■「僕の伝記というか、物語というか、生写しのようなライブになってる」
中島健人が1月19日(日)に東京・有明アリーナで開催されたソロライブ『KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025“N / bias”』のファイナル公演を行った。
昨年3月末にグループを卒業してから約10ヵ月。ソロデビュー後初となるライブは自身がプロデュースを務め、1月17日(金)から19日(日)の3日間で4公演が実施された。最終公演の開場前には囲み取材が行われ、「1年間、僕のファンの皆様、U:nity(ユニティー)をお待たせしたのできっと恩返しができると思います。去年の1年間は人生でいちばんストイックに自分の表現に向き合ってきたので、僕が何を表現したいかがしっかり見えるステージになると思います」と意気込みを語ると同時に、「テーマはジョーカーのお話。この1年間の活動の中で感じたことや見てきたもの、磨いてきたものを自分のアイデンティティにして、今までになかったクールかつエレガントなダーティーさを表現できるようなライブになってる」と明かし、「挫折と失敗を経験すると表現の幅が厚みを増すんですよね。僕の伝記というか、物語というか、生写しのようなライブになってる」と続けた。
■「僕はアイドル辞めてない。これからもアイドルだし、これからも続けていきたい」
また、昨年3月に30歳を迎え、同年4月からソロとしてのアーティスト活動を開始した彼に「アイドル時代と違うことは?」という質問が投げかけられると「今もアイドルです!」と笑顔で即答。「今回のステージで強くお伝えしたいことは、僕はアイドル辞めてないんで。これからもアイドルだし、これからも続けていきたいということです」と宣言。さらに、新メンバーオーディションを行っているtimelesz(ex.Sexy Zone)に関する問いかけには「刺激をめちゃめちゃ受けてますよ。ソロデビューの報告もしたし、整体で聡ちゃん(松島聡)に出会って、一気にハグされて。その後、そっと抱きしめたんですけど、今もお互いに刺激を与え続け合えているし、『めっちゃ面白いことしてんじゃん、俺も頑張ろう』って思えてる。オーディションもすごいですよね。誰が入るのかをみんな気になってて。僕もそのひとりだし、本当に応援してる」とエール。ソロ活動の他にも、GEMNやHITOGOTOというユニットでも活動した自身の1年間を振り返りながら、「各々がしっかり充実した光を求めることができてる気がするので。みんな希望を手にした気がします」と充実した表情をみせた。
作詞、作曲、演出、プロデュースを自ら行うアーティストでありながらも、「一生アイドル」宣言が飛び出した彼はどんなステージを展開するのか。大きな期待を抱きながらライブに臨んだのだが、結論から言うと、アイドルグループとしての経験や思い出を引き連れたまま、より自分の表現を追求していきたいという強い思いが伝わってくるステージとなっていた。
■冒頭の2曲で、パフォーマーとしての進化と成長をダイレクトに見せつける
オープニングを飾ったのは、昨年12月25日のクリスマスにリリースしたソロ1stアルバム『N / bias』の2 曲。イノセントな少年が何かを奪われ、黒い涙とともにジョーカーへと姿を変えていくミステリアスな映像に続き、中島健人がステージに姿を表すと満員の会場から大歓声が沸き起こる。フロアに響くビートと歓声がピッタリと重なった瞬間に彼が拳を上げて振り落とすと音がぴたりと止まった。アルバムのリード曲で、ダークヒーローの苦悩と悲哀を綴った「ピカレスク」をアカペラでライブをスタートさせると、ステージ前方に火花が上がる中でダンサー8人を従えてクールに踊り、ファイヤーボールやトーチによる火の演出も加わった英語曲「N / o’clock」では演説台で英語でのスピーチのようなラップを繰り出したあと、スリックバック(空中ウォーク)で移動。冒頭の2曲で、パフォーマーとしての進化と成長をダイレクトに見せつけながら、静と動、クールとホット、白と黒、怒りと喜び、善意と悪意という対比もしっかりと表現してみせた。
「388日ぶりのステージです! ようやくここで爆発できます!!」と語った彼は、東京の夜景やSNSの画面をバックに歌った主演ドラマの主題歌「ヒトゴト」を通して“自分は自分らしく / 笑ったもん勝ちでしょ”というメッセージを伝えると同時に、指先まで意識が行き届くパフォーマンスで観客を惹きつけると、赤い月が照らすベンチに座って歌唱した「黄昏てゆく夜に」では街灯のランプを点灯させる魔法とともに心地よいハイトーンからファルセットへの飛翔を繰り出すと、後ろ向きでジャケットを脱ぎ捨て、走ってステージを後にした。
■空中MCを続け、久しぶりの再会となるファンとのコミュニケーションを楽しんだ
ピエロに扮して逃走する映像を挟み、デニムに白Tにジャケットを羽織ったカジュアルなスタイルで再登場した中島はセクゾ時代のソロ曲「Teleportation」からはミュージカルのようなステージを展開。「Bye Bye Me」ではダンサー4人とマイクスタンドを掲げて時計の針のように動かし、「SHE IS…LOVE」では観客の「ケンティー!」の声に、中島が“I Love You”と歌で返すコール&レスポンスで盛り上がる中、高さ10mのフライングでアリーナ後方まで移動。「フライングの行き先はお前の心の中だよ」と告げ、そのまま空中MCを続け、久しぶりの再会となるファンとのコミュニケーションを楽しんだ。
■「jealous」「Mr. Jealousy」という流れは1年間、会えなかったファンの気持ちを代弁した選曲
自身が29歳のときに書いたという「Scene29」は映画のワンシーンのように椅子に座って歌唱。スクリーンには幼少期の写真が映し出され、曲の終わりで自身をポラロイドで撮影。今日、この日の日付とともに「一生、愛してる」と記した。続くスイートソウル「Jasmine Tea」では受話器を片手に電話越しの愛の会話のように歌い、グラスに赤ワインを注いだ「ROSSO」では黒レースで目隠しをしながら女性ダンサーと妖艶に踊ると、キスシーンでは場内から「やめてー!」という声も飛び交った。中島の大人の色香が漂うパフォーマンを堪能できる時間だったが、ダンサー紹介を挟み、「jealous」「Mr.Jealousy」という流れは1年間、会えなかったファンの気持ちを代弁した選曲だろう。音玉とポップアップで登場したブギーファンク「jealous」では盛大なコールが沸き起こり、オールドスクール風の「Mr. Jealousy」でも叫びにも似たコール&レスポンスを展開。「ペンライトで遊んじゃって」という言葉に導かれた「Dance on the floor」では、画面に映し出される「White」「Red」「Blue Flashing」という文字に合わせてペンライトの色を変えて遊んだ観客は、嫉妬を捨てて、久々の中島とのライブをしっかりと楽しんでいた。
■キタニとふたりでトロッコに乗り込み、場内を周回
壮大な聖歌が鳴り響き、中島が鎖に繋がれた映像を経て、黒い衣装にサングラスをつけた彼が赤い旗を手にステージに上がった。「Nocturne」を静かに熱く歌い上げると、英語歌詞の「THE CODE」では切れ味鋭いダンスを見せると、謎のユニットGEMNとして歌ったアニメ『【推しの子】』第2期 OP主題歌「ファタール」ではファイナル公演のみのサプライズでキタニタツヤが登場。この日いちばんと言っていいくらい驚きと喜びに満ちた大歓声が上がる中で背中を合わせて歌い、黒い羽が舞うセンターステージで息のあったダンスを踊ると、スクリーンにトランプのジョーカーがバラの花束に変わるストーリーが流れ、「カレカノ!!」を歌い始めキタニとふたりでトロッコに乗り込み、場内を周回。キタニもセクゾ時代のお馴染みのコール“カレカノ LOVE PEACE!! ”で盛り上げると、初めてトロッコに乗ったというキタニは「とんでもない体験をありがとうございます。ケンティーはこんな景色を見ていたんですね。羨ましいな」と語り、握手を交わしてステージを後にした。
■「段階追って、俺はドームを目指すからよろしくね」
ここからはセクゾ時代のソロ曲を連発。アリーナ後方のリフターに乗って歌いあげた「Love風」では「一生、離さないよ」と約束し、「Hey!! Summer Honey」ではトロッコに乗って場内を回りながら青い蝶のように飛び回り、「Black Cinderella」ではセンターステージで座ってパフォーマンスしながら小悪魔的のようなセクシーかつチャーミングな表情で観客を翻弄。そして、最後のMCでは、ファンに感謝と愛の気持ちを伝えると、温かく大きな拍手が湧き上がる中で「生きててよかったなと思います」と目に涙を浮かべて語った。さらに、涙を堪えながら「僕の人生のもはや半分をしめている」というこれまでの活動を振り返りながら、「俺、アイドルでいれるのかなと思っていた時期もあったのね。でも、俺が負けるわけねえなって思ったのよ。ずっとプライドを持ってやってきたし、みんなと一緒に歩んできたじゃん。だから俺、止まるわけにはいかないし、いくら環境が変わったとしても、俺は負けないし、変わらないわ」と語り、「俺、死ぬまでアイドルだわ。俺の覚悟は本物だから」と胸を張った。続けて、「俺はU:nityに何があってもそばにいるつもり。要するに……ずっとアイドルの俺を見てろってこと! ありがとう。愛してるよ」と告白し、さらに、「段階追って、俺はドームを目指すからよろしくね。この会社でひとりでドームに行った人ってあんまり聞いたことないから。俺が最初のひとりになる」と決意を表明した。
本編のラストは、「いろんなことで迷って夢の中をさまようそういう時間もたくさんありました。この人生は別れと出会いの繰り返しだと思うし、その中で今俺は君に出会えたと思ってる」と語った自作曲「迷夢」。最後は正真正銘ひとりきりで心を込めて歌いあげ、スクリーンに映し出された“僕というアイドルを選んでくれてありがとう”というメッセージとともに、「これからもよろしく」という言葉を残してライブを締めくくった。
「ごめん。まだ遊びたいかも」という言いながら再登場したアンコールではリボンの付いたキャンディを手に「CANDY ~Can U be my BABY~」を歌唱すると、客席からは「LOVE KENTY!」のコールが沸き起こり、場内は幸せな一体感に包まれた。「俺が19歳の頃に初めて『CANDY』を歌ったときに使ったキャンディです」と明かした中島は、「僕とU:nityの絆の曲になるといいなと思います。一生愛されますように」と呼びかけ、「Unite」を披露。「最高の愛と歓声をありがとうございます! とにかく楽しかった」と感想を述べたあと、中島の「LOVE」という言葉に続き、U:nityが「KENTY!」と叫ぶ、場内に銀テープが発射された。
■ダブルアンコールでは、未来を願うロックナンバーをまさに感情をむき出しにして絶唱
ここで終わりかと思いきや、場内の熱気と声援がやむことはなく、ダブルアンコールが実現。中島は「今も頑張っている、愛すべき仲間に。届いてるかな?」と語りかけ、Sexy Zoneのデビュー10周年直前にリリースされた18枚目のシングル「RUN」をスタンドマイクで熱唱。“あの日”の僕らを振り返りながら“止まらないでよ / 僕らはまだ始まったばかりさ”と未来を願うロックナンバーをまさに感情をむき出しにして絶唱すると、「終わりたくないな。俺、これからいろんなところ巡っちゃうからよろしく」と言い残しながらステージをあとにすると、スクリーンには全国ホールツアーの開催を発表された。先の囲み取材では「もっと近くで音楽を交わし合う。僕だけが音楽を届けるんじゃなくて、皆さんの声援も音楽のひとつだから。そのアンサンブルをより近くでできるホールツアーになると思います」と語っていたが、早くもこの先の未来にさらなる希望と可能性の広がりを感じさせてくれる1stライブであった。
TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 田中聖太郎 囲み取材:河村美貴(田中聖太郎写真事務所)
中島健人『KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025 “N / bias”』
2025年1月19日 有明アリーナ
セットリスト
1.ピカレスク
2.N / o’clock
3.ヒトゴト feat. Kento Nakajima
4.黄昏てゆく夜に
5.Teleportation
6.Bye Bye Me
7.SHE IS…LOVE
8.Scene29
9.Jasmine Tea
10.ROSSO
11.jealous
12.Mr. Jealousy
13.Dance on the floor
14.Nocturne
15.THE CODE
16.ファタール
17.カレカノ!!
18.Love風
19.Hey!! Summer Honey
20.Black Cinderella
21.迷夢
<アンコール>
22.CANDY ~Can U be my BABY~
23.Unite
<ダブルアンコール>
24.RUN
ライブ情報
KENTO NAKAJIMA 1st Tour 2025 “N / bias” 巡
https://starto.jp/s/p/live/10191
中島健人OFFICIAL SITE
https://starto.jp/s/p/artist/156