『浜田省吾ソロデビュー50周年記念トークイベント ~この日限りのライナーノーツ~』が、2026年4月26日、かつて浜田がデビューコンサートを行った“屋根裏”があった場所からもほど近い、東京・HMV record shop 渋谷で行われた。
■『生まれたところを遠く離れて』を聴きながら流れる濃密な時間
2026年4月21日にリリースされた『生まれたところを遠く離れて』の50周年記念CDパッケージにライナーノーツを執筆した、音楽評論家・田家秀樹氏が登場し、レーザーターンテーブルでアナログ盤『生まれたところを遠く離れて(2026 Remix Version)』を再生しながら解説。
会場にはCDとアナログ盤それぞれの購入者を中心としたファンが集まった。
リミックスによって鮮烈に蘇った浜田省吾というアーティストの“23歳の肖像”を、田家氏が自身の記憶と50年前の資料を紐解きながら解説する、まさに“この日限りのライナーノーツ”と呼ぶべき濃密な時間が流れた。
イベントの冒頭、田家氏は今回の50周年記念盤における“リミックス”の意義について、「リマスターが『化粧直し』だとしたら、リミックスは造形から変える、言ってみれば整形手術に等しい根本的な変更」と、その違いをわかりやすく説明し解説をスタート。
■ボツになったテイクの中にも光るフレーズを見つけ音を再構築
田家氏は『生まれたところを遠く離れて』の50周年記念CDパッケージに封入されている一万字に及ぶライナーノーツを書くにあたって、浜田を支えてきたギタリスト・町支寛二氏、浜田らが所属する事務所ロードアンドスカイ代表の高橋信彦氏、長年浜田のプロデュースをつとめる鈴木幹治氏、そしてエンジニアの野口素弘氏(ソニー・ミュージックエンタテイメント)を取材し、その言葉を紹介しながら名作の実像に迫っていった。
今回、リミックスを担当したのは、1982年生まれの若きエンジニア・野口氏。
田家氏は「彼はオリジナルのマルチトラックのテープをすべて探し出しトラックシートを丹念に確認し、ボツになったテイクの中にも光るフレーズを見つけ音を再構築していった。だから知っている曲なんだけれど、聴いたことがないフレーズが出てきたりする。それが野口さんの仕事。当時、浜田省吾はこういうことをやりたかったんだろうなということを、リアルタイムでこの作品を聴いていない、若い彼が再現してるんですよ」と、野口氏の“大仕事”を絶賛。
さらに「彼は浜田さんのライブ音源のミキシングを数多く手がけてきた」とその経験に触れ、「ライブ会場で聴いているような体感がこのリミックスの核である」と強調した。
その音をさらに際立たせたのが、会場に用意された高品質なレーザーターンテーブルでの試聴体験だ。
針を使わずにレーザーで溝を読み取るこのシステムで、「路地裏の少年」が鳴り始めた瞬間、その圧倒的な音圧に会場の空気は一変した。田家氏は「最初、家のミニコンポで聴いたとき、思わず立ち上がってしまいました」と、その衝撃の大きさを興奮気味に語り、さらに「リズムの重さが迫ってくる感じがあって、今日もライブ会場にいるのかと思った」と熱く語っていた。
■背伸びをしながら自分の音楽を追い求めていた23歳の浜田省吾
「青春の絆」の解説では、田家氏の言葉に熱が入った。
「これですよ…拍手したくなるでしょ? 同じ曲とは思えない」と笑顔で語り、そして「70年代は髪の毛が長いだけで社会から弾かれていた」当時の若者の時代背景に触れながら、この曲の“リアルさ”を解説。「リミックスによってやるせない叫びが、これほどリアルに出ているとは思わなかった」と続けた。
このアルバムが当初3,000枚しか売れなかった時代。それでも23歳の浜田省吾は、背伸びをしながら自分の音楽を追い求めていた。
「朝からごきげん」は、「AIDOのメンバーを中心としたバンドの生演奏ならではの息遣いと呼吸感が際立った」と語っていた。タイトルは、当時高橋氏から浜田にかけた「今日は朝からご機嫌だね」という何気ない言葉から生まれたエピソードも紹介。
「悲しい夜」について田家氏は、1996年発行の自身が執筆した『浜田省吾事典』から引用。
当時浜田は“聴く音楽”と“やる音楽”が直結してた。「だからやりたかったからやったという4ビートジャズへの挑戦だった」と解説した。背伸びをしながら新しい音楽性に挑む23歳が、この曲にはそのままの形で記録されている。
田家氏の特にお気に入りの一曲「壁にむかって」は「強がりと弱さが混在している。23歳の男の愛おしいほどのごまかしのなさ」こそがこの曲の本質であると説いた。
その本質を野口氏が忠実に再現している。当時、シティポップが台頭しはじめた時代に、音楽評論家の間で「この歌詞はなんだ?」と論議を呼んだという。「華やかで都会的なものが求められているなかで、これですから」。
それでも田家氏は「僕はこれがいいと思った」とはっきり言い切った。
■今回のリミックスが、当時何もできなかったスタッフの悔しさを洗い流してくれた
最後に披露されたのはタイトル曲「生まれたところを遠く離れて」。
浜田はオフィシャルサイトでほぼ全てのアルバムについてコメントを寄せているが、このアルバムについてが最も長い。「最初で最後になるかもしれない、二度とないレコーディングかもしれないという思いで歌っていて」、途中で歌えなくなったテイクも残っているという。
今回のリミックスバージョンを聴いた浜田は、プロデューサーの鈴木氏に「いいじゃん!」という言葉を残したということを紹介。
さらに鈴木氏の「当時このアルバムに関して、スタッフとして何もできなかった。今回のリミックスがそんな悔しい思いを全部洗い流してくれた」という言葉も客席に伝え、野口氏が語った「紳士の浜田さんにも、僕らと同じように尖った時期があったんだと思って、安心して嬉しくなった」というエピソードが紹介された。
田家氏は、この言葉こそが今回のリミックス盤の実像を表していると述べ、最後をこう締めくくった。「23歳の浜田省吾と、ご自身の若い頃を比べながら、みんながどうやって歳を取ってきたのかを改めて確認していく。そんなアルバムになるんじゃないかと思います」。
■最後には50年前の資料に触れられる貴重な体験も
最後にファンへのサプライズが待っていた。
田家氏がライナーノーツ執筆中に発見したという、レコード会社が作成した、田家氏のメモも書かれている50年前の資料の実物が公開された。さらにそれは客席に渡され、ファンは順番に宝物にでも触れるように貴重な資料に見入っていた。
50年前の“3,000枚”から始まった物語は、今や日本の音楽シーンの至宝となり、最新の技術と田家氏の言葉によって、再び鮮やかな色彩を取り戻した。
“この日限りのライナーノーツ”で語られたこの日の言葉たちは、そのままどこにも収録されることはない。音楽評論家が50年かけて辿り着いた23歳の浜田省吾の肖像は、耳で聴き、その場にいた者だけに、確かに伝わっていた。
■『SHOGO HAMADA 50th Anniversary Gallery by Teruhisa Tajima』は5月6日まで開催
HMV record shop渋谷の2階ギャラリースペース・Bankrobber LABOでは、『SHOGO HAMADA 50th Anniversary Gallery by Teruhisa Tajima』が5月6日まで開催されている。
浜田省吾のアートワークを手掛けるアートディレクター/デザイナー田島照久氏の作品に宿る“浜田省吾の世界観”を、ジャケットアートワークを通じて体感できる特別な空間だ。
田島氏の制作秘話と共にこれまでの軌跡が色鮮やかに蘇る。
フォトスポットとしてファンで連日賑わっており、浜田省吾『ON THE ROAD 2025-2026』ツアーグッズも特別販売されている。
TEXT BY 田中久勝
浜田省吾50周年特集記事
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/15254/
■イベント情報
『SHOGO HAMADA 50th Anniversary Gallery by Teruhisa Tajima』スペシャル展示
期間:2026年4月21日(火)〜5月6日(水)
会場:HMV record shop渋谷内2Fギャラリースペース「Bankrobber LABO」
https://www.hmv.co.jp/news/article/230421155/#hamada
※実施期間は変更になる場合がございます
■リリース情報
2026.04.21 ON SALE
ANALOG LP『生まれたところを遠く離れて』
https://shogohamada.lnk.to/UMARETATOKORO_Vinyl
2026.04.21 ON SALE
ALBUM『生まれたところを遠く離れて(2026 Remix Version)』
https://hamadashougo.lnk.to/Far_Away_from_Home_50th
2026.04.21 ON SALE
ANALOG LP『LOVE TRAIN』
https://shogohamada.lnk.to/LOVE_TRAIN_Vinyl
■関連リンク
浜田省吾ソロデビュー50周年記念
「SHOGO HAMADA 50th Anniversary Vinyl Collection」特設サイト
https://shogohamada.lnk.to/50thAnniversaryVinylCollection
浜田省吾 OFFICIAL SITE
https://shogo.r-s.co.jp/
https://www.sonymusic.co.jp/artist/ShogoHamada/info/
楽曲リンク:浜田省吾
https://smer.lnk.to/shogohamada
▼浜田省吾の最新記事はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/1776/




