■後藤次利、大黒摩季、大澤誉志幸、山下久美子、INORAN、菊地英昭、うじきつよし、藤井一彦ら豪華ミュージシャンが集結!
吉川晃司が還暦(60歳)の誕生日を迎えた8月18日に、東京国際フォーラム ホールAで、満員の5,000人の観客に祝福されるなか、スペシャルライブ『KIKKAWA KOJI 60TH BIRTHDAY LIVE “KANREKI ROCK”』を開催した。
現在、吉川は同い年で同じ広島出身の奥田民生とのユニット、Ooochie Koochieで全国ツアーを展開中だが、還暦の誕生日という節目のタイミングで、応援してくれたファンや、関わりのあるミュージシャンへの感謝の気持ちを表す趣旨のもと、このスペシャルライブを企画したのだ。吉川と縁の深いゲストミュージシャンが多数参加したこと、吉川の代表曲以外にも80年代を彩った名曲の数々が披露されたこと、貴重なトークが展開されたことなど、多くの見どころのあるイベントとなった。なお、チケットのソールドアウトを受け、生配信(アーカイブ配信はなし)も実施され、全国の多くのファンもスペシャルライブの模様を画面越しに鑑賞した。
この日のステージには、近年のツアーバンドの一員であるホッピー神山(Key)、ウエノコウジ(Ba)、湊雅史(Dr)の3人が参加。ゲストミュージシャンによってパートが随時入れ替わる編成だ。冒頭の2曲では、ツアーバンドギタリストでもある生形真一(Gu)も参加。『KANREKI ROCK』の幕開けの曲はデビューシングルの「モニカ」だ。19歳から歌っている曲を60歳となった吉川が熱唱する姿に、盛大な歓声と拍手が起こった。会場内に懐かしさと瑞々しさが共存する空気が漂っていく。デビュー当時から変わらないのは挑み続ける姿勢、変わったのは、さらなる強靭さや豊かな表現力、懐の深さを備えた歌声だ。続いては、セカンドシングル「サヨナラは八月のララバイ」。エネルギッシュなバンドの演奏のもとで、切なくも伸びやかな歌声が会場内に響きわたっていく。1984年と2025年の8月の空気が混ざり合っていくかのようだ。
「吉川晃司、60回目のバースデーライブ、『KANREKI ROCK』へようこそ。ごきげんよう。急に思いついてやったので、(席が取れないと)お叱りをいただき、配信もやることになりました」と吉川からの還暦を迎えての最初の挨拶。この日の最初のゲストとして、後藤次利(Ba)と藤井一彦(Gu)が登場した。後藤はベーシストとしてはもちろんのこと、80年代の吉川の楽曲の多くのプロデュースも担当している、吉川の当時の音楽のキーパーソンのひとりである。一方、藤井一彦は、2026年のツアーへの参加が決定しているギタリストである。
続いて、「RAIN-DANCEがきこえる」が披露された。ファンキーなグルーブの中で、吉川の艶やかな歌声が映える。さらに大黒摩季が加わり、「HEART∞BRAKER」が演奏された。この曲は大黒と吉川のユニット・DaiKichi ~大吉~の2010年12月発表のシングルで、映画『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE』の主題歌として制作された曲だ。ふたりの鍛え抜かれたボーカルの掛け合いは実にスリリングで、困難を突破する力強さが備わっている。この曲では吉川がギターを演奏。大黒の代表曲「ら・ら・ら」では吉川もコーラスで参加。観客もシンガロングし、そして手を振っていた。
続いては、吉川の“兄貴分”的な存在でもある大澤誉志幸が登場し、大澤が作曲した「LA VIE EN ROSE」を披露した。吉川はギターとコーラスを担当。大澤が歌う様子を吉川が笑顔で見つめている。吉川がギターを弾いているすぐ目の前で、大澤がおどけた表情を見せている。ふたりの間には今も変わらない絆が存在していることが見えてくる場面だ。さらに大澤の代表曲、「そして僕は途方に暮れる」も演奏された。この曲の中の“輝いた季節”というフレーズが80年代の彼らの青春時代と重なって響いてきて、深い余韻を残した。
次なるゲストは、80年代から吉川と交流がある山下久美子だ。「こうやって吉川が立派になって最高だなと思っています」と山下。山下との共演の1曲目は彼女の代表曲のひとつ、「こっちをお向きよソフィア」。吉川はギターとコーラスでの参加だ。さらに、大黒も加わって、3人の共演も実現したのは、2005年発表の山下久美子のデビュー25周年記念アルバムで吉川とデュエットした曲、「SOMEDAY」(オリジナルは佐野元春)だ。当時のデュエットも素晴らしかったが、それぞれがあのときから20年の年を重ねた歌声とコーラスは格別だった。『KANREKI ROCK』での「SOMEDAY」は希望の歌のように響いてきた。この曲で前半が終了。
後半の1曲目は「せつなさを殺せない」。2022年から2023年にかけた吉川のツアーに参加したINORANがゲストとして登場し、INORANと生形のツインギターによる演奏となった。さらに2008年から2023年にかけて、ツアーバンドのギタリストとして吉川を支えてきたEMMAこと菊地英昭が登場して、フジイとのツインギターで「SAMURAI ROCK」を演奏。この曲の“未来を守るんだぜ”という吉川の歌声が真っ直ぐ届いてきた。切れ味抜群のバンドサウンドが吉川の強靱な意志を象徴していると感じた。本編の最後の曲、「GOOD SAVAGE」では、吉川、菊地、INORAN、フジイ、生形が参加。最前列に5人のギタリストとベースのウエノが並んでプレイを展開する光景は壮観だった。
アンコールでは、KODOMO BAND(※80年代は「子供バンド」と表記)のうじきつよしが登場。うじきは吉川の初期のツアーを支えたギタリストである。まず当時のKODOMO BANDの代表曲のひとつである「サマータイム・ブルース」(※原曲はエディ・コクランだが、独自の解釈による日本語の歌詞をつけてカバー)を演奏。うじきが歌詞の一部を、“還暦晃司に声かけよう”と替えて、そのまま正規の歌詞、“アンタは、まだまだ子供だよ”に続けて歌うと、客席から笑い声と歓声が起こった。うじきと吉川のユニゾンのギターに、会場内も熱狂。ロックの初期衝動が全開となり、還暦を迎えて、ゼロから再スタートしようとしている吉川にぴったりのナンバーだ。さらにうじきのギターのもとで、「INNOCENT SKY」が演奏された。この曲の“忘れない いつか見た空を”という歌詞は、どんなに年を重ねても、変わらず持ち続けているものの存在を示す歌として響いてきた。
「思い出に残る1日にしていただいて、ありがとうございました。60歳にして改めてやれるだけ全力でやっていこうと思っています。Ooochie Koochieもまだ続きますし、来年はソロのツアーに出ようと思っています。楽曲も作ります。今後も興味のあることに挑戦していく所存です。みなさんも元気でね。また笑顔の再会を!」との挨拶に続いて、最後に演奏されたのは、「BOY’S LIFE」だ。ここでは生形とフジイがギターで参加。1995年、29歳のときに発表された歌だが、この曲の中の“手遅れと言われても”“やれる気がするのさ”というフレーズは、60歳の吉川にも当てはまるのだろう。吉川にとっての“KANREKI”とは、落ち着いたり、丸くなったり、円熟したりする時期ではなく、ゼロに立ち返って、まっさらな気持ちで未来へと向かって進んでいくための区切りであるに違いない。
この日、強く感じたのは、『KANREKI ROCK』が愛に溢れた空間であったことだ。吉川からファンへの感謝、ファンからの吉川への感謝と祝福、さらに吉川からゲストミュージシャンやバンドのメンバーへの感謝、ゲストミュージシャンから吉川への祝福と親愛の情などなど。あふれんばかりの愛をエネルギーとして、吉川はシャウトし、シンバルを蹴り続けていくのだろう。
TEXT BY 長谷川誠
PHOTO BY 平野タカシ
<セットリスト>
1.モニカ
2.サヨナラは八月のララバイ
3.RAIN-DANCEがきこえる
4.HEART∞BRAKER
5.ら・ら・ら
6.LA VIE EN ROSE
7.そして僕は途方に暮れる
8.こっちをお向きよソフィア
9.SOMEDAY
10.せつなさを殺せない
11.SAMURAI ROCK
12.GOOD SAVAGE
ENCORE
EN1.サマータイム・ブルース
EN2.INNOCENT SKY
EN3.BOY’S LIFE
吉川晃司 OFFICIAL SITE
http://www.kikkawa.com/






