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2022.04.19

小林私、建て替え工事期間中のGinza Sony Parkからライブパフォーマンスを配信

■小林私が唯一無二の個性を感じさせるライブパフォーマンスを披露

シンガーソングライターの小林私が、『Park Live』に出演。4月16日21時より、Ginza Sony ParkのYouTube Liveにて生配信された。

『Park Live』は、2024年の完成を目指して現在建て替え工事中の、Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)を舞台にUpcomingなアーティストの実験的なライブパフォーマンスを届ける配信ライブシリーズ。衣装やカメラワークにも拘った、普段の配信とは異なる小林私の世界観溢れるライブ本番の様子は、Sony Park公式YouTubeチャンネルのアーカイブから視聴できる。

このたび、オフィシャルレポートが到着したのでご紹介しよう。

地下駐車場に隣接した空間の、剥き出しの配管と真っ白な背景。廃墟のようであるが、ライトで照らし出せばSFチックな近未来空間にもなっていく。建て替え工事中のGinza Sony Parkはそんなところだった。黒い背景のライブハウス無観客配信よりは断然演出のしがいがある。ただし、本当に剥き出しの空間だから、ただボーッと立っていては何も始まらない。要は、いかにこれが派手なステージであるかを見立てる能力。アーティストに求められるのはそこである。

YouTube配信から注目を集めたシンガー小林私。普段は自宅から普段着で届ける即興の弾き語り。オリジナル曲もあればカバーもあり、とりとめのないお喋りが続く日もある。配信に関しては慣れたものだろうが、こういう特別空間にポンと置かれた時に彼はどうなるのか。新曲「biscuit」から始まって即座にわかったのは、この人はスターになる、ということだった。

自分の意思に関係なく持っていかれる感じ。あるいは、ドラマティックな小林劇場に否が応でも引き込まれていく体験。生で見る小林私は、昭和歌謡の匂いをまとったメロディの上に矢継ぎ早な言葉を乗せ、波瀾万丈のスリルを作り上げていく圧倒的なスター歌手であった。随所に差し込まれる低音のガナリ声と、その直後に生まれるファルセットの対比もエロティックだし、後半の転調はドラマをさらに盛り上げる効果を生む。高波に飲まれるような3分間。一曲だけで、Ginza Sony Parkはすっかり彼専用の特設ステージに変わっていた。

続く「HEALTHY」では、光の十字が小林の顔を斜めに切り取っていく美しいライティング。深い陰影が小林の端正な顔を引き立てる。この日のためのグリーンのスーツもよく映えている。ただ、一番印象的だったのは本人の圧倒的な声量だ。自宅配信では気づきにくいが、マイクとの距離がこれだけ離れてもここまで出るのかと驚く声量を、彼は巧みにコントロールしている。後半のタメ、繰り返す〈HEALTHY〉の言い回しに宿るケレン味など、役者魂すら感じる唱法だ。ギターひとつ、歌声ひとつ。裸同然のスタイルで、ここまで派手にかぶく才能には近年お目にかかったことがない。

しかしMCが始まれば小林は一瞬で素に戻る。とりとめなく軽口を叩き、リアルタイム・チャットの声にはスマホ片手にすぐ反応。呆れるほどに頭と口の回るYouTuberの姿だ。このギャップはなんだろうかと思う。SF空間に舞い降りたスターのごとくに振る舞いながら、彼はトークでそれを打破していく。「特殊な空間」のためのカメラワークや演出を、トークによって「配信なんて俺や視聴者とって当たり前」と定義し直していく行為。ここに世代の常識があるのだろう。新たな世代によって定義されていく配信ライブのかたちを感じた。

カーマインに染まった空間でわざと品なくガナってみせるロカビリー風の「日暮れは窓辺に」。ゆったりとした一語一句が染み入るバラード「スープが冷めても」。曲調は違っても小林のオーラは変わらない。何より凄いのは歌から放たれる毒気だ。オーガニックな有機物ではない、危険な毒だとわかっているのに、自分からそこに当たりに行きたくなる色っぽさ。ギターの弦を叩きつけハードに歌い上げる「目下II」が終わる頃には「あっちぃ」の一言。スタート当初は「さみー」から始まったライブだったが、たった一人のめくるめく歌声によって現場の温度は確かに上昇していた。

ラストは逆光に照らされての「共犯」。卑屈な本音を畳み掛ける内容で、正論ばかり主張しない後ろ暗さも小林にはよく似合っている。健全で安心なものが、1+1=2のように正しいとは限らないから音楽は面白い。いびつでアンバランスゆえに惹かれることもある。歌とMC、ルックスと振る舞いのずれ。

それら強烈なギャップも込みで今の小林私は存在している。黙っていればいくらでもクールに魅せることができた今回の舞台だが、その枠におとなしく収まるタマではないところが、このスター歌手の一番面白いところなのだろう。

TEXT BY 石井恵梨子


Park Live OFFICIAL SITE
https://www.sonypark.com/parklive/

小林私 OFFICIAL SITE
https://kobayashiwatashi.com/