THE F1RST TIMES

REPORT

2022.05.20

OmoinotakeとSaucy Dogの2マンライブ『Yodogawa Sway』。彼らのステージに再認識する“ライブ力”

TEXT BY 金子厚武
PHOTO BY 日吉“JP”純平

■いま一度ライブ力が問われる時代に、2バンドが見せた最高のパフォーマンス

初めての緊急事態宣言から2年が経過し、少しずつライブの現場がかつての状況を取り戻し始め、春フェスも数多く開催された2022年のゴールデンウィーク。その締め括りとなる5月7日に梅田CLUB QUATTROで開催されたのがOmoinotake主催の2マンライブ『Yodogawa Sway』だ。

島根から上京したあと、渋谷を拠点に活動を続けてきたOmoinotakeは、過去に『Udagawa Sway』や『Dogenzaka Sway』といった渋谷の地名にちなんだイベントを開催し、SOMETIME’S、THREE1989、ODD Foot Worksらと共演してきたが、この日は“Sway”シリーズ初の大阪開催。“Sway”とは“揺れる”という意味で、心も体も揺らすOmoinotakeのライブ観をよく表している。

そんな記念すべき1回目の『Yodogawa Sway』の対バン相手は、もともと大阪で結成され、大阪を拠点に活動していたSaucy Dog。OmoinotakeとSaucy Dogが2マンを行うのはこの日が初めてだが、Saucy Dogの石原慎也(Vo, Gt)はOmoinotakeのメンバー3人と同じ島根県松江市出身ということもあって(Saucy Dogの「いつか」に出てくる“田和山”は松江の地名だったりする)、念願叶っての対バンとなった。

Omoinotake

Omoinotakeの結成は2012年、Saucy Dogの結成は2013年と、両バンドは結成年も近いが、2010年代前半のバンドシーンは“ロックフェスを勝ち抜くこと”が成功への一番の近道となった時代であり、“いかに盛り上げるか”という価値観から“フェスロック”なる言葉が生まれたりもした。しかし、2010年代後半になると徐々に潮目が変わり、結果的にそんなシーンへのカウンターになったのが“シティポップ”の流行で、ジャズ、ファンク、ヒップホップといった音楽性のバンドがメインストリームに進出して、縦ノリ重視だったロックフェスの現場に横揺れの光景が生まれ始めた。Omoinotakeもそんな状況から生まれたバンドだと言える。

もうひとつの大きな変化がサブスクリプションサービスの浸透であり、“楽曲で勝負する”ことが“ロックフェスを勝ち抜く”ことのオルタナティブとなった。さらには、コロナ禍の影響で一時的にライブの機会が失われ、フィジカルに“盛り上がる”ことが難しくなったなかで、より“楽曲そのものの良さ”にスポットが当たることに。その結果、バンドよりもむしろシンガーソングライターやボカロP出身のユニットの台頭が目立ったわけだが、そんななかにあって、あくまでバンドとしていい曲を作り続けてきたSaucy Dogが昨年日本武道館2デイズを成功させるに至ったのは、非常に意味のある出来事だったように思う。

Saucy Dog

そして、前述のように今また少しずつライブイベントが、ロックフェスがかつての状況を取り戻しつつあるということは、いま一度ライブ力が問われる時代を迎えつつあると言えるはず。そんなタイミングで、果たしてOmoinotakeとSaucy Dogがどんなライブを見せてくれるのか。高い期待をもって、『Omoinotake presents 2MAN LIVE “Yodogawa Sway”』に向かった。

■ステージングを磨き上げてきたSaucy Dog

トップバッターのSaucy DogはSEとともにせとゆいか(Dr, Cho)、秋澤和貴(Ba)、石原の順番でステージに登場し、いつものように3人でこぶしを合わせて、「リスポーン」からライブがスタート。やはりまず耳を奪われるのが石原の歌声で、少年性を感じさせながら色気も憂いも持ち合わせ、張り上げると男くささも感じられるこの声質は何とも魅力的だ。そこにせとがコーラスで寄り添い、ときには秋澤も加わって三声コーラスになることで、楽曲の彩りがさらに増していく。

Saucy Dog

秋澤のベースソロを挟んで始まった「雷に打たれて」からは一気にギアを上げて、立て続けに「ノンフィクション」で盛り上げる。このゴールデンウィークは春フェスの大きな舞台にも立ってきただけに、石原の「みんなとの距離が近いからテンション上がります」という言葉には実感がこもり、せとが「Saucy Dogが好きな人とOmoinotakeが好きな人は結構バラバラやと思うんですけど、せっかくこういう日なので、混じり合って、どっちも好きになって、ライブ最高!ってなったらいいなと思ってます」と話すと、場内は大きな拍手に包まれた。

Saucy Dog

石原が「あんまりライブでやらない曲」と言って始まった「あぁ、もう。」、人気曲の「シンデレラボーイ」には胸を締めつけられ、改めてソングライティング能力の高さが伺える。一転、激しいイントロの「メトロノウム」からは再びギアを上げて、ドラマチックな曲展開をバンドで見事に鳴らし、さらに「ゴーストバスター」をエモーショナルに届けていく。僕はこの日リハーサルから見学をさせてもらったのだが、石原とせとを中心に曲間の繋ぎをひとつひとつ細かく確認していたのが非常に印象的だった。何のギミックもない3ピースというシンプルな編成ながら、日本武道館公演を成功させるに至ったのは、楽曲や歌の力はもちろん、こうしてステージングを磨き上げてきたからに違いない。

Saucy Dog

石原が「大阪に来るとやっぱり昔の記憶がよみがえるっていうか、僕らが音楽を始めたのは大阪だったし、育ててくれたのも大阪だったので、大阪にはすごく恩があります」と話し、「今日もお世話になったライブハウスの人が来てくれてたり、いろいろ感慨深くて、いいところを見せられたらいいなって……ああ、またMCがなげえよって言われるんだろうな」と笑うと、「あなたの人生の一部に僕らを巻き込んで、取り込んでくれたら嬉しいなと思ってます」と語りかけて、最新曲「魔法にかけられて」を披露。彼ららしいフォーキーなメロディの名曲だが、石原がこの手の曲でもアコギではなくエレキを持ち続けることにロックバンドとしての矜持を感じる。最後は「雀ノ欠伸」で再びアッパーに盛り上げると、「島根最高! 大阪最高!」と叫び、ジャンプを決めて、ド派手にステージを締め括った。

Saucy Dog

■ライブバンドとしての実力を感じさせるOmoinotake

2番手のOmoinotakeは下手から福島智朗(Ba)、藤井怜央(Vo, Key)、冨田洋之進(Dr)が並び、後方にサポートでパーカッションのぬましょう、サックスの柳橋玲奈が加わる5人編成。青い照明に照らされるなか、1曲目に披露されたのは藤井の歌から始まる「彼方」だ。Saucy Dog同様に、やはり彼らのストロングポイントのひとつが“歌”であり、美しいハイトーンボイスで一気にオーディエンスの心を掴むと、シャッフルのリズムでフロアは早速Swayな状態に。

Omoinotake

彼らのライブは同期も駆使され、福島がシンセベースを弾くダンスナンバー「プリクエル」ではミラーボールが回り、優美なサックスソロが吹かれ、藤井は“井の頭線の西口で”を“御堂筋線の北口”に変えて歌う一幕も。さらには冨田の叩くクラップスタックが印象的なゴスペルポップ「So Far So Good」と続け、この曲調の幅広さと、ライブアレンジを加えながら、それらをしっかりステージで再現する演奏の充実度はかなりのものだ。

ライブ中盤では藤井の歌を聴かせるミドルテンポの曲を並べつつ、「欠伸」のよれ感のあるヒップホップビートをはじめ、冨田の叩き出すビートがOmoinotakeのグルーヴを構築する上で大きな役割を果たしていることが伝わってくる。ランプのほのかな光のなかで歌われた「夏の幻」、スレイベルやウィンドチャイムを駆使したきらびやかなアレンジとメランコリックなメロディが好相性の「惑星」と続き、「モラトリアム」ではヴァースのサンプリングパッドとコーラスの生ドラムが対比を生んで、ドラマチックな曲調をさらに盛り上げる。生楽器と電子楽器、同期の組み合わせは彼らがモダンなバンドであることの証明だ。

Omoinotake

藤井はMCで「Saucy Dogは本当にいろんな会場でライブをやっていて、その心意気がめっちゃかっこいいなと思っていて。ライブをすごく大事にしてるマインドがスケジュールを見るだけで伝わってきて、そういうところがすごくかっこいいと思ってます」とSaucy Dogへの想いを語り、「僕らもそうだし、Saucy Dogもきっとそうだと思うんですけど、どんな会場であれ、お客さんの目の前で演奏できることがただただ楽しいからやってるんだと思います。こうやってすごく近い距離で、みんなと一体感が作れて、本当に嬉しいです。ありがとう!」と、オーディエンスへの感謝を伝えた。

Saucy Dogがたくさんのライブを重ねて今の状況を作り上げたように、Omoinotakeもまた渋谷のスクランブル交差点での路上ライブを積み重ねたことによって、浮上のチャンスを掴んだバンドだ。前述のように、サブスク時代はライブをやらなくても楽曲の力で知名度を上げることが可能な時代だが、逆に言えば、若いアーティストは知名度の上がった状態からライブを築き上げていく苦労がある。Omoinotakeにしても、もはや路上ライブを実際に観た人よりも、サブスクで曲を聴いて好きになった人のほうが数としては多いはずだが、すでにライブを繰り返してきた10年選手であることはここから大きなアドバンテージになるだろう。そんな彼らのライブ力が特に強く感じられたのが、「一気に駆け抜けたいと思います」と宣言してスタートした、ラスト4曲の流れだ。

Omoinotake

ピアノのリフレインが印象的な最新曲「心音」でキャッチーなメロディを歌い上げると、「産声」では推進力のあるスタックスビートが手拍子を巻き起こし、さらに人力2ステップなダンスナンバー「By My Side」では、シンガロングなコーラスパートで一気に空間が開けて、ここがライブハウスではなく、ホールやアリーナであるかのような高揚感と解放感が一気に押し寄せてくる。間違いなくOmoinotakeのライブアンセムであり、この曲はこの先何度も素晴らしいシーンを作り上げていくはず。福島がスラップベースを弾き、疾走感たっぷりの「EVERBLUE」まで宣言どおりに一気に駆け抜けた後半の流れは、ライブバンドとしてのOmoinotakeの実力を確かに感じさせるものだった。

アンコールでは「これからもっともっとでっかいステージで“Sway”シリーズを続けていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします」と改めてオーディエンスに感謝を伝え、「今の日々もいつか自分の一部と誇れますように」と呼びかけると、最後に披露されたのは「トニカ」。歌詞担当であり、バンドのエモーションを担うエモアキこと福島は、この曲の“この日々を越えるため刻んだ 胸を打つ音を今響かせ”というラインを体現するかのように、演奏中に胸の前でグッと拳を握り締める仕草が印象的で、藤井とともに音楽の原体験がパンクにあることが伝わってくる。ただ心地よく揺れるだけではない、この熱さがこれから彼らをさらに大きなステージへと導いていくだろう。


SET LIST

Omoinotake presents 2MAN LIVE “Yodogawa Sway”
2022.05.07@梅田CLUB QUATTRO

Saucy Dog
M01. リスポーン
M02. 雷に打たれて
M03. ノンフィクション
M04. あぁ、もう。
M05. シンデレラボーイ
M06. メトロノウム
M07. ゴーストバスター
M08. 魔法にかけられて
M09. 雀ノ欠伸

Omoinotake
M01. 彼方
M02. プリクエル
M03. So Far So Good
M04. 欠伸
M05. 夏の幻
M06. 惑星
M07. モラトリアム
M08. 心音
M09. 産声
M10. By My Side
M11. EVERBLUE
EN01. トニカ



Omoinotake OFFICIAL SITE
https://omoinotake.com/
Saucy Dog OFFICIAL SITE
https://saucydog.jp/