リーガルリリーが、東京、岩手、大阪の3ヵ所を結ぶコンセプトツアー『夏の大三角形』を開催。8月23日にGORILLA HALL OSAKAで開催された、大阪公演のライブレポートが到着した。
■コンセプトツアー『夏の大三角形』のテーマは“星と宇宙”
この夏、リーガルリリーが東京、岩手、大阪の3ヵ所を結んで開催したコンセプトツアー『夏の大三角形』が、8月23日、GORILLA HALL OSAKAでファイナルを迎えた。
全公演がソールドアウトとなった今回のツアー。“星と宇宙”というテーマを掲げて、たかはしほのか(Vo&Gu)の創作の原点とも言える宮沢賢治からインスピレーションを受けたセットリストで、1stミニアルバム『the Post』から最新作のTriangle A-sideシングル『ぼくのベガ / R:L / danceasphalt』まで新旧の楽曲で構成。照明やSEの効果も加わって幻想的な世界観で包み込み、研ぎ澄まされたエモーショナルなギターロックサウンドで圧倒した。
会場内に入ると昂る気持ちを鎮めるようなアンビエントミュージック(=ブライアン・イーノ)が心地よい音量で流れていた。開演時間になると待ちかねていたように湧き上がる盛大な拍手に迎えられて、たかはしほのかと海(Ba)、サポートドラマーのDesire Nearlyが登場。たかはしのほのかが口笛を吹き、アカペラで歌い出したオープニング曲は宮沢賢治の「星めぐりの歌」だ。遠い昔に聴いたことがあるような、初めて耳にするような響きで、現実からふわりと夜空に昇っていくような感覚になる。
「ぶらんこ」からは3人のバンドサウンドとなり、フロアからも歓声が上がる。そして、「夏の夜空。普段は聴くことのなかった星々の輝きに耳をかたむけ、いつもと違う不思議の空の旅へ。さぁ、出発の準備もまだ途中だけど行かなくちゃ。始まりの汽笛が鳴ります」というたかはしほのかの語りに導かれ、疾走感を増して「GOLD TRAIN」が走り出す。「スターノイズ」から「60W」ではギターを激しく掻き鳴らし、タイトなビートで突き進んでいった。
序盤5曲を終えて、場面転換するように聞こえてきたのは深海に沈んでいくような水音。「ぼくたちはどこまでも落ちていこう 一緒に落ちていこう」とたかはしほのかが語り、「いるかホテル」「夏のエディ」と夏の記憶が刻まれた曲を歌って、「海月星」で哀しみに揺れる。
この中盤のブロックでは、今回のセトリの中核となるTriangle A-Sideシングルから「R:L」と「danceasphalt」を配置。ステージが赤紫色のライトに染まり、ゆったりとしたテンポのドラムとベースが並走するように奏でられた「R:L」では、メランコリックな雰囲気に引き込まれる。そしてまた水音が聞こえてくると、手に入れたものを失う虚無感を吐露するような語りが入り、「星さん、星さん、夜空の星さん、昔話をしておくれ。あなたはどこを照らしてみせる? そしてわたしはこれからどこを照らして歩く?」とたかはしほのかが自問する。その後、長めに奏でられたバンドのインストに続く「蛍狩り」では切々とした歌唱が胸に染みる。その足元には蛍の光のような電球色のライトが灯されていた。後半はリーディング調となり、最後に“輝きを放て!”と意を決するように、繰り返し強い声を発するたかはしほのか。小さな蛍の光からやがて会場全体が明るくなり、アウトロにしばし長く反響するギターが命の輝きを体感させてくれるようだった。
■現実の中で遠のいていく過去の記憶や、心の奥底に置いてきた感情に触れる心の旅
終盤に差しかかり、「今日、この場所に来てくれてありがとうございます」とたかはしほのかが感謝の気持ちを伝えると、大きな歓声と長い拍手が送られた。「ほしのなみだ」から再びスピードアップして、「danceasphalt」ではイントロから盛大なクラップが広がる。フロアの上のミラーボールが回転して美しい銀の光の粒が降り注ぐなか、軽やかなダンスビートにのって観客が体を揺らす。ステージ上ではメンバーも跳ねるような動きでプレイしている姿が目に映った。
この終盤のブロックでは、Triangle A-sideシングルからの「ぼくのベガ」が存在感を発揮する。たかはしほのかが、いっそう強くギターを掻き鳴らし、小気味良いドラミングとともに熱量を上げ、“雲を突き破って!”と叫んで「天きりん」に突入。たかはしほのかは前方を射抜くような鋭い眼差しで、全身から振り絞るように声を響かせた。
「キラキラの灰」でも観客のクラップが合わさり、ミラーボールが煌めきを増幅して観客がダンサブルに揺れる光景が。たかはしほのかも飛び跳ねるようにギターを弾き続けて、ひと際大きな歓声を沸き上がらせた。
そのあとに「皆さん今日は楽しんでますか」とたかはしほのかが笑顔で声をかけると、フロアからも“イェー!”とうれしそうな返答が。そして、本編ラストで歌ったのは「ますように」。どんな気持ちが込められた願いも叶いますようにという気持ちが伝わってくる歌とパフォーマンスで、フロアから突き上げられた一人ひとりの拳と呼応するような熱い空間が広がっていた。
アンコールを求め鳴り止まない拍手と歓声に応えて、メンバーが再びステージに戻ってくると、ここでは海が感謝の言葉を述べる。そして、『冬の大三角形』ツアーが控えていること、あらたに開催5周年となる対バンライブ『cell,core』が、大阪と東京で決定したことをアナウンスすると歓喜の声が飛び交う。対バン相手はまだ伏せられているが、どんなスペシャルな競演が見られるのか大いに楽しみだ。その後に披露されたのは「ハナヒカリ」「1997」「リッケンバッカー」の3曲。「1997」では、たかはしほのかが弾くギターの一音一音が心に突き刺さり、生きる決意を夜空に放つような歌声が響きわたっていった。アンコールのラスト「リッケンバッカー」ではイントロから大歓声が上がる。血のように赤いライトを浴びて歌うたかはしほのか。間奏ではうねりを帯びた演奏で荒々しく揺さぶり続け、すべての命を目覚めさせるリーガルリリーの歌とサウンドを鮮烈に脳裏に焼き付けていった。
メンバーが去ったあと、ふたたび「星めぐりの歌」が流れてくる。それは冒頭のアカペラとは異なるシーケンスや木琴のような音が合わさるバージョンで、観客はじっと聴き入っていた。
振り返ってみると、今回のツアーは夜空の星を巡る幻想の旅であると同時に、現実の中で遠のいていく過去の記憶や、心の奥底に置いてきた感情に触れる心の旅のようでもあった。本編最後のほうで、“楽しい気持ち、悲しい気持ち、いろんな気持ちがあり、音楽は表に出さない心の奥底にある気持ちに触れる”という話をしていたたかはしほのかの言葉も印象深い。
こうして、リーガルリリーにとって初のコンセプチュアルなツアーは無事に終幕。この日、1階から2階までぎっしりと詰めかけた観客から、一曲終わるごとに大きな拍手と熱い歓声が送られていた。筆者はそうした熱気が海外アーティストの来日公演に近いようにも感じたのだが、アンコールを求めて“One more!”と叫ぶ声も飛んでいたりして、リーガルリリーのファン層の幅広さを実感した。結成から10年を超え、バンドとしての深みと活動のスケールもさらに増していくリーガルリリーの今後の活躍に期待が高まるばかりだ。
TEXT BY エイミー野中
PHOTO BY 松本いづみ ※大阪公演
■【画像】東京公演(7月4日)写真16点
PHOTO BY 藤井拓
■【画像】盛岡公演(8月16日)写真6点
PHOTO BY 岩渕一輝
■ライブ情報
『冬の大三角形』
11/15(土)石川・金沢AZ
11/22(土)愛知・名古屋THE BOTTOM LINE
11/24(祝・月)福岡・福岡DRUM Be-1
『cell,core 2025 to 2026』
12/18(木)大阪・心斎橋BIGCAT
2026年
01/20(火)東京・会場:Zepp DiverCity(TOKYO)
■【画像】ツアーフライヤー
■リリース情報
2025.07.23 ON SALE
SINGLE「ぼくのベガ / R:L / danceasphalt」
■【画像】「ぼくのベガ / R:L / danceasphalt」ジャケット写真
■関連リンク
リーガルリリー OFFICIAL SITE
http://www.office-augusta.com/regallily









































