を入れてくれて、それで心が解されて…歌って結構メンタルが関わってくるものなので、そうした気遣いがうれしかったですね。

あとGLIM SPANKYの和気あいあいとしたレコーディング風景を垣間見れて、バンドって良いなって思いました。それとレミさんの仮歌もすごく良かったんですよ。

松尾:ええ〜〜!

野宮:コーラスのメロディが超絶難しかったんですけど、それをレミさんがしっかりやっていてすごいなって思いましたし。

松尾:ありがとうございます。私はとにかく幸せな時間でした(笑)。

■「CANDY MOON」の世界観を胸に、お客さんに日常が戻ってほしい

──2組ともに納得のいく楽曲になったようですね。

松尾:むちゃくちゃお気に入りです!

野宮:私もお気に入りです。大阪と東京、全6公演開催した『野宮真貴 40th Anniversary Live~New Beautiful~』では、「CANDY MOON」をアンコールのいちばん最後に歌っているんですけど、それは「CANDY MOON」の世界観を胸に、お客さんに日常が戻ってほしいと思ったからなんです。この歌を聴いたり、口ずさんだら「なんだか周りの世界が楽しく美しく見えた」みたいな。そんな力を持った作品だから。

松尾:うわー、うれしいです!

野宮:大阪公演ではレミさんがゲストだったので、一緒に歌いました。

松尾:超幸せな一日でした! リハから楽しくて、ただでさえ隣に野宮さんがいるのに、カジヒデキさんもいらして、私のスターたち大集合!! でした(笑)。ライブではピチカート・ファイヴの「If I were a groupie」を一緒に歌わせていただきましたが…曲中に野宮さんと手をタッチして、ステージの端まで歩いて戻ってくる舞台演出をしたんです。普段のライブではなかなかできない、自分の好きなことができてすごくうれしかったです。いろんなご褒美があった一日でした。

野宮:ライブは楽しかったですね。「If I were a groupie」は、数年前のバレンタインライブでレミさんとご一緒した時にも歌ったんです。その時に、レミさんの好きなピチカート・ファイヴの曲は何かと質問したら、「If I were a groupie」。意外なところに来るなと(笑)。

この曲はナレーションと歌で構成されていて、ピチカート・ファイヴではライブでの再現が不可能な曲だったんです。かつて、グルーピーだった女の子が、歳をとってから当時を振り返るセリフがずっと入ってるんです。ピチカート・ファイヴではできなかったけど、実際の年齢的にもかつてグルーピーだった女性のナレーションを私がやって、ピチカート・ファイヴで私が歌ったパートをレミさんが歌えば再現できるなと思ったんですね。

よくよく考えたら、今のレミさんが、私がピチカート・ファイヴに入った年齢ぐらいなので…いろんなことを思って感慨深かったです。本番もとても良かったので、またやりたいなと思っています。

松尾:ぜひ、やりたいです!(笑)

野宮:それと、大阪では時間的にできなかったけど、ふたりで古着屋さん巡りをしたいですね。

松尾:したいです! 私としては一緒に歌いたいピチカート・ファイヴの曲がまだいっぱいあるので、またライブをご一緒できたらうれしいです。あと普通にプライベートで、野宮さんのおしゃれや音楽とかいろんなお話をいっぱい聞きたいです。

■いつでもスタンバイOKにしておくことがこの先必要

──最後に、デビュー40周年を超えた先の野宮さんの展望をうかがいたいです。

野宮:以前は「還暦まで歌います」って宣言していましたが…まだ大丈夫だなと思って、今も歌っています(笑)。この間の40周年ライブでも「古希まで歌います」って言っちゃったんですよ。ですけど、これから先は未知の世界じゃないですか。1日1日を大切に、楽しく自由に歌ってを積み重ねて、気づいたら古希だったっていうのが理想ですね。よく考えたら、40年ずっとそうやって来たので(笑)。あとはレミさんみたいな若い才能のある方に手伝ってもらって、「老いては子に従え」じゃないですけど、楽しくやりたいです。

──ポール・マッカートニーもザ・ローリング・ストーンズも今ツアーやってますからね。

野宮:そう、元気な大先輩がいっぱいいますからね。ただ、私はミニスカートとハイヒールでステージに立ちたいので、そのためにもハイヒール筋を鍛えないといけません(笑)。そうしたことをコツコツやって、いつでもスタンバイOKにしておくことがこの先必要ですよね。それが未来を決めていくと思っているので(笑)。

松尾:野宮さんの言葉を胸の中に刻み込みました。ハイヒール筋を鍛えるってすごいですよ。こういう野宮さんの美意識の話を聞くのが楽しいですし、自分も頑張ろうって思います。また野宮さんに曲を書けたらうれしいです!

野宮:ぜひお願いします!


リリース情報

CD:2022.04.20 ON SALE
アナログ/配信:2022.05.25 ON SALE
ALBUM『New Beautiful』


プロフィール

野宮真貴

ノミヤマキ/ミュージシャン、エッセイスト。1981年、アルバム『ピンクの心』でデビュー。その後ポータブル・ロックでのバンド活動を経て、80年代ニューウェイヴシーンを代表する存在に。ピチカート・ファイヴ3代目ボーカリストとして、90年代に一世を風靡した“渋谷系”ムーブメントを国内外で巻き起こし、音楽・ファッションアイコンとなる。2001年からソロアーティストとして活動。2021年にはデビュー40周年を迎え、現在、音楽、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍している。

野宮真貴 OFFICIAL SITE
http://www.missmakinomiya.com/

GLIM SPANKY

マツオレミ/亀本寛貴と共に、GLIM SPANKYとして活動中。同ユニットでは、ボーカル、ギター、作詞作曲、アートデザインを行っている。現在、サントリーウイスキー『角瓶』新TVCM楽曲「ウイスキーが、お好きでしょ」を担当。今年8月3日には、GLIM SPANKY約2年ぶりのニューアルバム『Into The Time Hole』を発売。さらに11月から10都市11公演となる全国ツアー『Into The Time Hole Tour 2022』を開催する。

GLIM SPANKY
http://www.glimspanky.com/