4月10日=シドの日を記念して、シドがファンクラブ限定ライブ『SID OFFICIAL MEMBERS CLUB ID-S限定 410の日2026』を開催した。
いちばん近い存在であるファンクラブ会員を前に、MCではリラックスした表情を覗かせつつも、セットリストからは攻めの姿勢を感じられた。会場は、ダークな楽曲にフォーカスした昨年のコンセプトツアー『SID TOUR 2025 ~Dark side~』が11月にファイナを飾った東京・Zepp Haneda(TOKYO)。2026年の初ライブとなったこの日、シドはまだ見ぬ新しい姿を見せた。
■「すげえ盛り上がってんじゃん?頭から。いいねいいねいいね!」(マオ)
410という数字の形に灯された電飾がステージに輝き、SEに乗せてゆうや(Dr)、明希(Ba)、Shinji(Gu)、最後にマオ(Vo)が登場。それぞれの流儀でファンにアピールする高揚感たっぷりの幕開け。「ハナビラ」のイントロが鳴ると、あちこちから感嘆の声がこぼれた。この日の暴風雨で大半が散ってしまっただろうが、桜の季節にふさわしい選曲だった。
Shinjiはアコースティックギターを爪弾き、明希は2台のベースを使い分け、ゆうやは滑らかなドラミングで歌に寄り添っていく。マオが最後の超ロングトーンを轟かせた直後、しっとりとした余韻に浸る間もなく放ったのは、シド流令和歌謡の真骨頂「騙し愛」。
続く「MUSIC」では明希のスラップベースがグルーヴを牽引し、踊るような身のこなしでパフォーマンスするマオ。熱気と一体感がみるみるうちに上昇していく。予想もつかない選曲と流れでファンを驚かせるライブ序盤だった。
「すげえ盛り上がってんじゃん? 頭から。いいねいいねいいね!」とマオは第一声を放ち、「バーチャル晩餐会」「cosmetic」を連打。ステージが真っ赤な光で染め上げられ、どよめきを巻き起こした次曲は「林檎飴」だった。哀愁を帯びたメロディとシンセ音が’80年代テイストの魅力をまき散らすレア曲に、場内は大拍手に包まれた。
続くMCではメンバー全員がコメント。トップバッターの明希が「どこの誰がこの豪雨を連れてきました?」と問い、雨男疑惑をとぼけようとすると、ファンは爆笑。ゆうやが明希をコッソリと指さしているのも笑いを誘った。
「お足元の悪いなか、こんなに素敵な笑顔で迎えてくれてありがとうございます」(明希)と感謝を述べると、メンバーは拍手で同意。「“こんなに楽しんでる僕・私、自分でも初めてだ”というぐらい盛り上がってください。まだ見ぬ自分と出会って、最高の夜にしようZepp Haneda!」と呼び掛けると、ファンは大きな声で答えた。
「見たこともないくらい衣装が派手で、それでも似合っているドラマーを紹介していいですか? ロックドラマー、ゆうや!」とコールされたゆうやは立ち上がると、コール&レスポンスののち、「皆、この日をすごい楽しみにしてたと思う。でもたぶん俺のほうが楽しみにしてたと思う。1日しかないからね、4月10日って。ツアーじゃないから、今日1日でツアー初日とツアーファイナルみたいな完結をセットリストのなかでやっていくんで、付いて来いよ?」と語り掛け、「ぶちかましていこうぜ!」というシャウトで締め括った。
「ヘンな豆知識しか言ってないけど、本当にすごいイケメンだと思います。ギター、Shinji!」(ゆうや)と紹介されたShinjiは「お世話になっております!」という挨拶を勇ましく連呼。
「桜ももう散り散りですが、ここで一句」と前置きして、「さくらさくらと唄はれし老木哉」と小林一茶の句を詠唱。「4月10日、この桜の散る季節に、皆さんとあと何回見られるんだろうな? ずっと会いたいなって」とコメントすると、ファンは歓喜の声を上げた。
さらにShinjiは「君らと一緒に歳を重ねてきて、毎回会えたらうれしいなっていう、自分の願望です」と感慨深そうに語った。かと思えば、照れ隠しなのか「そんな今日は和田アキ子さんの誕生日です」と豆知識を披露し、「和田アキ子さんのようにパワフルなライブをしていきますので」と決意表明を述べた。
■「Zepp Haneda!俺の想いが全然伝わってねえんだよ。やれるか!?やれるか!?」(明希)
「オン・ヴォーカル、マオ!」(Shinji)と紹介を受けたマオは、「いや~、変なメンバーだね(笑)」と個性豊かなMCを振り返って笑ったが、「盛り上がっていこうか! ちょっとだけ懐かしい曲かな? Shinjiだっけ、この曲は? いい曲だよね」とのコメントからは、リスペクトが伝わってきた。
披露したのは、光と影を1曲のなかに併せ持つミディアムナンバー「マスカラ」。気怠さをまとったリフに導かれ、ドラマティックに歌が展開していく楽曲で、成熟した現在のシドにしっくりと似合っていた。夕暮れを思わせるオレンジを多用しつつ、最後は白い閃光の中に没入していく劇的な照明演出。和の情感をたっぷりと味わえる次曲「面影」へと繋がっていく流れも印象的で、ライブの折り返し地点を魅力的に彩っていた。
ゆうや、明希、ShinjiによるInstは、三者三様、自由自在にプレイしつつも互いの音に触発されて昂っていく演奏に、ロックバンドとしてのシドの骨格、礎の強さを再認識させられた。そこへ、前半は白いシャツ姿だったマオが黒いジャケットをまとって再登場して合流すると、「delete」がスタート。煽り文句もメンバーの動きもどんどん衝動的に、激しくなっていく。
「盛り上がってんな、まだ行けんだろ? 行きたいんだろお前ら?」とマオが焚きつけて歌い出したのは「ほうき星」。ファンも大きな声でシンガロングする。カラフルな照明、ミラーボールも輝くなかで「V.I.P」を披露。マオはShinjiへと歩み寄り肩に手を置いたかと思えば、後方の階段を上ってゆうやの隣へ。その後は明希の肩を抱きながら歌唱した。
マオがジャケットを脱いで両腕を露わにし、「dummy」がスタートすると、鋭いシャウトを交えながら獰猛にパフォーマンス。チカチカと明滅するストロボライトが盛り上がりを加熱させていく。明希が「Zepp Haneda! 俺の想いが全然伝わってねえんだよ。やれるか!? やれるか!?」と煽り、「Oi Oi Oi Oi」とファンと互いに競い合うように激しくコール&レスポンス。
明希は髪を振り乱してターンを繰り返しながらプレイして、Shinjiはしゃがんだかと思えば即座に立ち上がり、ギターを垂直に天に突き立て仰け反りながら演奏。荒々しいパフォーマンスをメンバーたちが繰り広げる中央で、ゆうやは緻密にプレイしていた。
「まだ行けんだろ? お前ら『Dark side』のときはそんなもんじゃなかったもんな。お前らの本性を知ってるからな。俺を! 俺様を! 気持ち良くさせろ、いいか!」とマオが威嚇するように叫ぶと、「0.5秒の恋」へ。電飾の灯りは赤、白の十字架の形に彩られ、激しくブリンク。ファンは拳を振り上げ、メンバーは髪を振り乱して演奏に没入。
間奏で明希はShinjiへと近付いていき、ふたりが向き合って音を刻む場面にも目を惹かれる。マオはお立ち台よりも前へ、ステージの際ギリギリの突端でシャウト。ゆうやのスティックは大きな美しい軌道を描き、激しくもタイトなドラミングでしっかりと土台を支えた。そして、「行けんのかZepp? 行けんのか東京? 結婚しよう」という煽りからの「プロポーズ」で絶叫と轟音のカオスを生み出し、本編を締め括った。
■「最高、シド最高!ライブ最高!あなたたち最高!」(ゆうや)
すぐさまアンコールの声と手拍子が起きて、メンバーは再登場。「次の曲、いつぶりかわからないぐらいの…今のシドがやったらどうかな?って。皆覚えてるかな?」とマオが悪戯っぽく笑いながら語り、披露したのは「dog run」。歌詞どおりリードを引きずるように小走りになるマオとそれを追い掛けるShinji、そのキュートな様子にファンは悲鳴のような声を上げた。
大拍手のなかで曲を終えると、「“ちょっとどうかな?”と思ったんだけど。まだまだ行けたな」と笑ったマオ。ここで、すでに発表されている5月からのライブハウスツアー『いちばん好きな場所 2026』に触れた。『いちばん好きな場所』の開催は約8年前。明希は「全部来たほうがいい。めっちゃくちゃいいライブするから」と誓った。
さらに4月18日には4人揃ってのYouTube配信を実施すること、今年秋にファン参加型のリクエスト・ベストアルバムをリリースすることなどを告知、会場を沸かせた。
「夏恋」ではセンターに明希とShinjiが集まり、ふたりの肩に手を置くマオ。かと思えば、Shinjiがドラム台に駆け上がり、ゆうやとマオ、明希の3人が縦に直列する場面も。歌詞の“君”をファンに置き換えて「隣には“お前ら”がいいな」とマオが指さすと、ファンは歓喜の声を上げた。
明希はドラム台に上りゆうやに背中を預けてプレイ。ライブが終わりに向かう寂しさとは裏腹に、明るい曲調に乗せて、次々と眩い名場面がステージ上で生まれていった。さらに楽しさを加速させていくように「smile」を軽やかにパフォーマンスし、「まだまだ行こうか!」と煽って「ドラマ」へ。
ラストの「one way」も含め、この日最大級のボリュームでファンの力強い「Oi Oi!」コールが響き、幸福な一体感のなかでライブは締め括られた。
ファンを背にした記念撮影のあと、メンバーは晴れやかな表情で手を振り、ピックやスティックを投げ入れた。明希は「最高だったぜ! 『いちばん好きな場所』で再会できることを楽しみにしてます。今日を超えるような、シド史上最高のライブを、ツアーをみんなでつくりましょう。一人ひとりの想いを持って来てください。俺たちもそれに全力で応えます、最高のツアーにしましょう、今日はどうもありがとう!」と挨拶。
Shinjiは「ありがとう! まだ決まってもないんですけど、また来年も4月10日に君たちに会いたいな。絶対会おうぜ!」と次の“シドの日”での再会を願った。ゆうやは「ドラムは?」と問い掛け、ファンから「ゆうや!」の答えを受け取ると、「ありがとうございます。最高、シド最高! ライブ最高! あなたたち最高! またツアーで会おうぜ!」とファンを讃えつつ再会を誓った。
最後にひとり残ったマオは、「最高のライブをどうもありがとう。最後に一個だけいいかな?」と問い掛け、浴びせられる「マオ!」コールに耳を澄ませた後、マイクを置き、BGMが一瞬消えた静寂の中で「愛してます!」と叫んだ。マオが去り、ステージには410の電飾が再び灯っていた。
懐かしい曲を“今”のシドが歌い奏でたらどうなるか? そんな実験的な試みを多数盛り込んだステージは新鮮で、贅沢な内容だった。だからこそ「一夜限りであることがもったいない」と感じたが、5月から始まるライブハウスツアーに向けて、絶好の前哨戦となっていた。告知のとおり、活発な動きを予定している2026年のシドに注目したい。
TEXT BY 大前多恵
PHOTO BY 江隈麗志
■セットリスト
01. ハナビラ
02. 騙し愛
03. MUSIC
04. バーチャル晩餐会
05. cosmetic
06. 林檎飴
07. マスカラ
08. 面影
09. delete
10. ほうき星
11. V.I.P
12. dummy
13. 0.5秒の恋
14. プロポーズ
[ENCORE]
15. dog run
16. 夏恋
17. smile
18. ドラマ
19. one way
■関連リンク
シド OFFICIAL SITE
http://sid-web.info/




