TK from 凛として時雨が、5年ぶりとなる5thオリジナルアルバム『Whose Blue』を4月16日にリリース。このたび、TK自身が写真集の制作にまつわる思い出や、音楽と写真という異なる表現手法に対する感触などを語るオフィシャルインタビューが到着した。
アルバム『Whose Blue』の通常盤には、B’zの稲葉浩志とのコラボ楽曲「Scratch」、DrumsをTatsuya(Crossfaith)、Bassを中尾憲太郎が務める新録「first death (Devils from Chainsaw edition)」、ヨルシカのsuisをゲストボーカルに迎えた「Synchrome」、ケンモチヒデフミがプログラミングで参加した「Microwaver」、ヒット作の「クジャクジャノマアムアイア」「誰我為」など、全12曲を収録。本作に収められている豪華かつ多彩な楽曲群のタイトルを挙げるだけでも、前作から5年という月日の充実ぶりがうかがえる(通常盤初回仕様はTKトレーディングカード003を封入)。
また、本作には完全生産限定盤も用意されており、こちらは2CD+BD+写真集を三方背ケースでパッケージングしたスペシャルアイテム。完全生産限定盤のみの内容となるDisc2は、「brain films」と題してTKが制作してきたアンビエントミュージック11曲が収められている。Blu-rayのDisc3には、丹修一監督によるロンドンでのレコーディング風景、TKの原点を探るイギリスでのショートトリップ、TKがアイスランドで自ら撮影した映像を交えたドキュメントコラージュに「orbit」のMVが一体となった『Still in orbit directed by Shuichi Tan』、そして「As long as I love」「first death」「誰我為」「UN-APEX」のMVなどの映像作品が収録されている。さらに、写真集は100ページにおよぶ大ボリュームで、TK自身がアイスランドで撮影した作品で構成。TKが内包する独自の世界観を写真という切り口で表現した内容となっている。
■あの“果て”に向かったアイスランドへの旅
――写真集の撮影地はアイスランドだとお聞きしました。アイスランドという土地に惹かれた理由は何だったんでしょう?
TK:以前に『film A moment』(※)を制作したときにスコットランドとアイルランドを回ったんですが、あの“果て”を見てみたいという気持ちがありました。『film A moment』のあと、スコットランドとアイルランドにはよく行くようになったんですが、さらに北にあるアイスランドがあり、そこにも生活している人々がいる。アイスランドには何があるんだろうという探し求めるような気持ちで“果て”に向かうことにしました。
※『film A moment』…スコットランドとアイルランドでの一人旅を経て、TKが撮影した写真と8mm映像を「写真+旅日記」「映像+音楽」という2種類の表現でまとめた作品。2011年リリース。
――実際に“果て”に降り立ってみて、アイスランドにはどんな印象を抱きましたか?
TK:人間という存在が自然の中で生かされている、という時間軸をリアルに感じられました。日本で生活していると、あたかも自分が何かを作り出しているような錯覚に陥ってしまう気がします。街を作り出して、社会を作り出して、それができるのが人間なんだ、と。でも、アイスランドで感じたのは、街とか社会とか、そういう表層ではなかった。もっと根っこのところには地球というものがあって、自分は地球の上にいるんだという重みも感じることができた。アイスランドでの撮影期間は10日間ほどでほんの少しの間でしたが、それでも“剥き出し”の価値観みたいなものを垣間見ることができた感じがします。現地で得たそういう感触は、僕が撮影した写真からも伝わる気がします。あらかじめテーマを設定していたわけではありませんが、写真集としてまとめてみると「自分探し」や「地球探し」のような写真になっているというか。大自然があって、剥き出しの生命が足元から沸き立つかのように存在していて、そこにもちゃんと人がいる。コミュニティがあって、人々の生活があって、だけど僕らが日本で過ごしているような日常とはまったく違う生活。人間と動物、人間と自然が共存するアイスランドの生活のほうが僕らの日常よりもリアルなのかもしれない。そんなことも思いました。
■儚く刹那的、それが写真という表現
――かなり豪華な装丁になっていますが、写真集の制作期間はどれくらいだったんでしょう?
TK:撮影したのは一昨年だから2023年ですね。もっと早い時期に写真集としてまとめることも検討していましたが、いろいろなタイミングが重なって今回のリリースになりました。製本のサンプルは4回ほど作っていただきましたが、製本よりも写真のノイズや解像度が気になってサンプルを出し直していただくことが多かったです。
――写真の出方というと?
TK:“自分の見た景色”にどれだけ近づけるかどうか、です。写真のレタッチも僕自身でやっているんですが、レタッチのときにも重視しているのは自分の見た景色に近づけること。自分の見た色彩そのものを再現するというよりも、自分がそのときのインパクトや感覚がどんなものだったか、それも含めて写真に表われていることが大事だと思っています。景色をそのまま切り取るのではないし、自分の見た景色を忠実に再現するだけでもないんです。自分で見た景色はこうだったよなっていうのが僕の中に確実にあるんだけど、プリントしてみると何かが少し違う。もっと粗く見えていたとか、ノイズ感を多めにしてプリントしたら抽象的すぎるとか、あるいは「この景色はこんな色で見えてほしい」とか。ここは本当に微妙な部分で、写真そのものが激変するような作業ではないけど、サンプルを出し直していただきながら試行錯誤しました。あと、一昨年に撮影した写真を少し時間を置いて見直したことによって、そのときに感じたものを掴みやすくなったかもしれない。撮影した直後だと肉眼で見た景色が自分の中に強く残りすぎているというか。日本に戻って元の生活で過ごしたことで、違う感じ方や違う視点であらためて写真を見直すことができました。自分で撮った写真なのに「こんな場所に自分は立っていたっけ」と感じるときもあって、でもこの感覚は誰もが持っているとも思うんです。儚さというか刹那的というか、写真という表現にはそういうものが含まれている。一枚の写真から独特な寂しさを受けるときもあるし、自分が撮った写真を見て感動するときもある。今回、アイスランドで撮った写真を時間をおいて見直して、あのときの自分を今の自分が覗いているような感じがしました。
■「あのときの一瞬が今の自分にどう映るのか」
――今回の写真集だけでなく、以前から写真による表現を作品としてリリースされてきました。音楽と写真の共通点など両者について感じていることを教えてください。
TK:制作していく過程で似ていると感じることは多いです。自分の脳内にある音、自分の記憶にある光景、それを作品として残しておく。写真で言うと、自分が見た光景があって、撮ったあとでレタッチ中にPCで見ている写真があって、「もう少しこんな色だった」っていう差を埋めるためにレタッチしたりプリントを出し直して色を調整したりする。このときに、僕はその光景を見た本人だからある程度は脳内補正ができるけど、その写真を初めて見る人の目にはもしかしたら僕が見たものと違うように映っているかもしれない。その差分を埋めていく作業というとことは音楽も写真もまったく同じです。つまり「僕の脳内にあるものをちゃんと伝えたい」ということなんですけど単に「共有したい」というのとはちょっと違うのかもしれないです。自分の音や自分の色として伝わってほしいのであって、それは「これ、いいよね?」っていう感覚とは違う。いいと思われるかどうか、いい写真かどうか、というより僕が目にした、手にした衝撃みたいなものを遺しておきたい。そういう意味では奥底にある自分自身との共有を見てもらってるのかもしれないです(笑)。
――TKさんはいつもカメラを持ち歩いているようなイメージがあるんですが、写真という表現に特別な思い入れがあるんでしょうか?
TK:自分で写真を撮ることに強い思い入れがあるのか、それは僕自身でもわからないんですよね。「なんで曲を出したんですか?」「曲が出来たので」っていうくらいの感覚で写真を撮っている。自分の感じたものを感じていた形にしてアウトプットする。その手段が音楽だったり写真だったり。
――先ほど音楽と写真に共通する部分について話していただきましたが、逆に写真だけの良さみたいなものはありますか?
TK:『Whose Blue』のレコーディングでイギリスに行って、日本に帰ってきて数日後に345(読み:みよこ)の弾き語りライブがあったんです。そのゲストでandropの内澤崇仁くんが来てくれていて、そこへ遊びに行ってリハーサルだけ写真を撮ったんですが、もうそれだけで楽しくて。だから写真を撮る喜びって、海外に行くとか写真集を作るとかそういうことだけではない。345のリハーサルに遊びに行って内澤くんと過ごした楽しい時間、それがシャッターを切った瞬間に写真として残って、そのあとに写真というものが残る。あのときに自分が撮ったあの一瞬がどんな写真になっているのか、そのワクワク感は音楽では味わえない感覚。実際の瞬間よりも儚かったり、悲しかったり、楽しかったり、何100分の1秒の中に見えなかったものが写ったりする。どういうものを作り出せるかっていうワクワク感は音楽にもあるけど、「あのときの一瞬が今の自分にどう映るのか」っていう楽しみや感動は写真でしか得られない喜びだと思います。
――音楽と写真による作品として、ファンの方々は『film A moment』の写真集を思い浮かべるのではないかと思います。今回の『Whose Blue』はその進化形?
TK:進化というより『film A moment』とはまた違う楽しみ方をしていただける。それが『Whose Blue』なのかなと感じています。『film A moment』の写真集は「写真+旅日記」という構成で、写真とテキストがクロスオーバーするような作り。それに対して今回の『Whose Blue』の写真集はすべて写真のみで構成し、より深く没入して写真による表現を味わっていただける形になっていると思います。そして「写真を見ながら音楽を聴いてもらうのはどうだろう」という発想から、元々は作る予定のなかったインスト盤のDisc2を制作しました。Disc2を聴きながら写真集を見てほしいという気持ちで作ったので、そんな楽しみ方をしていただけたらなと思っています。
INTERVIEW & TEXT BY 山岸南美
PHOTO BY 石川浩章
Hair & Make up:Yoko Fuseya (ESPER)
リリース情報
2025.04.16 ON SALE
ALBUM『Whose Blue』
<収録内容>
[Disc 1]
01 first death(Devils from Chainsaw edition)
02 Synchrome
03 誰我為
04 クジャクジャノマアムアイア
05 UN-APEX
06 orbit
07 GRANT
08 Scratch
09 Microwaver
10 musique
11 Whose World? Whose Blue?
12 ephemeral mist
[Disc 2]
01 introduction
02 planet triangle
03 toiki -prologue-
04 whisper -epilogue-
05 Secret Sense
06 Acoustic Installation
07 pop eye
08 5lies
09 snow flurry
10 kalappo
11 like A moment
[Disc 3]
<Documentary>
Still in orbit directed by Shuichi Tan
<Music Video>
01 As long as I love
02 first death
03 誰我為
04 UN-APEX
※Disc2/3は完全生産限定盤のみ
ライブ情報
『TK from 凛として時雨 “Whose Blue Tour 2025″』
05/17(土)北海道・小樽GOLDSTONE
05/23(金)大阪・Zepp Osaka Bayside
05/24(土)広島・広島CLUB QUATTRO
05/30(金)福岡・Zepp Fukuoka Open
06/06(金)東京・Zepp DiverCity Open
06/13(金)愛知・Zepp Nagoya Open
06/15(日)石川・金沢EIGHT HALL
06/20(金)宮城・仙台Rensa Open
06/27(金)東京・TOKYO DOME CITY HALL
TK from 凛として時雨 OFFICIAL SITE
https://tkofficial.jp/