7月30日にEP『doyes』をリリースしたHedigan’sが、9月30日、愛知・名古屋CLUB QUATTROにて、ワンマンツアー『Hedigan’s “Tour doyes”』の初日公演を開催した。
■過ぎた夏が帰ってくるようなアツいライブを展開
EP『doyes』は、主にバンド全体でセッションしながら生まれたフレーズやグルーヴを出発点に、曲を完成させていったという。この夜のライブでは、身体の内側や無意識からじわじわと燃え上がって気づけば踊ってしまっているような音楽が鳴り続いた。
ステージが濃密なスモークに包まれ、逆光の中にメンバーのシルエットが浮かび上がる。YONCE(Vo)が爪弾くアコースティックギターの響きで始まったのは、新EPの1曲目を飾る「Fune」。曲の終わり、ステージが真紅の光に染まると、YONCEは絶叫を放ち、その声に呼応するようにオーディエンスの身体が揺れ始めた。
「Hedigan’sです。どーもよろしく」とひと言を挟み、バンドの代表曲のひとつ「再生」へ。アコースティックギターを置いたYONCEは、その身を音楽に委ねるように揺れながら、艶のあるセクシーな歌声を響かせる。最後のサビに差し掛かる頃には照明が明るくなり、そこには笑顔で揺れる客席が広がっていた。アウトロで炸裂するYONCEのスキャットとギターソロの応酬に、2曲目にして会場のボルテージは一気に頂点へと駆け上がる。続く「マンション」でリズムはさらに加速し、客席の揺れはフロアの隅々まで伝播していった。
照明が赤と緑に変わり、通常よりも長いイントロから始まったのは「説教くさいおっさんのルンバ」。栗田祐輔(Key)が叫び、本村拓磨(Ba)がトランペットを吹き鳴らし、シャウトする。他のどんなバンドにもない、まさしくHedigan’sならではの野生的な音楽。オーディエンスもそれに応えるように「説教くさいおっさんのルンバ!」と叫び返し、熱狂は高まり続ける。本村が掲げた大きなピースサインで、この混沌の宴は締めくくられた。
「いい!いぇー(家)!グッドハウス」。YONCEのくだらないシャレにが笑いが漏れる。あれほど攻撃的な音楽に反して、YONCEのゆるいMCがステージを温かく包み込む。初めて来た客と前回のツアーにも参加した客が半々だとわかると、「名古屋CLUB QUATTROです。名前だけでも覚えて帰ってください」と語りかけ、その言葉に名古屋のオーディエンスは愛のある苦笑いで応えた。
「カテーンコール」で一気にチルなムードへと誘うと、YONCEの軽快な手拍子から「グレー」へ。そして、足元から怪しく照らす赤い照明のなか、「その後…」が始まる。YONCEと祐輔の叫び声が絡み合い、そこはまるでジャングル。YONCEと本村は体をくねらせながら独特のダンスを踊り、大内岳(Dr)の額からは汗が飛び散る。手先や歌声だけでなく、体全身で表現する。これこそがHedigan’sなのだ。
「もしもし俺だけど?今日ロックンロールしない?」。YONCEの囁きを合図に、栗田将治(Gt)と祐輔兄弟によるダブルギターが鳴り響く。大内のドラムのペースが上がり、ライブハウスのギアがまたひとつ上がった。ストレートなロックンロールに続いて、新EPより「DAO」と「Hatch Meets June」が続けて演奏される。原曲とも夏フェスで見せたものともまた違う「DAO」。力強いドラム。演奏中にギターを抱えるYONCE。完璧な繋ぎで始まった「Hatch Meets June」。度重なるアレンジに客は釘付けになる。彼らの演奏力と唯一無二の表現力に、その熱量と音量がそのまま鼓膜を揺らす。
新EPより、インストゥルメンタル楽曲「Eki」。鼓膜を小さな妖精が走り回るようなかわいいシンセサイザーを耳に、そしてHedigan’sの音楽を体現するような優しくゆったりとしたギターメロディに、会場全体が一体となったと感じた瞬間。観客が息をのんで静かに聴き入っていた。今日ここに来れて本当に良かったと思える瞬間だ。
特徴的なギターリフと鳥の鳴き声のような音が鳴り響き始まった「夏テリー」。猛暑を終え、長袖のお客さんも増えた9月30日。今年の夏の思い出が走馬灯のように思い出される。
過ぎた夏が帰ってくるようなアツいこのライブの続きは、ぜひ自身の目で確かめよう。Hedigan’sは変化し続けるバンドだ。「同じライブは2度とない」という常套句を、もっとも体現しているバンドだと言ってもいい。どの時期も見逃さないでほしい 。
ツアーは、10月1日に大阪・UMEDA CLUB QUATTRO公演、10月9日にツアーファイナルとなる東京・LIQUIDROOM公演が行われる。
■関連リンク
Hedigan’s OFFICIAL SITE
https://www.sonymusic.co.jp/artist/Hedigans/















