■心身ともに健康な状態で創作活動に集中できるようサポートするプロジェクト『B-side(ビーサイド)』
心の健康=メンタルヘルスが世界的課題として注目される昨今。SNSの普及によって誹謗中傷など新たなストレス要因も増え、自身の内面に向き合いつつ衆目を浴びる環境に身を置くアーティストやクリエイターにとっても、メンタルケアの重要性が増している。
ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、エンタテインメントの価値の源泉であるアーティスト・クリエイターとそのスタッフが心身ともに健康な状態で創作活動に集中できるようサポートするプロジェクト『B-side(ビーサイド)』を2021年9月にスタート。
「オンライン医療相談」「体験カウンセリング」「専門家によるカウンセリング」「ワークショップ」を社内で無償提供し、このような取り組みを音楽業界全体で利用できる仕組みとすべく、2024年秋からは賛同を得られた社外プロダクションでも利用がはじまっている。
世界精神保健連盟が定める10月10日の世界メンタルヘルスデーでは、“じょうずにやすもう”というテーマを掲げ、複数の特別企画が実施された。
■こっちのけんと、星野概念によるスペシャル対談が公開
10月10日正午には、B-sideが運営するPodcast番組『B-side Talk ~心の健康ケアしてる?』にて、こっちのけんと、星野概念のスペシャル対談が公開された。
対談は、精神科医・ミュージシャンとして幅広い活動を行う星野概念がMCをつとめる番組内企画『My Tune, My Mind』の特別編として実施。こっちのけんとが自身の活動の中で実感した率直な思いを語った。
こっちのけんとは、2023年に双極性障害であることを公表している。
2024年にリリースした楽曲「はいよろこんで」もメンタルヘルスをテーマにした楽曲だ。同曲のヒットをうけて『第75回NHK紅白歌合戦』に出場したのち、2025年元日にはX(旧Twitter)にて「跳ね返りと戦うために当分休みます」と発表。約3ヶ月間の活動セーブ期間を経て、現在は再び精力的に活動している。
星野概念とこっちのけんとは今回の収録が初対面。対談の前編は“こっちのけんと”という名前の由来についての話から始まった。
「自分の名前にいまだに助けられています」と告げたこっちのけんとは、双極性障害を公表した経緯や、その時の苦悩や葛藤についても明かした。多忙を極める中で「このままいくと本当に倒れちゃう、何かが壊れちゃうと思った」と感じた経験、活動休止を決め自身の言葉で発表した理由、休んでいた時期の生活や音楽への向き合い方、支えになったことなどについても、真摯に語っている。
カウンセリングの捉え方についても語り合い、「悩んでいる方は、答えを知りにいくのではなく、ヒントを得るために行くのはありだと思います」と語るこっちのけんとに対して、星野概念が「医者やカウンセラーが言ったことが違うと思ったら受け取る必要はないけれど、なるほどそういう見方もあるんだと視点が変わったり広がることはあり得る」と応えた。
▼前編 こっちのけんとの “じょうずにやすもう”【10/10世界メンタルヘルスデー特別編】
後編では『My Tune, My Mind』恒例のプレイリスト企画として“心を揺さぶられた曲”というテーマで5曲セレクトし、それぞれの曲から感じたもの、そして自身の楽曲に込めたメッセージや制作の裏側について語った。
星野概念が「いろんな人の助けだったり力になるんじゃないか」と語った通り、メンタルヘルスの不調や悩みを抱える人にとってもヒントになるようなクロストークが繰り広げられた。
▼後編 こっちのけんとの「心を揺さぶられた曲」【10/10世界メンタルヘルスデー特別編】
■小栗旬らをゲストに迎えた公開収録を開催
10月10日の世界メンタルヘルスデー当日には、都内某所でPodcast番組『B-side Talk ~心の健康ケアしてる?』の公開収録が行われた。
番組のMCをつとめる小原ブラス、奥津マリリ(フィロソフィーのダンス)に加えて、ゲストに俳優の小栗旬、心療内科医の鈴木裕介が登壇。
“じょうずにやすもう”というテーマに沿って、休むことの重要性やストレス対処法などについてざっくばらんに語り合った。
小栗は、自身の休みについて「最近は自分は休めない時間が増えてますね」と明かした。
休むことへの向き合い方について、小栗は「20〜30年前の頃はなかなか『休みたい』と言えず、無理してみんな働いていました。でもコロナ禍以降は体調不良の人間はちゃんと休むべきだということになったし、休みたいと言えない環境ではなくなっていると思いますね」と実感を語る。鈴木は「欠勤を意味する『absent』と休養の『rest』は違うということをいつも言っています。活動をしていないことは自分の体力が回復するということと必ずしもイコールではない。僕の思う『上手な休み方』は、身体が本当に求めているリズムを取り戻すことだと思います」と解説した。
休みが必要だと感じるサインについて、小栗は「アウトプットが続いてインプットできない時は自分から『休ませてください』と言います」と説明し、鈴木は「普段の状態からの変化を見ます。仕事のミスや誤字脱字が増えたり、いつもは整理されているのに散らかったりする。一番わかりやすいのは目ですね。疲れてくると目があまり開かなくなったり、ピクピクしたりします。攻撃的になったりする人もいますね」と解説した。
睡眠について、小栗は「できれば僕は9時間ぐらい寝たいです。睡眠の質はいい方じゃないと思います。眠りに入るのが苦手で、ずっと考え事をしてしまう」と言う。奥津も「お風呂にゆっくりつかったり、手足を温めたり、いろんな方法をやっても眠れないことは私にもあります。考えすぎるのもよくないですよね」と共感を示した。就寝のルーティンについて小栗は「最近は寝ようと思っても眠れないので、基本的には寝落ちするまで本を読んだりしてますね」と語り、「寝る時はパジャマですか?」という小原の問いかけに、小栗は「比較的パジャマをちゃんと着るようにしています」と明かした。
ストレスを受けた時の対処法については、小栗は「何でもいいから汗をかくようにはしてますね。運動が多いですけれど、がむしゃらに走る時もあります」と言う。奥津は「私は考えすぎてしまうタイプで『あの時、どうすればよかったんだろう』とか考えて夜眠れなくなっちゃったりするんです。そういう時は、いったん今日付けの結論を決めて、違う方向に思考を変えるようにしています」と明かし、鈴木は「ピンチの時に自分を助ける行動とか考え方のパターンのことをコーピングと言うんですが、それを沢山持っている人はストレス対処が上手だと思います」と説いた。
話のテーマは仕事を休んだ人が復帰するときのサポートやケアにも広がった。
鈴木は「社交力が下がっているので、そこのリハビリが大事です。僕は体力、集中力、社交力が7割ぐらいに回復したら復職を考えましょうかと提案しています。でも上司や会社の方には、まだ7割くらいなので段階的に負荷を徐々に上げるような形にしてくださいと伝えます」と解説。
現場ごとにスタッフが変わり「はじめまして」の人も多い俳優ならではの環境においてどんなことを心がけているかという小原の問いに、小栗は「僕らの仕事はリラックスしていてこそ能力を発揮できる仕事だと思うので。初めての現場で緊張している人がいる時にはなんとかしてこの緊張を取ってあげたいなと思います」と応える。「失敗しても大丈夫な現場だということがなるべく伝わるようにしています」と語る小栗のふるまいを「失敗が許容される空間だと、一番安心感が生まれるんです」と鈴木が賞賛した。
心身をケアし、きちんと休むことの重要さが見直されている昨今。ただ、俳優やアーティストやクリエイターには、それぞれの仕事に特有の事情や環境もある。起床や就寝のルーティンなど日常生活の話題から“じょうずにやすむ”ことについて語り合ったこの対談も、さまざまな人にとって新たな手がかりを掴むきっかけを与えるものになったはずだ。
なおこの収録の模様は10月末にポッドキャスト/YouTubeにて配信を予定している。
■“じょうずにやすもう”をテーマに著名人が直筆コメントを発信する企画も実施
B-sideは今回のテーマ“じょうずにやすもう”の特設ページも公開している。
アーティストやクリエイターなど著名人が自分なりのセルフケアの方法を直筆コメントで寄せ、自分の休め方・リフレッシュ方法をSNSで発信する『#じょうずにやすもう』キャンペーンも実施した。
特設ページでは、「1日の終わりに日記を書く」(石野理子(Aooo))、「ヨガ」(小出祐介(Base Ball Bear))、「朝サウナ」(山口一郎(サカナクション))など、それぞれが生活の中で取り入れているユニークな習慣を知ることができる。
アーティストやクリエイターが自身の抱える問題を公表することが増えたことも後押しし、日本でもメンタルヘルスへの関心は徐々に高まっている。今年9月で設立から丸4年となった『B-side』のプロジェクトの認知も少しずつ広がっているようだ。
今回の“じょうずにやすもう”というテーマからは、メンタルの不調にどう向き合うかだけでなく、悩みを抱えたり、疲弊してしまう前に、自分自身の心と身体の健康を保つことの大事さも伝わってきた。
アーティストとクリエイター、そしてそのスタッフの身体とメンタルヘルスをケアすることは、エンタテインメント業界そのもののサポートにもつながる。『B-side』プロジェクトは今後さらに重要性を増していくはずだ。
TEXT BY 柴那典
PHOTO BY 日高奈々子
『B-side』とは?
2021年9月より、ソニーミュージックグループ各社においてマネジメント契約のあるアーティスト、俳優、タレント、作家、およびこれらのクリエイターと直接仕事をするスタッフが、心身ともに健康な状態で創作活動に集中できるようにサポートすることを目的としてスタートした、メンタルケアのプロジェクト。
現在は「オンライン医療相談」「体験カウンセリング」「専門家によるカウンセリング」「ワークショップ」を社内にて無償で提供しています。このような取り組みをソニーミュージックグループのみならず、音楽業界全体で利用できる仕組みとすべく、2024年秋からは賛同いただいた社外プロダクションでも順次ご利用いただいています。
2025年10月10日の世界メンタルへルスデーでは、#じょうずにやすもう をテーマに掲げ、B-sideが運営するPodcast番組『B-side Talk』での特別企画や、『B-side Talk』にゆかりのある方たちから寄せられた、自分の休め方やリフレッシュ方法を紹介するハッシュタグキャンペーンなどを実施しています。
・HP:https://info.b-sideproject.jp/
・B-side『世界メンタルヘルスデー2025 #じょうずにやすもう』特設ページ:https://www.b-sideproject.jp/wmhd2025/
『B-side Talk ~心の健康ケアしてる?』とは?
2022年10月の配信開始以降、心と身体の状態に気を配り、自分自身を大切にしていくことの重要性を幅広い層に伝えていくことを目指しているこの番組では、MCにタレント/コラムニストの小原ブラスと、五人組アイドルグループ・フィロソフィーのダンスのメンバーである奥津マリリを迎え、毎回設けるテーマに詳しいゲストから、心と身体の健康に関する知識や情報をお聞きしていきます。また、2025年6月からスタートした番組内企画『My Tune, My Mind』では、精神科医/ミュージシャンの星野概念をMCに、様々なゲストを迎えて音楽やセルフケアなどについて気ままにお送りしています。
・Podcast:https://lnk.to/Mlweb7
・公式プレイリスト:https://bio.to/b-sidetalk.playlist
・公式YouTubeチャンネル:http://www.youtube.com/@b-sidetalk
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