X JAPANのギタリストとして、ソロアーティスト(hide with Spread Beaver / zilch)として今もなお音楽シーンに多大なる影響を与え続けるアーティスト“hide”(ヒデ)。1998年に永眠後、2000年から開催されてきた『hide Birthday Party』が、12月13日に川崎CLUB CITTA’にて行われた。
■久しぶりに誕生日当日の開催
毎年、hideの誕生日近辺の週末にこの会場で行われるファンにとっては恒例のイベント、2025年は暦のはまりが良くて久しぶりに誕生日当日に開催されることになった。hideとゆかりのあるアーティストたちが顔を揃え、hideを愛する新旧のファンが同じ空間に集う年に一度の素敵なパーティー。最近は新しい世代のファンも増えているそうで、チケットは早々に売り切れることが多かったが、今回も8月上旬にはソールドアウトになったそうである。
開場時間になると、ステージ上のDJブースに桃知みなみが登場。まだ誰もいないがらんとした客席に向けて、DJを始める。そこへひとり、またひとりと、来場者が走り込んでくる。「おはよう」「いらっしゃい」と手を振りながら、声をかける桃知。良き相棒のパンザブロウもステージに登場して、これから始まるイベントを一緒に楽しむ仲間たちをhideの音楽で温かく迎え入れているのが微笑ましい。徐々に客席がオーディエンスで埋まっていき、DJタイムが終わる頃には会場はほぼ満員になっていた。
■トップバッターのmachineが、hideの「LASSIE」を演奏!
オープニングの映像が流れ、いよいよパーティーの始まりである。MCはおなじみのDJ浅井博章。彼はこのパーティーにはナレーションのみの参加のことも多いが、今回はリアル登場である。2025年5月のhide with Spread Beaverワンマンライブの感想などを話したあと、スクリーンの画像を見ながら出演アーティストのラインナップを紹介していく。バンドの名前が呼ばれるたびに歓声と拍手が湧き上がり、イベントへの期待がどんどん膨らんでいく。
ステージを覆っていた白い幕が上がると、爆音のSE。イベントのトップバッターは、2025年夏に再起動を宣言したmachine。1999年にPENICILLINのHAKUEI(Vo)とhide with Spread BeaverのKiyoshi(Gu)が結成したロックユニットである。Kiyoshiが天を仰いで「ハッピーバースデー、hide!」と叫び、ステージがスタート。初っ端からスピード感溢れる激しい「Baby Blood」「invader」をプレイし、オーディエンスを一気にmachineワールドに引きずり込む。
「こんにちは、machineと言います。早い時間から皆様ご苦労様です」とHAKUEIの飾り気のないMCで会場を和ませたあと、「皆さんに相談があります。犬を探しています」といって演奏が始まったのは、hideの楽曲「LASSIE」。サポートメンバーのseek(Ba/Psycho le Cemu ※「Cemu」の「e」は、アキュートアクセント付きが正式表記)、CHARGEEEEEE…(Dr)、COLA(マニピュレーター)のアニマル感も功を奏して、ワイルドなmachine流「LASSIE」に会場も大喜びだった。
■25年のブランクをまったく感じさせないVINYL
続いて登場したのは、2025年に25年ぶりに本格再始動したVINYL。90年代にD’ERLANGER~STRAWBERRY FIELDSで活躍した福井祥史(Vo)と元黒夢の鈴木新(Gu)が結成したユニットで、1996年にhideが世に送り出したコンピレーションアルバム『LEMONed』で鮮烈なデビューを飾った2人組である。彼らはまず1曲目にそのコンピレーションアルバム収録曲の「BE」を演奏。パンキッシュなスピードチューンで、25年のブランクをまったく感じさせないプレイは、オーディエンスの度肝を抜いた。
さらに、2025年1月にリリースした未発表楽曲集『unreleased』から「KEEP MY SECRET」を演奏し、福井が「1996年の千葉マリンスタジアムから29年、今日も変わらずぶっ飛ばしていくぜ、いいか?」という元気のいい声でMC。独特なハイトーンボイスで歌い上げるメロディのはっきりした歌と、自由に弾きまくるギターが絡む楽曲は、いかにも90年代的ではあるが、スリリングで心地よい印象を受ける。
サポートベースのJUN(Valentine.D.C.)は、ふたりの再始動のきっかけのひとつとなった盟友HEATH(X JAPAN)のベースを持ち、HEATHの衣装を身に纏ってふたりのステージに花を添える。2026年はオリジナルの音源のリリースも考えているそうで、hideの仲間がまた1組未来に向けて歩み始めようとしているシーンを見るのは、うれしい限りだ。
■2日前に出演が決まったheidi.の躍動
2日前に出演が決まったheidi.がステージに登場すると、拍手が湧き上がる。このイベントの常連参加アーティストであるhide with Spread BeaverのキーボーディストDIEが、イベント直前に目の緊急手術で入院したため、急きょ出演をキャンセル。代わりに、hideのレーベルからCDをリリースしたこともあるheidi.が出演することになった。
1曲目の「ピンク スパイダー」、ダンサブルなスピードチューン「おまえさん」でオーディエンスを盛り上げたあと、「急きょ参戦させていただいたheidi.です。大先輩とそして皆さんとhideさんを思い切りお祝いしたいと思いますので、よろしくお願いします」とhideの顔が浮き上がるペンライトを振りながらMCをする義彦(Vo)。チケットが早々に売り切れていたことから、会場にheidi.目当てのファンは多くはなかったと思う。しかし、全身全霊でオーディエンスを楽しませようと真摯にライブを繰り広げるメンバーと、温かく応援する会場の一体感はまさに『hide Birthday Party』の醍醐味である。
ポップな歌メロの「従花」、「ヘイヘイヘイ」という掛け声で会場と一体になる「マネキン」のあと、デスボイスと激しいヘドバンのメタルナンバー「一瞥」と多彩な面を見せて、heidi.のメンバーはステージをあとにした。
■INAのバースデーもサプライズでお祝い
セットチェンジで幕が閉まっている間に、幕前に出てきて準備をしているDJ-INA。スタンバイOKなのになかなかBGMが途切れず「なげーな」とひと言漏らした瞬間に音が止まり、STC(木村世治、TAKA、CUTT)の3人と浅井博章がろうそくに火が灯ったバースデーケーキを押して現れる。一瞬、びっくりした表情を見せるINAだが、「あ、そーいうことね」とすぐに納得した様子。hideの共同プロデューサー・INAのバースデーは12月12日で、hideの1日前なのだ。
INAの誕生日を祝ったあと、hideへのバースデーソングをみんなで歌い、DJタイムが始まった。DJブースの中にとどまらず、マイクを持ってステージをあちこち動いて、オーディエンスを巻き込んでいくINA。「FISH SCRATCH FEVER」では、「DIEちゃんがこの曲をやりたいっていうのでデータをあげたりしてたんだけど、できなくなっちゃったから応援メッセージを送りたいと思います」とスマホでオーディエンスと一緒にメッセージを撮影。この動画には、緊急入院でイベントに出演できなかったDIEも喜んだことだろう。
その後、浅井が登場したり、お客さんをステージに上がらせたりと楽しく遊んだあと、「あっという間すぎたので、次はあっちのバー(会場2階のアティック)でDJやってるので遊びに来てください」とひと言。INAのDJタイムはまだまだ続くのだ。
■shame、Sillysといったレアな面々も強烈なインパクトを残す
そして、ステージに登場したのは、このイベントには欠かすことのできない存在であるSTCのひとりで、hideとも縁が深いCUTTがボーカルを務めるshame。1999年に『hide TRIBUTE SPIRITS』に「LEMONed I Scream」で参加して注目を集めた彼らは、解散と再結成を繰り返しながら2025年に3年ぶりに再集結し、久しぶりに『hide Birthday Party』への参加となった。
骨太なロックサウンドに聴きやすいボーカルが魅力のバンドだが、サービス精神旺盛なCUTTのMCも聴きどころのひとつである。「子 ギャル」のバースデーバージョンで会場を盛り上げたあと、「shameの曲でも盛り上がっていきましょう」とオリジナル曲「Doll」の練習をしたり、“LEMONed”の意味をしっかり説明したり、オーディエンスを満足させるためにいろいろ考えて実行しているところはエンターテイナーの鏡である。ラストを思い出の曲「LEMONed i Scream」で締め括り、演奏が終わって幕が降りてきても、最後の最後まで会場に手を振り続けていた彼らは、2026年に久しぶりのツアーも予定しているという。
幕が開くと、ドラムセットの前にメンバー3人が座っている。木村世治(Vo&Dr/ZEPPET STORE)、Chirolyn(Vo&Ba/hide with Spread Beaver)、高野哲(Vo&Gu/ZIGZO)の3人からなる全員ボーカリストの3ピースバンド・Sillysの『hide Birthday Party』初参戦。とはいえ、木村とChirolynはこのイベント常連組なので、新鮮でありつつ、安心感も共存するという不思議な感覚である。
ドラム、ベース、ギターのシンプルな音の上に、3人の個性が違うヴォーカルが乗り、ソロで歌ったり、ツインボーカルになったり、ユニゾンだったり、コーラスだったり、曲によってパートによってメインボーカルが変わる。その表情はまるで少年のようにとても生き生きとしていて、自由で楽しいロックンロールの初期衝動を彼ら自身が楽しんでいることが伝わってくる。
3人で和気あいあいと「ピンク スパイダー」を演奏したあと、最後にChirolynの「懐かしいの、いっちゃうよ〜!」という声でソロの代表曲「君は変わっちまった」をプレイ。強烈なインパクトを残して、彼らのライブは幕を閉じた。
■トリは絶大な信頼が置けるdefspiral
出演アーティストの最後を飾るのは、浅井に「永遠の若手」と紹介されていたdefspiral。幕が上がるとツインドラムが2台セットされており、ベースアンプが2台、ギターアンプが3台と、ステージ上は機材だらけである。最後のセッションのためのセッティングであるが、defspiralがイベントのバンドトリを務め、セッションのキーパートを担当するこのスタイルはずっと変わっていない。彼らはhideのミュージカルやホログラフィックライブでも演奏を担当しており、こういうシーンでは絶大な信頼が置けるバンドであると同時に、この一大イベントのトリを務める貫禄を持っていることに他ならない。
ライブの1曲目はヘヴィな「Nyx Dance Hall」。音源リリースとツアーをコンスタントに行っている彼らだけに、音のまとまり感が実に気持ちいい。hideの楽曲「DOUBT」「限界破裂」は、カバー曲と思えないほどdefspiral流に昇華されている。ラストに演奏されたゴージャスな「SPIN THE UNIVERSE」、ドラマティックな「銀河航路」は、3ヵ月連続音源リリース企画の第2弾・第3弾として、2025年9月・10月にリリースされた楽曲だし、その着実な進化は本当に頼もしい限りである。
■「松本も喜んでいると思います」(PATA)
すべての出演者のステージが終わったところで、毎年恒例の大セッション大会。PATA(X JAPAN、Ra:IN)とJOE(hide with Spread Beaver)が登場し、この日の出演者も全員ステージに呼びこまれる。曲は「CELEBRATION」と「TELL ME」の2曲。毎年恒例ながら、自由に楽しそうにステージ上で演奏している(一部遊んでいる人も?)出演者を観ていると、本当にハッピーな気持ちになれる。もはや年末の風物詩である。
演奏が終わって全員での記念撮影のとき、Chirolynがいないことが発覚。全員で名前を呼んで、物販スペースにいたChirolynもステージに駆けつけ、無事に集合写真の記念撮影を行うことができた。5月のhide with Spread Beaverワンマンライブでは車椅子での出演だったPATAもしっかり歩いてギターを弾き、「今年もありがとうございました。松本も喜んでいると思います」と挨拶。JOEも「来年もよろしく!」と満面の笑みでオーディエンスに手を振った。
この『Birthday Party』とシンクロするように、12月12日から14日までの3日間は、横浜のローソン・ユナイテッドシネマ STYLE-S みなとみらいにて、2025年5月に行われたhide with Spread Beaverのワンマンライブ映像『hide with Spread Beaver VRシアター』が上映された。
また、イベント前日の12月12日、映画館のアフターミニトークショーに登壇した松本裕士(hide オフィシャルマネジメントオフィス ヘッドワックスオーガナイゼーション 代表取締役)が、2026年の3大ビッグニュースを発表。『hide Birthday Party 2025』にもイベントの締め括りに登場し、自らを「口の軽い男」と笑いながら、改めて2026年の予定を発表した。
・5月2日に、『トリビュートライブ – Hi-Ho! -』を開催
・9月6日に、9年ぶりの復活となるフェス『MIX LEMONeD JELLY』を開催
・その後、hide with Spread Beaverが3年ぶりのワンマンツアーを行う
2026年もhideファンにとって、楽しいことがたくさんある一年になりそうである。
TEXT BY 大島暁美
PHOTO BY Miho Nagai (LINKSOLU,Inc.) / Hiroyuki Ueno (LINKSOLU,Inc.) ※ライブ写真
■【画像】hide アーティスト写真
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