日本が誇る名曲を再構築する「リバイバル」音楽プロジェクト『Newtro』(ニュートロ)の最新楽曲「渋谷で5時 × evening cinema feat.cinnamons」が8月29日に公開。
このたび、evening cinemaの原田夏樹(Vo、Key、Composer)と、cinnamonsの鈴木まりこ(Vo)、青山慎司(Gu)が、選曲理由やアレンジについて語った「Newtro DIG」アーティストインタビューが公開された。
■鈴木雅之と菊池桃子による男女デュエットの名曲を再構築
1993年に発売された、鈴木雅之と菊池桃子による男女デュエットの名曲「渋谷で5時」。今回この曲をカバーしたのは、楽曲「summertime」によって東南アジアを中心にバイラルヒットを記録し、令和シティポップ・ムーブメントの象徴としても注目を集めたevening cinemaとcinnamonsの2組。
カバーアレンジを終えて改めて感じた原曲への想いに迫ったインタビュー、ぜひ映像とあわせてチェックしてみよう。
■「Newtro DIG」アーティストインタビュー
Q:evening cinemaとcinnamonsのタッグで、今回は『Newtro』で名曲のカバーという形で一緒に参加しましたが、いかがでしたか?
原田:そうですね。特にアレンジについてなんですけど、これまでも何回かカバーの曲をやらせていただいたことはあるんですが、あまりかけ離れないようにというか、ただのコピーにはならないようにというか、その塩梅みたいなのは一番気を使いました。
青山:素直に嬉しかったですね。また、原田くんと一緒に音楽が作れるというところで嬉しかった。めっちゃ喜んでたよね?
鈴木:喜びましたね。とりあえず、原田くんの思っているものを再現できるように頑張るというか、歌いました。
原田:まぁ、僕の曲じゃないけどね! 笑
青山:確かに、その体で話しちゃってたね!
Q:鈴木雅之 & 菊池桃子の「渋谷で5時」(1993年)を選曲した理由とは?
原田:いくつか候補もいただいて絞り込んでいく中で、もちろんcinnamonsのお二人とも話し合って、これが一番想像しやすいというか、この2組でやるんだったらこれが一番いいのかなっていうような感じになりまして。
青山:昔の音楽番組で子供の頃に聴いた記憶と、あとスナックとかで最近若い子が歌っていて、若い子って言っても20代後半とか。それで再確認しました、いい曲だなっていうのは。
原田:なんでスナック事情に詳しいんですか? (笑)
Q:楽曲を制作していくなかでこだわったポイントを教えてください。
原田:もともと僕らが一緒にやった「summertime」っていう楽曲とかも、デュエットの方式をとっていて。せっかく一緒にやるからには、何か掛け合いじゃないけど、そういうのがあったらいいのかなっていう話をしました。
青山:ギターのイントロはめっちゃ時間かかりましたね。
ボトルネックはとんでもなく時間かかってたんですけど、原田くんからも「あれはあれでいきたい」と、いわゆるカバーしたいというところで、特にアレンジするわけでもなく、という感じで。歌とかはスムーズだったよね?
原田・鈴木:そうですね、サクサクと。
鈴木:私はそんなにブリッ子とか、可愛くなりすぎないようにっていうのは原田くんから言われていたし、そこはだいぶ意識して歌入れできたかと思います。
原田:僕の歌に関しては、もうちょっとサラッと歌うこともできたんですけど、オリジナルがやっぱりマーチンさん(鈴木雅之)の、あの主張が半端なく強い強力なボーカルで。これをカバーするならあのぐらいやってもあくどくないだろうっていうので、結構ベタっと、“俺、歌ってます!”みたいなのがニュアンスとして出ればいいかなと思ってやりました。
Q:楽曲をカバーすることで意識したことや難しかったこととは?
原田:そうですね。コード進行とかをどこまで変えるか、どこまで引き継ぐかっていうところですかね。サビが若干コード進行違うんですけど、ほぼ一緒みたいな。その落としどころをどうしようかなみたいな。やっぱり、どれだけ離れずに、でもどれだけ忠実かみたいな、その塩梅ですかね。こだわったし難しかったところでもあります。当時の録音状況であったりとか、参加ミュージシャンの方々であったりとか、一旦そういうのを作る前に全部リストで調べて、「ああ、この人だったら多分これの影響を受けてこういうフレーズにしてるんだろうな」とかっていうのは自分で当てを付けていって。それで僕らでカバーするなら、さすがに聴いていて明らかに「このフレーズって多分あの辺から影響を受けて作ってるな」っていうのは、自分なりに当てが付けられたらそこは残しておきたい、という選別作業をするのが一番楽しくもあり、一番時間がかかるところでもありました。なので、そういうインプットを一通りやった後に、「じゃあ、いざ作り始めますか?」ってなってからは割とスッと行けました。
Q:今回カバーをして、改めて原曲「渋谷で5時」についてどんな楽曲だと感じましたか?
原田:やっぱり、自分でも改めて歌ってみて、歌唱の凄さというか。
今はパソコン1台で正確に音を修正できたり、音を録ったりできる時代なんですけど、Aメロとかで「ここどっちの音入ってんだろう?」みたいな音程を鈴木さんが歌われてるところがあって。でも多分あれは意図的に歌ってるんじゃないかなと思いながら、それを研究というほどじゃないですけど、考えてました。もちろん、原曲のアレンジも素晴らしいんですけど、やっぱり半端なく歌唱のニュアンスが素晴らしいなっていう感じでした、僕は。
青山:僕の印象としてはものすごくトレンディだなと。トレンディドラマ感ある歌詞設定であったり、売れっ子さんのお二人がデュエットする設定であったりだとか。ちょうど僕も90年代のトレンディドラマとかを見返したりしていた時期でもあったので、その時代の気持ちや曲を考慮してカバーできるのは、当時に入り込めた気がして凄く楽しかったです。その当時の男女ってこういう感じで落ち合ったりしていたのかな?とか、そういうのを考えるのが楽しかったです。「渋谷で5時」というワードが、やっぱり圧倒的なパンチ力を持っていて、当時はそのぐらいに仕事が終わってたのかな、とか色々考えたりしました。
鈴木:やっぱり歌詞がもう、本当に慎司(青山)が言っていたように、パンチラインがものすごく耳に残るし、やっぱり自分で歌詞を書く時になかなか思いつかないワードで、すごいなと。
青山:景気良いよなって思いますよね!
原田:なんか、同じ90年代でも僕の大好きな曲で「東京は夜の七時」(1993年にピチカート・ファイヴがリリース)っていう、ちょっとフレーズが似てる曲があるんですけど、対極に位置付けてて。同じ90年代で結構代表的な曲だけど、「渋谷で5時」は浮き足立っているハッピーな感情なんですけど、「東京は夜の七時」は“早くあなたに会いたいけど、多分来てくれない”っていう歌なんですよ。その辺とかも、90年代を肌で感じたわけではないけど、浮き足立つ一方で「果たしてこれがいつまで続くかな」といった感じもあったのかなと、思いを馳せてました。
青山:僕らはちょうど生まれた頃だけど、親からそういう話を聞いていたりだとか、その当時観ていたテレビにまだそういうトレンディな感じが残っていたりしたので入りやすかったです。でも僕たちの曲をネット世代や中高生が聴いた時に、曲としてどう聴こえるんだろうっていうのは楽しみですね。
原田:(歌詞の中に)「10分前、ちらちら見てる腕時計さ」も、今ならスマホを見るのが普通ですよね。僕は抵抗なく受け入れられるし「ソワソワしてるんだな」と読み解ける歌詞ですけど、これからこの曲に出会う人たちや、10代、あるいはもっと小さい子たちがあの歌詞を読んだ時に「これって何なの?」って思うのかなとか考えると、ワクワクします。
Q:楽曲「summertime」が東南アジアを中心にバイラルヒットを記録しましたが、制作する際に海外の方に聴かれることを意識していますか?
原田:もちろん最初から意識していたわけではないんですけど、やっぱり一度火がついてからは「海外の人も普通に日本の曲を聴いてくれるんだな」っていう意識で曲を作るようになりました。例えば「summertime」も全く英語を使ってないですけど、普通に口ずさんでくれているのを見ると、作り手は「やっぱり歌詞が英語の方がいいのかな」とか「サビ頭は英語の方がキャッチーで歌いやすい」とか考えがちだけど、必ずしもそうではないんだな、と考えるようになりました。
鈴木:「summertime」は海外の人から「この曲で日本語を勉強している」と言っていただけました。だから、この「渋谷で5時」はもっと日本語の勉強になりそうなワードがいっぱいあるので広がりそうだなと思います。
青山:当初は僕らも日本語コンプレックスがあって、歌詞がメロディやリズムに乗せづらいと感じていたんですけど、「summertime」のヒットや昨今のアニソンの世界的ヒットを見て、日本語特有の響きは活かしていいんだと割り切れるようになりました。原田くんも言っていたように、日本語として聴いてくれるし、世界の人もそういう耳になってるんだなと思います。だから今は「言葉が乗せにくい」とかあんまり気にせずに作れるようになった。何かもう日本のJ-POPでいいや、っていう気持ちですね。
■インタビュー映像
■「渋谷で5時 × evening cinema feat.cinnamons」
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