■「EXILEの在り方や未来を、みんなで描き合って過ごしていく”EXILE探しの旅“こそがEXILEなのかもしれない」(EXILE TAKAHIRO)
EXILEによる新プロジェクト『PROJECT EXILE』の第1弾として開催されたアリーナツアー『EXILE LIVE TOUR 2025 “WHAT IS EXILE”』。その最終公演が、6月1日の兵庫・ワールド記念ホールにて開催された。
EXILEがツアーを行うのは、2022年12月21日に開催された東京ドーム公演『EXILE LIVE TOUR 2022 “POWER OF WISH”~Christmas Special~』以来、約2年3ヵ月ぶりのこと。
今回のツアーには、EXILE AKIRA、EXILE TAKAHIRO、橘ケンチ、EXILE NESMITH、EXILE SHOKICHI(※EXILE TETSUYAは、足の怪我のため不参加)というEXILEメンバーの他、EXILE TRIBE(GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、PSYCHIC FEVER)からも各地公演ごとにメンバーを変えた“STARTING MEMBER”が参加。
最終公演には、FANTASTICSとEXILEを兼任している世界と佐藤大樹、BALLISTIK BOYZの日高竜太(「高」は、はしごだかが正式表記)、加納嘉将、海沼流星、深堀未来、奥田力也、松井利樹、砂田将宏が参加した。
開演前、メインステージ上部に設置された円柱のLEDモニターには、これまでの公演に映像で出演していたEXILE ATSUSHIが歌うEXILEの「愛すべき未来へ」が映し出されていた。“子供たちが夢を持ったまま/生きていってほしいと願う”。約16年前にATSUSHIが歌詞に綴った願いは、STARTING MEMBERの日々の活躍や、場内で様々な世代の観客が見せている笑顔、オープニングアクトを務めたEXPG生たちの弾けるようなパフォーマンスに繋がっている。
そんな歴史の重みを感じながら開演を待ちわびているところに、休養中のTETSUYAがサプライズ登場すると、会場には歓喜のどよめきが上がった。観客にコール&レスポンスや歌唱を促しながら、自らも、自身の加入後1発目に発表した「Someday」などを歌う、カリスマDJ・TETSUYA(SHOKICHI命名)。キッズ向けユニット・EXILE B HAPPYのリーダーとして子供たちと接する機会も多い、盛り上げ上手な彼の登場で場内がすっかり温まったところで、ようやく開演時間を迎えた。
さあ、「まつり」をはじめよう。
LEDモニターに映し出された言葉を合図に、先陣を切って現れたのは、2006年以降に加入した第二章・第三章のメンバーでありながら、近年EXILE代表として活動してきたAKIRA、TAKAHIRO、ケンチ、NESMITH、SHOKICHI。笑顔で観客の目の前を練り歩きながら、メインステージに上がった5人の後を追うように、決意の表情を滲ませたSTARTING MEMBERがゴンドラに乗って合流すると、SHOKICHIの「EXILEライブツアー、ファイナルへようこそー!」という一声と、1曲目『EXILE PRIDE ~こんな世界を愛するため~』がライブの開幕を告げた。
今回のSTARTING MEMBERには、深堀、奥田、砂田のように、かつてEXILEのこどもバージョンMVに出演していたメンバーもいれば、世界と佐藤のように、もともとEXPG STUDIOで先生と生徒の関係にあったメンバーも。それぞれ全く違うタイミングでEXILEと出会ったメンバーたちが、まだ何色にも染まっていない真っ白な衣装に身を包み、円になって歌い踊る光景は神々しく、まるで始まりの儀式のように見えた。
そう、これは、EXILEという絶対的な存在であり続けるために、形を変えながら活動を続けてきた彼らが、またあらたなEXILEを生み出そうとしている歴史的な瞬間なのだ。記念すべき場面を目撃しているという事実と、映像出演したATSUSHIの誠実な歌声に、少し背筋が伸びる。
それでも、曲に合わせて自然と体が動いてしまうのは、誰よりも楽しそうに踊る“Mr.EXILE”AKIRAや、当たり前のように歌詞を口ずさんで踊っている“生粋のEXILEファン”佐藤、2度のボーカルバトルオーディションを経てEXILE TRIBEの仲間入りを果たした日高のビッグスマイルによるリードが大きかったように思う。曲が進むうちに、他のメンバーの顔にも徐々に笑顔が浮かび始め、メンバー一丸となって「BE THE ONE」を届けた。
「BE THE ONE」は、“EXILE 20年の歴史”に敬意と感謝の気持ちを込めてTAKAHIROが作詞、SHOKICHIが作曲に参加し『EXILE 20th ANNIVERSARY EXILE LIVE TOUR 2021 “RED PHOENIX”』で初披露した楽曲だ。EXILEの楽曲タイトルを散りばめた歌を手渡しするように、メンバーが続々と客席に降りてサブステージに移動すると、たびたび歓声が上がる。オープニングでは緊張の面持ちだった松井と海沼が肩を組んでEXILEの楽曲を踊る姿や、歌唱中のNESMITHに深堀と佐藤が寄り添い、仲良くジャンプを繰り返す姿など、このツアーならではの光景が眩しい。
伝説的ライブとして語り継がれるスタジアムライブ『EXILE LIVE TOUR 2010 “FANTASY”』のメドレーでは、現メンバーが加入する以前に、第一章EXILEとして発表した「real world」と、EXILEの前身グループ・J Soul Brothersから受け継いだ「Fly Away」を立て続けに披露。メンバーが順々にハグする場面では、仲良く手でハートを作ったTAKAHIRO&松井のキュートな2ショットに黄色い声が上がった。
また、「Fly Away」の間奏ではパフォーマー陣によるダンスパートも展開し、ひと味違う熱狂を生み出していく。AKIRAを筆頭に、ヤンチャな雰囲気の奥田、大人の色気溢れる橘ケンチにバトンを繋いだソロは、松井のダイナミックなアクロバットへ。そこで満を持してセンターを張った世界のテクニカルなパフォーマンスも、EXILEやEXILE TRIBEの明るい未来を約束する証として輝いていた。
「一緒にEXILEを歌って、EXILEを踊って、最高の思い出を作っていきましょう! 皆さん、準備はいいですか?」
TAKAHIROの呼びかけから始まったのは、2010年にEXILEの活動10年目突入を記念して発表した「I Wish For You」。その後も、EXILE TRIBE4組(GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、BALLISTIK BOYZ)によるEXILEデビュー20周年を記念した企画「EXILE TRIBUTE」でFANTASTICSがカバーした「Each Other’s Way ~旅の途中~」や、同企画でGENERATIONSがカバーした「時の描片~トキノカケラ~」といった、活動の節目を象徴する楽曲たちが会場を彩っていく。
「時の描片~トキノカケラ~」の終わりに、観客による元気いっぱいの大合唱が響き渡ると、うれしそうに手を振るメンバーたち。歌詞を口ずさむメンバーが多いなかで、本来はボーカル担当の加納が幸せなひと時を噛みしめながら客席を見渡している様子も、とても印象的だった。
「音楽はときに、時空をも超えていける存在だと思っています」
ここで、シックな黒の衣装に着替えてひとり再登場したSHOKICHIが、熱い音楽愛を語り始めた。
そして「時を戻しましょう。あの頃僕らが感じた青春を、あの頃僕らが感じたときめきを…今日、ここ神戸の地で呼び起こしたいと思います」と宣言し、「EXILE TRIBUTE」メドレーに突入。SHOKICHIが歌い始めた1曲目は、EXILEのルーツとなるダンスジャンルを冠した「New Jack Swing」。第一章のアルバム『ASIA』からのコアな選曲「Eastern Boyz’N Eastern Girlz」や「LET THE MUSIC PLAY」でも、STARTING MEMBERが変幻自在なダンスを繰り広げる。
さらに、2005年にGLAYとのコラボで話題を呼んだロックチューン「SCREAM」には、NESMITHがGLAYのTAKUROから譲り受けたギターで参戦。人気曲ながらもなかなか披露が難しい楽曲だけに、会場は大盛り上がりだ。そこにEXILE随一の第一章ファンであろうTAKAHIROと、NESMITHが歌唱する「Carry On」が溢れ出し、全員で「Kiss You」「O’ver」へ。ドラマティックな「O’ver」のアウトロに合わせて、しなやかに舞い踊った砂田は、まるで夢の中にいるような恍惚とした表情を浮かべて天を見上げていた。
EXILEは、ダンスボーカルグループという枠を越えて幅広い活動をしてきたアーティストだ。そのひとつが俳優業。2014年に、EXILEの第四章メンバーとして、当時最年少の19歳だった佐藤大樹が加入したときの衝撃は大きかった。あれから11年、『EXILE LIVE TOUR 2025 “WHAT IS EXILE”』のステージには、目を輝かせながら、“EXILE HISTORY”という名の光る本をめくる彼の姿があった。
その本を高く掲げると、第一章のR&Bナンバー「STAY」を体に纏ったケンチが登場。SHOKICHI、NESMITHのツインボーカルが熱を帯びるなか、キャンドルをバックにケンチ、佐藤、奥田のレアなダンスコラボが実現した。
続いて、松井利樹、海沼、深堀、世界が流麗なダンスでエスコートした「ふたつの唇」は、TAKAHIROとATSUSHI(映像出演)が歌唱。パフォーマー陣は、ゴンドラに乗ってあとから合流したAKIRAとともに、深紅のチェアを用いたドラマティックな演出で魅了する。ATSUSHIの切なくも美しい声が最後のフレーズ“闇に光れ/ふたつの唇”をなぞり、AKIRAがチェアに腰を下ろすと、メンバーはふっと闇のなかに溶け込んだ。
次の瞬間、ステージをパッと明るく照らしたのは、キラキラの“元祖王子様”スマイルで「“WHAT IS EXILE”という僕たちのあらたな挑戦に集まっていただき、本当にありがとうございます」と話すTAKAHIRO。近年のEXILEのツアーには欠かせない最強のバンドメンバーと、TETSUYA、ATSUSHIの紹介をすると、TAKAHIRO、SHOKICHI、NESMITH、ATSUSHI(映像出演)の4ボーカルで、第三章として初めて発表したアルバム『愛すべき未来へ』より、ATSUSHI作詞のラブソング「Angel」を歌い上げた。
人気の高いラブバラード「ただ…逢いたくて」と「運命のヒト」は、TAKAHIROひとりで熱唱する。特に「運命のヒト」は、『EXILE VOCAL BATTLE AUDITION 2006 ~ASIAN DREAM~』の最終審査の地・日本武道館でTAKAHIROが歌唱し、彼のEXILE加入を決定したメモリアルな楽曲ということで、本公演におけるTAKAHIROのハイライトとなっていた。
荘厳なバラードブロックから一転、賑やかに始まったダンスショーケース『PERFORMER’S PRIDE』もまた、EXILEのツアーの醍醐味だろう。直前のLEDモニターには、NAOTO、NAOKI・GUN(岩田剛典)、ALAN(白濱亜嵐)といった、本公演には出演していないメンバーの名前も映し出され、すべてのEXILEパフォーマーを代表する形で11人(松井、砂田、深堀、海沼、奥田、日高、加納、佐藤、世界、ケンチ、AKIRA)が参戦した。
アクロバットが武器のBALLISTIK BOYZを、同じくアクロバティックなソロダンスで迎え撃つのは、紳士的な振る舞いに定評のあるEXILEメンバー・ケンチ。この日は鍛え抜かれた上裸をアピールしながら、ワイルドな大人の魅力で観客を虜にしていた。AKIRAも後輩に囲まれる形でパフォーマンスしつつ、ベテラン勢の意地を見せるようにアグレッシブなダンスを披露。
ソロパートの最後を担う“ダンスの申し子・世界”の身のこなしは、同じパフォーマーですら笑いが出るほど見事で、メンバーたちは大爆笑しながら見守る。その空気感は、かつてAKIRAやケンチが参加していたというクラブでのダンスバトルのようで、老若男女に愛される表舞台のEXILEと、その根底に脈打つアンダーグラウンドの魂が交差するようなブロックだった。
再びステージにTAKAHIRO、NESMITH、SHOKICHIの3ボーカルが現れると、早くも後半戦がスタート。出演者全員で「ALL NIGHT LONG」を歌い踊り、ラストに向けて加速していく。
SHOKICHIが「皆さんの“願いの矢”を空高く飛ばしましょう!」と言い添えた「BOW & ARROWS」は、EXILEデビュー20周年を記念した企画『EXILE TRIBUTE』でTHE RAMPAGEがカバーしたキャッチーなアップチューン。
メンバーたちは歌いながら客席内を練り歩き、「E!X!I!L!E!」のコール&レスポンスで会場をひとつに。ライブ定番曲「WON’T BE LONG」には、BALLISTIK BOYZの面々もボーカルやラップであらたな色を加えた。
その一方、“WHAT IS EXILE”というあらたな挑戦への前向きなメッセージを乗せた「EXIT」は、あえてEXILEに所属するメンバー7人のみで想いを伝える。NESMITHが「皆さん、EXILE歌ってますかー?」と呼びかけ、シングル「EXIT」のカップリング曲「DIAMOND」へ。
ATSUSHIが作詞を手掛けた「Pure」では、一つひとつの歌詞を宝物のように歌いながら、「10年後も皆さんとこうして、一緒に過ごしていますように…」と語り掛けるTAKAHIROに大きな拍手が贈られた。
だが、そんな切なる願いに温かな拍手が充満したのも束の間、おちゃめなSHOKICHIの「ここからクライマックス。終わりたくないよ~」というひと言で、つい吹き出しそうになる。この抜け感こそ、EXILEの“ライブあるある”と言えるだろう。ノリノリなSHOKICHI VS 観客&STARTING MEMBERの歌声合戦でヒートアップしたあと、EXILEのツアーでお馴染みの2曲「Choo Choo TRAIN」と「銀河鉄道999」で駆け抜けると、場内にはまばゆいほどのハッピー空間が広がっていた。
なお、奥田を先頭にロールダンスを繰り広げた「Choo Choo TRAIN」では、砂田、深堀、加納、日高もボーカルを担当。「銀河鉄道999」では、世界&奥田ペアのロボットダンスや、歌唱中のTAKAHIROにじっと見つめられていた佐藤がカメラに向かってキメ顔(?)をする“息の合った茶番”などが観客の視線を集めていたことも、お伝えしておきたい。
本編後半のMCで、メンバーを代表してマイクを握ったTAKAHIROは「このステージに立ってるメンバーそれぞれが、かつてEXILEに夢を抱いて、EXILEに憧れて、EXILEで青春を謳歌して表現者を志しました。そして、EXILEという長い歴史のなかにふさわしいアーティスト、表現者でいられるように、各グループ一人ひとりが切磋琢磨して刺激し合って、高みを目指してここまでやってきました」とコメント。
そのうえで、「ツアータイトルの“WHAT IS EXILE”――EXILEとは何なのかをひと言で表せるまで、まだまだ時間がかかるかもしれません。ただ、このツアーをもって、皆さんと同じ空間と同じ時間を過ごして。EXILEの在り方や未来を、みんなで描き合って過ごしていく”EXILE探しの旅“こそがEXILEなのかもしれないと感じました」と語り、ラストナンバー「愛のために -for love, for a child-」に繋いだ。
アンコール直前、先ほどのTAKAHIROの言葉が伏線だったと、我々はすぐに気づくことになる。3月29日のツアー初日以降、数々の感動と驚き、ときめきを運んで各地を巡ってきたEXILEだったが、最終日のアンコールにはとびきりうれしいプレゼントを用意していたのだ。
「EXILEとはどんな想いで、何のために存在しているのか」。その理由を証明するべく、11月よりドームツアー『EXILE LIVE TOUR 2025 “THE REASON”』を開催するという。あらたな旅に臨むEXILEメンバーは、ATSUSHI、AKIRA、TAKAHIRO、KENCHI、TETSUYA、NESMITH、SHOKICHI、NAOTO、NAOKI、SEKAI、TAIKIの11名。STARTING MEMBERとして、THE RAMPAGEの陣、神谷健太、山本彰吾、岩谷翔吾、浦川翔平、藤原樹、FANTASTICSの澤本夏輝、堀夏喜、木村慧人が出演することも発表された。
さらに、LDHが運営するアパレルブランド・24karatsのジャージで揃えた14人が再び観客の前に姿を現わすと、ボーカルATSUSHIもサプライズ登場。完全復活した4ボーカル/出演者15名全員で「24karats」メドレーを暴れ倒し、アンコールを盛り上げた。
MCにはATSUSHIとTETSUYAも加わり、てっきり真面目な雰囲気になるかと思いきや、ここでもアットホームなトークで笑いを誘うベテランメンバーたち。AKIRAは休養中のTETSUYAを「アナタがいなかったから、危うくパフォーマーが僕とケンチふたりになるところだったからね? STARTING MEMBERがいなかったら、ボーカルのほうが人数多くなるところだったよ」といじりつつ、STARTING MEMBERに支えられて最終日を迎えられたと、仰々しく後輩たちに頭を下げた。
そして、ATSUSHIによる曲紹介から、ラストナンバー「Rising Sun」へ。「いつかEXILEメンバーになる」という夢を手にしたSTARTING MEMBERが、口々にライブの感想を叫ぶなか、前代未聞のアリーナツアー『EXILE LIVE TOUR 2025 “WHAT IS EXILE”』は終宴した。
EXILE OFFICIAL SITE
https://exile.jp/