■『なかなか(いい感じの)男女』の『男女』は『なんにょ』と読む
2025年5月23日(金)、KT Zepp Yokohamaにて、Base Ball Bearと橋本絵莉子のライブ・イベント「SMA 50th Anniversary presents『なかなか(いい感じの)男女』」が行われた。株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ(以下SMA)は、2024年で設立50周年を迎えるのを記念して、2024年度の1年間の間に、所属アーティストたちによるイベントを、各地のライブハウスやホールやフェスのステージ等で、50本企画した。
結果、52本となった開催本数のうちの、最後の1本がこの『なかなか(いい感じの)男女』だったが、当日=3月9日(日)の2日前に、小出祐介が自転車の単独事故で負傷。5月23日(金)に延期となった。
『なかなか(いい感じの)男女』というタイトルは、2006・2007・2008年に、SMA所属の若手バンド3組=橋本絵莉子が在籍していたチャットモンチーと、Base Ball Bearと、シュノーケルの3バンドが行ったイベント・ツアー『若若男女サマーツアー』が元になっている。よって、『なかなか(いい感じの)男女』の『男女』は『なんにょ』と読む。この日のMCで、橋本絵莉子も小出祐介も、そう発音していた。
なお、この対バンは、KT Zepp Yokohamaの5周年のお祝いも兼ねて開催された。
■橋本絵莉子は全8曲、音源としては未発表の新曲も、2曲披露
橋本絵莉子が読む、注意事項等の開演前アナウンスで、場の空気がやわらいだあと、先にその橋本絵莉子がステージに登場する。
ギター曽根巧、ベース村田シゲ、ドラム北野愛子の、3人のサポート・ミュージシャンたちの準備が整ったのを橋本絵莉子が確認し、両腕でマルを作ってPAスタッフに合図→その両手を大きく振ってオーディエンスに挨拶、から、「人一人」でライブは始まった。
途中で二度のMCをはさみつつ、この日、4人が演奏したのは、全部で8曲。2021年リリースのファーストアルバム『日記を燃やして』から3曲(「かえれない」「ロゼメタリック時代」「ワンオブゼム」)、2024年4月リリースのセカンドアルバム『街よ街よ』から3曲(「人一人」「踊り場」「ホテル太平洋」)、そして、音源としては未発表の新曲も、2曲披露された。
その片方(4曲目)は、橋本絵莉子ならではのメロディが全開な、そこはかとないダブっぽさがにじむ曲。もう片方(7曲目)は、軽やかでアッパーな、ライブ後半でプレイされるのがずっぱまりな曲だった。
音と音の、あるいは音と歌の、間のスペースが多くてシンプルな作りになっている楽曲を、演奏していく名うてのサポート・ミュージシャン3人は、まるで普段からこのバンドで活動しているみたいに、ぴったり息が合っている。その音に橋本絵莉子の歌が、ナチュラルに乗っていく。
最初のソロアルバム『日記を燃やして』を出したとき、「対バンしようよ」と言ってくれた、そのときBase Ball Bearも『DIARY KEY』というアルバムを出したばかりだったので、それを機会に、一緒にインタビューを受けたりした──と、MCで話す橋本絵莉子。「20年ぐらいの友達になるんですけど、みんなほんのちょっとずつ大人になって、私も含めて。で、今日こうやって集まることができました」という言葉に、オーディエンスは大きな拍手を贈った。
■2曲目のイントロで「オイ!」コールが起きたり、新旧のダンス・チューンを中盤〜後半で並べたりして、オーディエンスを何度もピークに導いたBase Ball Bear
前日は渋谷クラブクアトロでワンマン(2015年のアルバム『C2』と2020年のアルバム『C3』の再現ライブ)だったので、2日連続のライブだったBase Ball Bearは、1曲目が「17才」で、本編ラストが「Stairway Generation」。
つまり、『若若男女サマーツアー』当時の曲を最初と最後に置いた、おそらくその2曲の歌詞の意味合いも含めてそうしたのではないか、と思える全8曲を演奏した。
2曲終えたところで小出祐介、延期になったことをオーディエンスに詫びる。このライブの最終リハに行く途中の出来事だった、自転車で転んで顔から着地して目の下を4針縫った、目の下に傷があるのは『ONE PIECE』のルフィと一緒、読んだことがないけど…という話の末に、オーディエンスのことを「クルー」と呼ぶ展開になる。みんな大笑い。
2曲目の「GIRL FRIEND」のイントロで「オイ!」コールが起きたり、「Endless Etude」「十字架 You and I」「The Cut」と新旧のダンス・チューンを中盤〜後半で並べたりして、オーディエンスを何度もピークに導き、(体感速度的には)あっという間に、本編が終了する。
■アンコールではBase Ball Bearと橋本絵莉子が、お互いがリクエストした2曲を、一緒に演奏
アンコールを求める手拍子に応えて、Base Ball Bearと橋本絵莉子が、4人揃ってステージに。このイベントの趣旨(「SMA50th」の最後の1本であること)を説明したり、「付き合い長いですね」「そうですね」などと会話したり、「橋本さんみたいなロック・ミュージシャンが同期で、僕は非常にコンプレックスでした」と小出が明かしたりしてから、お互いがリクエストした2曲を、一緒に演奏する。
サビの「天使だったじゃないか」という歌詞が好きで、それを歌いたかった。『天使なんかじゃない』というマンガが大好きなので──というのが、橋本絵莉子が「ランドリー」を選んだ理由。橋本絵莉子がリードボーカルで、小出祐介はギターとコーラスを担う。
「お世辞抜きで、何回か泣いたかもしれないくらい、ほんとにいい曲」と小出祐介が選んだ「今日がインフィニティ」は、ふたりのツイン・ボーカルで歌われた。
■AMEMIYAが事前告知なしで登場。「SMA50周年はじめました」を熱唱
そしてその後、このイベントの、ではなく、この1年間の「SMA50thプロジェクト」を締めくくるセレモニーが。1本目(2024年4月30日EX THEATER ROPPONGI、フジファブリック山内総一郎とUNISON SQUARE GARDEN斎藤宏介のセッションライブ『山斎』)にも出演したAMEMIYAが、事前告知なしで登場したのだ。Base Ball Bear+橋本絵莉子をバックに「SMA50周年はじめました」(言うまでもなく「冷やし中華はじめました」の替え歌)を熱唱し、50周年を締めくくった。
お笑いコンビをやめて、トチ狂ってバンドをやっていたとき、Base Ball Bearの出身ライブハウスである下北沢GARAGEに出ていた。彼らはGARAGEのスターだった、だから、正直、嫌いだったんだよ!と、AMEMIYAもコンプレックスを開陳してから、歌に入った。
その話を聞いた小出、「あ、ダイナマイト・オレンジね」。「いや、言わないでよ!恥ずかしいなあ、やめてくれ!」と返すAMEMIYAだった。「でも今日、ふた組のライブを観て、大ファンになっちゃったよ!」。
TEXT BY 兵庫慎司
PHOTO BY AZUSA TAKADA
SMA50th Anniversary presents『なかなか(いい感じの)男女』
supported by KT Zepp Yokohama 5th Anniversary
2025年5月23日 KT Zepp Yokohama
セットリスト
橋本絵莉子
1.人一人
2.踊り場
3.かえれない
4.[新曲]ジェンガ(仮)
5.ロゼメタリック時代
6.ホテル太平洋
7.[新曲]大人げないね(仮)
8.ワンオブゼム
Base Ball Bear
1.17才
2.GIRL FRIEND
3.いまは僕の目を見て
4.Tabibito In The Dark
5.Endless Etude
6.十字架 You and I
7.The Cut
8.Stairway Generation
アンコール
9.ランドリー w/橋本絵莉子
10.今日がインフィニティ w/橋本絵莉子
11.冷やし中華はじめました w/橋本絵莉子、AMEMIYA
Sony Music Artists 50th Anniversary 特設サイト
https://www.sma.co.jp/s/sma/page/50th?ima=0000#top