THE F1RST TIMES

REPORT

2021.08.14

CHEMISTRY、yamaらが、一発撮りライブに挑んだ『THE FIRST TAKE FES』第3弾レポート

静謐な空間で奏でられるアーティストたちのリアルな“THE FIRST TAKE”のドキュメント。YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』は、もはや、音楽シーンにおける要注目かつ最重要なムーブメントのひとつとなったと言っていいだろう。

アクチュアルかつチャレンジングなキャステイングと選曲によって独自のアーカイブを更新し続ける『THE FIRST TAKE』のトピックは、今や地上波をはじめ様々なニュースや音楽プログラムで日々ピックアップされる存在となった。

一発撮りの緊張感をフェス形式でオーディエンスに届ける『THE FIRST TAKE FES』。『THE FIRST TAKE』から産まれた音楽を届ける配信専門レーベル『THE FIRST TAKE MUSIC』。あらたな才能の発掘のためのオーディションプログラム『THE FIRST TAKE STAGE』。これらすべてと音楽シーンを繋ぐプラットフォーム機能としてのWEBメディア『THE FIRST TIMES』。『THE FIRST TAKE』を起点とするダイアグラムは包括的なスケールへと成長し、なおも進化への気配を放っている。

こうした状況のなか、8月13日(金)に『THE FIRST TAKE FES』の第3回目となる『THE FIRST TAKE FES vol.3 supported by Xperia & 1000X Series』が開催された。今回、都内の某ライブハウスに用意されたシンプルなステージに登場したのは、BURNOUT SYNDROMES、梅田サイファー、yama、CHEMISTRYの4組である。彼らが見せた“THE FIRST TAKE”とは? 待望の3回目で『THE FIRST TAKE FES』が見せたあらたな局面とは? その模様をレポートする。

INTERVIEW&TEXT BY 内田正樹

■一発撮りのライブが持つ“再現不可能”な芸術性。その極限までの純化


Stage no.1
BURNOUT SYNDROMES
M1.PHOENIX

トップバッターは“青春文學ロックバンド”を標榜するBURNOUT SYNDROMES。2016年にメジャーデビューした、熊谷和海(Gu、Vo)、石川大裕(Ba、Cho)、廣瀬拓哉(Dr、Cho)による3ピースバンドである。

「(生の)ライブができない時代に、いちばん、ライブの緊張感を出しているのは、この『THE FIRST TAKE FES』なんじゃないかな」(熊谷)

そう話したあと、熊谷が高らかに歌い始めたのは「PHOENIX」。彼らの5thシングル(2020年2月発表)であり、人気アニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』のオープニングテーマとしても広く知られるナンバーだ。

未開の道を劈(つんざ)き、限界の先を目指す背中を押し上げるようなギター&ボーカル。正確かつ軽快なドラミング。ビートを弾きながら歌心のあるラインを轟かせるベース。3ピースバンドの魅力を体現したサウンドが、命を熱く燃やす青春のワンシーンを爽快に描き出していた。

演奏後、改めて緊張を口にする熊谷に、「今日の熊谷君はライブの最後の声を1曲目で出していた」と石川が応え、廣瀬も頷いた。不死鳥のハートを歌い、ひと時の爽風を巻き起こした3人は笑顔でステージを後にした。


Stage no.2
梅田サイファー
M1. 梅田ナイトフィーバー’19
M2. トラボルタカスタム feat. 鋼田テフロン

続いては、梅田サイファー。今回の彼らの出演に意表を突かれた想いのファンも多かったのではないだろうか。Creepy Nutsとして経験があるR-指定を除くメンバーは『THE FIRST TAKE』初トライだ。

2007年から大阪・梅田駅近くの歩道橋でラップスキルを磨くために発生したサイファー(※複数で輪になって行う即興ラップ)が出自の彼らには、固定メンバーや上下関係という概念がない。そんな梅田サイファーから今回は(ステージ左から)KZ、peko、KennyDoes、テークエム、R-指定、KPOERU、ふぁんく、KBDの8人のMCと、Cosaqu 、DJ SPI-KのふたりのDJが『THE FIRST TAKE FES』のステージにやってきた。8本のマイクによるサイファーも、ステージ上に総勢10名が上がるパフォーマンスも、『THE FIRST TAKE FES』史上、初の展開である。

ステージに上がり軽く身体をほぐすと、円陣を組んで「梅田サイファー、オー」と気合いの掛け声を放つ。口々に「かっちょいいー」とはにかみながら所定の位置へ。思い思いの軽いウォームアップとマイクチェックを済ませると、異口同音に「めっちゃ緊張する」と笑い合う。

ほどなくDJ SPI-Kのターンテーブルから放たれたのは、アルバム『トラボルタカスタム』(2019年9月発表)収録の「梅田ナイトフィーバー’19」。それぞれに異なる鮮烈な個性を持った8名のマイクが絶妙な間合いと呼吸でリレーを繰り広げる。生まれも育ちも異なる同時代を生きる集合体が、今日はミラーボール輝くフロアではなく、フラットなライトに照らされたステージでラップを繰り広げていく。最後はKennyDoesが一人ひとりの名前を呼んで「梅田! THE FIRST TAKE!!」のライミングでフィニッシュ。

「梅田の歩道橋から遊びに来させてもらいました。よかったら初めて観る人、お見知りおきを。いつも応援してくれてるみんな、今日も最高の時間にできたらと思います」とKZがオーディエンスへ語りかけて、M2の「トラボルタカスタム feat. 鋼田テフロン」へ。ドープなトラックの中、それぞれのラッパーのスタイルが発揮される。リリックどおり、“俺らマジで頑張る”、“遊ぶだけで進化する”という梅田サイファーの精神性とポテンシャルを宣誓する。

パフォーマンス後に各々が感想を語り合い笑いに包まれたMCも含めて、自由な梅田サイファー“らしさ”が貫かれたステージだった。


Stage no.3
yama
M1. 麻痺
M2. a.m.3:21

この日の3組目となったyamaの出演も、またある意味サプライズなキャスティングだった。ネット発の新世代シンガーであるyamaはパーソナルをいっさい明かさず、メディアへの出演も極めてレア。昨年12月と今年1月に公開された『THE FIRST TAKE』における「春を告げる」、「真っ白」(※いずれも9月1日リリースの1stフルアルバム『the meaning of life』に収録)のパフォーマンスも大きな話題を呼んだyamaの『THE FIRST TAKE FES』とくればどうしたって期待せずにはいられない。

キーボード、ウッドベース、カホンやシンバルなどの打楽器セット、エレキとアコースティックギターが置かれたステージに仮面を着けたyamaとメンバーが登場する。アコースティックなギターのストロークに乗って始まったのは「麻痺」。終盤に連れてキーボード、ベース、パーカッシブなリズムが徐々に合流し、すべてのアンサンブルでクライマックスへ。オリジナル音源とは大きく異なる『THE FIRST TAKE FES』のためのアレンジである。

パフォーマンスは少しの間を置いて、やはりこの日のためにアレンジされたジャジーなアンサンブルで「a.m.3:21」へ。それにしても「麻痺」でも感じられたが、本当にyamaのボーカル力が素晴らしい。ピッチの正確さ、リリックと呼応した声の表情、ファルセットボイス。その魅力のすべてに息を呑む。

「誰しもが抱えている孤独感とか葛藤に、少しでも寄り添えたらいいなと思って選曲しました」

この日の2曲を選曲した理由を語るとyamaは静かにステージを降りた。


Stage no.4
CHEMISTRY
M1. PIECES OF A DREAM
M2. Point of No Return

トリを飾るのは今年デビュー20周年イヤーを迎えたCHEMISTRY。ドラム、アップライトベース、キーボードという変則的な編成のサポートメンバーと共に堂珍嘉邦、川畑要がステージに登場する。軽いウォームアップのあとに鳴らされたのは「PIECES OF A DREAM」だ。2001年にリリースされた彼らの1stシングルにしてミリオンセラーを誇るレパートリーがアシッドジャズ調のアダルトなグルーヴで奏でられる。各々のヴァースの独唱を経て堂珍の高音に川畑の低音が交わるサビのハーモニーのクオリティは、言うまでもなく改めてCHEMISTRYというデュオの魅力と独自性を知らしめるのに十分すぎる心地よさだ。

「いいですね。初の『THE FIRST TAKE』。レアな環境ですね」(川畑)
「バンドのメンバーの皆さんも今日初めての組み合わせ。初めてだらけですね」(堂珍)

長年の関係性ならではのリラックスした会話の中にそこはかとない緊張感が漂う。そして「もう一曲、いっちゃいますか」という合図で始まったのは2001年の2ndシングル「Point of No Return」。ファンのみならず多くのリスナーに愛される、彼らの代名詞とも言える1st、2ndシングルの連続パフォーマンスだ。“夏草が流れてく”というリリックも今の季節との絶好のマッチングを彩り、シンプルなアンサンブルだからこそ、ふたりのボーカルの輪郭がより鮮明に描き出された垂涎のパフォーマンスだった。

「ものすごい緊張感。初めての経験ですね」(川畑)
「独特の雰囲気の真っ白な空間。楽しかった」(堂珍)

変わらぬフレッシュな魅力とベテランの貫禄があらたなフォーマットで表現された時間。10月から始まる『20th anniversary Tour 第三章「This is CHEMISTRY」』も楽しみになるパフォーマンスだった。


Afterword

終演後の4組に話を聞くと、思い思いの言葉が返ってきた。

BURNOUT SYNDROMES熊谷和海
「ライブの緊張感ってお客さんが(目の前に)いる/いないじゃないんだなって。一発撮りってドキュメンタリーですね。3人それぞれがカッコいい演奏を聴かせるという3ピースバンドの原点を『THE FIRST TAKE FES』に改めて教えてもらった気がします。
BURNOUT SYNDROMESの曲を応援歌として“いいね”と言ってもらえる機会が増えました。コロナ禍もあって、そういうふうに受け取ってもらえるタイミングが増えたのかもしれません。最新アルバムのタイトルは、『TOKYO』(2021年6月発表)。いずれはさらに海外へ進出していきたいと思います」

梅田サイファー:R-指定
「梅田のみんなとこうした変わったシチュエーションで演れることも珍しい。梅田サイファーは自分にとって、刺激も悔しさも、どの現場と比べてももっとも受ける場所。
僕がラップを始めた当時はただただ“ラップがしたい”という想いだったけど、コロナ禍に入って、自分たちの表現を思うように誰かと共有できない時期が続いたのはしんどかった。人前に立つということが自分の中でこんなにもウエイトが高かったのかと。
ほんまに自由な集まりなんで、ずっと誰かしらが続けてくれたらいい。元気に一生続けられたらハッピーです」

梅田サイファー:KennyDoes
「17歳くらいから顔を出していたんですが、ラップ道場としてはもちろん人生経験の8、9割のことは梅田サイファーから教わりました。
より遠くに、より多くに届くよう、自分の地元である梅田の代表として、胸張って活動をしていきたいです。ゆくゆくは構成人数20,000人を目指したいですね」

梅田サイファー:KZ
「時には仲間、時にはライバル、でも総じて親友という梅田のみんなとだと、自分はどんなステージでも緊張しない。今日も手応えがありました。
(コロナ禍は)もちろん起こらないほうが良かったんだけど、ポジティブな部分を無理矢理絞り出すとしたら、いったんメジャーとインディーズの環境がフラットになったことで、自分らの音楽を待っていてくれたリスナーが全国にいたんだと気づかされました。『THE FIRST TAKE FES』であらたに巡り合ったリスナーさんとも、今後、大いに遊んでもらえたらと思います」

yama
「とても緊張しましたが、楽しく歌えたと思います。(過去2回登場した『THE FIRST TAKE』は)予想以上にたくさんの方に聴いていただいてありがたい気持ちです。今回のステージも『THE FIRST TAKE』ならではの緊張感のある空間だと思いました。
(急速に高まっている支持や知名度については)正直、驚きのほうが大きいですが、それと同じくらいうれしいです。聴いてくださった方が少しでも前向きになれたり、楽しんでいただけたらいいなと思っています」

CHEMISTRY:堂珍嘉邦
「真っ白な空間って清潔感があって、フレッシュな気持ちにさせられました。レコーディング用のコンデンサーマイクなので歌のニュアンスもつけやすかったし、2001年のナンバーを今のサウンドで奏でたらどうなるかという試みも楽しめました。
便利な一方、人とのバイブスを感じ取ることを忘れちゃいけないなと。コロナ禍を迎えてファンの皆さんと会える機会もまだ限られていますが、だからこそ、こうした機会の一つひとつの選曲が意味を帯びると思います。これからもCHEMISTRYという名前のとおり、ファンやミュージシャンとの“化学反応”を大切にしていきたいです」

CHEMISTRY:川畑要
「真っ白い世界に飲み込まれそうになりました(笑)。何度も歌ってきた2曲ですが、20年やっていると、リリース当時は小学生だったという方もいれば、今回初めて耳にされるリスナーもいらっしゃる。年々、ヒット曲の重要性を噛み締めています。バンドメンバーも世代を超えた編成だったし、新鮮な時間でした。
コロナ禍は音楽の大切さを改めて思い知りました。ライブができなかったことでの成長もあったし、音楽人として武器が増えた時間でした。コロナが収束したあとには、考えさせられた時間を活動に生かしていきたい。僕は人生をとにかく楽しみたい。その気持ちを捨てずに頑張っていこうと思います」


8月13日(金)22時から行われたオンエア時のリアルタイムプレミア公開視聴者数はMAX時で10,000人超えをマーク。流れるように更新されていったコメント欄には、BURNOUT SYNDROMESの3人がかき鳴らす抜けの良いサウンドへの声援、梅田サイファー各々の伯仲した実力への興奮、yamaの類稀な歌唱力への感動、そしてCHEMISTRYのふたりの確かなハーモニーへの称賛などが多々綴られていた。翌14日12時現在の再生回数は316,519 回をマークしている(※8月19日17時59分まで視聴可能)。

最後に、今回も過去2回同様、すべての収録は全キャスト・スタッフへの検温実施、マスクやフェイスガードの装着、ソーシャルディスタンスやステージ上でのアクリル板の設置など、徹底した感染予防対策のもとで行われたことも付記しておく。

一発撮りのライブパフォーマンスが持つ“再現不可能”な芸術性。その極限までの純化は、今回、4組のアーティスト各々のカラーによってよりあらたな展開を見せた。まだまだ未知の可能性を感じさせる『THE FIRST TAKE』の次なるドラマに期待したい。



YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q

『THE FIRST TAKE』OFFICIAL SITE
https://www.thefirsttake.jp/

BURNOUT SYNDROMES OFFICIAL SITE
https://burnoutsyndromes.com/

梅田サイファー OFFICIAL SITE
https://www.umeda-cypher.com/

yama OFFICIAL SITE
https://www.sonymusic.co.jp/artist/yama/

CHEMISTRY OFFICIAL SITE
https://chemistry-official.net