■「どう聴いてもらってもいいので、聴いてくれた誰かひとりでも、その人の助けになれたらいいなと思っています」(THE RAMPAGE・川村壱馬)
THE RAMPAGEの川村壱馬が、アーティスト“零”(読み:レイ)として、1月29日に1stシングル「Delete / Enter」をリリースした。
アーティスト名義の“零”には、川村“壱”馬が、アーティストとして“零”から再出発するという想いが込められており、過去の経験を尊重しながらもあらたなフィールドへ挑戦していくことへの決意と未来への可能性、さらには川村壱馬/零が持つ神秘的な美しさを表すにふさわしい名義となっている。
そんな川村壱馬改め零が、ソロデビューの感想、1stシングルの作成秘話、そして今後について語ったインタビューが公開された。
■零 インタビュー
Q. ソロでデビューすると聞いたときの感想を教えてください。
聞いたときという感じではなくて。というのも、ソロでやることになったもともとの発端は自分なんですよ。アイデア含めて、HIROさんには以前から相談していたんです。それが実現に向けて動き出したのは、2023年の秋。僕がずっと走り続けてきて疲れてしまい、一瞬活動を止めた時期があったんです。その後、THE RAMPAGEの活動でタイに行ったのですが、そのときHIROさんのお気遣いで、ふたりで食事をさせてもらいました。自然とソロの話になって、自分が生きているなかで何に憤りを感じているかとか、その想いを表現するためにも自分にはラップが合っていると思う、という話をさせてもらいました。ラップって、強い言葉で想いを伝えるじゃないですか。僕はその手法で世の中を変えたいと思った。そういうことをHIROさんに改めて話させてもらって。HIROさんも考えていてくださったようで、そこでガッチリハマって、具体的に動き出しました。Q. ソロをやりたいというのは、いつ頃から考えていたことなのでしょうか?
デビュー前からです。Q. その頃から、ソロでやるならラッパーで、ということも?
ラップは好きでしたが、当時はただ“ソロで立つ”ということしかイメージできていなくて。ソロとしてのアーティスト像は、グループの活動の中で見つけていけたらと思っていました。Q. 実際にTHE RAMPAGEとして活動をするなかで、自分にラップが合っているなと感じたり、ラッパーとして想いを伝えていきたいと思ったりするようになったのは、どのようなタイミングですか?
デビュー曲の「Lightning」でラップをしているのですが、その頃から感じてはいました。あとは、山彰さん(山本彰吾)がヒップホップに詳しくて、いろいろヒップホップについて教えてもらっていくうちに。それまでは漠然とラップしか知らなかったのですが、ヒップホップのカルチャーを知るために映画を観たり、国内外のラッパーをディグったりして、いろいろ調べていくうちに“ヒップホップってやべえわ”と気づきました。ラッパーって、飾っていなくてすごくリアルで。僕自身もそういうアーティストでありたいと。もちろん表現として、外見を着飾ったりファンタジックにしたりすることもありますけど、歌詞も含めて、言っていることや生き方は全部リアルでいたいと思いました。そう思ってからは、THE RAMPAGEのレコーディングでもいろいろなラップを試してみるようになって。そうやってどんどんラップやヒップホップへの理解と技術を深めていきました。
Q. そうしてソロアーティスト・零としてのデビューシングル「Delete / Enter」が完成しました。「Delete」は作詞作曲をご自身で手掛けられていますね。
はい。THE RAMPAGEでもラップパートのリリックを書くみたいなことはやってきましたが、今回は1曲まるまるだったのでかなり大変でした。締め切りもかなり延ばしてもらって、限界まで待ってもらいました。それくらい、ソロとして最初の作品だし、妥協したくなかった。伝えたいことがたくさんありすぎるからこそ余計に、最初に何を言うかは重要だなと思って。Q. 伝えたいことがたくさんあるなかから、“お前らも生きる未来「良くしたい」とは思わないもんか?”というメッセージを込めた楽曲にしたのはどうしてだったのでしょうか?
そのテーマを決めるのにすら、本当に時間がかかったんですけど…。一発目だからこそ、自分が零としてこの先どのようなことを伝えていきたいのか、どういう活動理念でやっていきたいのかを証明したいと思った。そのときにいちばん伝えたいことが、世の中への想いでした。Q. では、そのテーマが決まってからはスムーズに?
いや…。そこからも時間はかかりました。Q. THE RAMPAGEでもラップは書いてきたと思いますが、そこまで大変だったのはどうしてだったのでしょうか?
先に曲のベースができたのですが、その曲があまりにもカッコ良くて。そこに自分のラップが乗ったときにカッコよくなるのか? というプレッシャーが大きかった。その時点で完成されすぎていて。Q. あまりにもカッコ良くなったというトラックは零さんとJUGEMさんによる共同制作。トラック作りはどのように進めていったのでしょうか?
最初にJUGEMくんに世界観を伝えて曲のベースを作ってもらって、そこに乗せるメロディをふたりで考えたという感じです。でも、最初に伝えた世界観も、曲調は様々で。ゴリゴリのヒップホップから、神秘的なバラードまで、とにかく零でやりたいことや伝えたいことに合うリファレンスを何十曲も投げて、そこからJUGEMくんがいくつかデモを作ってくれて。その中でも特に良かったのがこの楽曲です。曲が短いのもあえてなんです。Q. 今の時代の音楽の聴かれ方を意識しましたか?
そうです。でも流行っているからというよりは、そうしたほうが伝わりやすいかなと思ったので。あと、自分自身も長い曲は“長ったるいな”と思うから。Aメロ、Bメロ、サビがあって、Dメロで一度下がって…みたいなJ-POP王道の構成はもういいやと思って。それよりも、ずっと平坦でサビがあるみたいな、洋楽っぽい曲にしたいなって。Q. とにかく大変だった曲作りを経て「Delete」という楽曲が完成しましたが、今はどのような心境ですか?
安心しました。マジで、安心しました…。
Q. もうひとつの表題曲「Enter」は、TVアニメ『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』のオープニング主題歌。担当することを聞いたときの心境を教えてください。
めちゃくちゃうれしかったです。アニメは自分の好きなものだし、アニメ主題歌って自分に合っているなと思いました。普通のラッパーって、たぶんそんなにアニメの主題歌ってやらないと思うのですが、僕はアニメがルーツとしてある。僕だからできることなのかなって。アニメの主題歌であってもフェイクを歌うつもりはないし、アニメに関わるとか自分の好きなことに関わらせてもらえるということは大事にしていきたいと思っていて。それを提示する最高のタイミングになったなと思いました。Q. ずっとアニメやゲームがお好きだと公言されてきているので、零さんがアニメの主題歌を担当することは、受け取るこちらとしても納得でした。一方で、アニメがお好きだからこそ、アニメ主題歌を手掛けるということに対してプレッシャーはなかったですか?
プレッシャーはなかったかもしれないです。アニメの主題歌って、刺さらないときは全然刺さらないし、でも心に残るときは残る。シンプルにそういうものだと思っているから。個人的にアニメの主題歌は、その曲をあとから聴いて、当時のことを思い出すくらいでいいのかなと思っています。作品に対してリスペクトを持って、作品に寄り添う。それ以外に求めるものはないのかなって。『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』は、作品自体がすごく面白いからこそ、曲は本当に寄り添うだけでいいなと。Q. 「Enter」は書き下ろしですが、『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』という作品のどのようなところからインスピレーションを受けて作り始めたのでしょうか?
まずは原作のアニメ化される部分を繰り返し読みました。そして、主人公のユークと、彼が所属するパーティ“クローバー”のメンバーが感じていることや、関係値を描きつつ、前向きな曲にしたいなと思いました。Q. 前向きにしたいと思ったのはどうしてですか?
作品自体にネガティブ要素があまりなかったというか…。少なくとも自分が実際に読んだときに、ネガティブなものをあまり感じなくて、気持ちが良かったんです。そういう、自分が作品に触れた印象も反映されたのかなと思います。Q. 作詞はいかがでしたか?
タイアップということで、割り切る部分も出てくるんだろうなと思っていたのですが、実際に書いてみると自分の感じていることからほとんど外れなくて。ただ、作品に絶対に寄り添いたいと思っていたので、例えば“踊る”という字を、原作で使われている“躍る”にしたり、セリフから取ってきたり、クローバーだから“四つ葉”という言葉を入れたり。あと、始まりの英語詞の部分では、“光の中をひとりで歩くよりも、暗闇をみんなで歩いたほうがいい”ということを歌っているのですが、それはまさにユークとクローバーメンバーのこと。そのフレーズ自体は原作には出てこないのですが、彼らのことを考えていたら自然と出てきたフレーズ。そういうことは要所要所に入れています。Q. 書き下ろしということで、「Delete」とは全然作り方が違ったと思うのですが、書き下ろし楽曲を作ることは面白かったですか?
面白かったです。普段はしない作品の楽しみ方もできたし。しかも、作品サイドのスタッフさんから「テレビで使われるのは1番だけだから、2番以降は好きにしてください」と言われましたが、どうしてもそういう気持ちになれなくて。Q. 1番は完全に作品の気持ちで作ったからですか?
はい。だから別物として考えることがどうしてもできなくて。2番のアプローチこそラップにしましたが、リリックは作品へのリスペクトを最大に示したいと思って、そのまま作品に寄り添ったものにしました。とはいえ、例えば“どんなマイナスさえもプラスに変え上げてく階層”は、ユークたちがランクを上げていくことを表現していますけど、自分にも当てはまるなと思って採用したし、そうやってうまく自分の気持ちも当てはめながら作れたかなと思います。Q. 曲調やタイトル含めて「Delete」と「Enter」で正反対なのも面白いですよね。
そうなんです。これも面白い話で。タイトルははじめ、対照的なものにするつもりはなかったんです。Q. そうだったんですか!?
はい。「Enter」のタイトルは先に決まっていて。「Delete」は曲ができ上がって、タイトルをどうしようかと話していたときに、JUGEMくんがふと「Delete」とかいいんじゃないですかって言ってくれたんです。あれは神でした。“何かを消す”って、再構築していく手前の段階なわけで。断捨離などもそうですが、何かを捨てるから何かが入ってくる。この曲は、この世を再構築するくらいの気持ちで書いたので、ちょうどいいなって。しかも、もう一曲は「Enter」だから、その感じも面白いなと思ってこのタイトルにしました。
Q. そんな零らしい2曲が入ったシングルが完成しましたが、今作はご自身にとってどのような一枚になりましたか?
もう明日にでも発売してほしいです(笑)。それくらい、この上なく満足しています。伝えたいことはこれ以外にもたくさんありますが、まずは第1弾として、自分の中でやりたいことが最大限にできたなという気持ちで、ホッとしています。音楽の聴き方は人それぞれで、リリックに注目する人もいれば、サウンドの聴き心地優先で聴く人もいると思います。どう聴いてもらってもいいので、聴いてくれた誰かひとりでも、その人の助けになれたらいいなと思っています。もちろん全員に届くとは思ってはいないです。でも届いた人には、これを受け取ったことであらたな価値観やあらたな考えが生まれてくれたらなと思います。Q. 零としては、今後も聴く人にあらたな考えや価値観が生まれるような音楽を届けていきたいですか?
まさしくそうですね。自分の苦しみを歌って同情を買うみたいなことはしたくないのですが、もし過去の自分と同じような悩みを持っている人の助けになるんだったら、そういうトライもいいかなと思いつつ…。いちばんは、今の世の中に対する疑問や憤りなどをどんどん音楽にしていきたい。あとは愛情も、自分なりにリリックに落とし込んでいきたいなとは思っています。とにかくベースにあるのは、人の心に届くようにリアルなことを歌っていくということ。ソロでは今後も、自分が歌いたいことしか歌いません。
TEXT BY 小林千絵
PHOTO BY 塩崎亨 ※インタビュー写真
リリース情報
2025.01.29 ON SALE
SINGLE「Delete / Enter」
TVアニメ『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』番組サイト
https://arank-party-ridatsu-official.com
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